ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第04話01

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玲子の一日(ひる)


私、赤根沢玲子(あかねざわれいこ)がこの学園世界で暮らすようになって、1ヶ月になる。
正直未だに信じられない。こんな穏やかな暮らしが、また出来るようになるなんて。
今、私は輝明学園にいる。
何でも学園世界ではいわゆる“現代世界”系で、所属していた学園が転移してきていない学生は一時的に輝明学園に籍を置くのが普通らしい。
一応“元いた世界の学園”が転移してきたら交渉してOKならそちらに移ると言うルールらしいが、今のところそれが適用されたのは小等部に1人いただけ。
あまり期待するなとのことだ。
そんなわけで、私は今“転校生”として1年3組で勉強をしている…桜花さんと共に。

――― 7:00 桜花さんを起こす。いい加減夜型の生活は改善させないと。

「うん。ばっちり」
2人分のお弁当と焼きノリと塩鮭、浅漬けにお味噌汁の朝ごはんを完成させて私は、エプロンを外した。
伸びをひとつして、お料理が覚めないうちに桜花さんを起こしに行く。
本当は外の食堂に行けばタダで大抵のものが食べられるんだけど、戦場さながらに混むし、やっぱり朝はゆっくりしたい。
そんなわけで私は材料を貰って自炊することにしている。元々お母さんと2人暮らしだったから家事は普通にできるし。

シャッ!

朝日が入るよう、東に取り付けられた窓のカーテンを開けると“魔界”ではついぞ見れなかったお陽さまの光が電気をつけてない部屋を一気に明るくする。
今日もいい天気だ。学園世界TVでも今日は晴れだと言っていた。
ここは居住区にある輝明学園女子寮の5階。2人用のシェアルームのみで出来たこの階は、高いところにある分眺めも良い。
眼下には朝練に行くのか、もうちらほらと学生が歩いているのが見える。
「う~…眩しいのでしめてくださ~い」
お陽さまの光に当てられて、部屋に備え付けのベッドから桜花さんの眠たげな声が弱々しく聞こえてくる。
「駄目です。もう朝ごはん出来てるんですから、早く起きてください!」
ほっとくとず~っと寝てる桜花さんの布団をひっぺがし、寝ぼけ眼の桜花さんを揺り動かす。
「やめてくださ~い。起きます~、起きますから~」
寝ぼけながら言う桜花さんの体は、今日も温かかった。

私のガーディアンである桜花さんは今、私の護衛として私と2人で輝明学園女子寮で暮らし、私と同じ1年3組で勉強している…“人間の身体”で。
と言っても誰かから奪ったとかそう言う話では無い。
今の桜花さんの身体は“幽霊憑依用純有機性擬体”とか言う奴で、生体材料のみで構成され、酸素、水分、食物から得られる各種栄養素をエネルギーに動き、
自動的な体調の整理に睡眠を必要とし、ごく軽微な損傷ならわずか数日で自動的に修復…うんぬん。
まあようするに普通の人間とあんまり変わらない身体だという。
明確な意思を持った学生幽霊が普通の学生生活を送れるようにと、彩南高校と言う学園で作られた“バイオロイド”をベースに極上生徒会の開発部が作った、と聞いている。
桜花さん曰く、簡単に幽体離脱できるすぐれものだけど、素体のプラーナ用量限界の関係で入ったままだとイノセント(桜花さん用語で一般人の意味)並みの力しか
出ないのが困りもの、らしい。
私も桜花さんが戦うために“離脱”したときは、その場に倒れてピクリとも動かないため、すっごく“死体”っぽいのは問題だと思う。
1回放置したままの身体を病院に持ってかれて危うく司法解剖されそうになってからは桜花さんも反省して離脱したときは身体を
自分の月衣に突っ込むようになったから大分マシになったけど。
話がそれた。

