第九次ダンゲロス

『としょかんっ!』


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希望崎学園図書館
今日は図書委員が集まり、図書館の蔵書整理を行っている。

「十四四ちゃん、この本どこに持っていけばいいんでしょうか…?」
いくつもの本をかかえた一つ結びの三つ編みの少女――希望崎学園の図書委員戌井しおりが、後ろで段ボールに詰めこまれた本を整理する後輩の少女に尋ねる。
整えられることもなくバラバラの長さに切られた髪。瞳を隠してしまうぐらい分厚い眼鏡。

一見奇妙な印象さえ与える風貌だが、よくよく見えれば整った顔立ちのその少女は、魔人一族である戦闘破壊家族一家の一員であり、名前を一十四四(にのまえ としょ)と言った。
「あー、それなら一番奥の棚っすね。多分行けば分かるっスよ」

「わかりました」

それを聞くと抱えた本を十四四に言われた棚まで運んでいくしおり。
十四四は図書館の本について全て記憶している。彼女の言うとおりにしていれば間違いないだろう。
人付き合いが得意な方ではないしおりではあったが、十四四とは良く話している。
これは同じ図書委員であることもそうだが、しおりのクラスメイトである一一(にのまえ はじめ)の一の妹であることも大きい。
図書委員会に入ってきた十四四の兄が一であることをきっかけとして二人は会話をし、そして仲良くなった。

「それにしても先輩張り切ってるっスね」
「…わ、私はこういうときにしか、役に立てませんから…」

これは謙遜のつもりはなくしおりの本音である。
しおりも魔人ではあるがその身体能力は普通の人間と変わらない。
通常業務に加えて図書館の治安維持が魔人図書委員の目的であるが、戦闘能力の低いしおりではその役を担えない。
もちろん後方支援という役割もあるが、能力を図書業務に使わないしおりではできることが魔人ではない一般図書委員と変わらない。

「まあ、私もそんなに役に立てるわけじゃないっスけどね」
「で、でも、十四四ちゃんの能力は素敵じゃないですか…」

十四四の魔人能力『悠久図書館』はその名の通り、図書館を生み出す能力だ。
しかも、いつでもどこでも移動できる。本が好きなしおりからすればとてもうらやましいものだ。
もっともしおりの魔人能力『ドッグイヤーメモリーズ』も、彼女の願望から生まれたものであるのだが。
「そういってもらえるのはうれしいっスけどね。でも先輩だって
 ま、無駄口はこのぐらいにして、ちゃっちゃと終わらせるっスよ」
「そ、そうですね…」
########

「十四四ちゃん、飲み物買ってきましたのでどうぞ」
「ありがとうッス」

そういうと手に持っていたお茶の缶の一方を渡すしおり。
作業もひと段落し、二人は休憩に入っていた。
十四四はベンチに座り、本を読んでいる。
どうやら、学園におけるハルマゲドンを題材にした作品のようだ。
しおりも彼女のとなりに腰をおろし、話しかける。

「それ面白いですか?」
「まずまずっスね。万人受けはしないかも知れないっスけど、バトルはシビアで緊張感があっていいと思うっス」
「じゃあ、あとで貸してもらってもいいですか?」
「いいっスよ。それぐらいお安い御用っスよ」
「ありがとう。十四四ちゃん。
そういえば、十四四ちゃん、迷宮探索の方はどうなんですか?」
「準備が整ったら行くつもりっスけどね。色々稀覯本があると聞いてるっすからね、
それならいかない理由はないっスよ」

珍しい本があるなら読んでみたい。面白い本があるなら読んでみたい。
手に入れるのが困難があるというのなら、何としても壁をぶち破る。
それこそが本を愛する少女一十四四の行動原理である。

「わ、私も力になれたらいいんですけど…」

凶悪なモンスターがいるというダンジョンの中で足手まといにならない自信がない。
ダンジョン探索にもなれた同級生の夢追中ならきっとあのダンジョンで縦横無尽の活躍をするのだろうが自分にはそんなことはできない。
夢を追い、いつも凄いことを捜し求めている彼女を見ていると何がおこっても死なないのではないかという気さえしていた。
もっとも、彼女はもういないのだが。

