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長編その2:みずき視点

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稔と別れて、1年生の教室に向かう。
この時間は憂鬱だ。
稔とは出来れば傍にいたい…だけど叶わない事だ。
だから朝だけは一緒にいようと決めている。
稔の行動は把握済みだから、後はあたしが合わせればいい。

教室に入るとクラスメイトが声を掛けてくる。
この1年で仲良くなった子達だ。
あたしも笑顔で返す。

だけどそういう子ばかりでは無い。
1歳年上のあたしを色物で見る子もいる。
今まではお互いに腫れものに触らずという感じでやり過ごしてきた。
ここにあたしの居場所は無い…。

来年度はまだいい、稔達もいるから。
だけどその先は…考えるのが苦痛になり頭の片隅に追いやった。
今はまだいい、今はまだ…。



移動教室の時に稔を見かけた。
つい嬉しくなって声を掛けようとしたら…

稔の隣に誰かいた。
伊万里じゃない。
ドクオ君やジョルジュ君でもない。

あれは…あの女はダレ?



下校時刻になり生徒が帰り始める。
それ以外の生徒も部活に勤しんでまだグラウンドも騒がしい。
あたしは玄関口で稔を待ち構えていた。
あの女が誰なのか確かめたかった。

2月はまだ日が落ちるのが早い。
部活の生徒の声も聞こえなくなり、夜が辺りを包みかけていた。

「稔、遅いな…」

寒さに堪えながら待っていると聞き親しんだ声が聞こえた。

稔だ!!

飛び出そうと思ったが、別の声も聞こえた。
慌てて身を隠す。

闇に紛れて伺うと稔と…あの女!!

2人は楽しそうに話しながら校門に向かっていった。
まるで恋人同士だ。

恋人…?
稔に恋人…
隣にいるのはあたしでも無く…伊万里でも無く…
稔…嫌だよ、あたしを…ひとりぼっちにしないで…



溢れてきた涙を拭い、そのまま後を追う。
街灯の間、影に身を隠して2人を見つめた。
嗚咽は出さなかった。
あの女には気付かれたくない。
でももし出せば…稔は気付いてくれるかな…



しばらくして十字路で二人は別れた。
稔はいつも通りの道で帰宅するようだ。
今、声を掛ければ稔は振り向いてくれる…
でも、何て言えばいい?
これじゃ二人の後を尾けてきたことがバレちゃう。

そのまま一定の距離を保ち歩き続けた。
どうしよう…
稔と話したい…
でも変に勘ぐられるのも嫌…
早くしないと稔の家に着いちゃうよ…
あの女は本当に恋人なのかな…?
あたしが知らないところで既に付き合っていたのかな…?
黒い感情が溢れてくる。

”あたしの知らないところで稔の隣を奪いにきた”

稔の隣はあたしの居場所…
でもあの女じゃなくて伊万里だったら?
伊万里も大事な人だ。
稔と伊万里は比べられない…
じゃあ、あたしの居場所は何処…?

「稔…」

無意識に声が出ていた。

「ん?」

稔が振り返ってくれた!

「みずき?どうしたんだ?」
「えっ!?あ、いや別に…」
「別に、てことないだろ。うん?みずき…泣いてたのか?」
「いやこれは、ちょ、ちょっと早い花粉症!!」
「……」

稔が可哀想なものを見る目で見てきた。
何よそれ!!

「それでどうした?寿司に用事とか?」

寿司、伊万里のことだ。

「え、あ、あぁの…稔がちゃんとまっすぐ家に帰るのか見張ってたの!!」
「よくわからん奴だな…しかもこんな時間だぜ?」

時刻は7時を過ぎていた。

「こんな時間だからだよ!!子供は早く帰るの!!」
「……」

またそんな目で!!

「ふぅ…ほら、行くぞ」

稔は自宅とは反対の向きに歩き始めた。

「え、何処に?」
「お前を送ってくの。こんな遅い時間に女の子一人じゃ危ないしな」
「もう!子供扱いしてぇ!」
「はいはい、行くぞ」

稔と隣に並んで歩く。
さっきとは真逆だ。
あたしの傍には稔…
それからは今日会ったことを話し合った。
稔はドクオ君やジョルジュ君とのいつもの事。
あたしもクラスメイトとの事を話した。

「妙に嬉しそうだな」
「そ…そう?」

口では認められなくても、頬は自然と緩んでいた。
稔はやっぱり優しい。
あたしのことを考えてくれる。
あの女は途中で別れたが、あたしは稔にエスコートしてもらえる立場だ。

お前の居場所は稔の隣じゃない!!



あたしの家に着いた。
残念だけど稔とはここでお別れ…

「じゃあまた明日な」
「うん…おやすみ…」

結局あの女のことは聞けなかった。
でも構わない。
あたしと稔の大切な時間だ。
それをあの女に邪魔されてたまるか…

稔を守らなければならない。
稔の隣はあたしの居場所だ。
誰にも渡さない。

ふと一瞬伊万里の顔が浮かんだ。

「伊万里…」



その日の夜は特に寒かった…