走れVictria


これはネツ国の宝物庫から発見された書物であり、ネツの英雄Victriaの活躍が記されている。
著作権フリーの作品なのでここに一部中略した本文を引用する。


Victriaは激怒した。
必ず、かの邪知暴虐のガイドWIKIを除かねばならぬと決意した。
Victriaには自演はわからぬ。Victriaは、寡黙な火皿である。
アイスジャベリンを使い、ヘルを撃って戦ってきた。
けれども風評には人一倍敏感であった。
きょう未明Victriaは首都ベインワットを出発し、野を越え山越え十里離れたこのドランゴラ荒地にやってきた。
Victriaには父も、母もない。夫も無い。本国の、多くのファン達に囲まれ、一人暮らしだ。
このファン達は、或る上質な記事を近々、書き足すことになっていた。
それゆえ、ふさわしい戦歴やら火皿のPSやらを見せつけに、はるばるドランゴラ荒地にやってきたのだ。
まずはヘルのPwをかき集め、それからドランゴラの中央をぶらぶらと歩いた。
歩いているうちにVictriaは戦場の様子を怪しく思った。ひっそりしている。
夜のせいばかりではなく、ドランゴラ荒地全体が、戦場の気配がしない。だんだん不安になってきた。
しばらく歩いてNighthoodの部隊員にあい、語勢を強くして質問した。
「我々は、WIKIで晒されてます。」
「なぜ晒されるのだ。」
「あなたが自演をしている、というのですが、誰もそんな、あなたに自演などさせて居りませぬ。」
「たくさんの自演容疑をかけられたのか。」
「はい、はじめはPスキルを。それから、厨房度を。それから、またPスキルを。
それから、Pスキルを。それから、Pスキルを。今日はページを凍結されかけました。」
聞いて、Victriaは激怒した。
「呆れたWIKIだ。生かして置けぬ。」



Victriaは戦争好きな人物であった。初心者を、背負ったままで、のそのそネヲチ本スレに書き込んで行った。
たちまち彼女は、巡邏のネヲチ民に自演認定された。
調べられて、Victriaの懐中からはWIKIを編集する為のアカウントが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
Victriaは、ネヲチ民にヲチされた。
「このアカウントで何をするつもりであったか。言え!」
「WIKIを粘着の手から救うのだ。」とVictriaは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」ネヲチ民は、憫笑した。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの妬みがわからぬ。」
「WIKIで晒すのは、もっとも恥ずべき悪徳だ。ネヲチ民は、人の自演さえ疑っておられる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、お前のページだ。あの発言は当てにならない。
人はもともと私欲の塊さ。信じては、ならぬ。」
ネヲチ民は落ち着いてつぶやき、ほっとため息ついた。
「わしだって正しい評価を望んでいるんのだが。」
「何のための評価だ。人を貶めて満足するためか。」今度はVictriaが嘲笑した。
「黙れnoob。」ネヲチ民はさっと顔を上げて報いた。
「素面ではどんな清らかなことを言える。
お前だって、今に、WIKIの自演がばれてから、泣いてわびたって聞かぬぞ。」
「ああ、ネヲチ民は利口だ。私はちゃんと評価を受ける覚悟で居るのに。評価を上げてくれとは絶対に言わない。
ただ、私に情けをかけるつもりなら、評価までに3日間の日限を与えてください。
ネツにいる大勢のファンに、説得をしてやりたいのです。
私を信じられないのならば、よろしい、WIKIに私の項目があります。唯一無二の私のページだ。
私が逃げてしまって、3日目の日暮れまでに戻ってこなかったら、Pスキルの項目を★1にしてください。」
「願いを、聞いた。そのページを教えるがよい。三日目には日没までに帰って来い。
遅れたら、Pスキルの項目を、きっと★1にするぞ。ちょっと遅れてくるがいい。お前の自演は、永遠に見逃してやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる」
「はは。自演バレしたくなかったら、遅れてこい。お前の心は、わかっているぞ。」



ガイドWIKI、Victriaのページは深夜、ネヲチ民に注目された。VictriaはWIKIに書き込みを行った。
WIKIは無言で更新された。
Victriaはすぐに出発した。初夏、満天の星である。



