ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第04話

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第四章 表裏の無環 _silly_go_round_


 「はわっ?」

 何時もの口癖が、間抜けな声で口から漏れた。
 壁際に書架、中央に天然材の接客用のテーブルにソファー。その奥にマガホニー製の執務机。
 部屋の上座に据え付けられた机に、座っている巫女服の少女は、電話相手の言葉を正確に聞き取れなかった。

『だぁかぁらぁ、今回の命令をこっちに回してきた連中を教えろっつってんだ。
 それからっ、魔王監視部隊ってのがあったんだろ!? ソイツらについてもだ!!』

 巫女服の少女。世界の守護者代理見習心得兼輝明学園理事長代理。そして、極上生徒会対侵魔対策班長の赤羽くれはに、粗雑で乱暴で無礼な口を叩く男。
 彼女の幼馴染であらゆる意味で伝説的なウィザード、柊蓮司。

「はわ? どーゆーこと柊? 何で柊が監視部隊のこと知ってるの?」
『いいから答えろよ』
「いいから答えろって……、まぁいいか。
 今回のって、あのアゼル・イヴリスの話でしょ? それなら、『ガイドライン』に沿って出された筈だけど……。
 魔王監視部隊ってのも、その一つだよ」
『『ガイドライン』? なんだそりゃ』
「うん。柊も、ベルとかアゼルがこの世界に来てるのは知ってたでしょ? 特に何もする様子が無かったから、そっちからは手を出してないと思うけど―――」
『ああ。藪を突いて怪獣を出したくはねぇしな。で?』
「極上生徒会とか、ジジイ四天王とかもそういう考えだったの。リスクは排除するより管理しろってことだね。
 で、何か在った時早急に対応する為の決まりごとが、『ガイドライン』で、魔王の動向を逐一報告する為に必要だったのが『監視部隊』ってことだね。

 そ、れ、と。『監視部隊』にはチームが二つあるの。
 ベルとアゼルにプレッシャーをかける為に、表立って監視していた『囮チーム』と、気付かれないように監視していた『本命チーム』。
 で、この囮チームは学園都市の第六学区が消滅した時に、一緒に消息不明。たぶん、荒廃の力をもろに受けちゃったんだと思う。
 だから、今アゼルたちを追っかけてるっていうなら、それは本命チームのほうだね」

 机の奥から、資料を引っ張り出して書いてある情報を柊に伝える。

「で、この本命チームは、魔王たちに知られちゃいけないから、徹底した秘密主義でね。私だってリーダーの簡単な経歴以外知らないのよ。
 輝明学園の校長にでも聞けば判るかもしれないんだけど、あの爺さん、今連絡取れないしね」

 そして、くれははその言葉を口にした。

「今回の命令は、監視部隊から上がってきた情報を元に、極上生徒会が決定したことだよ」

 電話の向こうで、幾らかの沈黙が落ちた。

『じゃあ何か? 人質の命を不問にするとか、最終的にそんな判断下したのは極生なのか?』
「……そうだね。柊は嫌いだろうし、私も納得なんかしてないけど。
 でも、この学園世界を管理する極上生徒会としては、魔王級のエミュレイターなんていう世界ごと滅ぶ危険性のある場合に、それでも人質最優先とはいえないでしょう?」

 ソレこそ、ディングレイやシャイマールの時みたいにさ。
 くれはの唇は、意識せずに歪んだ。
 それは、かつて自分や友達を追い詰めた決断と同じものを降すのに、自分が関わったという、自嘲的に苦い笑みだった。


『……。すまん』
「柊が謝る事じゃないよ。
 それに、極生のみんなもこんな決断を下したくなんてなかったんだから。だから、皆、柊たちに期待してる。
 『みんな』を助けて―――私だって、協力は惜しまないからさ」

 そう言う笑顔は輝いていて、もしも、柊とくれはが電話越しにではなく、対面して話していたのなら。そのときのくれはの貌こそ、最高に最強だと思ったことだろう。
 きっと口にすることは無いだろうけれど。
 柊は強風に髪を弄られながら、大きく一つ頷くと、

『任せとけ、そのための『執行委員(おれたち)』だ。
 早速頼むな。ざっざざっンっざざあにざざああえてくれ』
「はわ? 柊? ゴメン良く聞こえない、アンタ一体何処に居るのよ?」
『今、学園都市の第一〇学区に向けて箒で飛んでる所だ。『魔王の人質』から電話があったんだよ』

 再び、幼馴染の言葉を世界の守護者見代理習い心得は、理解し損ねた。

「はわぁあ!? ソレどーゆーこと?」
『だから、そのまんまだ。
 本人は人質になってるんじゃなくて、アゼルの能力を抑えるために協力してるって言ってた。
 名前は『上条当麻』。なんでも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』っつうありとあらゆる異能を否定する右手を持ってるらしい』
「はわあっ!! ちょ、ソレ初耳。
 じゃあ人質ごと殺せっての駄目じゃん!!」

