ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

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4-353-354、356-357、359-360、362-364 ナイトウィザード!クロス群雄伝 道を切り開く者たち/中篇

 炎と炎が激突する。
 紅の炎、黒い炎。二つの焔が舞い踊るように、空を踊り、激突し、鍔競り合う。

「くっ!!」

 紅き炎の所有者は鴇羽 舞衣。

「A―HAハハハHAHAッ!!!!」

 黒き炎の宿り手はMAI。
 紅蓮と漆黒の炎舞は、二人の少女を役者として演じられていた。

「くっ!? この力は!」

「騙されてるの、貴方は騙されてるのよっ!!」

 黒い炎が膨れ上がり、爆炎を上げるようにMAIの一撃が舞衣を弾き飛ばした。

「きゃああ!」

 高層ビルの壁へと背中から激突し、強引に肺の中の酸素が吐き出される。
 ――痛い。
 涙が出そうだ。
 風華学園での騒動もあって戦い慣れているとはいえ、苦痛には慣れていない。否、戦い自体
そこまで好きなものでもない。
 戦っていたのはいつも大切なモノを護るために。
 誰かを救うために。
 大事な人に手を伸ばすために。

「なんで分からないの? ……NANでわかRAないの?」

 壁にめり込んだ舞衣の前に、炎の翼を広げたMAIが浮かんでいた。
 狂気の表情。
 失望して、絶望して、ありとあらゆる負の感情に塗り潰された……悲しい顔。
 舞衣は思う。

(なんでそんなに悲しい顔をしてるんだろう?)

 自分とそっくりの顔だからこそ思う。
 私はどんな思いを抱いたら、あんな顔を浮かべるのだろうかと考える。
 そして、その想像が一つの畏怖すべき結論となって像を結びかけた瞬間。

「あなたは“裏切られる”」

「え?」

「アイツは、絶対にあなたを裏切るの」

 そう告げるMAIは静かに彼方の方角を指差した。
 その指先にいるのは、二体の暴れ狂う白と黒のカグツチの姿。

(カグツチ? いや、違う)

 白きカグツチ。
 その鱗に掴まり、決死な顔で共に戦いを潜り抜ける一人の少年がそこにいた。
 鴇羽 舞衣にとって掛け替えの無い少年。
 ただ一人の愛する人。

 ――楯 祐一。

「アイツはあなたを裏切るわ。絶対に」

「そんなことはない! 絶対に!!」

「――“本当に?”」

「え?」

 悲しげな笑み。
 悲痛に、壊れた笑み。

「ワタシは――“裏切られたの”」

 黒き制服。
 その上着をMAIは素手で破り、その胸元に浮かぶ“Hime”の印が見えた。
 けれども、それ以上に――“醜く抉れた傷跡”があった。

「汚いでしょう? これは――アイツにやられたの」

「ゆ、祐一に?」

 嘘だと、心が叫ぶ。
 心が、思いが、悲鳴を上げてMAIの言葉を否定しようとする。

「そう、“なつきを選んだ祐一に”」

 その言葉に、舞衣の心が軋みを上げた。



 銃型のエレメントが手の中で踊る。
 目線と銃星を合わせず、何十何百と撃ち続けた己の感覚で狙いを定め、引き金を引いた。

 狙いは己の親友と瓜二つの――偽者。
 だがしかし、その引き金を振り絞るよりも早く。

「アハハハハ! 甘いなぁ、なつきは!! そんなんでうちの清姫を倒せると思ってとるん?」

 その姿がチャイルドによって隠れる。
 銃弾は空しく、清姫の装甲に弾かれた。

「くっ! デュラン!」

「甘い! デュラン、てええ!!」

 エレメントでの射撃を諦め、チャイルドに指示を出す。
 ――よりも早く、漆黒のデュランが咆哮を上げた。
 咄嗟に反応して飛び退いたなつきの足元に、デュランの砲撃が突き刺さり――爆砕。

「がぁっ!!!」

 爆風に吹き飛ばされ、なつきの体が十数メートル離れたアスファルトの上を転がる。

『ギャイン!』

 それと間をおかず、清姫の一撃で白銀のデュランがなつきの傍まで吹き飛ばされてくる。

「デュ、デュラン……くっ!」

 よろよろと震える膝を支えながら、立ち上がろうとするなつき。

 その足を、SIZURUの連接鞭が薙ぎ払った。

「がっ!」

「かわええな~、なつきは……」

 再び地面を這い蹲るなつきに、SIZURUはゆっくりと歩み寄る。
 クスクスと壊れた狂気の光を発す瞳で、SIZURUはなつきを舐めるように見た。

「そうそう、そういえばなつきは知らんかったかな?」

「なにが、だ?」

「うちらがここにいる理由。実はな、うちら――死んでるんや」

「なっ?!」

 SIZURUの言葉に、なつきが大きく目を見開く。
 その表情にSIZURUは愉悦の笑みを深くしながら、言葉を続ける。

「おかしいとは思わんかったのか? 自分と同じ顔の人間がいることに、そして“うち”がHime能力
を持っていることに」

「……SIZURU、ベラベラと喋るな。意味がない」

「ええやないか、NATUKI。頭でっかちばっかじゃ、もてへんよ?」

「必要を感じないな……私は、私一人が美しければそれで良い」

 髪を掻き上げるNATUKIの態度に、やれやれとSIZURUが首を振る。
 その間にもなつきは動くチャンスはあったのだが、驚愕の事実に凍り付いて、その好機を逃していた。
 いや。