「うぅ~…こっちに来てから玲子が凄くお姉さんっぽくなった気がします~」
桜花さんがブツブツ言いながら高等部の制服に着替える。
「私の方が年上ですよ~?30年ほど。もっとお姉さんとして尊敬してくださ~い」
「もう、またそんなこと言って…」
そんなことを言ってむくれる桜花さんを制服を整えながらたしなめる。お姉さんっぽく。
「桜花さん、見た目も中身も年下じゃないですか」
これも魔界にいた頃と変わったところ。
桜花さんが30年ほど前にお亡くなりになったのはご本人に聞いていたけど、お亡くなりになった年齢は聞いたことが無かった。
荻原校長のお話では、桜花さんがお亡くなりになったのは14歳…中学生の頃だったらしい。
そのこと自体は桜花さんがそんな頃からウィザードとして戦っていたと言う事でもあるのですごいと思うが、中学生以降の人生経験が無いことが桜花さんにずれを生んだ。
幽霊になると精神はあまり変化しなくなるため、桜花さんの心は今でも14歳のままだと言う。
知識や経験が豊富な分大人びて見えるけど、根本的なところでは私よりも年下の少女のままなのだ。
「…う~、なんだかちょっぴり馬鹿にされてる気がします~」
「気のせいですよ。ほら、早く着替えてください。ご飯、さめちゃいますから」
「うぅ~…玲子の私のあしらい方も慣れてきた気がします~」
短いけど、魂レベルの深い付き合いですから。

――― 7:50 出かける前の準備完了。お隣さんは、いつも通り。

ご飯を食べて歯を磨いて身だしなみを整え、準備は完了。
「桜花さんはどうですか?」
「はい~。ばっちりですよ~」
ようやく目が覚めたらしい桜花さんも笑顔で答える。うん。これなら大丈夫そうだ。
「じゃあ、行きましょうか?」
「そうですね~早い方が通学路も込み合いませんからね~」
2人して頷き合い、ドアを開けて外に出る。
それと同時にお隣の部屋のドアが開いて、お隣さんが出てきた。
「ん~…」
寝ぐせだらけの長い髪にスカートをはいて無い、上だけの制服。鞄も持ってないし、はいてるのはスリッパ…多分トイレ用。
「…ねがいさん、あれは完全に寝ぼけてますね~」
桜花さんが顎に手をやってうんうん頷いている。
いや、桜花さん。貴方もちゃんと起こさないとあんまり変わらない状態です。マジで。とはいえ。
「…大丈夫ですよ。どうせいつも通り…」
「ちょっと待てい!?」
ほら、やっぱり。慌てて飛びだしてきて、ねがいさんを止める、同じ顔をしたショートヘアーのもう1人のお隣さん。
「ん…どうしたの~?いのりぃ…」
「どうしたの~?いのりぃ…じゃあないでしょお姉ちゃん!」
お隣さん、要ねがいさんと要いのりさん。双子の姉妹で、2人とも1年生…私の同級生だ。
「んな格好でどこ行くつもりかっての!」
「んな格好?…きゃあ~!?」
自分の格好を確認して一気に目が覚めたんだろう。悲鳴を上げてその場にへたり込む。
「あ~もう…ファイアーワークス!」
パニック状態でおろおろしているねがいさんを、いのりさんの影から飛び出した鳥の頭を持つ大きな悪魔…もとい魔物が担ぎあげる。
「洗面所でお姉ちゃんの髪とかしてあげて。スカートはあたしがトイレに落ちてたの洗面所に持ってくから」
ブンと音がしそうな勢いで1つ頷き、ファイアーワークスがねがいさんを抱えて部屋の中へと運んで行く。
「まったく、睡眠時間が足りないとすぐ寝ぼけるんだから…だからあれほど夜更かしはするなっつってんのに…誰よ!?『がくおん』なんてもん作ったのは!?」
はぁ~と重い溜息をついたあと地団駄を踏む。そこで私たちに気づいて、先ほどまでの怒りが嘘のようににかっと笑って言う。
「あ、おはよ~!玲子ちゃんに桜花ちゃん!」
爽やかな笑顔だ。なんて言うか、太陽みたいな、明るい感じ。
私たちのお隣さんであるいのりさんとねがいさんは、2人揃ってウィザードらしい。クラスは魔物使いと、夢使い…だったかな?
魔物使いがどんなものかはなんとなく分かる。多分あのファイアーワークスって言うのが戦うんだろうなって。けど、夢使いって言うのはよく分からない。
何か夢の中に入れると言ってたような気がするけど…まあ、なにはともあれ。
「おはようございます。いのりさん」
「おはようございますいのりさん~今日もお元気ですね~」
桜花さんといっしょにいのりさんに挨拶を返す。
「あはは。ま、あたしは元気が売りだからね!」
桜花さんに豪快に笑いながら力こぶを作ってみせる。
「にしても…」
そのまま私たちをしげしげと見て、言う。
「玲子ちゃんと桜花ちゃんは2人ともしっかりしてるよね~」
多分身支度が整っているのを見て、言っているんだろう。本当は桜花さんはあんまり変わらないんだけどなあ。
「まったく、お姉ちゃんももうちょっと見習ってくれりゃいいのに」
「いえいえ~、その分はいのりさんがしっかりしてるわけですから~いいんじゃないでしょうか~」
桜花さん、それフォローになってません。
「はぁ~…あたしもいつまでも一緒じゃ無いんだから、早くしっかりして欲しいんだけどね。京介のためにも」
そんなことを言いながら、いのりさんは部屋に戻って行く。
「おっと忘れてた」
その途中で何かに気づいてひょいと顔を出す。
「えっと何か?」
そう、私が尋ねるといのりさんが満面の笑みで言う。
「行ってらっしゃい。今日も頑張ってきてね」
あ、そっか…
「はい…行ってきます」
久しくかわしていなかったやりとりに、私も思わず微笑みながら、一言、答えた。