 何かの間違いで、上条当麻だけが死亡した場合、幻想殺しが荒廃の力を抑え続けるとは思えない。
 その結果は……、火を見るよりも明らかだ。

『ああ、だからとっととその部分を撤回してくれ。現在進行形で監視部隊に命狙われてるらしくてな。これから保護しに行くところだ』
「は、はわわわ!
 わ、わかった、極生に議題として出してみる! ちょっと時間掛かるかもしれないけど!
 そうだ、なんか証拠無い!? だったら私の権限で仮命令出せるかもしれないから!」
『一応、電話のログなら部室に残ってる筈だ。初春にそっちに回して貰う、任せたぞ』
「オッケー、任された。急いで保護してね柊。迷ったりしないでね。
 その、カミジョウ、トウマ君。だっけ? 極生としても色々聞きたいから!」
『任せとけ。地元民(みちあんない)が一人いるし、今、第一〇学区に入ったところだ』

 流星のように、青い光の尾を引き、柊が跨るウィッチブレードは風を切り裂いて空を翔る。

「あ、そうだ柊。他の執行委員のみんなは何してるの?」
『ああ、アイツラなら―――』


 「はいはいー、皆さん急いでくださーい。でも決して走らないようにー走ると危ないですからねぇー」

 声を発しているのは、ピンクの柄と多面体の水晶の様な構造物の先に、五芒星の頂点を金と白のリングで囲み、一対の鳥の翼をあしらった杖。
 デザインといい色といい、ある意味完璧なそれは、科学(じょーしき)的に言って喋るようなものではないが、科学万歳なこの街の住人たちはとり立てて騒ぐ事もない。

「まだ大丈夫だよ。余裕あるから慌てないでね」

 何故ならその杖を持った女の子は、ピンクと白のある意味完璧なデザインの衣服をまとっているのだから。
 こと、科学バンザイな学園都市の住人たちも、異世界の事情に関してはそのまま受け入れる事をモットーとしているのだ。

「イリヤさん、そろそろ限界人数ですよー。転送の準備をしてくださいねー」

 ステッキが喋り、少女が杖を振るう。足元に広がる魔法陣が、ここに集まった人間みんなを別の場所へと誘った。

 執行委員のメンバーの一人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
 愉快型魔術礼装『カレイドステッキ』によって、魔法少女カレイドルビー・プリズマイリヤに転身する、ニッチな小学生である。

 上条からの電話の後、行動指針を定めた執行委員は即座に行動に移った。
 イリヤと後数名が担当するのは、学園都市の住人たちの避難誘導である。

 第六学区が消滅した学園都市は、戦争状態に入ったことを示す、戒厳令(コード・ブラック)が発令されていた。
 本来ならば、各学区に設置されている避難用シェルターに、住民たちは避難するのだが、荒廃の魔王の能力を前にすれば、対核シェルターであっても紙屑同然である。
 ならば。と、極上生徒会は学園都市の住民全員を避難させることを決定した。受け入れ先は、麻帆良などの広大な敷地を持つ他所の学園。
 そして、すべての住人を避難させ終えた後、学園都市全域に多重複合結界を敷き、アゼル・イヴリスを閉じ込める。

 それで何処まで『出るかもしれない』被害を抑えられるか判らないが、少なくとも何もしないよりはマシである。

 転送魔法を使うこと十数回。かなりの人数を避難させ終えて、イリヤは息つく間も惜しんで0-phoneを手に取った。

「もしもし、初春お姉ちゃん? 第七学区は大体終わったよ」
『お疲れ様ですイリヤさん。此方でも確認しました』

 この街の風紀委員(ジャッジメント)は、部室で情報関係のバックアップを担当している。

『他の学区の皆さんも、大体誘導を終えています。具体的な人数確認はコッチでやりますから、逃げ忘れている人が居ないかどうか、確認をお願いしますね』

 分かったと頷いて、イリヤはその身を宙に浮かべる。魔法少女=空を飛ぶものという頼もしい思い込みによって、飛行は十八番なイリヤである。

 風を切って空を昇る。
 イリヤは上空に待機して、杖を掲げた。
 学園都市の第七学区は、第二三学区に続いて広大な区域である。
 様々な中学校、高等学校がひしめき、其処に通う学生たちの為の学生寮が乱立する入り組んだ街を、一人で見て回るのは効率が宜しくない。
 故に、杖から供給される強力な魔力にあかせて、魔法での広域探査を行おうというのだ。


