ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

早紀SS04

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早紀先輩と秘密の部屋


外には抜けるような、澄んだ青空が広がっている。
こんなに気持ちのいい晴れの日に屋上で昼飯を食べるというのも、いいものじゃないだろうか?
「……なんて考えていた時期が俺にもありました」
俺は全力で後悔していた。
頬を撫でる冷たい風が俺の全身を縮こまらせる。
……寒い。
メロンパンをもそもそと噛りながら、歯に詰まるクッキー地の皮をぬるくなったカフェオレで流し込む。
あまりの天気の良さに、今が二月だということを忘れていたのが敗因だ。
こんなことなら、ドクオたちと一緒に学食に行ってくればよかった。
「あー、くそ。世間の冷たさに負けた……っ!」
嘆いてみるけど、それで暖かくなるわけもない。
「……中、入るか」
身体ばかりか心まで寒くなってきた。俺はカフェオレを飲み干して校内に戻った。

■■■

「うぅ~……さむいさむいさむい」
冷え切ったせいか、独り言もいまいち歯の根が合わない。
袖の上から両腕を擦るが、疲れるばかりで一向に温かくなりそうもなかった。
「寒すぎて駄目だ。なんかシャクだけど……食堂で温かいスープでも買うか……」
俺は身体を縮こまらせながら、1Fまで降りた。
食堂が、ちょうど校舎の反対側にあるせいか、この時間のこの場所は人気が無く廊下は閑散として、それだけで寒い。
まあ、まだ休み時間はたっぷりとあるし、スープものが売り切れることも無いだろう。
……余計な出費であることは確かだが。
「仕方ねえ……今月の、アレはあきらめるか」
ちなみに、アレというのは『月刊スク水通信』という……その……いわゆるアレだよ、アレ。
健全な男子学生なら家族にはナイショにしたい、机の引き出しの中を二重底にして自動発火装置のトラップを仕掛けておきたくなるようなアレだ。
毎回、隠し場所に頭を悩ますのが分かっていながら、買ってしまうのは男の子の悲しい性という奴だろう。
「……先月号とか、そろそろ隠し場所を変えないとな」
特にうちには、気がつくと俺の部屋で潜入ミッションを始めるヒメッド・スネークなんてのがいるからな。

(回想、ここから)

ひめ「聞こえるか、大佐。こちら、スネーク。稔くんの部屋に潜入した。指示をくれ」
ひめ「良好だ、スネーク。では、まず定番のベッドの下から捜索を開始してくれ」
ひめ「大変だ、大佐! ベッドの下から、いかがわしい本が!」
ひめ「大佐、これより内容を検証する……って、うわぁ……」
ひめ「……稔くんてストライクゾーン広すぎ……」
ひめ「…………す、スク水かぁ……」
ひめ「………………う…………こ、これ……きょ、姉弟モノ!?」
稔「ナルャッデンディスカ、ベェザァァァァァァァン!!」

(回想、ここまで)

……思わず、オンドゥル語が出たのは後にも先にもあの時だけだ。
しかも人権を蹂躙されたのはこっちなのに、しばらく姉さんは俺と口をきいてくれなかった。
もっとも、あの時はドクオに貸してもらった近親相姦物のエロ本が入ってたし、姉さんが怒るのも無理はないか。
そんなわけで最近は姉さんに悟られないように、ちょくちょく隠し場所を移動しているのだった。
「今度は洋服ダンスの奥にするか……さすがの姉さんでも、俺の下着が入っている引き出しを開けたりはしないだろ」
などと考えながら人気の少ない廊下を歩いていると、
「……おや?」
ふと空き教室になっている部屋から、何か音が聞こえた気がした。
何だろう。空耳だろうか?
気になった俺は、閉じられた扉に耳をそばだてた。

「ん…………ンっ…………」

聞こえてきたのは、鼻にかかったような甘い女の声。
熱と艶を帯び、水気を含んだ快楽と陶酔のただ中にあって、押し殺してもなお零れ落ちる甘露のごとき声。
それは、どこかで聞いた覚えのある声だった。
この声は――――
「先輩?」
ちょっとくぐもってて聞き取り難いけど、先輩の声に似ている気がする。
だが、微かに聞こえてくる声は、あまりにも先輩には似つかわしくない種類の――淫らさを俺に覚えさせる。