――― 8:10 登校。今日も2番手。

まだほとんど人のいない通学路をゆっくりと歩いて、15分。輝明学園に到着する。
「やっぱり朝はまったりが基本ですね~」
朝練に行くには遅くて通学するには早いこの時間。学園への通学路が一番すいている時間だ(遅刻しないで行くのには)
元々人ゴミとかはあまり得意じゃないので、私は早めに出てこの時間。桜花さんもそれに文句ひとつ言わずに合わせてくれている。
朝独特の澄んだ空気を吸いながら、人気のない廊下を通って教室へと向かう。
ガラガラガラッ…
教室の扉を開けて中を見る。
「あ、おはようございます赤根沢さん、桜花さん」
中で黒板を丁寧に拭いていた氷室さんが私たちに気づいて手を止め、にっこりと笑顔で挨拶をする。
「ええ。おはようございます氷室さん」
「おはようございます~おキヌちゃん~」
私たちは2人揃って転校生仲間の氷室さんにごあいさつを返した。

氷室さんこと氷室キヌさんは私と同じ“転校生”の1人で1年生。私は照れくさくて呼べないけどみんなはおキヌちゃんって呼んでいる。
何でも氷室さんはよそ様の、学校だけど学校じゃない所に集まっていたときに転移してしまったとかで、
今は同じように転移してきた人たち(みんな高校生だ)と一緒に輝明学園に通っている。
元の世界では幽霊とか妖怪を退治する専門家を養成する学校に通っていて、時々オカルト関係の相談に乗ったりしているらしい。

「お二人とも、早いですね」
「ええ、朝の澄んだ空気が好きなんです。それに、早く出れば遅刻の心配も無いですから」
「あ、なるほど。それはありますね」
黒板を奇麗にするのを手伝いながら笑顔でのほほんと会話をする。
このほんわかした雰囲気のクラスメイトとは同じ転校生のよしみで親しくしてもらっている。
どちらかと言うと人付き合いの苦手な私がすぐにクラスに馴染めたのはこの人のお陰でもあるように思う。
だから私は彼女への感謝の意味も含め、早く来て氷室さんのお掃除を手伝うためと言うのが私が早く来る理由の1つだったりする。
ガラガラ
「あ、おはよう。3人とも早いね」
掃除を初めてしばらくするとちらほらとクラスメイトが登校してくる。そして。
「あ~もう!結局今日も遅刻寸前じゃん!」
「いのりぃ…もっと…ゆっくり…」
「やかましい!誰のせいだと思ってんの誰の!」
ドタドタとお隣さんが別のクラスへと走り去っていくのを見た直後。