「行きますよー」

 杖の発した能天気な声に伴って、巨大な魔法陣が第七学区にゆっくりと下りてゆく。

「むーむーむー」

 黙考するような杖。

「どう? まだ誰かいる?」
「ピコン! 第七学区の南東のほうに反応ありです!」
「わかった。南東だね」

 頷くと、イリヤは空を行く。
 残念な事に、この魔法は走査範囲を広げれば広げるほどに精度が落ちて行くという難点が在り、これだけの範囲だと、大まかな方角が分かるだけなのだ。
 だから、正確な場所を特定するには、探索範囲を狭めながら幾度か繰り返して、力技で何とかする他無い。
 幾度目かの探査の後、彼女はとある学生寮に辿り着いた。

 七階の部屋の、インターホンを押す。
 反応が無い。

「―――誰も出ないね」
「もしかしたら倒れてるのかもしれませんねぇー」
「って、大事じゃんソレ! 何暢気なこと言ってるの!!」

 反射的にドアノブをまわすと、果たして、ドアはすんなりと開いた。

「……、……」

 二時間サスペンス(さつじんげんば)のような都合のよさに、少々顔が引き攣る。

「おじゃましまーす」

 おっかなびっくり部屋の中をイリヤが覗けば

「イリヤさん、貴女がそんなにビクビクする必要ないんですから、ほらっ!!」
「わ、ちょっ!!」

 無責任な事をいってステッキが突撃し、引き摺られるようにイリヤもあがりこむ事になった。

「どなたかいらっしゃいませんかー!! 執行委員のものです!!」
「だから、ちょっと待ってば。 っ!? 黙って――」

 大声を張り上げるステッキを他人ん家の壁にたたきつけて黙らせてから、イリヤは耳を澄ます。
 先ほど、かすかに人の声がしたような気がしたのだ。

「………た」

「!」
「!」

 弾けるように室内に突入する。
 典型的なワンルームマンション。キッチンを廻って生活スペースを覗き込めば、

「………った―――」

 女の子が一人倒れていた。


「だ、大丈夫!?」

 年齢は、イリヤより幾らか上だろうか。全体的に白い印象を受ける女の子だ。
 銀色の髪に白い肌。典型的な白色人種の特徴に、真白な衣服。それは、十字教の修道女が着るカソックだ。
 ただ、布地の白を縁取る金色と織り込まれた繊細な刺繍が、高級なティーカップのようにも見える。

「ォ、―――――――」

 その、純白シスターの唇が動く。
 何を言っているのか聞き取ろうとして、イリヤは耳を近づける。
 神経を集中した聴覚は、かろうじてシスターの言葉を聞き取った。

「おなかへった」

 それは、酷い衝撃だった。
「…………」
 なんと言うか、いろんな何かがぶち壊しで在る。
「………」
 いつも五月蝿いカレイドステッキも、海のような沈黙を保っていた。

「おなかへった」
「………」
「………」
「おなかへった」
「………」
「………」
「おなかへった。って、いってるんだよー」
「………あ」
「………ハラペコロリっこキタァ―――――――――――――――――――――!!!!!!」

 突如ステッキが絶叫する。
 どうやら、なんだか変な方向に衝撃を受けて、変な方向に弾け飛んだらしい。

「なんですか、これはなんなんですか一体!! 神に仕え、清貧たるシスターが七大悪の暴食に犯されている!!
 何という、背徳的なシチュエーション!! 神は私に死ねというんですか――ぐぼげばぁ!!」

 なにやら興奮している魔法の杖(馬鹿ステッキ)を、床で殴って黙らせて、イリヤは純白シスターに肩を貸した。

「取り敢えず。ここは危ないから避難するよ」
「ヒナン? でも、とうまがまだ帰ってきてないから。帰ってきてわたしがいないと心配するかも」

 なんだか、最近聞いたことがあるような名前に一瞬イリヤは首を傾げたが、

「そのとうまって人も、貴女に何かあったら悲しむんじゃないかな?」

 だから、避難しよう? と優しく言う。
 純白シスターは、考えるように少し首を傾げた後、

「避難所では炊き出しもありますよー」
「行くっ!!!!!!!!」

 ステッキの言葉に、一も二も無く飛びついた。

「………。私、帰ってもいい?」

 そこはかとない疲労を感じて、イリヤはポツリと呟いた。


 キーボードを叩く指は淀む事無く、初春飾利は自らの仕事を遂行する。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、第七学区にて逃げ送れた少女を保護。
―――相良宗助、第一五学区の生徒を『説得』。のちに、保護。
―――美遊・エーデルフェルト、第一三学区の児童を保護。
―――警備員(アンチスキル)黄泉川愛穂より迷子捜索の依頼。
―――植木耕介、第二二学区の見回りを完了。逃げ遅れは発見出来ず。
―――ベホイミ、第一八学区の学生を『説得』。後に保護。
―――迷子の追加情報。名前は『打ち止め(ラストオーダー)』。外見年齢十歳程度。
―――柊蓮司、第一〇学区に侵入。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約五六〇秒。
―――御坂美琴、同上。