「そうそう、話の続きやったな。なつき」

 最初からそんな好機はなかった。
 狂った光を発する瞳で、なつきを見つめるSIZURUの目には言葉とは裏腹に一片の隙もなく、
狂気に満ちていた。

「うちらは死んどる。魂だけのおばけが、ちょっとばかし肉体を取り戻しただけに過ぎへん」

「じゃあ、今生きている――お前じゃない静留は! 私はなんなんだ!?」

「気付いてへんの? 今、この世界は……一つじゃないんやで?」

「は?」

 怒声を交え叫んだ言葉は、意外な返答によって返された。

「疑問に思わんかったの? あんなむちゃくちゃな連中が暴れて、空があんなにもいっぱいの化け物で
あふれて、人型ロボットが空を飛んで、くるっとると思わんか?」

 笑いながら、SIZURUは語る。
 真実を。
 歪んだ現実を。

「あらゆる可能性の内包。その中にはなつきがHimeな世界もあれば、そうじゃない世界もある。
うちが良い証拠や、うちはうちがHimeな世界からやってきた別世界の“静留”や。それも……」

 ゆっくりとSIZURUの手が、なつきの首を這っていく。
 冷たく、きめ細やかな静留の手と同じ感触。
 デジャヴを感じる不快感と疲労感の二つに硬直するなつきの耳に、最後の言葉が囁かれた。

「なつき。“あんたと一緒に死んだ世界からや”」

 その時、なつきの意識はギコチナイ音を響かせて停止した。



 燃え上がる世界。
 焦げ臭い香り。
 どこまでも脳髄を痺れさせる激痛と熱。

「ぁ……」

「マサキ、気が付いたニャね!」

 目を見開く。
 そこには燃え盛る世界で、モニターが覆われていた。

「一体……何が起きたんだ――ッ!?」

 コンソールを操作しようとして、手に激痛が走る。
 見れば普段は手袋で保護しているはずの両手が、黒く焦げていた。
 炭化はしていないが、重度の火傷は負っているであろうことが感覚で分かる。

「チッ、しくじったか」

 原因は分かる。
 一瞬閉め遅れた胸部装甲、その隙間から噴出してきたあの黒い龍の灼熱の吐息。
 その炎に焼かれたのだと理解する。
 あれほどの威力。
 普通にPTやAMだったら、一発で蒸発していることの疑いようのない熱量だった。

 サイバスターが無事なのはラ・ギアスで精製されたオリハルコン製の装甲だからに他ならないな。
 呪符的効果のある幾何学模様を金属粒子単位で封じ込め、地上世界とは異なる魔術体系で
作り上げられた魔術機だ。
 単純な科学兵器ならばともかく、ああいった非常識の異能の類には耐性はある。
 それでも無事とは決して言えないが。

「やるしかないだろ!」

 決意に満ちた目で、そう吼え猛ってマサキが操縦桿を握り直そうとした瞬間だった。

『やれやれ、相変わらず単純な人ですね』

 それは強制的に繋げられた通信機から響く声。

「なっ、この声は?!」

『あなたはそこで待っていなさい。やってもらうことがありますのでね』

 響き渡る抑揚のない男の声。
 その声を、マサキは忘れるわけがない。
 それは――

 その声の持ち主は――



「ふー、暇だねー」

 ねじれた城。
 その正門前で、MIDORIは愕天王の上に腰掛けながら、来るとも知れない侵入者を待っていた。
 いや、具体的にいえば、他の門番と戦っている奴らがここまで来ないのかと期待しているのだが。

「つまんないの」

 激戦は続き、地上は再びあふれ出そうとするあしきゆめに満たされていく。
 幾人もの戦士が居た。
 幾人もの異能者が居た。
 幾人もの勇者となりえる者がいた。

 けれども、空を飛べなければ――この門を潜らなければ城には入れない。
 いや、もう城の“所有者”の人物が望んだ人間は中に入り、もはや誰かを入れる必要も無いのだが。

「……やれやれ、退屈だねぇ」

 MIDORIは愕天王の上で欠伸をして……

『ならば、その退屈を打ち砕いて上げましょう』

 上空から降り注ぐ声に、動きを止めた。

「は?」

 閃光が――虚空から撃ち出された。
 そして、その閃光は――彼女が護るべき正門を“砕いた”。

『なっ?!!』

 その光景を見て、驚いたのはMIDORIだけではなかった。
 異形と戦い続けていた緋室灯と結城 小夜。
 アララ・クランと砲撃魔法を打ち合っていた高町なのはも。
 エイジャ兄妹と激戦を繰り広げていた日向とナイトメアも。

