ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第03話

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休日の過ごし方(最強編)

休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。

そして、“龍使い:藤原竜之介”が選んだ休日の過ごし方は―――

―――白皇学院 コロシアム

「噂には聞いてたけど…本当にあったんだな」
目の前に立つそれ…学園の敷地内に作られたその会場を見ながら、竜之介は茫然と呟いた。
「本当にここは、同じ日本にあった学校なのか?」

白皇学院。とある世界、日本の東京にあったこの学園は、びっくりするほど金のある学園である。
何しろ通っているのが日本でも指折りの富豪の子弟とその執事、それか学園の格を上げるためにとんでもない難易度の入学試験を乗り越えた、
いわば傭兵とでも言うべき天才たち。
そんな人間ばかりが集まっているだけあって、この学園の金持ちっぷりは常軌を逸している。
地価の高い東京に路面電車が必要なほどの敷地面積があると言うだけでもその凄さは分かると言うものだ。
さて、この学園、とんでもない金持ちなだけあって、施設も充実している。
そして、学園世界にやって来てからはその施設を休日限定で貸出もやっている…とてつもない使用料がかかるが。
閑話休題。

「ほら!こっちです!」
香椎珠美が竜之介を引っ張っていく。手には2枚のチケットを手にしている。
「それにしても驚きました!竜之介の親戚だったなんて!」
「…ええ。竜之介さんとは親しくお付き合いをさせてもらってます…そりゃあもう、昔から」
若干目をそらしながら、竜之介はその“設定”に頷く…“女の姿”で。
「今日は楽しんでってくださいね!竜之介の馬鹿に遠慮なんてしないで!…まったく、せっかくのチケットなのに『すみません。
 竜之介さんは急な用事で行けなくなったそうです』だなんて。しかも龍美さんに伝えてきてくれなんて無責任じゃないですか!?」
「いいえ。きっと竜之介さんも何か事情があったんですよ…お、私は知りませんけど」
龍美。それが竜之介が“女の姿の自分”のときに珠美に名乗っている名前。
学園世界に来てからも、珠美に真実は伝えられていない。
「…ま。いいです。とにかく、せっかく報道部の友達から貰ったんですし、楽しみましょう!凄いって話だし!」
この学園世界に来てから、珠美は極上生徒会の報道部に入っている。賢明の宝玉事件の後も、その好奇心は衰えることは無かった。
「はい!実は私も昨日から楽しみで楽しみで、お陰で朝から―――」
「…昨日?」
「いえ。何でもありません」
慌てて誤魔化す。言えない。遠足前の子供ばりにワクワクしていた結果、朝起きたときからこの姿で男子学生寮で過ごす羽目になったなんて。
知り合いの男ウィザード連中のお陰で大半の男子どもにはばれ無かったものの、ばれてたら大騒ぎになっていたはずだ。男子学生寮に美少女がいるって。
(―――けどまあ、よく考えたら、“試合”で興奮したらこいつの目の前で変身してたかも知れないのか…)
そんなことに思い当たり、むしろこっちの方が良かったと気づく。
竜之介とて“龍使い”のはしくれ。このイベントには前から興味があったし、だからこそ珠美に誘われたときに後先考えず脊髄反射で『行く!』と答えたのだ。
「すみませ~ん。2人、お願いします」
珠美が受付のお姉さんにチケットを2枚渡す。
(…すごいな。受付からしてガルデローベ生かよ)
それが学園世界でも屈指の“武闘派”として知られる学園の生徒であることに気づき、竜之介は内心舌をまく。
「…はい。確かに。お2人様、ご案内~。ようこそ、武術の祭典『D-1グランプリ』へ!」
受付のお姉さんが、元気に2人を会場内へと案内した。

始まりは、とある『同好会』だった。

新白連合学園世界支部。
元の世界では様々な武闘家が集まった不良系サークルだったと言うこの同好会は、今では1000を軽く超える『会員』と10万を超える『ファン』を持つ、
学園世界屈指のマンモス組織となっている。新島と名乗る宇宙人っぽい男が主催するサークルのモットーは…

俺よりも 強い奴と 戦いたい!

そのモットーにひかれ集まったのは各学園世界に生息していた、3度の飯よりバトルが好きな戦闘馬鹿ども。
最初期は『素手のみ、武器と魔法、エネルギー弾は使用不可』だったのが、いつの間にか『武器や魔法、エネルギー弾の使用もOK』な「D-2」と言うレギュレーションが作られ、
(ちなみに素手のみのレギュレーションは「D-3」となった。もっとも中には素手だけでD-2に挑むつわものもいるが)
そのD-2の上位32人のみが昇格できる「D-1」が設立された(ちなみにベスト32から外れると即D-2落ちという厳しい掟)
今ではD-1同士の試合ともなれば、こうして大きな会場を借りて行い、割と高い見物料にも関わらず格闘ファンの申込みが殺到してチケットが品薄になるほどだ。
(この辺はサークルの主催の手腕によるところが大きい、らしい)
特に今回はグランプリ。D-1ファイターが多数参加し、更には外部から招かれた招待選手とD-1ファイターたちが戦うと言う噂に、チケットは即完売。
闇取引価格は定価の30倍にも及んだと言う。
竜之介も頑張ってチケットを取ろうとしたのだが取れず諦めていたのだが、珠美がアリーナS席チケットを貰い受けてきて、竜之介を誘った。
そして現在にいたると言うわけである。
「うおおお!すっげえ!」
会場に入り、下の試合会場でウォーミングアップに勤しむ戦士たちに竜之介は思わず素に戻り、興奮の声を上げる。
「…龍美さん、格闘技お好きなんですか?」
いつもと様子が違う竜之介に若干引きながら、珠美が尋ねる。
「え?あ、その、はい…」
竜之介とて、武術家の端くれ、この手のものに興味が無いわけではないのだ。むしろ大好きだと言ってもいい。