 学園都市は彼女の住む街だ。その危機だというのだから、心情的には今すぐ飛び出したい。
 しかし初春の能力は低能力(レベル1)か、異能力(レベル2)程度。お世辞にも、この状況で役立つと言えるものではない。

 だからこそ、彼女は彼女に出来る事に全力を注ぐ。

 学園都市で風紀委員(ジャッジメント)をやっている頃からの得意分野、情報管理に寄る後方支援。
 逆流し、氾濫する黄河の水のような情報の渦を、一瞬で整理し理解。最も適した人物に指令を送る。
 激流を渡るように、すべての情報の流れを支配し、必要な情報を必要な人間に提供する。ソレが、彼女なりの戦い方だった。

「保護した一般人を所定の場所へ、イリヤさんと美遊さんの転送で避難区域に送ってください。その後、迷子の捜索をお願いします。
 名前は『打ち止め(ラストオーダー)』、外見年齢は十歳前後。茶色い髪に褐色の瞳。青色系ワンピースの上から、男物のワイシャツを羽織っているそうです。
 外見データは、夫々の端末に送っていますから、捜索の手がかりにして下さい」

 即座に、了解の返事が返ってくる。ここから先は、現場に出ている彼女たちに任せれば問題ないだろう。漸く一段落といったところだが、一息ついている暇は無い。
 避難場所に送った後からの誘導や、対応に当たる人たちへの指示など、やることはごまんとある。

 初春は、ディスプレイを睨みつけたまま、振り向きもせずに背後の人物に声をかける。

「ノーチェさん。そちらはまだ掛かりますか?」

 手伝って欲しいんですけど、と暗に匂わせた科白を吐けば、

「待ってくださいであります。流石にちゃちゃちゃっとは行かないでありますよ―――」

 自分の頭より大きな水晶球を睨みつけて、時に叩いたり撫でたりしながら、標示される情報を解析している、ゴスロリ吸血鬼。
 初春には上手く理解できないが、あれで『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』とまでは行かないものの、学園都市製スーパーコンピューター並の演算が可能だと言うのだ。
 その情報処理能力で、手伝いもせずにノーチェが何をしているかと言えば、

「―――くは、流石は東方王国の王女。一筋縄ではいかないでありますな」

 魔王、パール・クールの居所を探っていた。

 上条当麻から寄せられた情報。『東方王国の王女』パール・クールの存在。
 調査の結果、彼女が学園世界に入り込んでいる事を確認する事ができた。
 上条がアゼルから聞いた『東方王国旗』という魔導具も、それを運搬しているらしきデーモン映像から、かなり信憑性の高い情報だと判断できる。
 魔王が使う魔導具は、押しなべて洒落にならない能力を誇っている事を鑑みても、恐らく使われた瞬間に、学園世界が彼の魔王の手に落ちると考えた方がいいだろう。


 つまり、状況は非常に切迫している。
 迅速に対応と対処が求められるのだが、しかし、パール・クールの本拠地が何処なのか判っていなかった。

 否、正確に言えば、魔王が何処にいるかは判っている。
 極上生徒会の管理領域の外。揺らぎ続けるダンジョンの奥。学園世界の未踏地域、いわゆる不明領域の一画。
 パール・クールは、其処に月匣を張って潜んでいる。勿論そこまでの情報は、極上生徒会にも報告していた。

「――――しかし、場所が分かっても、行き方が解らないのでは意味が無いのでありますよ」

 ダンジョンは、常に揺らぎ続ける。見るものによって姿を変え、『変わったこと』に対する認識の変化によって、更に変化を繰り返す認識の迷宮。
 つまり。そこに誰かが居るだけで、何もかもが変わってしまうのだから、一度通った道がもう一度同じ場所に続いている保証は無い。
 目的地に辿りつこうと思えば、その変化を利用し、道を切り開く必要がある。
 既に誰かが到達した場所ならば、その結果を逆算し、変数nに代入すべき数値を算出することは可能である。
 しかし、それが未踏破の場所ならば、そもそもの前提条件である辿り着いた手段が無い為、試算(シミュレーション)すら不可能である。
 けれども、パールの月匣がある場所は、未踏破というわけではない。他ならぬパール・クール自身がその場所に辿り着いているのだ。
 ならば、同じ手段を使えば、其処にたどり着けるのは道理である。ダンジョン内を移動したのならば、その痕跡は必ず『変化』という形で残るのだから。
 その変化を逆算し、ルートを構築する。ノーチェからすれば、すぐに結果を導けるような演算である筈だった。しかし、