 そして、城へと目指し、戦っていた全ての人間と門番が目を見開いて驚愕する。

『いつまでも遊んでもらっていては困るのですよ』

 そこには――“蒼き巨神”が浮かんでいた。
 機械仕掛けの巨人、丸みを帯びた装甲に宝玉を思わせる輝きを帯びた結晶体を肩に付けた
鋼の破壊神。
 その名を知る者は少なく。
 されど、知る者は畏怖と共にこう語る。

 ――“グランゾン”、と。


「お前はぁあああ!」

 そして、もっとも早く反応したのはMIDORIだった。
 乗っていた愕天王から飛び降り、絶叫にも似た咆哮を上げる。

「トランスフォーム!!」

 それは決められた解除コード。
 愕天王の形状が変化する。
 金属仕掛けの腕が、足が、装甲が、全身が複雑怪奇な変形を行い――そこに飛んでいたのは。

「“愕天大王”! Mark-Ⅱ!」

 蒼き破壊神と同じ鋼の巨人だった。
 金属の翼をはためかせ、その巨躯を持ってグランゾンへと愕天大王が襲い掛かる。

「このぉおおおおおおおおおおお!!」

 振り翳されるは巨大な鉄槌と変わらぬ鋼の拳。
 加速を帯び、並大抵のモノならば跡形も無く粉砕する強力な力。

 されど。

『邪魔ですよ』

 蒼き破壊神――グランゾンが歪曲した空間から取り出した一振りの剣、グランワームソードの斬撃
を持ってそれは受け止められ。

「っ!?」

『雑魚には用はありません――ワーム・スマッシャー発射』

 グランゾンの胸部のコアが輝いたと思った次の瞬間、愕天大王の胸が“後ろから”貫かれた。

「……なっ」

『消えなさい、哀れなる亡霊よ』

 閃光が瞬く。
 腕を、足を、翼を、胸を、頭を。
 十秒にも満たない僅かな間に虚空より飛び出せし数百を超える光弾が、愕天大王の機体を蹂躙し、
粉砕する。

 そして、光が収まったときに飛んでいたのはグランゾンのみだった。

『やれやれ、思ったよりも硬かったですね。予定より二秒も壊すのに時間が掛かりました』

 拡声マイク越しの冷徹な声。
 それは戦場を支配し、圧倒するのに足りる威厳を持っていた。

『さて、と』

 戦場にいる数々の者たちの視線を意にも返さず、グランゾンは――それを繰るシュウ・シラカワは嗤った。

『懺悔の時間の始まりですよ、セプテントリオン?』


 セプテントリオン。
 そのフットワーカー。
 彼は今回の事件で様々なミスを犯した。
 予定外の人物たちの乱入、そしてそれを予測出来なかったこと。

 だがしかし、その中でも最悪のミスがあった。

 柊 蓮司と玖珂 光太郎。
 二人の少年を神へと登り上げる儀式。
 そのための生贄――すなわち供物としてリストアップした人間の中に【シュウ・シラカワ】の名前を
上げてしまったこと。
 たかが次元世界の一つの機動兵器の開発者。

 その程度の評価で選んでしまったことを。
 彼が悔いる時間が与えられているかどうかはまだ誰も知らなかった。



 ――今度こそ後編に続く!


4-407 一方、魔界にて

「こんばんは、ニュースの時間です
この番組は全魔界、全宇宙に向けてギガビジョン放送にてお届けします。
まずはどうでもいい話題から」
『遂に滅びるか!?人間界!!!』
「人間界で起きている騒動は激戦化の一途を辿り、もはや止まる事の出来ない暴走列車と化しています」
「無事帰還した現地の特派員による貴重なインタビュー映像をどうぞ」

妖狐Sさん(永遠の765歳)
「いやはや、わしらの世界の時よりカオスじゃの」

ペンダントAさん(ピー歳)
『あの子と坂井悠二なら大丈夫だろう』

魔法使いKさん(ピー歳)
「弾幕はパワーだぜ!」

ロンギヌスの皆さん
「うわー、だめだー」

下がる男Hさん(ピー歳)
「今それどころじゃねぇんだ!戦闘中だから後にしろッ!」

ペンギンHさん(ピー歳)
「今回は俺の出番は無さそうだな」

騎爵Yさん(ピー歳)
「それも私だ」

編集者Kさん(ピー歳)
「人類は滅亡する!!」

声優Tさん(ピー歳)
「いぇーい、矢野君見てるー?俺魔界テレビに写っちゃったよー」

堕天使Fさん(1512歳)
「もうサイコーです!ヒーロー達の夢の競演をまじかに見られるなんてっ!
はっ、電池表示の残量が無いです!ラハールさんバッテリーバッテリー!!」

