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委員長と白百合

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kawauson

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委員長と白百合


 さて、お楽しみの昼休みだ。
 この前購買で買ったソフトコーヒー、意外と美味しかったし、また買ってくるかな。
 財布を握って席を立つ。
 隣の席では委員長がお弁当を机の上に広げていた。
「あれ……? 委員長、今日は白水さんと一緒に食べないの?」
「ええ、今日はりぃちゃん、用事があるらしいので」
「ふーん……」
 あの白水って子は、委員長と昼食をとることにかなりの執念を燃やしているように見えたけど……。
 まあさすがに他に優先することはあるみたいだな。
「委員長、今日こそ何か飲み物おごるよ。買って来るから、何か飲みたい物ある?」
「いえ、そんな、何度もお礼をされるほどのことはしていませんから」
「んー……そっか」
 こうなると奥ゆかしい委員長のこと、飲みたいものを言うことはないだろう。
 一応あのソフトコーヒーを二本買って来てしまおう。
 受けて取ってもらえたらよし、受け取ってもらえなかったら二本自分で飲めばいいし。
「じゃあ俺、購買行って来るわ」
「ええ、お気をつけて」
 廊下に出ると、空気が何とも冷たく、教室とはえらい違いだった。
「考えてみれば教室には三十六度の熱源が四十個近く詰まってるんだもんな……」
 とにかく寒く、吐く息も白い。
 今日は久々に冷え込むと天気予報も言っていたが……。
 購買までは走っていくことにしよう。

 小走りに廊下を行き、渡り廊下に差し掛かったところで、曲がり角から見た人影が現れた。
「げ……」
 間違いない。
 白水凜々だ。
「止まってちょうだいね」
「止まる、止まるから」
 だからそんな怖い目で見ないでくれ。
「待っていた甲斐があったわね。今日はあなたに話しがあるのよ」
「それって……委員長がらみで?」
「用事って、それだったんだね……」
「当たり前でしょう。百合との昼食を差し置いて優先する用事なんて、百合のこと以外ないでしょう」
 何を決まりきったことを、という風に言ってくる。
 どうやらこの子の頭の中ではそれが当然のことらしい。
「それで、話ってなんだよ」
「……あなた、百合に、『嫌なときは断ってもいい』って言ったそうね」
「ああ……言ったけど」
「ふーん……」
「な、何だよ」
 白水は俺をじっと見つめてきた。
 また殴られるのかと、思わず身構えてしまう。
「あなた……百合が嫌なときも頼みごとを引き受けてるって知っているのね」
「え? まあ……」
「良くわかったわね」
「え、それは……いつも笑顔だから最初はわからなかったけど……」
 カップル喫茶の冗談のおかげでわかったのだが、今カップル喫茶の話をしたら、また殴られるに違いない。
 黙っておくのが賢明だろう。
「まあ、ちょっとした反応とかで、わかるようになったよ」

「なるほど。で、どうしてあなたは百合を気遣ったりするの? 下心?」
「は、はあ? 何で君は俺をそういう方向に捉えるんだよ?」
「いいから。私に嘘は無駄だから、正直に答えなさい」
 白水はまたじっと見据えてきた。
 まるで、俺の心を見通すような目だ。
「いや、だって……委員長は友達だし、気遣うのが普通だろ」
「友達? あなたが? 本気で言ってるの?」
 小馬鹿にしたように言ってくる白水に、さすがに腹が立った。
「何だよ……本気に決まってるだろ」
「百合がそう言ったの?」
「え……まあ……」
 そう言えば、友達と言ったのは俺からで、ひどく驚かれた記憶が……。
 思わず黙り込んでしまった。
「ま、いいわ。それで、百合はあなたがそれを言ってから、頼まれたことを断ってるの?」
「……クラスの一部では、お掃除マスターとも呼ばれてる」
「ふぅ……やっぱりね」
「俺もたまに手伝ってはいるんだけど……」
「あなた、藤宮君って言ったわね」
「ああ」
「不純異性交遊の汚名を晴らす機会を与えるわ。百合のことを見てあげてくれない?」
「いつその汚名はついたんだ……」
 俺の疑問は無視して、白水は続けた。

「私は違うクラスになってしまって、いつも百合の傍に居られないから。とても不本意だけど、あなたに任せるわ」
「……」
「お礼もしてもいいわ。さすがにそんなには出せないけど日給二千円で、月に六万。お願いできるかしら?」
「いや……いやいやいや! そんないらないから! というかお金はいらない!」
「え? どうして?」
「だから! 委員長は友達なんだから、気遣うのが普通だっての! お金をもらって気遣うとか意味わからん!」
 さすがに本気で腹が立ってきたぞ。
 この子、俺を馬鹿にしてるとしか思えん。
「ふーん……まあ、あなたが百合を友達だと思っているということはわかったわ」
「そりゃどうも」
「少しは安心して任せられそうね」
 白水は静かに笑う。
 嘲笑などではない。
 白水から俺に初めて向けられた笑顔だった。
「じゃあ任せたわよ、自称お友達さん」
「ああ……」
「話はこれで終わり。時間をとらせて悪かったわね」
「いや……なあ、どうしてお前、そんなに委員長のこと気にするんだ?」
「愚問ね。自称大親友だからに決まっているじゃない」
 言って、白水は背を向ける。
 と思ったら、またこちらを向いて、眼前に指を突きつけてきた。
「そうそう、言っておくけど、百合に手を出したらただじゃ済まさないからわよ?」
「は、はあ……」
 今度こそ、白水は行ってしまった。
 変な人だ。
 変な人だが……委員長のことが大好きなだけで、きっと悪い人ではないと思う。
 時計を見ると、意外と時間が過ぎていた。
 急いでコーヒーを買って、教室に戻った。



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