「ノーチェさん、まだですか!?」
「せっつかないで欲しいでありますよ!! 多すぎて本命が絞れないんでありますから!!」

 パール・クールが移動したと思しき痕跡は、全部で1000を越えていた。そのうちの一つ以外は、間違いなくダミーであろう。
 しかし、それで本物の痕跡がどれだか解る訳ではない。森に隠された木の葉のように、紛れ込んでしまって判別がつかない。

 結局、1000の痕跡を一つずつ逆算していく以外に道は無かった。

「えっと、コッチはコッチに代入して―――、この解はここに代入されて……これは、ちがうでありますな。
 次は、ベースがこうで……其処に――――」

 可能性の薄いものは計算途中で破棄し、次の可能性に取り掛かることで、少しでも演算完了までの時間短縮を企む。
 水晶球をにらみつけて、膨大な計算式を処理するノーチェ。しかし、普段の何処か抜けた言動のせいか、傍から見れば成果に繋がるのか怪しく見える。
 それは、初春飾利から見てもそうらしい。

 内心イライラしながらも、初春の指はキーボードを滑り続け、集まってくる情報を処理し続けていた。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、逃げ送れた面々を転送。
―――相良宗助、迷子の捜索。発見ならず。
―――美遊・エーデルフェルト、逃げ遅れた面々を転送。
―――植木耕介、第五学区の学生を保護。
―――ベホイミ、第八学区の住人を保護。
―――柊蓮司、第一〇学区を飛行中。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約二七〇秒。
―――御坂美琴、同上。


 避難誘導は大方完了。現在、学園都市内での最大の懸念事項は、迷子の存在だろう。

(なんか、どっかで見たことのあるような子ですけど……)

 迷子の顔が意識の片隅に引っかかっているが、明確な記憶として像を結ぶわけでは無い。ただ、咽の奥に魚の小骨が引っかかったような、そんな不快感だけが存在する。
 うーん。と、頭を悩ませるヒマも無い。指はキーボードを打ち続け、両目はディスプレイを追い続ける。

―――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、逃げ送れた面々を転送。
―――相良宗助、迷子の捜索。発見するも逃走される。
―――美遊・エーデルフェルト、逃げ送れた面々を転送。
―――赤羽くれはより通達。魔王アゼル・イヴリスは人質ごと拘束すること。特に人質の右手が離れることが無いよう留意せよ。
―――植木耕介、第九学区の学生を保護。
―――ベホイミ、第二二学区の学生を保護。
―――柊蓮司、第一〇学区を飛行中。『水穂機構・病理解析研究所』跡まで、約二〇秒。
―――御坂美琴、同上。
―――警備員(アンチスキル)より報告、学園都市内にデーモン出現。

 即座に、初春は全員に情報を飛ばした。

「緊急連絡。デーモンの出現を確認。
 皆さん、避難誘導と迷子の捜索を続けながら、デーモンの殲滅をお願いします!」

 了解の返事は間髪入れずに返ってくる。

「―――どうして。そんな反応、何処にも無かったのに」

 デーモンの反応は、突如として現れた。
 移動の痕跡も何も無く、ただ突然に。今までも、ダンジョンから迷い出たエネミーが市街地や居住区に出現することはあったが、そういった経験から『防犯カメラ』は設置されているのだ。
 それらに一切捉えられる事無く、学園都市(市街地)にエネミーが出現するなど、ありえない事だ。
 そして、避難誘導は大方終わっていると言っても全てではない。今もまだ、避難のために外に出ている人は沢山居るのだ。
 歯噛みする初春の目に、次々と執行委員が戦闘を開始する様子が、情報として飛び込んできた。




 『―――意せよ。繰り返す、赤羽くれはより通達。人質ごとアゼル・イヴリスは拘束すること。くれぐれも人質の右手の効力を奪わぬよう留意せよ。繰り返―――』

 ブツリ。
 と、彼は無線機のスイッチを切った。飽き足らず、壁に向って投げつける。
 壁を凹ませて、跳ね返った機械は床の上でゴミに変わった。

「―――拘束……だと?」

 食いしばった歯の奥から、唸るような声が漏れた。
 『荒廃の魔王』アゼル・イヴリス。
 そこに居るだけで、『死』を撒き散らす怪物。同じ『害虫(エミュレイター)』共の間でも、忌み嫌われるバケモノ。
 そこに居ることに、万害こそあれ一厘ほどの益も無い、価値無き存在。

 それを、『討伐(ころす)』のではなく『拘束(つかまえる)』。

「………巫山戯るな」

 赤羽守護者代行の思考が、彼には理解できなかった。
 何故。何故、何故何故―――。
 代行は、あの木星域での戦闘を忘れたのだろうか、彼の魔王の力がウィザード側(みかた)に与えた損害を、知らないとでも言うのだろうか。

