第九次ダンゲロス

第九次ダンゲロス武勇伝-賢楼零次編-

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私立石橋中学。
平均的などこの学校とも同じように、この学校にも魔人がいた。
そのうちの1人が、窓の外をながめている。
休み時間ではあったが、賢楼零次はたった1人だった。当然のことだ。魔人と話そうなどという命知らずがいるわけがない。
校庭では一般生徒たちがサッカーに興じている。
最後にあの中に加わっていたのはいつのことだっただろうか。
確か、魔人能力を得たのは中学2年の夏だったから――。
記憶を思い起こすのを止めたのは、バイクが発する爆音だった。
「……なんだって?」
何台ものバイクが校門を通り抜ける。
先頭の一台に乗るのは、見るからにモヒカンザコといった風貌の男。
いや、あれはただのモヒカンザコではない。
魔人である。
「アキオぉ、お前にケンカ売ったのはこの学校の奴だったんだな?」
モヒカンザコ魔人が、三下風のモヒカンザコに問いかける。
「その通りっす! ここの制服着た奴が、俺にガンくれやがったんすよ!」
昭和の言葉で会話するモヒカンザコたち。
零次に彼らの声は届いていなかったが剣呑な話をしていることだけはわかる。
わかった瞬間、零次は3階の窓から飛び出していた。
「待て!」
魔人能力を発動させる。獅子頭のついた盾、『鬣王』が手の中に出現する。
「あぁ? こいつか、お前にケンカ売ったってのは」
「違うっすよ。野郎は魔人なんかじゃなかったっす」
現れた零次を見、不思議そうな顔をするモヒカンザコたち。
「僕も君たちと関わった覚えはない」
「関係ねえんだったら、すっこんでな!」
「そうはいくか! どんな事情があろうと、この学校の生徒は傷つけさせない!」
盾を構えた零次を、モヒカンザコはきょとんとした表情で見た。
「おいぃ? 聞いたか、今の。こいつ、魔人のくせに正義の味方気取りだぜ!」
嘲笑うモヒカンザコたち。
「無駄な争いはしたくないんだ。黙って帰ってくれ!」
「はっ、てめえの能力は見たとこ防御系だろ? 攻撃が防げるだけじゃあ、なにも怖くなんかねえんだよぉぉぉー!」
モヒカンザコの指先に炎がともる。
「ゴミどもを焼却してやるぜぇぇぇーー!」
「なっ……!」
火炎放射を盾が防ぐ……だが、零次自身は平気でも、周囲の生徒たちは一瞬で燃え尽きた。
「ヒャッハー、アキオにケンカ売った奴も違う奴も、みんな殺してやるぜぇぇ! お前が逆らったのが悪いんだからなぁぁぁーー!」
理不尽過ぎる物言いに、零次の手に力がこもった。
だが……防ぐだけでは勝てないこともまた、確かであった。
(ちくしょうっ……俺はなんて馬鹿だったんだ。どんなに攻撃を防いだって、敵を倒せなきゃ意味ねえじゃねえか!)
奥歯を噛み締める。
「攻撃こそ最大の防御……! 防ぐためのこの力を、攻撃にいかさなきゃダメだったんだっ!」
吐き捨てたその言葉には怒りがこもっていた。
自分に対する……そして、モヒカンザコに対する怒り。
「ちくしょう、ふざけるなぁっ!」
「ガオォォォォ……ッン!」
叫び声に、吼える声が重なった。
鬣が伸びる。針のように硬質化したそれが、モヒカンザコに襲いかかる。
零次の『鬣王』にずっと隠されていた第二の形態が、初めて発現した瞬間だった。
貫かれたモヒカンザコが爆発四散する。
モヒカンザコの仲間だった不良たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
へたり込んで、肩で息をする零次に対して近寄ろうとする者はいない。
一般生徒は遠巻きに見ているだけ。同じ魔人生徒も係わり合いになる気はないようだ。
「……いいさ。避けられようと嫌われようと、僕はみんなを守れればそれでいい……」

零次の手から盾が消える。
魔人能力を解除した零次は、とぼとぼと教室へ戻っていった。


GK評:2点
盾と武装が一体化してる武器ってロマンがあるよね。
『鬣王』のビジュアル化に期待。

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