後日譚

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――今日もふたりは仲良しこよし。
――きっと明日も仲良しこよし。
――いついつまでも、幸せに。


  • ダンゲロス最強(最萌)トーナメントより



『ピロー・トーク・ウィズ・ハピネス』


姦崎姦は苦悩していた。
自分にとって妹のような存在、姦崎女々についてだ。

これまで触手一族の一員として、「姫」と呼ばれ愛でられてきた女々。
だが、その身体は触手ではなく、あくまで人間の女の子である。

それでも幼い頃は良かった。
己の身体の構造が家族と違うことなど気にせず、触手のように振舞う。
女の子を見つけては嬉々として反射的に襲い掛かり、愛でる。ただ、純粋な存在。

しかし、近頃の女々は違う。
己の存在に疑問を持ち、身体を焦がす情欲に苛まれ日々を悶々と過ごしている。

果たして、兄的立場として、どのように接すればよいのか。
せめて、女々の悩みに沈む表情を少しでも和らげてやれないものか。
姦は苦悶していた。

そんなある日のことである。
姦は熟慮の末、ひとつのアイディアを思いついた。

「そうだ。人間の女の子の意見も聴いてみよう」

触手にも人間にも分け隔てなく接する、そんな女の子といえば……


――――――


夢追「見つけたー!創面君こんにちはー!お久しぶりです!」
創面「うわっ!?潜伏活動中なのにナンデ?」
夢追「先輩に私を創面君のところまで配達してーって頼んで連れてきてもらいました」
創面「先輩?配達?」
夢追「こちら二年の斎藤先輩です。必ず荷物を目的地まで届ける能力者です!」
斎藤「それじゃ、荷物は運んだから。俺は帰るんで」
夢追「二年の斎藤先輩ありがとうございましたー」
創面「なんなんだアイツ?」
夢追「二年の斎藤先輩は荷物を運ぶこと以外に興味が無いそうで、いつもあんな感じですよ」
創面「それで、俺に何の用だ?わざわざこんなとこまで」
夢追「また無茶してるだろうなー見てみた……心配だったので、凄い傷薬の差し入れに」
創面「何か言いかけ……いや、いいや」
夢追「胴体が千切れても、創面君の能力と併用すればこれで大丈夫!……たぶん」
創面「あー、まあ、サンキューな」
夢追「それともうひとつ、創面君にまた能力を見せてもらいたくて……」
創面「えぇ……」
夢追「あ、いや!今回は私にではなくて、私の友達の妹さんになんです」
創面「なんだそれ」


――――――


女々「あなたのしなやかなてさばき!やるわね」
創面「ははっ!女々ちゃんもやるなあ」
女々「でもこれで終わりよ――『醜い触手の子(アイ・ウィッシュ)』!!!」
創面「おっ!でも鉄パイプを捻るのなら俺も得意だぜ――『アゲンスト・トーフ』!!!」
姦崎「えっと……ふたりは何してるんです?」
夢追「どちらがよりくねくねできるかの勝負です!」
姦崎「くねくね……」
夢追「悩んでいるときは能力使用で発散するのが一番ですよ!」
姦崎「あ、なんだか夢追さんらしい発想ですね」
夢追「能力使用は大抵自己表現の場ですしね」
女々「ふふふ知らなかったの?しょくしゅからは逃げられない」
創面「だがそこに回転を加えると……こうだ!」
夢追「同種の能力者と互いを高めあうなんてシチュエーションがあればモアベター!」
姦崎「はあ、なるほど」
女々「あはは」
創面「おりゃあー!」
夢追「おおー!絶景絶景!」
姦崎「うーん、楽しそうだし……いいのかな」


――――――


女々「たのしかった!」
姦崎「良かったね」
女々「わたし、わかった」
姦崎「?」
女々「しょくしゅにもいろんな形のしょくしゅがいるんだね」
姦崎「……う、うん?」
女々「わたしは女の子っぽい形のしょくしゅだったのね」
姦崎「……(ど、どうしよう)」


――――――


触手にも人間にも分け隔てなく接する、そんな女の子が居たら……
そんな女の子に相談したら……
まあ、あまり真っ当な結果は望むべくもない。


――――――


夢追「姦崎君またねー!」
創面「なあ」
夢追「はい?」
創面「なんで俺だけ名前呼びなの?」
夢追「えっ」
創面「二年の斎藤先輩、とか、姦崎君、とか呼んでたよな?」
夢追「ああ、だって創面君は奴子ちゃんがいますから、苗字で呼んだら紛らわしいでしょう」
創面「ってことはあの先輩のことを二年の二年のって連呼してたのも」
夢追「『さいとう』先輩はもうひとりいますから」
創面「ふーん……」
夢追「あれ?何か問題でもあります?」
創面「いや、さあ……その先輩こそ名前呼びでいいんじゃないのか?二年のってなんだかさぁ」
夢追「あー……そうですねぇ。真文先輩って呼んだほうがいいですかねぇ」
創面「そうだな」
夢追「真文先輩は配達以外に興味ないんでその辺気にしませんけど……あ、でもご心配なく」
創面「うん?」
夢追「創面君のことは日谷弟なんて呼びませんから!」
創面「?」
夢追「創面君絶対そういうの気にしますよね!お姉さん関連だし!」
創面「ウ、ウルセー!」
夢追「お姉さんの学園、私、侵入路を確保してますけど、顔出ししてみます?」
創面「そ、それより、だ!そういや姦崎のほうはどうなんだよ!?」
夢追「話を強引に変えようとしましたねーって、姦崎君がなにか?」
創面「女々ちゃんだって姦崎だろ?俺が名前呼びならアイツも名前呼びじゃないのか?」
夢追「……あ、そ、それは……その……」
創面「もしかして、何か聞いちゃまずかったか?」
夢追「い、いえ……えーっと……姦崎君は……名前呼びするの……恥ずかしくて……」
創面「?」
夢追「ゴニョゴニョ」
創面「ああー……まあ、変なこと聞いて悪かった」
夢追「あ、その、そんな気を使われるようなことでもない……んですけど……」
創面「(女心ってのはよくわからん)」
夢追「(れいぷって口に出すのが恥ずかしいって今更言えない)」


――――――

――――

――


静かな月夜。
行灯の火は落とされ、雨戸を閉めていない廊下から、
障子越しの月明かりが薄っすらと室内を照らしている。

「そんなことも……あったよね」
「そうだったね」

黒と灰色と青色が混じり合った、影法師だけが動く部屋。
ひそひそと、囁きあう声に満ちていた。

「姦君」
「何?」
「えへへ……呼んでみただけ」
「……うんっ」

青白い光をぼんやりとはじく畳の目の上。
少し大きめの布団に出来た小山が、いつまでも、もぞりもぞりと動いていた。

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