「以上です。好き勝手喋られてまったくインタビューになってない辺りに凄まじい混戦の様子が伝わってきます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「まぁ、魔界じゃ頻繁に起こる事であり他の世界が滅んでもどうでもいいんですけどね、プレネールさん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そうですね。お暇な近隣の魔王の方は侵略でもすればいいんじゃないですか?」
「では、次のニュースです。元超魔王バールに親戚が居た可能性が発覚しました…………」

4-419

金色のガッシュベル in

百人の魔物の子供たちの戦いもガッシュとブラゴで最後の二人となり、中学卒業式を迎えようとしていた高嶺清麿。
彼らも当然この事態を見逃すことは無かった。

 東京上空

清麿はガッシュの伸ばした黒マントの上に乗り、マントを使った飛行能力を使い城の近くまで来ていた。
「ガンレイズ・ザケル!」
清麿の指差す方向にガッシュの口から複数の電撃を同時に放ち多くの怪物たちを撃ち落す。
「エクセレイ・ザケルガ!」
今度は雷の巨大な刃が20mくらいの飛行する怪物を貫く。

「あれは罠だ。次から次へと出会うはずのない者達が集うなんて矛盾は世界が必ず修正してくる。」

清麿が一度死の淵から甦ったときに身に着けた能力、答えを出す者(アンサートーカー)の力で城をこのままにした場合の答えを導き出していた。
その眼を使ってるため清麿の目は三つの輪となっている。
魔術師辺りなら魔眼と称すだろう。
瞬時にあらゆる答えを引き出す能力で引き出した答えは、世界に関わる結界の破裂と東京周辺の完全消失。
それも後数時間。

「清麿あの城をどうやって破壊するのだ?」
ガッシュが問いかけてくる。
「いくつか答えが出ているが、城をバオウで破壊するか、城に進入して核に当たるものを破壊する。
だが、城は誰かが侵入したようだから外から破壊するわけにはいかないな。
時間があれば全員を集めた作戦を使えるがもう時間も足りない。
城の内部は俺の力なら最短距離でたどり着ける。」

「うむ、だがいいのか清麿、魔界のみんなの力を借りなくても。」
「ああ、これは俺たち人間界の問題だからな。」

「清麿!忍者が走ってるぞ!」
突然ガッシュが地上を見て言った。
「そんなわけ・・・いた。」
道路を猛スピードで走る忍者を空中から眺める二人。

「なんのコスプレ・・・いやこいつは本物だ。ガッシュ、あの忍者の傍まで飛んでくれ。」
「わかった清麿。」
ガッシュは地上へと降下し始めた。

「ん?なんだ人が飛んでるぞ。」
当然、忍者も彼らの姿を視認する。
しかし、慌てない。
宇宙人だっているのだから人が空を飛んでも可笑しくないと無理矢理納得した。
彼の名前は陰守マモル。
忍者でも頂点に立つ陰守一族の少年である。

「あのーもしもし忍者さんあの城へと向かってるなら一緒にいきませんか?」
子供のマントに乗った中学生か高校生か微妙な年頃の少年が話しかけてきた。

「その便利そうなマントに乗せてくれるなら。どうやって城に潜入しようかと考えてたんだ。」

「私の名はガッシュ=ベルでこちらは私の友達で高嶺清麿だ。」
マントを羽織った子供が名乗った。
「僕は陰守マモルよろしく。」
「お互い自己紹介して悪いが時間がない城の潜入に手伝って欲しい。」
「僕は最初からそのつもりだったけどね。」