―――数時間後

「すごかったですね…」
ここまでとは思っていなかったらしい珠美が、茫然と呟く。
「ああ、すごかった…」
竜之介も半ば呆然とする。想像以上だった。
「さっきの試合、すごかったな…」「ああ、まさか黒竜モーニングデストロイヤーをメガ本多対空で撃ち落とすなんてな…」
「その前もやべえだろ」「ああ、史上最強のメイド決定戦!安藤まほろvs仮面のメイドガイな。名前だけ聞いてただのイロモノだと思ってたけど…」
「その前も…」「ああ、あの魔法先生、どんだけ強いんだよ。あんなでかい奴相手に楽勝だったぞ?」「その前も…」
周りもあまりにも凄い“前座”の試合に周りもざわめいている。

「これで前座だなんて…真打ちはどうなるんだ…」
想像してみて、思わず武者震いする。そしてついでに。
ぶるっ!
「…すみません。私、ちょっとお花を摘みに行ってまいります」
催したのでトイレに行っておくことにする。

「…ふぅ~」
衆人環境の中、流石に男子トイレに入るわけにもいかず、女子トイレで迅速にことをすませ、竜之介は一息ついていた。そのときだった。
「…あれ?そこにおるん、竜之介君?」
唐突に声をかけられる。知り合いの声だ。その声に竜之介は振り向く。
「え?光明さん?」
ちょっと予想していなかった顔、同じ輝明学園のウィザードにして錬金術師、亜門光明の姿に竜之介は首をかしげた。
「何でここに?」
竜之介の知る限り、亜門光明は格闘技を見に来たりはしない。休日はザールブルグで議論してるか、管理棟で開発やってるかだ。
「あぁ、今日はな、開発部のみんなときてんねん」
その疑問に、光明は笑って答える。
「新島さんがチケット人数分送ってくれはったし、それにうちらの子ぉの晴れ舞台やからな」
「…うちらの、子?」
光明の言葉に疑問を覚え、どういう意味か尋ねようとした時だった。
「――――大変長らくお待たせしました。D-1グランプリメインイベント『二大魔獣超決戦!勝つのは野生か、マシーンか!?』がまもなく開始となります。
 会場内の皆さまは、速やかに席へとお戻りください」

会場内にアナウンスが響き渡る。
「おっと、始まってまう。うちもこんだけは見逃すわけにはいかんねん。それじゃな」
そう言うと光明は小走りに席へと戻って行く。
「…どういうことなんだ?」
その様子に、竜之介は首をかしげた。

「あ、お帰りなさい…あれ、どうかしました?」
席に戻り、竜之介は何となく辺りをキョロキョロ見渡す。そしてほどなく発見する。
(…あ。いた)
アリーナ席の一角に陣取る、怪しげな一団。具体的には白衣率が異常。どっちかと言うと研究室とかのが似合いそうなその集団は…
「あ…あれって開発部の人たちですよね」
珠美がそれに気づき、少しだけ考え込む。
「ええ…開発部の人たちが来てるなんて珍しいなって…」
「そうですね…ああ、もしかして」
竜之介の疑問に答える形で考えていた珠美が、理由を察してほほ笑む。
「私、分かっちゃいました」
「え?本当ですか?」
「はい。報道部で聞いたんです。今日、ちょうど念入りにメンテナンスしてたって。だから…」
そして、珠美がその答えを述べようとした、そのときだった。

会場の灯りが全て消え、下の競技場だけが照らされる。
「…大変長らくお待たせしました」
その中央に立つ、司会兼ジャッジ、そしてこのサークルの主催者である宇宙人っぽい男がとうとうと語る。
「これより、メインイベント『二大魔獣超決戦!勝つのは野生か、マシーンか!?』を開始いたします。ルールは時間無制限。
 判定は一切なし。最後に立っていた方の勝ちと言う、シンプルなルールです…」
そして、マイクを高らかに掲げ、大音量で喋る。
「いつものことながら、見物客の皆様には被害が及ばぬよう、会場を包む形で強力な魔法障壁を張らせてもらっていますが…今回、それでも怖い!
 よっていつもの3倍の強度で準備させてもらいました!会場の皆様は、是非ともこの1戦を見逃されませんよう、よろしくお願いします!」
そして、手をバッと入場口の方へ向ける。
「それではまずは招待選手のご紹介!ご入場、お願いします!」
のっそりと入って来るのは…1体の『獣』
「一見愛らしいこの姿…ですが騙されてはいけません!この姿の下に隠されたのは、凶暴なる「兵器」!まさに魔獣、魔獣と呼ぶに相応しい、開発部の至宝!
 学園世界の英知を結集して作られた、極上生徒会の最終兵器…ボン太くん…ブルゥゥゥゥゥゥゥム!エディィィィショォォォォォン!」

