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昼休み、勇んで昼飯を食べようとすると職員室に呼ばれた。 「藤宮、お前冬休みの宿題やってないな?」 年配の英語教師は、机に頬杖を付いて見上げる。 「やりましたよ」 教師の態度を不快に感じたが、こちらの品格まで落とす気は無いため、毅然とした態度で返答する。 「ところが出てないんだよなあ。お前のだけ、な」 冬休み、最終日に徹夜で宿題をやった。 カーテンを開けたときの朝陽が目に沁みたのを今でも覚えている。 そんな苦労をよそに、今になって英語の宿題が届いてないということで職員室で説教されている。 「いいか藤宮ぁ、お前がやってなくても誰も困らないんだよ。ただな、真面目にやってきたヤツがバカみたいだろう? 遊ぶ時間を削ってやったやつもいる。その傍らでお前みたいなヤツがいるとだな――」 どこにでもいる頭の固い教師。もう完全に俺が宿題をやってきていないと決め付けて話をしている。 「おいなにか返事をしたらどうだ、藤宮」 「・・・・」 さっきから進展のないこの問答が続き、いくら主張しても取り合ってもらえないため、バカバカしくなって目も合わせず返事をするのをやめた。 そんな俺の態度を見て次第に教師が苛立ち始める。 「まったく、ダンマリか。いいか―――」 教師は悦に浸るように熱弁を振るいだす。 そこに生徒への理解や信頼は無い。 単に自分の理想を生徒に押し付けているだけだ。 (どうして歳を取った人って言うのは説教くさくなるんだか) 辟易して辺りを見回すと、一人の生徒と目が合った。 ウェーブのかかった長い髪。童顔で華奢だけど、どこか大人びた印象を持たせる女子生徒。そして巨パイ。 (助けて!) その女子生徒とすかさずアイコンタクトをとる。 すごく嫌そうに首を横に振られた。おっぱいも揺れた。 (マジでお願い!) 軽く手を合わせる。 返答は・・・ 「藤宮、どこを見てるんだッ!!話を聞いてるのか!!」 「っ・・・・サーセン」 フラストレーションが溜まっていたのだろう。キッカケを手に入れた教師はついに怒鳴った。 「別に宿題をやってないからどうしようってんじゃないんだぞ!?認めれば済む話なんだ」 (もう認めようかな・・・) 立ちっぱなしでそろそろ足も疲れてきて、ここまで意地を張る理由も分からなくなってきた。 ここで認めてしまえば楽になれると思うと心が揺れた。 と、半ば諦めていたとき、さっきのあの生徒がトコトコとやってきた。 ?「先生、ちょっといいですか?」 「ん?なんだ、蓬山」 『蓬山』と呼ばれた女子生徒は俺を一瞥して先生に向き直る。 教師は怪訝な態度を取りながらも一応は話を聞く。 「あたし急ぎで藤宮くんに用があるんです」 「今の状況を見て分からんのか?後にしろ!」 「何かあったんですか?」 「コイツは英語の宿題をやってないんだよ。意地張りやがって認めないんだ」 「だから・・・っ!」 「え、そうなんですか?そんなはずはないんですけど・・・」 オーバーに驚いたあと、腕を組んで思案を始めた。 「あたしずっと藤宮くんの宿題を見てあげたんです・・・ねえ藤宮くん?」 (うおおお、ナーイス先輩!!!) 心でガッツポーズをとる。 地獄に仏とはまさにこのことだ。 「そうなのか藤宮?」 「わたくし藤宮稔は蓬山早紀先輩のスパルタ指導に感涙でした」 胸を張って堂々と答える。 女子生徒にいらんことを言うな、という風な目で見られた。 「そ、そうなのか?しかし・・・うーむ・・・」 「とりあえず藤宮くんを借りていきますね。もし本当に宿題をやってきていないのであれば『また』あたしがやらせますから」 「う・・・・わ、分かった」 何か言いたそうな顔だが言葉を飲み込む、歳をとった教師の殊勝な態度が滑稽だった。 「うう・・・昼メシ食べる時間が・・・」 職員室を出て時計を見るともう10分しか残されていなかった。 しかし、下手をすれば次の授業までもつれ込む可能性をも秘めていた。 それを救ってくれたのが 「もー、あんまり無茶させないでよね、稔くん?下手したらあたし推薦合格取り消されるかもしれないじゃない?」 「ありがとうございます!早紀先輩!ほんとになんとお礼を言っていいやら・・・」 「あはは・・・そこまでのことじゃないんだけどね」 この人『蓬山早紀』先輩。一つ上の3年生。 さっきのやりとりからも分かる通り先生の信望が厚く、いいところの大学を推薦で決めたほどだ。 そんな先輩と何の縁からかこうしてちょくちょく世話をしてもらっている。 世話っていうより大体俺が面倒ごとを押し付けているだけだが。 「あの先生、頑張っている生徒には熱心なんだけど思い込みが激しいから・・・。よく怒られている生徒を見かけるけど、稔くんみたいに手違いで怒られている生徒もいるかもね」 よく職員室に出入りする生徒からすればあの場面は恒例行事なのだろう。 こころなしか、周りの教師の反応も冷ややかだった気がする。 「いつもいつも大人はああやって決め付けて・・・子供が言いなりになると思っているんだ・・・!」 「うんうん、稔くんはちゃんとやったもんね?」 「もちろんですよ!」 「だよね!」 先輩は人を釘付けにする豊満な胸をなでおろした。 「まあ終わらなかったんで提出はしてませんけど」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほえ?」 「まったくあの野郎・・・!『宿題やってないだろ?』って言われたから『やりましたよ』って答えたんですよ!でも認めてくれないんですよ!」 「・・・・」 「そしてらもうカチンときましたよ!徹夜で頑張ったのにあれは無いっすよねー先輩!」 「・・・・稔くん」 「なんすか先輩!」 「永遠にさよなら」 「ちょ・・・・え?え?」 残りわずかな昼休みの時間は先輩のご機嫌取りで終わった。
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