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長編その1:稔視点


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2月はまだ寒い時期だ。
春の足音は遠い。

「藤宮君、資料整理の手伝いありがとう」
「ああ、委員長。いつも”世話”になってるからこれくらいは協力するよ」

隣にいるのはクラス委員長の黒川百合。
世話になっている事とは授業中のノートの事だ。
居眠りしている時は勿論、数学教師の九暮の授業はスピードが早すぎて付いていけない。
そんな時に助けてくれるのが委員長だ。

夕方のオレンジ色が教室内を染める。
意識する間も無く夜になるだろう。

「藤宮君は自堕落が過ぎます。少しは意識してみては?」

澄ました顔で毒づく委員長。
まさにグゥの音も出ない。

「悪かったよ。でも、もしもの時はまたよろしく♪」
「またそう言うことを…」
「ラーメン奢るからさ」
「!?…そうですね、困った時はお互い様と言いますからね」





「ハァ…、ここのラーメンはやっぱり最高ですね」
「…」

目の前にあるのは某ラーメン店のラーメン。
店の名誉のために名前は伏せさせてもらう。
と、いうのもここのラーメンは壊滅的にマズイのだ…

「んー♪」

委員長は至福の顔でラーメンを平らげていく。
一体どういう味覚をしているんだ?
一方の俺は匂いだけで吐き気が出てきた…
冷や汗も止まらない…
自分から来ておいてなんだが、帰りたい…

「藤宮君?食べないのですか?」
「ええと…食欲が無くて…」
「じゃあ、貰ってもいいですか?」
「あ…?あぁどうぞ…」

委員長はもう1杯のラーメンも手を付ける。

「フゥ…、ラーメンの後の口直しの水も最高です」
「(ラーメンが美味ければ、な)」
「藤宮君、失礼なことを考えていません?」
「いやいや。あっ、会計してくるよ」

店を出ると暗闇が辺りに迫ってきていた。

「それじゃあ、御馳走様でした」
「ああ、それじゃ、また明日」




帰宅する頃には夜が身体を包み込んでいた。

「みのりんお帰り~」
「ただいま、って、何で居る?伊万里」

幼馴染の小金沢伊万里が何故か制服にエプロン姿で台所にいた。

「ひめが呼んだのよ、稔君が全然帰ってこないからお腹減って」

次いでやってきたのは、姉である藤宮ひめ。

「ひめ姉さん、自分で作りなさい」
「だって~」
「だってじゃない」
「むぅ…稔くんの意地悪!」

子供っぽく顔を膨らますひめ姉さん。
まぁ子供みたいなものか。

「はいはい、2人共、ご飯出来たよ」

伊万里が大皿を持ってくる。
机には美味そうな料理が並べられていた。
さっきのマズイラーメンと変わってここは天国だな!

「はむっ!んー、うん。まあまあじゃない、伊万里」
「まあまあだって!?ボクだってあれから随分腕を上げたんだよ!」
「伊万里はまだ気にしているのか…」
「ひめちゃんの姑攻撃は勘弁して欲しかったよ」
「ふふん、ひめが1番だもんねー」
「人に作らせておいて言う台詞じゃないな…」

しばらく伊万里とひめ姉さんの痴話喧嘩を楽しみつつ伊万里の手製料理を味わう。
ひめ姉さんも料理が上手いが伊万里も中々のレベルではなかろうか…!




「じゃあ、ひめちゃん、みのりん、おやすみ~」
「おう、よく尽くしてくれた。褒美を遣わすぞ」
「もっと精進することね」
「えっ、褒美!?ていうか何で上から目線!?」

などと言いつつ、伊万里は帰って行った。
夜道を女の子が1人で…という心配は無用だ。
徒歩10秒で帰宅、伊万里はお隣さんだ。

「フゥ…」

自室に戻り一息つく。

「…」

カーテンを開けて隣を見る。
伊万里は部屋にいるようだ。

窓を開けて、隣家の窓を叩く。
数秒経たず開かれた。

「みのりんどうしたの?」
「いやなぁ、今日はありがとうな」
「へ…?」
「姉さんの世話、それに晩飯も美味かったし…大変だったろ?」
「み、みのりん…そんなことないよ!ひめちゃんなら幼馴染だし!…それに
みのりんの為なら…」
「と、煽てれば明日からもよく働いてくれるだろうという計算だ!」
「えっ!?み、みのりん~」
「では、寿司よ、さらば!」