「気持ちだけでいいスよ。先輩は先輩でできることをすればいいんですから」
「そ…そうですね、ところで前から気になってたんですけど…」
「なんスか」
「その眼鏡…外すか、変えた方がいいんじゃないですか…?
 十四四ちゃんには悪いですけど…に、似合ってないと思いますし…」

視力が悪いからかけてないという話だし、外しても問題はないはずだし、かけるにしてももっと似合う眼鏡があるはずだ。
十四四の姉、この世で最も眼鏡に愛された、世界で一番眼鏡っ子こと一∞(にのまえ むげん)は有名ではあるが、彼女がかけさせたわけでもないと思う。
たしかに眼鏡に貴賎はないと公言し、眼鏡を愛する∞ではあるが、ゆえに彼女ならばもっと十四四に似合う眼鏡を選ぶだろう。
「あー、これっスか。面倒なんスよね…外してるとやたら告白されますし…
 私はそういうの興味ないんスよ。私の恋人はこれッスから」

右手で髪を掻いたあと、読んでいた本を指差す十四四。
日々もてる努力をしている非モテのロンリー魔人からすればトンデモない話だが、彼女としては本気でそう思ってるのだから仕方がない。
十四四からすれば、本さえ読めればそれでよいのだ。
本が好きな彼女が好きだと言うならまだしも、ルックスだけで自分に近寄ってくる人間になど端から興味はない。

「勿体無いなぁ…」

しおりは以前、眼鏡を外した十四四を見たことがあるが、とても可愛いと思った。
彼女がその気になればミスダンゲロスさえ狙えるのではないかとさえ思えるぐらいだった。
別にミスダンゲロスに選ばれる必要はないとは思うが、本気で勿体無いと思う。
しおりは十四四のことをかわいい後輩だと思うから余計にそう思う。

「いいじゃないッスか。私の問題なんスから」
「そ、そうですけど…」
「ところで、恋人と言えばしおり先輩。うちの兄貴が好きなんスか?」

その言葉を聞き、思わずしおりは口に含んでいた飲み物を噴き出してしまう。

「な、な、な、だ、だ、だ、だ、誰が…そ、そ、そんな…」

彼への思いはひた隠しにしている。当然誰も言っていないはずだ。
たしかに毎日つけている日記にはかいているが、まさか誰かに見られた?
いやそんなはずがない。あれは誰にも見られないよう自分の部屋の机の中にしまっているはずだ。

「いや、この前兄貴を見る目が変だったから言ってみただけなんすけど、その反応を見るとやっぱりそうなんッスか。
あー、そうスか。しおり先輩が兄貴をねぇ…」
「ち、ち、ち…違うから!そ…そんなこと、な、な、な、ないですから…!」

身振り手振りも交えて必死で否定しているが、動揺が全く隠しきれていない。
顔も真っ赤になっている。ここまで分かりやすい反応も珍しいだろう。

「ちなみにどこがいいんスか?」
「だ、だからぁ…」

しおりの声が泣きそうになっている。

「いやまあこの際、好きとかは置いといて、
先輩、クラスメイトなんスから兄貴についてどう思ってるのか聞いてみたいっスね。」

なんとか助け船を出そうとする十四四。
最も追求をやめるきはない様だが。

「クラスメイトとして…ですか?えっと……一君かっこいい…です…よ…ね…」

それならとボソボソとしゃべり始めるしおり。

(あの兄貴がかっこいいッスか…。それはどうっスかね…
ま、たで食う虫も好き好きといいまスけど)

口には出さないが、身内だからかひどい評価をする十四四。
まあ、でも兄が誉められて悪い気はしないのも事実ではある。
「他にはなにかあるっスか?」
「それに勇気もあって素敵だなって…あの時…助けて…くれましたし…」
「あー、そんなこともあったらしいっスね」