こうして、高嶺清麿とガッシュにマモルを加えた俄かトリオは城へと向かって飛び立った。

4-420

~武蔵野市・夢うつつ~

 腕枕でくうくうと寝息を立てる、白い少女。
 誰にも干渉されない場所で、誰よりも自分――正確には自分の全てをを任せている人間だが――
を受け止めてくれる、【彼】の二重の意味での安住の地。
 宿主が眠っている今も、【彼】が顕在化することはない。ただ夢の中でのみ、宿主と混ざった状態で存在する。
 即ち『夜ノ森優脳内会議inどりぃ~む』である。
 が、今日は夜ノ森がハッスルしすぎで燃え尽きているので【彼】の比率がやや濃い。
 夢の中で、時間や距離は意味を成さない。
 だから遠くにありながら【彼】は見ていた。秋葉原の惨状を。空に聳える異形の城を。世界を諦めないと叫んで戦う者たちを。
 だから【彼】は考えた。
 ――月末に地デジ対応テレビとやらを買いに行くと言っていたな。
 秋葉原がなくなってしまえば買い物に行けなくなる。
 ――夜ノ森も真白も困るだろうな。
 それは避けたい。夜ノ森の機嫌は自分の機嫌である。不愉快は厭だ。そのために世界を何度も繰り返してきたのだから。
 ――妹と陰陽師が困っているな。
 異世界の機神の放った光によって一時的に敵は数を減じていた。が、どこから湧いてくるのかまたしても雲霞のごとく押し寄せている。
 ――このまま放置していたのでは……世界が滅びるであろうな。
 どうなっても武蔵野市一帯は平気だろう。ここは既に別世界といってもいいほど強固に安定させてある。
 だがその外は違う。そして市外全てがなくなるというのは――今は人間の身としては流石に困る。
 ――気に入らんな。
 世界観の違う連中。七星を名乗る死の商人どもも、世界の方向性を決めるなどという馬鹿げた存在も。
 七星は名も無き世界で暴れておればよい。ワールドオーダーなど七つ世界のためにのみ存在すればよい。
 ――本当に、気に入らん。
 八つ世界に介入する不届きな連中。我の世界を食い荒らす、度し難い愚か者ども。
 ――さて、どうしてくれようか。
 直接力を振るうのは拙い。色々なものが壊れてしまう。我はまだ幸せな夢の中でまどろんでいたい。
 そこで、ふと思い出した。昔の自分を討った、あの力。あれならば最小限の干渉で最大の効果を得られるのではないか?
夢の中、上も下もない空間に手を振るう。
 その描く軌跡は即ち奇跡。世界を創りし者の、僅かばかりの我侭を通すために生まれる輝石。
 石はプラーナ。たった今集められた、存在そのものを司る万能なる力。
 石が、力が、形を、変える。

 ――まあ、こんなものか。

 一瞬の後、何もなかった虚空には大量の薄っぺらいカードが並んで浮いていた。
 巫女やら忍者やら絢爛舞踏やら砲撃魔導士やら様々な人の姿が絵柄として刷られたカード。
 創造の際、特に注力したカード6枚を手に取る。
 【下がる男】が3枚。
 【青にして群青ならぬ者】が3枚。
 チートもいいところだ。どうやら傷の治療をするらしいので、それに乗じて使ってしまおう。

 ――さあ、受け取れ。小さきものども!

 戦場と化した秋葉原に、決して小さいとは言えない【小さな奇跡】が舞い降りる――



と、所謂「奇跡の大逆転」を特に理由も無くやってもよかろうな舞台装置を用意してみました
内容説明しときますー

  • PC版ナイトウィザードでは、キャラクター召喚用カードを重ねがけすることでレベルアップできます
  • カード3枚重ねた時点でラスボスもひょいひょいと捻るチートキャラの出来上がりです
  • 2枚でもラスボス以外はほぼ相手にならない性能に引き上げられます

要はすっごく強くなります
柊と光太郎は3枚、他の参戦者全員0~2枚で任意に使用してくださって構いません
あくまで演出補助目的ですので、「そんなもの必要ねえ!」という方は無視してくださってOKです
得られる効果も強くなる方向で都合よく設定してください
NW世界観に拘って、且つ全体に対しての最大の助けは何になるかな、と考えたらこんな感じになりました
良ければ使ってやってくださいませ

ちなみに【彼】はPC-NWのラスボスです
超至高神とも異世界の神とも幻夢神だとも議論は紛糾しましたが、公式設定が決まっていないため推論されるのみです
創造神クラスの化け物であることだけは間違いないのでこのような役どころを担っていただきました

4-423、425

では、柊強化一発ネタ、いきます。

戦いは、熾烈を極めた。

玖珂晋太郎とフットワーカーの手により蜘蛛の異形と融合させられた赤羽くれは。
彼女を救おうとするものの、有効な手を打てない柊蓮司と玖珂光太郎(と、おまけのクラリス・パラケルスス)。

「おいクラリス!光太郎は!」
「うわひど…。えと、60秒!60秒待って!全快させるから!」

そんな中、焦りが出たのか光太郎が蜘蛛くれはの攻撃をもろに食らい戦線を離脱してしまう。
治療のため、クラリスも手が離せない。

(ええい、マジできついぞ。なんつーか前にラース=フェリアに行った時みたいなヤバさを感じる…っ!)

だが、天は彼を見捨ててはいなかった。

『…えますか。聞こえますか、ヒイラギさん』
『やっほー、ヒーラギー。げんきー?』

「コレは…この声は!」

それは、かつてともに戦った仲間たちによる、世界を超えた支援の手。

『此度の争い、私たちは直接手を貸すことは出来ません』
『でも、なんか役に立つアイテムくらいなら何とかー、ってことで頑張ってみた!』
「ポーリィ、ガーネット!」
『クレハさんは私たちにとって姉のようなもの…』
『だからねヒーラギ、コレを使って!』

そして柊を包む眩い光が現れる。
その光が収まったとき、柊の体は黄金の輝きを放つ全身鎧に包まれていた。

「これは…まさか…っ!」
『よう、柊。くれはさんが危ないらしいじゃねえか』
「…だれだっけ?」
『…トウガだよ』
『かつて、柱の騎士として戦った真炎の騎士トウガの鎧です。彼の魂は、今でも鎧と共にあります』
『こっちの人で、ヒーラギと関係が深くて、なおかつそっちに何の問題も無く行ける人、ってことで選んでみました!』

