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執行委員壊滅す

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匿名ユーザー

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16-581

執行委員壊滅す


主曰く 人は パンのみにて 生きるにあらず
されど また曰く
人民に パンと 自由を!
市民に 娯楽を!

例えいかなる状況においても人は生きることから始めねばならず、そしてまた、生きるためには食べなければならず、
この世界に強制的転移を余儀なくされた学園生徒、関係者もその理からは外れることはできようはずもありません。
学園世界に起こる様々なトラブルに対応する執行委員にとってもそれは軽視すべからざる重大事項です。
これから私が語る恐怖の出来事、執行委員および生徒会を震撼させたあの忌まわしい事件もその何よりの証であり、
これより逃れようする行為がいかに愚かであるかを示すものです。
全ての事件がそうであるように、この事件の発端もほんの小さな出来事から始まったのです。

「ワンタンメンにするね」「ギョーザとライスかな」「焼肉定食、大盛りでお願いします」「んー、五目チャーハンにタンメン」
「コッペパンを要求する」「チャーシューメンであります」「やあやあ、スモークチーズはないかい?」
「私はニラレバ炒めに豚汁」「じゃあ、カレーライス」「中華丼で」「ヒトデみたいなものでお願いします」
「ごはん……おねがいします」「麻婆丼一つ」
「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」「ニンニクラーメンチャーシュー抜きチャーシュー追加」「それにハシバミ草いれて」
「卵丼を」「エビチャーハンと半ラーメンだな」
「チャーシューメンと半ライスだ」「こっちはエビ炒飯」

事件の発端を特定するのは時に難しいことでしょう。
しかし、ここではあえてこれをその発端としてみたいと思います。
執行委員も学園の委員の一つである以上、部屋を一つ与えられています。
この日の執行部室には珍しく二桁以上もの人が詰めかけていました。
というのも執行委員はその激務から今までその活動についての報告書をほとんど出しておらず、
この日ついに提出を余儀なくされたという事情があります。
ただ、これについては報告書の様式が学園世界に集まった学園ごとにばらばらであり、
それを統一するのに手間がかかったためであり、執行委員の不手際によるものではないことを明記しておきます。
かかる事態にもかかわらず多くの人が執行部室に集まった理由の一つとして、
この日、報告書作成およびその手伝いに来た者の昼食代は全て生徒会持ち、と言うのがあったのは否定できません。
ただ、これには一つ予想していなかったこともあります。
この日の輝明学園の食堂は清掃のため閉店していたこと、また通常であれば秋葉原には多数の飲食店があるのですが、
転移により最寄りの飲食店が中華料理を主力商品とする上海亭のみになっていたことです。
すなわち、この日の昼、彼らの胃袋を満たすと言う使命は上海亭の双肩にかかっていたのです。
さて、上海亭に出前を頼むにあたり、とある立候補をした生徒が全員の注文を聞いたのですが、
その生徒はいざ注文をするために電話をかけたところで重大なミスを犯しました。
注文の内容を忘れてしまったのです。
そこで……

「ワンタンメンにするね」「ギョーザとライスかな」「焼肉定食に加えて焼き魚定食。双方大盛りでお願いします」
「変えずに、五目チャーハンにタンメン」「コッペパンを要求する」「チャーシューメンでありますよ」
「やあやあ、スモークチーズはあるかい?」「ニラレバ炒めに豚汁」「カレーライス!」「中華丼はやめてカツ丼」
「かわいいヒトデみたいなものでお願いします」「やっぱり、ごはんを」「麻婆丼を大盛りに」
「ニンニクラーメンチャーシュー抜き」「ニンニクラーメンチャーシュー抜きチャーシュー追加」「それにハシバミ草いれて」
「卵丼はやめて中華丼」「エビチャーハンと半ラーメンだったけど、ラーメンは普通ので」
「チャーシューメンと半ライスだ」「エビ炒飯」