過去にしおりが一人で受付をしていた時に絡まれた事件があり、それを本を読んでいた一に助けてもらったのだ
なお、このような事件は図書委員会としては不名誉なものであり、当事者たちは武闘派たちにより二度と図書委員会に逆らいたくなくなるような目にあわされたという話である。
普段はヘタレで情けないと思うが、あれでいざというときには頼りになるのだ。

「とても仲良くなりたいなって…
えっと、十四四ちゃん…こ、これぐらいで…いいかな…?」

恥ずかしいのか、声がどんどん小さくなっていく。

「あー、もうそれでいいっスよ。好きなのは良くわかりましたし。
そうだ、先輩にはお世話になってまスし、いっそ兄貴との仲取り持ちましょうか?」
「だ、だから…別に好きなわけじゃないですから…」
もう、完全にばれてるのだろうし言っても無駄だと思いつつ、十四四の言葉を否定するしおり。
「そ、それに…私は今のままで…いい…です…」

少し間をおいてしおりが言う。

「…遠くで見てるだけで…私は…幸せですから…」

確かに彼が好きなのは事実だ。本音をいえば、もっと仲良くなりたいし欲を言えば付き合いたいとも思う。
だがそれ以上に今の関係が壊れてしまうのがいやなのだ。
自分の思いを口に出すことで彼に嫌われてしまう。そうなるぐらいなら今のままの関係でいい。
しおりには能力で保持している思い出がある。きっとそれでいいと思うのだ。

「遠くで見てるだけで幸せっスか…
 私は先輩のそういう奥ゆかしいところ嫌いじゃないんスけどね。
でもそれじゃ何も始まらないじゃないっスか。アタックあるのみっスよ!」
「だ、だって…守口さんとか埴井さんとかに比べたら私なんて…」

しおりが名前を挙げた二人は一一と同じようにしおりのクラスメイトで、二人とも一一とは親しい間柄にある。
もっとも、本人たちにそう指摘すると否定する可能性も高いが。
守口衛子(もりぐち えいこ)は一年のころから護身術部部長とつとめている少女であり、同時に風紀委員会の一員でもある。
クールでその性質から来る近寄りがたい部分もあるが、友人思い少女。
埴井葦菜(はにい あしな)は蜂使いの一族・埴井家の出身の魔人であり、アイドル活動も行っている。すらりと伸びた長い脚が魅力的な少女だ。
嫉妬深いところもあり、それで失敗することもあるが、向上心の表れと見れば悪いところばかりではない。
そしてしおりは、一の周りにいる彼女たちと比べて自分が魅力的であるとどうしても思えないのだ。

「先輩は十分魅力的だと思うんスけどねぇ」
「そ、そうでしょうか…」

アイドルの埴井葦菜などと比べれば、劣るのかもしれないが、しおりだって十分魅力的だと思う。
優しい先輩だし、自分と本の話をしているときはとても楽しそうだ。
十四四は彼女のよいところを知っている。
だからこそ力になりたいと思うのだが肝心の本人がこれでは…

「ま、いっスよ。そろそろ時間ですし戻りましょう」
「そうですね。みんな待たせると悪いですし」

十四四が今日のところはあきらめた様子なのを見てほっとしたような表情を浮かべるしおり。

(これは秘密にして動くしかないっスかね。)
勝手な事をすれば怒るかもしれない。
でも、しおりのために何かしてあげたいのだ。
なぜなら十四四にとって素晴らしい先輩だから。
大丈夫だ。十四四の兄一一はしおりを傷つけるような人間ではない。
姉の四四四(ししょ)にも相談しよう。いいアイデアを出してくれるかもしれない。

「十四四ちゃん、行きますよ」
「すぐいくっス」

しおりには内緒で決意を固めると、十四四は図書館に向かったしおりのあとを追うのであった。



GK評:1点
圧倒的ボリューム!作者のキャラに対する思い入れを感じさせますね!
しかしハルマゲドンに些かも関係ありませんね!そして別に武勇伝でもないですね!
過去のキャラクターとの繋がりを作るのは割と好きです。