「――――俺は、忘れない」

 ドロリ。と、口の中に違和感が生まれた。
 食いしばりすぎた歯が、何処かの肉を破いたのだろう。

 赤い唾を吐き捨てて、彼はその部屋を出た。外には、部下たちが控えている。

「隊長? 如何なされましたか?」

 己の身を案じてくれる部下に、なんでも無い。と、返答する。

「魔王の居場所はわかったか?」

 勿論です。と、彼の部下はその情報を告げた。

「第一〇学区の廃墟だな。正確な場所は? お前たちはいつでも出られるか?」
「判明しております。そして全員の準備も済んでおります」
「よし、ならば行くぞ、今度こそ討ち滅ぼすのだ!!」

 彼は窓の外を睨みつける。その先に、憎き魔王が居る筈だった。


 前髪が綿毛のようにふわふわ浮いていた。
 電撃(ビリビリ)の静電気(バチバチ)が起きているわけでも無いのに、髪がひとりでに動いているのは、正面から風が吹き付けているからだ。
 もっとも、風に関しては、これでも随分とマシな方のはずだ。目の前のデカイ背中が風除けの役割を果たしているのだから。
 御坂美琴は、柊蓮司の箒の後ろに乗って、学園都市の空を翔けていた。

「美琴! コッチでいいのか!!」
「ちょっとずれてる! 一時方向に軌道修正!!」

 美琴がついてきたのは、偏に道案内のためだ。
 上条当麻が電話をかけてきた場所は、美琴にとっても因縁の深い場所だった。
 『水穂機構・病理解析研究所』跡。
 かつて、『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』を引き継いだため、美琴自身が潰した研究所だ。
 アレから幾らか経っているが、その場所の記憶が薄れるほど時間が経っている訳でも無い。

(待ってなさいよ。すぐに行ってとっちめてやるから!)

 柊の箒は、空を切り裂くように飛翔する。
 魔を斬り捨て、神を降し、形が変わっても彼と共にある相棒。青い魔力光を引く姿は、さながら流星のようだ。
 その先端は、魔王と共に命の危機に曝されている少年の居る方向に向いている。
 全く理不尽に、命を狙われる少年。そんなコトは、いままでに何度もあって、そしてその度に柊蓮司は手を伸ばしてきた。
 今回とて、例外ではない。
 スピードを上げる。月衣を持たない同乗者に配慮して最高速ではないが、それでもあと三十秒もしない内に、辿り着ける筈だ。

 その筈だった。

 突如として、大きな爆発が起る。
 熱風と衝撃に、箒がぐらりと揺れた。

「!?」

 爆風の波をやり過ごして、柊は目を凝らした。
 嫌な汗が噴出す。
 彼の距離感が正確ならば、爆心地は恐らく―――。

「―――。急ぐぞ、美琴」

 箒(ウィッチブレード)が急加速する。
 今までは、月衣のない美琴に配慮していた。しかし、その枷を外して柊は彗星となる。

「…………」

 辿り着いたその場所は、既に瓦礫の山だった。
 見れば判る。何者かが、ここに居た誰かを殺す目的で、攻撃を仕掛けたのだ。
 あちらこちらに造られたクレーター。中心部は未だに赤熱し、その周りには、熔けたコンクリートが引き攣り爛れた様な跡がある。
 かなりの大火力がこの場に叩き込まれた証拠であった。

 美琴は、この惨状に声も出ない。
 執念すら感じる容赦ない攻撃の跡に、最悪の結果をどうしても考えてしまう。

 即ち、上条当麻の―――。

 死の淵のような沈黙を引き裂いたのは、0-Phoneの着信だった。


『柊!? 聞こえる!? ねぇ!!』
「くれはか!? そっちはどうなった!?」
『取り敢えず、アゼル・イヴリスは人質ごと拘束すること。右手を離させないように。って仮命令出しといた。
 各方面に通達されてる筈なんだけど、監視部隊からのリアクションが無いのよ。
 それで、柊! 二人と合流できた!?』
「いや―――」
『いや。って、如何言うこと? まさか―――』
 言葉を濁す柊に、くれはの声は一瞬つまった。
「ああ、二人が隠れてたところは、完全に瓦礫の山だ。
 誰かに襲われたと見て間違いない。それも一人や二人じゃねぇな」
『はわ………。監視部隊のしわざ、かな?』
「今ん所それ以外考えられねぇな。
 監視部隊って、そんなスタンドプレーをするようなヤツらなのか?」