一部中華でもなんでもないのがある気もします。
このとき注文内容が若干変わってしまったのは時間の経過により彼らの空腹感がいっそう高まっていたからでしょう。
ここにおいてようやく注文が完了しました。
そしてそれからまたしばしの時間経過。待てど暮らせど彼らが注文した料理は来ませんでした。
「上海亭か?おい、いつまでかかってるんだ?俺たちを空腹で殺す気か!」
業を煮やした彼らの代表として上海亭に抗議の電話を入れたのは一応、仮の執行委員のリーダー、柊蓮司です。
「そんなこと言っても、こっちも全力でやってんですよ。だから言ったでしょ。せめて注文を統一してくれたらって」
「いいから、とっとと持ってこい!」
かかる交渉の後、待つことしばし。
しかし出前は来ませんでした。
いくら時計の針が何周したかを数えても。
「貴様ぁ、俺たちの忍耐にも限度というものがあるぞ!」
「すいませんね。たった今出たところですよ」
「そういう時は誰だって今出たって言うもんなんだよ!」
柊も昔よく言ってたよね。
「やかましい!出た言ったら出たんだ!おとなしく小銭握りしめて待ってろ!この、下がる男が!」
向こうから電話を切ると執行部室内の注目を一心に浴びる柊蓮司はぐるりと振り返って叫びます。
「みんな、聞いてくれ。最新の情報によると出前はたった今、出たそうだ」
「なにぃ?」
「それはほんとうですか?」
「我々を欺こうとする欺瞞情報ではないか?」
このとき、口々に上がる不満の声を、柊蓮司はガラにもないリーダーシップで押さえていました。
空腹の方が調子いいのかな。あいつ。
「一度だけ、一度だけだ。信じて待とう!だが、無制限じゃねえ。30分、それがギリギリの妥協線だ。その30分が過ぎても出前が来なかった場合いかなる報復に出るか。各自、検討しながら待っておくように!」
ある意味柊蓮司の成長に出会えた感動に涙して30分。
それでも出前は来ず。そして、さらに30分。
しかし出前は来なかったのです。
「いい加減にしろよ。おとなしい俺でもしまいには怒るぞ」
「おっかしいな。タケシのやつ、出てからちっとも返ってこねえし。おれも困ってるんだ」
「てめえの事なんか聞いてねえんだよ!出前する気があるのかないのか、どうなんだ?」
彼らの血糖値は下降の一途をたどり、精神面への影響は甚大でした。
ですから、柊蓮司のこの乱暴極まりない言動も彼らの代弁であり、誰一人として非難するようなことはなかったのです。
「だから、タケシがな」
「だから、そんなこと聞いてねえ!外回りがいないならあんたが自分で持ってこい!」
「そう言ってもよう」
「ああ、そうか。持ってくる気が無いない無いとそう言え!」
「でもよう」
「そんときはなぁ、二度と出前はとらねえからそう思え!バカヤロー」
「なにぃ!バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
「バカヤロー」
でもねえ、柊。
ここで電話切っちゃうのはまずくない?
「ああっ、何しているのでありますか!」
「補給線はあそこだけだというのに!」
「だから、柊蓮司には交渉は無理だと何度も……」
「言ってない、言ってない」
「交渉は決裂したんだ!出前は……出前は来ない!」
泣き崩れる執行部室の一同。
「あんた達、何しているのよ。なによ、執行委員がたかが昼食を抜いているくらいでその醜態は」
ですが、こんな時にも冷静というか、そういう事とはお構いなしの人はいるもので。
「私の若い頃はねえ、300年くらい不眠不休、飲まず食わずで戦いに没頭したものよ」
誰かというと……まあ、ベル・フライさんなわけで。
「なぜここにいるーーーっ」
正体モロバれだけど。
「決まってるでしょ。手伝いに来たのよ。それに、まあ委員会活動しくなったし。第一、そんなの今更でしょ」
「今更?」
「誰が注文取ったと思ってるの?」
「は?」
そういえば、と部屋の中を探すと、この騒ぎにもかかわらず黙々と仕事を続けている人がいました。
「アゼルっっっ」
今まで誰も気づかなかったってのもなんだなー、と思います。はい。
どうやら委員会活動したかったというのはアゼルさんみたいです。
「全く、どいつもこいつも学園を代表してるって言うのに半人前で……とにかく、私はこれからホグワーツに打ち合わせに行くから、えーと……そこの、レイフォンフォン」
「ぼ、ぼくですか?」
「そう、だらけさせないように。いいわね」
「あの……」
「アゼル困らせたら、殺すわよ」
それで、ほんとに行ってしまったわけだから誰も止められなかったわけで。
「魔王ってのは冷酷だな。実際」
「ああ、まったくだ。たぶん今までで一番冷酷なんじゃないか」
裏界の大公、蝿の女王、ぽんこつだなんだと言われている彼女がどれほど冷酷か。
このとき、私たちは初めて理解したのでした。
酷いよ、ほんと。