キーンコーンカーンコーン…

授業の始まりを告げる鐘が鳴り響いた。


―――12:00 氷室さんたちと昼食。あだ名をつけられる。

「最近思うんです~。なんだか私、軽んじられてませんか~?」
桜花さんがそんなことを言い出したのは、氷室さんたちとお弁当を食べていたときだった。
「ん?そんなことないぞ?桜花ちゃんが凄いってのは知ってるし」
氷室さんの手作りのお弁当を口に入れつつ言うのは2年生の横島忠夫(よこしまただお)さん。
基本的に可愛い女の子とみれば告白する人(私も初めて会ったときに告白されて、氷室さんに怒られてた)だけど、
15歳未満は対象外とのことで、桜花さんもそう言う対象には見られない、とのことだ。
「ああ、その通りだ。俺の魔装術の攻撃を正面から喰らって平気な奴なんて、魔族ならともかく幽霊では桜花が初めてだったからな」
購買のパンを齧りつつ頷くのは伊達雪之丞(だてゆきのじょう)さん。魔装術って言う自己強化の術を使える、霊能者の肉体派。
「ですわね。このおバカさんの攻撃に耐える霊圧と受け流す技術…桜花さんは素晴らしい素養と技量の持ち主ですわ」
隣に座って、優雅に同じく購買のサンドイッチを食べている弓かおりさんも頷きながら言う。
「んだと!?誰が馬鹿だ誰が!?」「あら!そんなの一目瞭然ですわ!このバトルマニアの戦闘バカ!」
そんな口喧嘩を始めた2人を放っておいて、巨大なお握りをかじりながら、タイガー寅吉さんも言う。
「考えすぎじゃろ?桜花ちゃんがすごいちゅうんはここにおるみんなが知っとるわい!」
「だな。桜花、一体何でそんなこと思ったんだ?」
タイガーさんの食べているお握りを作ってきた、一文字魔理(いちもんじまり)さんが怪訝そうに聞き返す。
「ほら~、今のそれですよ~」
どうやら桜花さんは今のやりとりに不満があるらしい。でもなんで?
「え?よく分からないんですが、今、僕ら何か桜花さんに失礼を?」
この中で一番の美形(輝明学園でもトップクラスじゃないかな?)の吸血鬼と人間のハーフ、ピートさんが桜花さんに尋ねる。
「その、桜花さんって呼び方ですよ~」
呼び方?
「私としても~、他人行儀に倉沢さんって呼ばれるよりは親しみやすくていいんですけど~、玲子のことは全員『赤根沢さん』って苗字呼びなのに、
 私だけ名前呼びってえのは納得いきません~」
あ、そう言えば。ここにいる皆さんは全員、私のこと、苗字で呼ぶんだよね。同じクラスの他の子は結構名前で呼ぶ人多いのに。
「「「「「「「…あ~」」」」」」」
そのことに一斉にハモる転校生一同。何か思い当たることがあるらしい。
「いや~、そう言えばそうだな~」
「気が付きませんでした」
「やっぱり同じ名前のせいか無意識のうちに拒絶反応が?」
「私は意識してましたわ。本能で動くどこぞの誰かさんとは違って。それに微妙に違いますわ」
「んだと!?」「なによ!?」
「いや~ワシは別人でもあの人名前呼び捨てとかちゃんづけにするんはちいと怖いわ~」
「なんだよタイガー情けねえ…って言いたいところだがあたしも。あの人にはかなわねえしなあ…」
転校生の人たちは口々に納得したように言ってるけど、どういうこと?
「いや実はですね…」
そんな私に気づいたのか、ピートさんが私に事情を説明してくれる。

何でも氷室さんたちのいた世界の、全員共通の知人に“令子さん”と言う方がおられるらしい。
それでその人は色んな意味で“凄い”人で、ここにいる全員が尊敬してたり恐れてたり、こき使われてたりするらしい(最後のはよく分からないけど)
そんな事情もあって私の“レイコ”と言う名前を呼ぶ人がいなかったと言う事だ。

