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女神と女王の狂想曲

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女神と女王の狂想曲


 輝明学園に存在する学園有志によって運営される喫茶店「サン=グラール」。学園転移以後はスクールメイズの話を聞きつけた他校の生徒も見られるようになり、以前より賑やかになった。
 その一角に3人の少女がいた。一人はオレンジのブラウスに黒のスカートという私服であり、残る二人は輝明学園の制服を着ている。
 腰まで届く赤い髪の私服の少女の名はコーティカルテ・アパ・ラグランジェス。
 ポリフォニカの始祖精霊が一柱「紅の女神」にして、トルバス神曲学院特別講師タタラ=フォロンの契約精霊である。
 残る制服を着た少女二人。一人は肩までの銀髪にポンチョ。もう一人はショートカットの黒髪。いわずと知れた「蝿の女王」ベール=ゼファーと「荒廃の魔王」アゼル=イブリスである。
 3人とも誰か一人でも気まぐれを起こせば軽くサン=グラールが消し飛ぶ実力の持ち主であり、アゼルはともかくベルとコーティカルテにいたってはお世辞にも穏やかな性格とは言いがたい。
 もし双方の性格を熟知している者がこの場に存在したなら、間違いなく速攻で執行部に「要監視」で連絡を入れるだろう。柊蓮司のご指名付きで。
 しかし幸か不幸かトルバス神曲学院は転移して間もないため、コーティカルテを知る者はこの場にいなかった。
 人知れず輝明学園は危機に立たされていたのである。

(ベル、この子・・・)
(分かってる。抑えてはいるけどとんでもない力の持ち主ね。)
 さすがは裏界にその名を轟かせる魔王二人。彼女たちはコーティカルテの実力を見抜いていた。
(しかもこいつ人間じゃない。人の姿を取ってはいるけど本質は私たちに近いわね。
 知性を持ったエネルギー体ってとこかしら?)
(目的は何だと思う?)
(大方どっかの学校の守り神で、うちに手を出したらただじゃおかんぞーってとこかしらね。
 でもおあいにく様。そっちの都合に付きやってやる義務はないしね。場合によってはこの場で身の程をわきまえて貰おうかしら?)
 一人なら苦戦必至であろうが、この場にはアゼルもいる。圧倒的に有利なのはこちら。
 それぐらいのことも分からずに突っかかってくるような相手ならゲームの対局相手としては不足といわざるを得ない。付き合うだけ無駄である。
「で、わざわざ出向いてもらって聞きたいことってのは何かしら?」
「むっ?!・・・・コホン」
 言葉に含まれる侮蔑の色を嗅ぎ取ったコーティカルテだが、何とか自制。ここでキレてしまっては目的が果たせないのだ。
 この機を逃したらまず次はない。異世界の、しかも自分たちに近い存在の話を聞くなどという機会は。
「ひょっとしたら気がついているかも知れぬが、私は人ではない。
 そしてそちらも人ではないことは聞き伝えで知っておる。
 その上で聞く。そちらには――」

 迷うことはない。直球勝負。

「――そちらには、人との間に子を成す術は伝えられているか?」
「ぶーーーーーーーーーーっ!」
 直球、ただし暴投ビーンボールまがいの質問がベルを襲った。
 そりゃ飲んでた紅茶も吹くというもの。
「アンタ、初対面の相手にする質問がソレかーーーー!
 まったく、真面目に相手しようと思ったこっちがバカみたいじゃない!」
「こここ、こっちだって相当恥ずかしいのだ!察しろ!」
「察するかバカモノーーー!」
「もしや貴様・・・相手がおらぬのか?」
「はぁ?いきなり何言い出すのよアンタ?」
 突然の方向転換に当惑するベル。
「いやぁ、すまぬなぁ。一時とはいえ無辜を慰めてくれる相手がおらぬとは。
 これは思い至らなかった。失礼失礼。」
 言葉と裏腹に勝ち誇った笑みを浮かべるコーティカルテ。
「うっわ、ムカつく!」
 いっそこのままふっ飛ばしてやろうと思ったが、隣のアゼルがベルの腕に抱きついてきたのでそれは成らなかった。
「アゼル?」
「ベル、私一人じゃ寂しい?」
 爆弾投下。
「ちょっ、アゼル、このタイミングでそんなこと行ったら絶対に誤解――」
 ガタンと、見れば椅子ごと思いっきり引いたコーティカルテ。
「されてるしーーーー!」
「いや、人のことをいえた義理ではないかも知れぬが非生産的なのはどうかと思うぞ?」
「いやそれ誤解だから!」
「まさか生やす事が出来るとか?!」
「しないから!つかそっち方面自重しろーーー!」
 主にハッ(ry

「あ゛ーー・・・疲れた・・・」
 あの後。ひとしきり騒いで反論する気力もなくなってテーブルに突っ伏したところで、騒ぎを聞きつけたコーティカルテのお相手らしき人物――別件で輝明学園に来ていたフォロン――がやってきて。
 なんとか引き取ってもらって周囲の奇異の目を避けて屋上に逃げて、やっと一息ついたところ。
「ベル・・・」
「アゼル?」
「ごめんなさい。ベルがバカにされてるみたいでなんか悔しくて。」
「いいわよ、別に・・・」
 フェンス越しに、この世界をみる。
 夕焼けに染まる、世界。
「ねえ、アゼル?」
「どうしたの、ベル?」
「アイツもそうだったけどさ。
 人間って恋とか愛とかに振り回されて。時には私たちにソレを利用されて。
 でも私たちの思惑をひっくり返すのもそういった絆。・・・ホント、よくわかんないわ。」
 それは小さなものだけど、確かに弱音で。
 だから、アゼルはベルの傍にそっと寄り添って。
「大丈夫よ、ベル。」
「は、アゼル。ひょっとして心配してる?
 その必要はないわよ。だって私は――」
「大魔王ベール=ゼファーだから、でしょ?
 そう、ベール=ゼファー。貴女は強い。」
――だって、その絆は、貴女も持っているものだから――


 学園都市の郊外、というか学園と学園の間の空白地帯を大型のオンロードバイクが走っていく。フォロンの愛車、ハーメルンである。
 無論乗り手はフォロン、タンデムシートにはコーティカルテ。
「フォロン、輝明学園に輝明学園におったのだ?
 お前がいるなどとは聞いておらなんだぞ?」
「ああ、例の留学生制度の話で興味を持った生徒がいてね。資料を貰いに行こうにも手隙の先生がいなくて僕にお鉢が回ってきたんだ。
 そういうコーティこそなんで輝明学園に?
 あの銀髪の女の子ぐったりしてたけどなんかあったの?」
「少々気が向いただけだ。あの女は騒ぎすぎて自爆しただけ、気にするほどのことでもない。
 ・・・なぁ、フォロン。」
「ん、どうしたの、コーティ?」
「・・・なんでもない。」
 それだけ言うと、フォロンの背をぎゅっと抱きしめた。
 その温もりを逃さぬように。残された時間を惜しむように。


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