それはかつてのライバル(?)の力

『さあ、やるぞ柊。魂だけとはいえコレでも元ウィザードで柱の騎士だ。防御力と火力なら任せろ!』
「よし、いくぜ!」
『「イブセマスジィィィィィィィーッ!』」

“ぺちん”

「…あれ?」
『…おや?』

“ぴちゅーん”

『ばかな!神代の時代から存在する、この柱の騎士の鎧が砕かれるだとぉぉぉぉぉっ!?』
「お前結局何しにきやがったぁぁぁぁぁっ!?」

だがそれでも、柊蓮司は貴重な60秒を稼ぎ出したのだった。



以上。
60秒だけの柊スーパーモードでした。勢い任せで書いたから見苦しいのは勘弁。

4-435

「なんなのよ、なんなのよこれ~!」

堀口ゆかりは焦っていた。
呼び出したクリーチャーも、設置したトラップも
規格外の戦闘力を持つ者たちにことごとく蹂躙されているのだ。

「まるでクソゲーじゃない・・・バランスも何もあったもんじゃない。
うっそ、Cエリアが一瞬で壊滅?
ああっ!城に入り込んできてるのもいるぅ~!!」

状況を伝えるのはどれも戦況の悪化を知らせるものばかり
城の内部は空間を歪めてあるとはいえ、
このままでは予定外の役者達が晋太郎の元までたどり着くのはそう時間はかからないだろう。

「こうなったら強力なユニットを召喚して時間稼ぎしなきゃ…
セット、マジック! サモン“不死の剣士”」

取り出したカードから光が迸り、次第にソレは人の形を成していく。
光が治まると、日本刀を携えた赤毛の男が姿を現していた。
真っ赤な学ランを着てはいるが、その身に纏う雰囲気からは軍服にしか見えない。

「我が名は柳生宗崇。この世に混沌をもたらす者だ。我を呼んだのは貴様か、小娘?」
「そうよ、早速だけど城に入り込んだネズミちゃん達をやっつけちゃってよね」

少しでも時間が惜しいと焦っていたゆかりは状況を伝えて柳生へ命令を下す。

「捻じれた城…《世界の秩序》…クフフフフ、ハァーッハッハッハッ!」
「な、なによ?早く行きなさい!あなたの仕事は伝えたはずよ」

ゆかりはただならぬ雰囲気を感じたが召喚主と駒の関係の優位性から再度命令を下す。

「早く行きなさい!なんのためにアンタを喚んだと思ってるの!」
「貴様には感謝するぞ…この城と《世界の秩序》の力、我が貰い受ける!」

言うが早いか、柳生宗崇は手にしている刀で堀口ゆかりの胸板を貫いた。

「うそ…っ!?ユニットが召喚者を攻撃できる、はずが…ゴフッ!
こんなの、ルール違反、よ…」

 ヅプリ

刀をゆかりから引き抜くと、柳生は刀の血をぬぐうこともせずに部屋から出て行った
その場にくずれ落ちたゆかりとどめは必要ない。
寸分違わずに心臓を貫かれたゆかりの眼からは既に生気が失われかけている。

「…ホント、にっ…なんてゲームバランスなのか…しら。ごめ…晋ちゃん、私は先にゲームオーバーしちゃう、ね…」

赤にして桜、堀口ゆかりはその体を光の粒子へと分解されて虚空へと消えていった。

カードで城を守る無数の化け物を支配している、堀口ゆかりが欠けたことにより
知性の低いモノ達からは統率が消えた。
だが、それも一瞬こと。すぐに新しい秩序が生まれた。
いや、正しくは「元も古い秩序」が。
すなわち弱肉強食、眼前に現れるものを襲い、奪う。
まさに辺りは混乱を極める状況となったが、統率を失えば異形の者たちも烏合の衆にすぎない。
死線を潜り抜けてきた者たちが、この状況を逃すはずもなかった…。

4-452

では開始前にCMでも

二人は(演出的な意味で)普通に出会い。
二人は(きくたけリプレイ的な意味で)普通に恋をし。
二人は(お約束的な意味で)普通に結婚しました。
ただ、一つだけ普通でなかったところは。
旦那さまは世界を何度も救った魔剣使いで。
奥様は―――
①魔王の生まれ変わりの巫女だったのです!
②長い年月を経て性根が捩れまくった世界の守護者だったのです!
③過去に飛ばされ夫専用の戦艦を作ってしまった同僚と、彼女の子孫だったのです!
④似非外国人なヴァルキリーだったのです!
⑤いささか貧乏な神だったのです!
⑥錆びたシャードを持つ少女だったのです!
⑦破壊神の生まれ変わりだったのです!

