第九次ダンゲロス

拳よ届け!スクールカースト・シューティングスター・テレフォンパンチ


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「リュウセイ…アメリカでも頑張れよ!」

「ありがとう…お前も頑張れよ超一郎…兄貴みたいに」

2014年の冬、空港のロビーで2人の少年は固く握手を交わしていた。方や大銀河超一郎。賢明な読者諸兄は当然ご存知であろう。後に希望崎を統括する彼もこの時点ではまだ中学生である。

そして方や全宇宙リュウセイ。かつての希望崎の大番長全宇宙神哉の弟である。快活とは言えない性格の彼だが、兄や従兄弟の大銀河には心を開いていた。しかしその兄は先日教育実習中に仇敵・髑髏山の手にかかりこの世を去った。親代わりだった兄を亡くした彼はアメリカにいる両親のもとで暮らすことになったのだ。
「お前が3年になるころに帰ってきて、希望崎に編入することになってる。そのときまでに兄貴みたいな大番長になっとけよ」

「ああ!」

✝✝✝

「おいリュウセイ!さっさとイケよ!イッたら暗井と交代だ!」

1年後、ロサンゼルスのハイスクールでリュウセイは壮絶ないじめに遭っていた。アメリカには日本のような「学園自治法」は存在しないが、多くの学校には古代インドもかくやというカースト制が敷かれ、そしてその頂点には日本におけるように強力な魔人学生が君臨している(アメリカでは魔人は差別の対象ではなくむしろヒーローである)。
アジア人であり、暗い性格だったリュウセイは当然の如くその下の下、トラッシュ(ゴミ)の身分に置かれ、鑑賞や性欲処理、ストレス解消などさまざまな用途に使われる奴隷の扱いを受けている。
無論殺人など警察が介入せざるを得ない事態はそう起こらないが、この程度のことはアメリカのどこのハイスクールでも当たり前に起こっている。

「トラッシュが何反抗的な目してんだファック!ジェニーが欲しいのか!トラッシュはそのメス犬の交尾でポークビッツこいてりゃいいんだよシット!」

スクールカーストの頂点・アメフト部のキャプテンである魔人・ボブが対面座位でチア部キャプテンのジェニーをファックしながらこちらを見下ろしている。リュウセイは全裸で
犬の交尾のAVを見ながら公開オナニーさせられ、その横では同じ日本人でトラッシュの暗井君が犬のうんこを食わされている。

「(クソッ…クソッ…!畜生…!)」

リュウセイは惨めだった。大銀河がそうであるように、リュウセイも兄・神哉に憧れていた。兄のように明るい性格じゃない。超一郎のように皆を惹きつける力があるわけでも無い。それでも強くあろうとしていた。兄から習った拳法の怠った日は無い。自分に恥じない生き方をしているつもりだった。
だが、今の自分はどうだ。自慢の拳法は数の力に敗れ、公開オナニーしたりうんこを食ったり、トラッシュ同士でホモセックスをしたりする毎日だ。この日々はいつまで続くのだろう。あと1年半、両親が、つまり自分が日本に帰るまでか。

「(嫌だ嫌だ嫌だ…!)」

この状況が続くこともそうだが、それまでただ従順に、カーストの最下層で屈辱に耐え続ける。そんな自分が何より嫌だった。仮に後1年半耐え続けこの地獄から開放されたとして、そのときの俺は誇れる俺なのか。そんなはずは無い。
ボブをはじめ、カーストで言えばバラモン層にいる、運動部の魔人達がニヤニヤとして自分たちを見下している。カーストで言えば自分より少し上なだけの連中もまた、日頃のストレスを自分たちを虐待して解消している。みな、腐った目をしている。星の高みから、地に落ちてただの岩塊と変わらぬ流星を見下している。

「(許せねえっ…!こいつら絶対許せねえっ…!思い知らせてやるっ!)」

人数の差に加え、屈強な魔人も数名この場にはいる。拳法の心得があるとはいえ所詮人間のリュウセイに勝ち目があるはずは無い。無いが、それでも思い知らせねばならない。お前たちは安全では無いのだと。地上の星屑も天の星々を脅かせるのだと。そのための、絶望的な一歩を後押しする最後の勇気が必要だった。