 だとすれば、人選に問題があったとしか思えないが。
 柊の疑念は、再変換された幼馴染の声に打ち消される。

『そんなこと無いよ。冷静沈着に監視出来るようにって、今まで魔王と関わった事のないメンバーのはずだもん。
 個人的な恨みとかは持って無い筈だよ』

 だったら、この状況はなんなんだと、問いたい。が、今はそれよりも重要なことがある。

「上条当麻が、無事だといいんだけどな」
『そうだね。アゼルの力は観測されてないから、無事である可能性はまだ在るんだけど……』

 もう少し、安心できる材料が欲しい。と、二人は言葉を失った。その時、

「柊!」

 柊の背後から声が飛ぶ。
 電話の相手に断って、柊は声の発生者を振り向いた。

「これ見て!!」

 美琴が突き出したのは、美琴自身の携帯電話。表示されているのは、今時珍しくも無いGPS画面だ。
 美琴のほうからサーチをかけたらしく、光点で現在地が標示されているのはここではない。
 現在進行形で動いている点は、まるで何者かの追跡を避けるように、裏道ばかりを選んで進んでいた。
 まさか。と、柊が視線で問えば、美琴は輝かんばかりの笑顔で、

「アイツから、GPSコードが送られてきたのよ!! まだ生きてる!! 助けられる!!」
「ナイスタイミング!! 聞こえたかくれは!?」
『聞こえたよ! とにかく柊と、えっと、だれさん?』
「御坂美琴、今追っかけてる上条当麻の彼女だ」
『へぇ――』
「違うわよ!! 何でアタシとあんなのが恋人同士なのよ!!」

 柊の説明に、美琴は真赤になって叫んだ。紅潮の理由は、本人曰く怒りだが、

「違うのか?」
「いいから違うの!! 私はあんなヤツ好きでもなんでも無い! それで納得しなさい!」

 一生懸命に好意を否定する。その表情、その仕草。全く持って、説得力が無い。

『あー、うん。どんな関係か大体わかった。なんだか、美琴ちゃんとは仲良くなれそうな気がする。いろんな意味で』


 テレビ電話ではないので顔は見えていないが、その声、その言葉だけで十分である。むしろ魂の共感か。
 彼女(みこと)も苦労しているのだろう、自分(くれは)と同じように。

『と、そんなコト言ってる場合じゃなかった。とにかく、急いで追っかけて保護してあげて!
 それと、さっき連絡が入ったけど、今、学園都市中にデーモンの群が発生してるの! ……って柊、聞いてる!?』
「―――ああ、聞いてる」
『……柊? どうしたの』
「コッチもコッチでナイスなタイミングだ。安心しろ、すぐに片付ける」

 そう言って、柊は0-Phoneをポケットに突っ込んだ。
 その間に、美琴は辺りに散らばる瓦礫を拾い上げていた。団子のように、極太ワイヤーにコンクリートを突き刺した、研究所の壁(鉄筋コンクリート)の破片。

「出て来なさい!」

 二人を囲んで、殺気の輪が現れた。
 十重、二十重に取り囲む影。影。影。
 それは、大昔の人間が、空想して描いたと謂われる姿そのままで。
 山羊の頭をつけた巨人。即ち、悪魔(デーモン)。

 全周三六〇度から、叩き付けられる殺気。
 しかし二人は、柊蓮司と御坂美琴は、顔色一つ変えずに、悪魔の群を睨み返す。

「そこを退きなさい」

 口火を切ったのは、美琴だった。
 悪魔たちは物言わず、唯二人に殺気を叩き付ける。

「私は、これから行かなくちゃならないところが在るの。
 あのバカを、一人で何でも抱え込むあの大バカを、とっちめなくちゃならないんだから」

 無造作に、手にした瓦礫を放り投げる。
 一、二キロはありそうな鉄とコンクリートの塊は、

「どうせ、今回だって、パールとか言う魔王の居場所を突き止めたら、自分ひとりで突っ込む気に決まってんのよ―――」

 回転し、力を失い、放物線を描いて美琴の手元に、

「だからあんた達と遊んでる暇なんて無いし、足止めなんてされてやるつもりも無い―――」

 差し出した右手に、触れた瞬間、

「ええ。本当なら、こうやって喋ってる時間すら惜しいのよ。
 だから、退きなさい。さもなければ―――」

 音は無く。唯、煌橙色の奔流に、世界が激震する。

「―――力ずくで、退かせてあげるわ」

 まるで落雷のように。爆風と爆音は、遅れて発生した。

 超電磁砲(レールガン)。
 リニアモータカーのように、電磁誘導で砲弾を加速し発射する艦載兵器の名であり、最高位の電撃使いたる御坂美琴の威名。
 彼女の手から放たれるこの一撃こそ、その名の由来である。


 一キロ以上の質量は、それでも音速の三倍という高速に耐え切れず、数十メートルで焼失する。
 しかし、灼かれ砕かれ蒸発するまでに、超高温の衝撃波(ショックウェイブ)を撒き散らした。
 普段の『弾丸(コイン)』よりも、大きな『砲弾(ガレキ)』は、目前のすべてを平らげ消し飛ばす、圧倒的で荒唐無稽な暴力の嵐。