そして悪いことは常に重なるものです。
「謝りましょう」
この事態を打開するため、私たちが出した結論はこれでした。
出前をやめる、と言う選択肢はありません。
お昼ごはんが生徒会持ちなんてもう二度とないと思うし。
「はい。上海亭」
「こちら執行委員会、執行部室」
「おお、飯食ってねえ割には元気そうだな。なんか用か?」
この時の柊蓮司は滝のような涙を流し、悔しさをかみしめていました。
「前言を撤回する。改めて出前をしてくれ」
「わからねえな。なんの話だ?」
「だから、貴様をバカヤロー呼ばわりしたことを撤回すると行ってるんだ!バカヤロー」
もう、誰か止めてあげようよ。
「お、おじざん?ごめんであります。本人も反省しているであります」
「まあ、いいさ。で、注文は?さっきと同じでいいのか?」
「もちろんであります。お願いするであります」


これで食事にありつける。
誰もがそう思っていました。
ですが、30分たっても、1時間たってもまだ来ません。
またも裏切られた、彼らはそう思ったのです。
「もうゆるさねえ。こうなったら乗り込んでやる」
よほどお腹がすいていたのでしょう。
おとなしいだとか、冷静だとか、無口な人もこの時ばかりは拳や拳銃や杖を振り上げて柊蓮司に賛同し、シュプレヒコールまであげていたのです。
それを止めたのが、この人。
「待って」
アゼルさんでした。
「みんなで行ったらお見せの人が困ると思うから。私が行っくる」
「え?」
「私が注文したから」
言ってることはわからないでもないのですが、このときのアゼルさんはうつむいた姿がどことなく頼りなさげでした。
だからといって、やる気の彼女を止めるのも気が引けてどうしようかとみんなが考えていると……
「私も一緒に行くにょろ」
誰かついて行けば安心です。
それを言い出した頼りがいのある人は誰か
「うん、行こう。ちゅるやさん」
「おまえかーーーーっ」
「にょろ~ん」
いや、まあ、ねえ。
「皆さん心配していますよ。しょうがないので行きましょう」
再びの立候補にみんな光明を見た思いをしたことでしょう。
「風子にお任せください」
「またかーーーっ」
その、あの、ね。
「アゼルさん。ちゅるやさん。迷子にならないように風子と手を繋いでいきましょう」
何かいろいろ力尽きてしまった私たちには、それを止めることは世界を救うよりも難しかったわけで。


それから1時間。
上海亭からもうにはもうとっくに帰ってもいい時間のはずです。
なのに、3人とも戻ってきません。
そんな時です。電話が鳴り出しましたのは。
「はい、もしもし。こちら執行委員」
「にょろ~ん」
その電話からはちゅるやさんの声と一緒にメキメキ、だとがバキバキ、だとかドカーン、とか音が聞こえていました。
「何があったんだ?おい」
「にょろ~んにょろ~んにょろ~ん」
「にょろ~んじゃわからねえよ。他に何か言ってくれ」
「にょれろ~~ん」
「わかるか!」
がちゃ、つーつーつーつー
突如切れた電話の発信音に不安をかき立てられ、みんなは一斉に立ち上がり、執行部室を出て行きました。