「ふぅぅぅぅぅもっふぅぅぅぅぅぅぅ!」

学ランと学帽をかぶったその獣が高らかに咆哮を上げる。その咆哮に会場の盛り上がりは最高潮に達した。

「たいするはぁぁぁぁ…」
バッと反対側の入場口に手を向ける。
「つよぉぉぉぉい!説明不要!所属来歴一切不明!参加直後にD-1ファイターを打ち破り、いきなりD-1に殴りこみをかけた獣人族の闘士!
 我ら新白連合学園世界支部の誇る魔犬…マルゥゥゥゥゥゥコォォォォォォォォ!」

「犬じゃないけんって…何度言わせればわかるんじゃぁぁぁぁぁぁぁあい!」


入って来たのはセーラー服を着た短髪の少女。犬耳としっぽが愛らしい。少女は視線だけで殺せそうな勢いで司会を睨みつける。
それを受け流し、司会が言う。
「おおっとマルコ選手、いきなり凄い怒り!ですが、今回それをぶつけるべき相手は私では無い!目の前の彼こそ、あなたが倒すべき相手なのです!
 何しろ私、このボン太くんに言われたとおりにマルコ選手のご紹介に上がったのですから!」
「ふもっ!?」
ぷるぷると慌てて首を振るボン太くんin中の人。だが、そんな些細なこと聞いていないマルコはその視線を強さはそのままにボン太くんに向ける。
「おんどれぇい…ふざけた格好しとる割に、なめた真似しくさってくれたのう…」
怒りのボルテージマックス。怒りすぎて逆に冷静な口調。まさに最初からクライマックス状態だ。
「ふもっふぅぅぅ」
一方のボン太くんももはや説得とかは無理と悟ったのだろう。剣呑な表情(どんなんだ?とか聞いちゃいけない)で学ランに手を突っ込む。
まさに一触即発。
「それでは…本日のメインイベント…時間無制限1本勝負…」
いつの間にやら安全圏まで退避した司会がマイクに対して怒鳴る。
「試合…開始!」

カァァァァァァン!
ゴングが会場に鳴り響き。
「ふもおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
「ぬりゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
2体の獣の死闘が始まった。

「すごいですね!…龍美さん?」
銃弾と魔法、拳と爪が飛び交う戦場に、珠美が興奮して隣を見る。
「どうしたんですか?何か顔が青いですけど」
「い、いえ!何でもありません!」
慌てて誤魔化す。
(まさか魔王がこんな所にいるなんて…)
見れば下にいた光明もあんぐりと口を開けている。予想外だったのだろう。
(…まあ、ルール守ったタイマンならいいのかな?)
目の前で完全武装のボン太くんと戦っている魔王…“狼の王”マルコ。
戦うのが3度の飯より好きな戦闘狂として知られるこの魔王は、ファー・ジ・アースの征服とかはどうでもいいらしいと聞いたことがある。
実際今回も単純に戦いを楽しんでいる様子だ。
(でも、なんでそもそもここに…?)
ふと、そんな疑問も覚えたが、そんな疑問は目の前の死闘を見てたらどうでもよくなった。
魔王のタイマンなんてそう見れるもんじゃない。ここは是非楽しんでおこう。そう、思えたから。

―――裏界

『引き分けじゃい!負けとらんけんね!』

ごく短いその便りを受け取り、彼女の今回の“雇い主”はほくそ笑む。
「そうか…ついに写し身とは言えあれと戦えるまでになったか…」
もはや部下では手に負えず、マルコを“雇う”ことにしたが、まさかそれとすら引き分けるとは思わなかった。
「素晴らしい。素晴らしいぞ!ボン太きゅんBE!」
惜しみない称賛を贈る。これでこそ、自らのコレクションに加えるに相応しい。
「モーリー様。手に入れてまいりました」
部下の落し子が自らの主、モーリー・グレイにそれを差し出す。
「うむ。では用意を」
「はっ」
恭しくそれ…『二大魔獣超決戦!勝つのは野生か、マシーンか!?~全試合内容45分~』のDVDをセットする。
「準備できましてございます」
「よし、下がれ」
頷き、部下に退出を促す。
「さて、存分に…楽しませてもらおうか」
自らのお気に入りの2匹の、壮絶なるダブルKOまでの過程を楽しむべく、魔王、モーリー=グレイは気合いを入れた。



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