 しかし―――。

 巻き上がった粉塵のヴェール。それを透かして、黒山のようにそびえる影。影。影。

「うそ……」

 吹き荒れる烈風に、土埃のヴェールは取り払われた。
 現れたのは、傷一つ無い侵魔の群。

 この場で二人を取り囲むのは、数時間ほど前に蹴散らした、下級侵魔と同種のデーモンたち。
 超能力者(レベル5)に、手も足もでなかった雑魚たちと同じもの。

 だと言うのに。その最大の一撃(レールガン)を受けて尚、貴奴らは健在である。

 小さく呻くような音が聞こえた。
 音の発生点で、一体のデーモンが肩を震わせている。
 小さく、しかし確かに、人ならぬ声で、そのデーモンは嗤っていた。
 高く低く、心底可笑しいと。哄笑は、次第に群のすべてに伝播する。

 大気が震えた。

 嗤い続ける悪魔たち。
 眩暈がするほどの大喝采。吐き気を催す大合哂。
 その中で、最初に笑い出したデーモンが、人ならぬ声で宣告する。

「(我々を、今までの我々と同じだとは思わないことだな)」

 悪魔の哄笑は津波のように。
 一つにまとまり、練り合わさって、崩れ落ちる波頭のように、侵魔の群は二人を飲み込んだ。

行間 四


『コッチもコッチでナイスなタイミングだ。安心しろ、すぐに片付ける』
「ちょ、柊!?」

 輝明学園秋葉原分校、校長室。
 いきなり切られた電話に向って、叫んだ声は虚しく消えた。
 電話口からは、ツー、ツー。と言う電子音。
 本来の主の落ち着いた趣味を伺わせる部屋で、赤羽くれはは、溜息を零した。

(ナイスなタイミングって……どーいうことよ。柊のところにもデーモンが現れたって事?)

 唐突ともいえる、下級侵魔の大量発生。
 此方の監視網一切をパスして、奴らは出現している。
 どうにかして、情報を偽装しているのだろうが―――。

(ま、柊なら大丈夫だよね)

 自分で言った事ながら、少々無責任に響きのような気もするが、その辺は幼馴染への信頼である。

(でも、どうしてこのタイミングで?)

 荒廃の力の解放に、学園都市第六学区の消滅。魔王パール・クールの暗躍、立てた場所の支配権を得る魔導具『東方王国旗』。
 日が落ちてから、つまり、最初の事件から、まだ三時間と経っていない。しかし、この世界を取り巻く状況は非常に深刻なモノとなっていた。
 それに加えて、デーモンの大量発生。一連の騒動に無関係とは思えないが、何故、学園都市にだけ出現したのだろう。

(学園都市でないといけない理由。それは何?)

 避難の妨害? 能力者(サイキッカー)の誘拐?

(いいや、違う)

 思考を否定する。
 『防犯カメラ』の映像からして、デーモン達は十中八九パール・クールの配下だ。パール・クールにとっては、『東方王国旗』とやらが、最大の関心ごとのはず。
 それが、どうして学園都市に配下を出現させる必要がある。

(発動に生贄が必要? でも、それなら学園都市である必要はない)

 大量の人間を攫いたいのなら、学園都市以外にも人間は沢山居る。それも特殊能力を持った人間ばかり。
 狩場を、学園都市に限定する必然性は感じられない。

(………はわぁ。ダメだ、ピースが少なすぎて絵にならない)

 思わず、大きな溜息が漏れた。

「何溜息なんてついてんのよ、アンタにはまだやることがあるでしょうが」

 唐突に声が響く。
 無責任な声に、人事だと思って。と、恨みがましい視線を向けるくれは。
 はたして、しかし声の主は、その視線に一欠片の痛痒も感じず、

「随分お困りのようね、赤羽守護者代行見習心得」
「何しに来たの?」


 疲れた目で問いかけるくれはに、

「ちょっと聞きたいことと、教えてやることがあってね―――」

 闖入者は高慢な態度で、薄ら笑いを浮かべた。
 微妙な表情で、くれはは先を促す。
 笑みをそのままに、『彼女』は口を開いた。

「あんたたちは、パールにどう対処するつもり?」
「どうって、本拠地が判ってるんだから、いつもどおり月匣に乗り込むつもりだけど」

 くれはの返答を聞いて、『彼女』は落胆の溜息を吐く。

「予想通りね。うわーだめだー。とか言うのがオチよ。ソレ」
「じゃ、どうしろってのよ」

 『彼女』は薄っすらと笑みを深くして、

「それが、教えてやりたいことよ。序でに、『東方王国旗』についても、ね」
「………。はわ?」

 何時もの口癖が、間抜けな声で口から漏れた。

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