Victriaはその夜、一度も戦争せず十里の道を急ぎに急いで、首都へ到着したのは、あくる日の午前だった。
取り巻いてくるファンは、よろめいて歩いてくるVictriaの、覇気のない姿を見て驚いた。
そうしてうるさくVictriaに質問を浴びせた。
「なんでもない、ネヲチ本スレに用事を残してきた。またすぐ書き込みに行かなければならぬ。
明日、 戦場に来てくれ。早いほうがよかろう」
Victriaは、またよろよろと歩き出し、クノラへ行って戦争し、間もなく床に倒れ伏し5デッドもらってしまった。
ファン達は、昼間にドランゴラへ来た。
ファン達に説教したところ、エルから宣戦布告され、やがて戦争が始まった。
何か不吉なものを感じたが、それでもヘルを重ねるうちにVictriaは、
満面に喜色をたたえ、しばらくは、ネヲチ民とのあの約束をさえ忘れていた。
ゲージが空になったのは明くる日の薄明かりの頃である。
Victriaは跳ね起き、南無三、撃ちすぎたか、いやまだまだ大丈夫、これから出発すれば、約束の刻限までには十分間にあう。
今日は是非とも、ネヲチ民達に、自演でないと見せてやろう。
そうして笑って戦争してやる。身支度はできた。
さて、Victriaは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。


私は今夜、評価を受ける。真っ当な評価を受けるために走るのだ。私の評価を救うために走るのだ。
ネヲチ民の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は評価を受ける。
さらばファンよ。
Victriaは、つらかった。幾度か、WIKIを更新しそうになった。
えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。
首都を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、ログアウトした頃には、
雨も止み日は高く昇って、そろそろハイリジェが抜けてきた。
折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、
Victriaは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、
よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
今、ここで、評価されずにいらいらするとは情無い。
Victriaのファンは、おまえを信じたばかりに、お前の項目を★1されなければならぬ。
おまえは、稀代の自演の神、まさしくネヲチ民の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、
全身萎えて、もはやファイアすらかなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった
ファンよ許してくれ。私は、いつでも君達に任せた。君はいつでも更新が多かった。
本当に佳いファンであったのだ。いちどだって、君達の更新を、不満に思ったことは無かった。
ネヲチ民は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、私の項目を★1にして、
私の自演を見逃すと約束した。私はネヲチ民の卑劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私はネヲチ民の言うままになっている。
WIKIだの、スレだの、信者だの、戦歴だの、考えてみれば、くだらない。
戦争で一般人の羨望を受ける。それが私の常道ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い自演王だ。
キャラデリートでも、勝手にするがよい。やんぬる哉。
――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。


(中略)


私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! Victria。


(中略)


「ありがとう、ファンよ。」Victriaは言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆の中からも、乾杯の声が聞えた。
ネヲチ民は、群衆の背後からVictriaの様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
他人のWIKI更新とは、決して空虚な妄想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、ガイドWIKI万歳。」
一人のネヲチ民が、よく評価されたページをVictriaに捧げた。
Victriaは、まごついた。一人のネヲチ民は、気をきかせて教えてやった。
「Victria、君は、自分のページを更新したいみたいじゃないか。早くそのページを更新するがいい。
このVictriaのファン達は、Victriaの更新を、皆に自演と見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
Victriaは、ひどく赤面した。


  • クソワロタwwwwwwwww乙wwwwwww -- 名無しさん (2008-01-25 17:57:30)
  • うめぇwwwwwwワロタじゃねーかwwwwwww -- 名無しさん (2008-01-26 01:49:19)
  • なんだこのFEZ版ブロントさんはwwwwww -- 名無しさん (2008-01-29 01:38:18)
  • 走れメロスか -- 名無しさん (2008-03-25 02:25:52)
  • おまえ消される(ry -- 名無しさん (2008-04-02 05:40:47)
  • うめぇwwwしかしなげぇww -- 名無しさん (2008-05-26 10:19:53)
  • うますぐるww -- 名無しさん (2008-07-19 18:40:54)
  • 最高ダYO~♪ -- ダンサー (2008-07-31 20:54:22)
  • これは感動したwwGJwww -- 名無しさん (2008-08-11 12:15:24)
  • 腹筋割れたww -- 名無しさん (2008-08-20 16:21:17)
  • マジで神すぐるwww -- F鯖の子 (2009-06-25 23:10:14)
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最終更新:2009年06月25日 23:10