その時の学園から上海亭への道行きはかなり壮観でした。
ある者は、走って。ある者は飛んで。ある者は轟天号と名付けた自転車で。
そのほか、車、バイク、飛行機、箒、竜、ASに汎用人型決戦兵器。などなど
あー、どっちかというと百鬼夜行か。
どこの世界の危機と闘っても互角以上に戦えそうでした。
そして、上海亭。着くなり柊蓮司は戸を開けて
「おい、親父。ここに誰かこなかったか?」
「……来た」
上海亭の親父さんは随分若い人でした。
赤い長い髪と赤い瞳。
輝明学園の服の上にエプロンを着ています。
そして、部屋の隅にはガンナーズ・ブルームがありました。
ぶっちゃけ、灯ちゃんが中華鍋とお玉持っていたのよね。
「お、おい。なら、これは」
店内には所狭しと無数のお皿が並べられ、その上には形容のしがたいモノがいくつも並べられていました。
そしてそのお皿の上にある何かは、一斉に柊蓮司達に襲いかかったのです。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


事件の真相とは得てして単純なものです。
つまりはこう言うことです。
柊達の注文を了承した上海亭の親父さんは調理を開始したのですが、その後、突然現れたエミュレイターだか悪魔だかに襲われました。
それは、ちょうどその時、上海亭に来店していた緋室灯により撃退されたのですが親父さんは負傷してしまいした。
注文を受けながらもそれを作れない親父さんの男泣きの涙に感動した灯ちゃんは親父さんにこう申し出ます。
「私がかわりに作る。私は料理の達人。和洋中、フランス、ドイツ、イギリス、パプアニューギニア、ブラジル、チリ、ハイパーボリア、ルルイエの料理ができる」
灯ちゃんはその言葉を証明するために、一品作りました。
それを一口食べた親父さんは感動のあまり安心して店の奥で寝てしまったそうです。
なので灯ちゃんが親父さんに変わって出前の分を作っていたそうです。
アゼルさん達は、先にできた料理が冷めないうちにと持って帰ったんだそうです。


さて、灯ちゃんの中華と柊達の戦闘は熾烈を極めました。
星の光で鍛えられた聖剣も、極めた魔法も、オーバーテクノロジーの粋で作られた兵器ですらも決定的なダメージにはならなかったのです。
それを一言で表すとすれば……あの人の言葉が適当でしょう。
「料理はせめて<雑>にとどめてください。お願いします」
このままでは学園世界は中華料理によって滅ぼされてしまいます。
みんなも倒れてしまい、柊蓮司も満身創痍。
剣を杖に膝で立つのが精一杯です。
「ちくしょう。腹が減ったな。せめてなんか食ってれば」
「だったら、これを食べてよ」
普段であれば、こんな時に渡されたカツ丼なんて柊蓮司も食べなかったでしょう。
ですが、その食欲を刺激する香りに柊蓮司は耐えられず、添えられた割り箸を手に取り、ごはんとトンカツと溶き卵を一緒に口の中にかき入れたのです。
「コロモは花が咲いたようにからっと香ばしく、肉は柔らかくジューシー!卵も絶妙の半熟!こ、これは!」
その時奇跡が起きました。

「うー」

柊蓮司の手足には力が蘇り

「まー」

プラーナの内包値や解放力は通常の数十倍になり、最大値まで回復

「いー」

あまつさえ、巨大化したのです

「ぞーーーーーーー」

そして、体中からあふれる黄金のプラーナのみで暴れる中華を跡形もなく蒸発させてしまったのです


これが今回の執行委員壊滅事件の全てです。
ちゅるやさん、風子ちゃん、アゼルさんは柊がハイパーモードになるまで逃げていたようです。
そうそう、一つ書き忘れていました。
この事件を解決させたカツ丼を作った彼こそ、学園世界最高と言われる少年料理人。
「おいしーよっ」
ミスター味っ子こと味吉陽一くんです


  • レイフォン@鋼殻のレギオス
  • ちゅるやさん@にょろーんちゅるやさん
  • 風子@CLANNAD
  • 味吉陽一@ミスター味っ子
TV版機動警察パトレイバー29話「特車二課壊滅す」のパロディ

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