慌てて窓を閉める。
”伊万里寿司”。毎度思うが中々いいネーミングセンス…
って、何言ってんだ俺…

「みのりんおやすみ~」

そう言って窓を閉める音が聞こえた。
ありがとう、伊万里。



翌朝になり、朝食の準備に取り掛かる。
毎度の事、ダメ姉さんは夢の中だ。
もっとも彼女は三年生で進路も決定したから登校する必要もない。
自分の朝食を食べ、姉さん用に作りおきをして出掛ける。

さて、伊万里はというと…

「お母ぁさぁん!靴下どこ!?」
「知らないわよ!あんたがどっかにやったんでしょ!!」
「早くみのりんを迎えに…」

ガシャァン!

「キャァァァ!?」
「何やってんの!?あんた!!」

…聞かなかったことにしよう。さらば寿司。



学校が近付くにつれて制服の姿が目立ってくる。

「おはよー!稔!!」

後ろから身体が跳び上がりそうな声が響いた。
呼びかけてきたのは伊万里と同じく幼馴染の如月みずきだ。

「おはよ、みずき」
「あれ?伊万里は?」
「奴は遠い地へ旅立った…」
「?」
「みずきも気をつけることだ」
「何それ…あ!稔、ネクタイ歪んでる!!」

グイッっとネクタイが引っ張られる。

「みずきは相変わらず厳しいな、風紀委員にでもなれば?」
「稔がだらしないんだよ!」

昨日、委員長にも同じこと言われたな…

「稔はあたしがいないとダメね!」
「はいはい…」
「あっ!ちゃんとわかってるの!?」
「わかってるって…」

みずきはお節介だがいい奴だ。

「じゃ、あたしこっちだから」
「おう、また」

みずきは1年生の下駄箱に向かう。
別にみずきが年下というわけではない。
あんなことが無ければ、な…



階段を昇っていると段ボールを2箱抱えた女子生徒と遭遇した。
足元がおぼつかない様子で階段を降りている。

「早紀先輩?」

ダメ姉さん…もとい、ひめ姉さんの友達で蓬山早紀先輩だ。

「あっ、稔君」
「危ないですよ、持ちましょうか?」
「いいの?でも悪いわよ」
「持ちますよ、怪我されたら後味悪いですから」
「ありがと~、お願い」

1階の物置まで2人で運ぶ途中、兼ねてからの疑問を聞いてみた。

「何で早紀先輩は色々手伝わされているんですか?」
「うーん、何でか放っておけないのよね」
「お人好し過ぎますよ」
「うん、よく言われる」

そう言って笑顔を浮かべる。
朗らかな雰囲気だ。

「よいしょっと。ありがとう稔君」
「いえいえ、何のこれしき」
「今度何かお礼しないとね」
「えぇ?いいですよ、こんなことで」
「ダメ、私の気が済まないわ。じゃあ今度ね」

マイペースな人だ…




「おう、稔」
「うん、ドクオ、ジョルジュ」
「おはよう、稔」

教室にはいつものメンツ、ドクオとジョルジュだ。

「ん?この匂い…。稔…お前さてはおっぱい先輩と一緒だったな!?」
「ん?あぁ、早紀先輩ね。さっきちょっと…」
「くそぅ!!俺もおっぱい先輩に会いたかった!!」
「とりあえず、その呼び方は止めておけ。ジョルジュ」
「稔ばかり女が集まりやがるなぁ…爆発しないかなぁ」
「そんな考えだとモテないぞ、ドクオ」
「心配無用だ、既にモテていない!!」
「威張るな」

と、そこに…

「おはようございます」
「おはよう委員長」
「委員長、稔の奴、調子に乗っていると思わねぇか?」
「はぁ?調子が良いのはいいことでは?」
「いや、そうじゃなくて…まぁいいや…」

委員長には冗談は通じないぞ、ドクオ。

そうこうしているうちにチャイムが鳴る。
一日の始まりだ。

さて寝るかーーー