問:①~⑦の中で最も不幸な結末を選べ

4-453

8の聖王が愛人の無邪気な聖職者で一つ。

4-455

3が一番幸せな気がする。
あと9の自分そっくりな少女とかw

4-458

便乗、
⑨怪しい薬開発が趣味のロリ少女だったのです!

4-459

自分は10のゲーム感覚で世界を滅ぼそうとする、ぽんこつ魔王さまを支持します。

4-460-461、465-466、468、470、472-473ナイトウィザード!クロス群雄伝 道を切り開く者たち/後編(前半)

ありがとう皆。
よし、これで最後だ!
リレーSS作家の全てに届けるパスだ!
いっけええええええええええええ!! あと支援頼みます。規制怖い!



 燃え上がる世界。
 紅蓮の焔の中から、その折れた白き翼は空を見上げた。

「シュウッ! なんでお前が?!」

 異形の夜空に浮かぶのは、絶大なる威圧感を放つ蒼き破壊神。

『やれやれ相変わらず騒がしいですね、あなたは』

『ピーチクパーチク、まるで鳥のようッスねご主人!』

 僅かな嘲笑と多大な呆れを含んだ抑揚のない男の声と騒がしい声。
 間違いない。

 あれは、シュウ・シラカワだ。

「なんでお前が――」

『理由は単純ですよ、マサキ』

 声を荒げるマサキの言葉を切断し、新たな部分に溶接するように言葉が編まれていく。

『彼らは――“私を利用しようとした”』

 蒼き破壊神、グランゾンの琥珀色を思わせるアイカメラが鈍い光を放つ。
 空を埋め尽くし、大地を蹂躙し、世界すらも呑み込まんと吼え猛る異形たちが、その光に怯えた。

『その罪は償わせなければならない。この茶番劇の書き手である七星の死の商人――
セプテントリオンを』

「セプ、テン……トリオン?」

『いずれ、あなたたちとも関わりになるであろう集団ですよ。名前ぐらいは憶えておきなさい』

 破壊神がゆっくりと高度を下げ、燃え上がる白き翼に手を翳した。
 一瞬機体の全身に光が走り、同時にサイバスターのコクピット内に映るモニターに大量のデータ
が羅列されていく。

「な、なんだ?!」

『グランゾンが解析した転移座標及び周囲に発生した特異点の情報、そして式神の城の魔術構成
……あなたのサイバスターに搭載されている【ラプラスコンピューター・デモンタイプ】ならば
可能なはずです。私の望む結果を導き出すことが』

「なにを企んでやがる、シュウ!」

 与えられた情報。
 意図の読み取れない言葉。
 その全てが、シュウを嫌悪するマサキにとって何かの陰謀のようにしか思えなかった。

『――魔装機神の操者が背負うべき使命』

「なっ」

『例えここが私たちの知る地上ではなくとも、世界を護るのが魔装機神操者の使命では
なかったのですか? マサキ』

「……」

「どうするニャ、マサキ?」

「どうするのニャ、マサキぃ」

 考える。
 考える。
 そして、結論を出すまで数秒とかけなかった。

「気にくわねえが、乗ってやるよ」

『そうこなくてはね』

 笑い声が聞こえた。
 神経を逆なでするような笑い声。
 今すぐにでもあの済ました顔をぶん殴ってやりたいところだが、抑えろと己の理性を総動員して
押さえ込む。

『さて、やりましょうか』

 その声と共に、グランゾンの各部に埋め込まれたクリスタルが光を放ち。
 緩やかに“景色が歪み始めた”。

『グラビトンカノン――発射』


「おっ?」

 相変わらず高層ビルの屋上で、時折やってくるあしきゆめと拳で追い払いながら見物していた
堕天使と魔神が、不意に起こった現象に目を丸くした。

「おわー、あれって……重力歪んでない?」

「凄いです、魔法も使わないのに重力に干渉するなんて……でも、魔力も感じる? むー、最近の
地球の科学力は凄いです!」

「ど、どうでもいいが……俺様に気を配る部下はおらんのか?」

 ようやくサイフラッシュの火傷から立ち直り始めた魔王の少年――ラハールが、首に付けたマフラーをたなびかせて立ち上がる。

「お? 殿下蘇ったんですね」

「ラハールさん、よかったです~」

「しらじらしいわっ! 大体なんでオレ様だけが熱い思いをして、お前らは無事なのだ?!」

 きしゃーと暴れながら、ついでに迫ってきたあしきゆめの一体を八つ当たりで殴り飛ばし、
お空の星へと還すラハール。
 そんな時だった。

『この戦場にいる奴――聞こえているか!?』

「む?」

 戦場に響き渡る一つの声があった。
 燃え上がる炎の中から、拡声器のスピーカー音量を最大にしているのであろう若い男の声。
 同時に何らかの魔術を使っているのか、魔力を持つものたちの脳裏に“声”が届く。

『二分だ! 二分だけ時間を稼いでくれ!! 俺が“道”を開く!』

 そして、その声は途切れた。

「時間を稼ぐだと? 何をする気だ、あのガラクタは?」

「……どうします殿下ー?」

「ふーむ」

 腕を組み、少しだけ悩むように考え込むラハールの横に――燃える堕天使が居た。

「やりましょう、ラハールさん!」

 グッと腕を突き出し、目を爛々と燃やす堕天使が声を上げた

「フ、フロン?」

「スーパーロボット魂です!!!」

 どうやらロボットオタク魂に火が付いた模様です。



 その声は唐突に飛び込んできた。

『この戦場にいる奴――聞こえているか!?』

「え?」

 茫然自失としていた舞衣の耳に飛び込んできたのは、聞き覚えのある声。

(この声、さっきの……? 生きてたの?)