ちなみにその後は桜花さんの「だったら玲子にあだ名つけましょうあだ名!」と言う発言を受けて議論が始まり、
昼休み終了5分前に「アカネ(苗字を縮めた呼び方だ)」と言うあだ名で呼ぼうと言う事になった。


―――16:00 授業終了。桜花さんと一緒に茶室へ行く。

キーンコーンカーンコーン…
「それじゃ、今日はここまで。ちゃんと勉強もしろよ~」
授業が終わると同時に、教室にざわざわと喧騒が広がる。
「ねえ玲子、桜花。これからみんなでカラオケ行くんだけど、一緒に行かない?」
クラスの友達が私に親しげに話しかけてくる。
カラオケかぁ…行きたいけど…
「ごめん。今日はちょっと用事があるの。また、今度ね」
「私もです~。ごめんなさい~」
「え~残念」
私には週3回、必ず用事がある。平日のうちの2日と、土曜日。ちょっと大変だけど、サボると“命にかかわる”用事なので、サボる気にはなれない。
「う~ん、となると…あ、おキヌちゃんはどう?」
友達がちょうど通りかかったおキヌちゃんを捕まえて、カラオケに誘う。
「カラオケですか…ごめんなさい。今日はちょっと先約がありまして…」
「え~おキヌちゃんも?」
しかし、氷室さんも今日は用事があるらしい。申し訳なさそうに断っていた。
「はい。今日は横島さんの特訓をお手伝いするってお約束してるんです」
「え?横島ってあの2年の霊能者の?アイツって特訓なんてすんの?」
同感だ。“遊ぶ金欲しさに”なんてどこぞの不良学生みたいな理由で購買の依頼をこなしている時以外は遊びまわってる人だと思ってたんだけど。
自給255円(労働基準法とか無い世界なのかな?)生活から解放されて生活がグッと楽になったとか言ってたし。
「はい…何でも負けられないライバルが出来たとかで」
苦笑しながら、氷室さんが事情を説明する。

何でもついこの前転移してきた学校に、『女好きで女の子と見れば口説き落そうとする、霊能力者の名門生まれの高校生霊能者』とやらがいるらしい。
横島さんの話では『強くて、雑草のように丈夫で、いつの間にか女の子に好かれてるくせにスケベで台なしにするバカ』だとか。
それで、その人が生理的に気に喰わないので、男としてどっちが上か見せつけるとかどうとか…それって同族嫌悪?

「じゃあその…」
「はい。その川平さんという方と今週末勝負するそうです。それで、男のプライドに賭けても負けたくないので特訓すると言ってました。それで、今日はそのお手伝いを」
「へえ~。そっかあ…」
その友達がニヤリと笑って言う。
「だよねえ…おキヌちゃん、横島とラブラブだもんね~」
「ええっ!?な、なにを言ってるんですか!?」
氷室さんの顔が真っ赤になる。
「お姉さんは知ってるよ?おキヌちゃんが毎日横島にお弁当作って行ってるとか、横島と2人でいるときにふとした時に頬をピンクに染めてたりとか」
「そ、そんなこと無いです!それに横島さんには私なんかよりもっとお似合いの人が…」
「学園世界にいるの?」
「…いや、いませんけど…」
「じゃあ、チャンスじゃね?正直趣味悪い気もするけど、おキヌちゃんには幸せになって欲しいしね~。よ~し、今日はお姉さんもついてっちゃうぞ~。
 ごめん!今日はアタシカラオケはパスね!よ~し今日はおキヌちゃんの恋を、応援だ~」
「だ、駄目ですよ~!」
「だいじょ~ぶ。『後輩として、横島先輩(はぁと)のカッコいいところ、みたいんです!』って言えば2つ返事でOKしてくれるから!」
「ああ、それは反則です!100%成功するじゃないですか!?」
「ひょ~ほっほっほっほ…」
怪しげな笑いを上げて2年生の教室に向かう友達を慌てて追いかける氷室さん。
…あの子、確かイノセントだったよね?






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