✝✝✝

「リュウセイ。俺は人間の心はみんな、『小宇宙』だと思ってる。俺の能力の話じゃなくてな。魔人にだって自分より強い魔人と戦わなきゃいけないときがある。普通の人間も同じだ。そんなとき、『小宇宙』が恐怖で縮こまったままか、それとも燃え上がるか、それで人間の真価が決まると俺は思ってるんだ。」

✝✝✝

大銀河にも語ったのだと言っていた、生前の兄の言葉が頭に浮かんだ。

「燃え上がれ!俺の小宇宙よおおおおおおおおおッ」

ペニスを擦るのをやめ、立ち上がって咆哮をあげたリュウセイにその場の全員が注目する。そして直後眩い光と共に、ボブとリュウセイの2人がその場から、いやこの世界から消えた。

✝✝✝

「こっ…ここは…?なんだいったい!?な、なんで誰もいねえ!?」

ボブが困惑して声をあげる。そこはさっきまでと全く同じ場所。積まれた古タイヤの上でトラッシュ共を見下せる玉座。だが、自分の膝の上で悶えていたジェニーも取り巻きもトラッシュもそこにはいない。自分1人を残して他の人間がいなくなった?いや、

「いなくなったのは他の連中じゃねえ…俺とてめえだ…!」

声に続いて衝撃があり、座っていたタイヤの山が大きく揺れ、そして崩れた。宙に放り出されたボブだが魔人の運動神経で難なく着地する。目の前には、今タイヤの山、自身の玉座を蹴り崩した男・全宇宙リュウセイの姿があった。

「どういうことだ!?まさか、てめえ…」

この不可思議な現象、そして今タイヤの山を簡単に蹴り崩した脚力。

「『魔人』に…なったのか…?」

「この世界には俺とお前の2人しかいねえ…俺がてめえをぶっ殺そうとしても一切邪魔は入らねえ…無論その逆もな…!」

「対等な暴力」のために状況については説明する必要があるが、詳しく能力を敵に語る程リュウセイは多弁ではない。

だから代わって説明すると、彼の能力は自分とその対象を他の生物が一切いない異空間へ連れていくというものだ。彼が能力を解除するか、死ぬかしなければこの空間からは出られない。それが全宇宙リュウセイの魔人能力「シューティングスター」!

「ぶっ殺すだあっ!?魔人になったからって、こくのはディックだけにしとけよ!返り討ちにしてやるよ!」


興奮して声を荒げるボブだが、そこには幾ばくかの恐怖が混じっていた。今彼は実感したのだ。目の前のトラッシュに、自分の命は脅かされようとしているのだと。彼が自分より強いのかわからない。だが今この場で自分は玉座にはいない。確実に両者は対等だった。

「タイマン張らしてもらうぜ…ボブ…」

「殺す…リュウセイ…!」

リュウセイが拳を鳴らし、ボブの肩が魔人能力で赤く発光する。

血まみれのリュウセイがボブの死体を担いで現実世界に戻ったのは30分後だった。

リュウセイが未成年であったことと魔人への覚醒直後であったこと、日頃から被害者に凄惨ないじめを受けていたことが助けとなり、処分は驚く程軽く済んだ。

✝✝✝

それから1年半と少しが過ぎた頃。ハルマゲドンを目前に控え、開戦の準備が着々と進んでいた。

「(超一郎…兄貴に続いて、お前までいなくなっちまったか…)」

まだ編入して3ヶ月弱の希望崎には平和があった。そこにはリュウセイの嫌う上下関係が当然あるのだが、しかしあの学校のように自分の手を汚さず、底辺が傷めつけられる様をニヤニヤと高みの見物で楽しむような者は確実に少なかった。
もしも学園が秩序を失えば、学園自治法のためにあの学校よりも遥かに劣悪な、懐かしの希望崎の風景が戻ってくることは明白だ。

「(この学校も大して好きじゃあねえが、それでも…!)」

2人の顔を思い浮かべ、リュウセイは拳を固く握った。


GK評:2点
サァスガリュウセイクゥンデェスネ!
ロスエンゼルスデミニツケタマッジ―ンノウリョクデ、ハルマゲドンデモダイカツヤクマチガイナイデース!
ウーン、マカロニダイスキ!