「……あんっ……ぁあ……」

ごくり、と自然に喉が鳴った。
さっきまで身体の芯にあった寒さは影も無く、ぬめついた灼熱が下っ腹から背筋を這い上がってくる。
聞こえるのは先輩の声だけ。
他の、誰の声も聞こえないのが、何故か嬉しかった。
俺は扉を少しだけ開き、中の様子を覗いてみることにした。
隙間が出来たことで、中の音が少し明確になった。
聞こえてきたのは、やはり先輩の艶っぽい声と低い振動音。
マナーモードの携帯電話のそれとは違う、間断を持たないバイブレーション。
部屋の中は資材とダンボールがうず高く積まれており、閉め切られたカーテンのせいで薄暗い。
先輩は、その部屋の奥に無造作に置かれた古びたソファーの上に座り、太いこけしのようなシルエットをしたモノを手にしていた。
ブゥン、と絶え間なく振動を続けるそれを先輩はおもむろに――肩に押し付けた。
「ふあぁぁ……き、効くぅぅぅ~……」
「って、電動マッサージ器かよ!!」
「ふぇっ!?」
ビブラートを利かせて呆けた声を上げる先輩に、俺は思わずツッコミを入れていた。
だって、そうだろう?
人気の無い教室の前を通りかかったら、中から校内でも指折りの美人と数えられる先輩の色っぽい声が聞こえてきたら、健全な男子学生なら先輩のO-721だって思うはずさ!
畜生、俺のこの胸のトキメキを返せ!
「とりあえず、バーボンを1杯サービスしてくださいよ、先輩……」
「何だかよく分からないけど……未成年はお酒飲んじゃ駄目だよ、稔くん」
めっ、と指を立て、幼い子どもを諭すように先輩が言った。
うちの姉よりもお姉さんっぽく見えるのは、やはり先輩の人柄が良いからに違いない。
「……というか、どうしてこんなところにいるんですか?」
「ちょっとした休憩、かな?」
素直に疑問を言ってみると、先輩ははにかみながら答えた。
「あたしが生徒会の役員やってたの知ってるでしょ? もうほとんどは下の学年に引き継いでるんだけど、備品の管理と整理がちょっと面倒だから、比較的手の空いているあたしが手伝ってるの。で、今も整理してたんだけど――」
と、そこで言葉を切って、先輩はソファーに置いた電動マッサージ器に視線を移した。
「ちょっと肩が凝っちゃったから休憩して、備品の中にあったマッサージ器を使ってたの」
「ははぁ……それで、ですか」
がっかりな反面で、俺は安堵していた。
「ちょっとと言わず、たっぷり休んでくださいよ。ただでさえ先輩は色んな仕事引き受けちゃうんですから」
というか、この人の場合、自分から進んでお節介を焼きに行くからな。
それで、やらなくてもいい仕事を背負い込んでフラフラになってるところを見たこともあるし。
これで少しでも身体を休めてくれると、俺としても心配の種が減るというものだ。
が、
「駄目だよ。お昼休みが終わる前に、もうちょっと片付けておきたいの」
あっさりと却下です。せめて考える素振とかしてください、先輩。
仕方がない。別のアプローチで強制的に休憩を取ってもらうとしよう。
「あ、先輩。肩こりに良く効くツボ知ってるんで押してあげますよ、っと!」
有無を言わさず、俺は先輩の肩をぐいっと揉みこんだ。
「ひゃんっ!」
先輩は俺の行動を予測できなかったのか、揉まれた瞬間にびくりと身体を震わせた。
「ふぁ……す、すご……い……きもちいい……」
唇からまろび出たのは先輩の本音だろう。荷物整理に向かっていた足は止まり、もっともっととねだるように肩の緊張が抜けていった。
俺は首筋から肩の付け根へ向かって手のひらで圧力をかける。
前に見たテレビでやってたが、身体の凝りはリンパ節に体内の老廃物がたまることで起きるらしい。
手のひらで少しずつリンパ腺の流れに沿って、撫でるように押してゆくと良いそうだ。
「ンっ……すごいよぉ……どこで……ぁ……こんなの……おぼえたの……?」
「独学みたいなもんですよ。それより、先輩ってよく肩こりになるタイプでしょ?」
「ふぇ!? すごいなぁ……そんなことまで分かっちゃうんだ……ぁん……」
いや、そんなメロンみたいなの二つも付いてたら確実に肩凝るでしょう――とは言わないでおく。
しかし、肩を揉んでるだけなのに、どうしてこんなに色っぽい声が出てくるんだろう?
先輩って、こういう刺激に弱いのだろうか。
などと考えていたら、昼休み終了の予鈴が校舎に鳴り響いた。
「むー……全然、整理できなかったよぉ……」
先輩は不満そうに頬を膨らませたが、
「でも、すごく気持ちよかった。なんかね、ものすっごく肩が軽いんだよー」
ぐるんぐるんと元気に腕を振り回した。
「なんか、こうも肩が軽いとね、いつもの二倍くらいお手伝いとか頑張れそうな気がするよ」
「………………そうですか」
まあ、本人が喜んでいるから良いのかもしれない。根本的な解決にはなってないけど。
俺は先輩と別れて、教室に戻った。


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