『二分だ! 二分だけ時間を稼いでくれ!! 俺が“道”を開く!』

「――道?」

 そして、その声が聞こえていたのは舞衣だけではなかった。
 黒き炎の翼を羽ばたかせたMAIが、不愉快そうに顔を歪める。

「何をする気かSIらないけレド、今度こそ壊さないといけないみたいネ」

「なっ!」

 飛び上がろうとするMAIを見て、舞衣は慌てて追いかけようとするも――体が動かない。
 ビルにめり込んだ体が。

 そして、それ以上に突きつけられた事実に体が言うことを聞かなかった。
 信じたくない事実。
 けれども、ありえる可能性を突きつけられて。

「あなたハ、そこで見てイテ。そして、今度こそ解って――“アイツ”を信じちゃいけないってことを」

 そう告げて、MAIが黒炎の翼をはためかせ、燃え上がる白き翼の下へと駆けた。
 いつの間にか、戻ってきていた黒龍がそれに付き従い、飛び去っていく。

「私は……ワタシは……」

 燃え上がるように心を焼いていく不安。
 信じればいいのか、それとも思いを違えるのか。
 もう分からない。

 どうすればいいのかワカラナイ。

 ――その時だった。


「鴇羽ぁああああああ!」

 目の前に彼が飛び込んできたのは。

 白い、彼女自身のカグツチに乗って、傷だらけの少年――楯 祐一が来た。
 彼女の想い人。
 ただ一人の好きな彼。

「大丈夫か? なんかいきなり、黒のカグツチが飛んでいったんだが――」

「ゆう、いち……」

「鴇羽? どうした、怪我を……してるな」

 ビルの壁に寄り添って飛ぶカグツチの背から、楯が舞衣に向かって手を伸ばす。

「ッ、――いやあっ!」

 その手が、振り払われる。
 紛れもない舞衣の手によって。

「鴇羽?!」

「信じられない! 私はどうすればいいの?! どうすればいいのよぉおお!!」

「鴇羽、落ち着け!! 一体なにが――」

「祐一答えて!」


「私となつき――どっちを選ぶの!?」


 燃え上がる異形の戦場に、その声は何故か耳に強く届いた。
 その声に、祐一は目を見開いて、そしてゆっくりと表情を変えて。

「……わかんねえよ」

「な、なんで? それじゃあ、祐一はなつきを選ぶの?!」

「そうじゃねえよ!!」

 涙目で叫ぶ舞衣の言葉を、それ以上に強い言葉が打ち消した。

「俺は正直言って……どっちが好きだとか、どっちが大切だとか答えられない……」

 その言葉に、舞衣はゆっくりと涙を目に浮かべ、表情を歪ませて。

「けどな。俺は絶対に――“裏切らない”」


 その言葉に、舞衣の表情が動きを止めた。

「え?」

「どっちも大切なんだ……こっぱずかしいけど、俺は二人が好きだ。大切な、人なんだ。なつきも……鴇羽、お前も」

 そう告げてゆっくりと楯の手が、舞衣の顔を抱き寄せる。

「だから、俺は――」

 戦場の中で、かつて想いを告げあった男女の姿が重なる。

「お前たちに見捨てられても」

 燃え上がる紅蓮の世界の中で。

「死んでも、“お前たちを護り続けてやる”」

 彼は強くない。
 彼に異能の力は無い。
 けれども、そんな彼に、二人の少女は想いを寄せた。

 その少年の心に。
 幾たびも折れかけて、砕けかけて、それでも膝を屈しなかった彼の想い。


 それに彼女は――

(そうだったね……)

 彼女は思い出す。
 彼を好きになった記憶を。
 彼を愛した思い出を。

 決して、後悔なんてしない想いを抱きとめる。

「祐一」

「な、なんだ?」

「好きだよ」

「ぶっ!」

 真正面からの告白に、楯は先ほど告げた自分の言葉を忘れて噴き出した。

 真っ赤になった顔にクスクスと笑いながら、舞衣は手を伸ばす。

「行こう、祐一。あの人が、助けを待ってる」

「あ、ああ」

 炎の翼。
 かつて宇宙三大美少女の一人として掲げられた炎の舞姫は、己の鍵となり、剣となる少年を連れて戦場に飛び上がった。

「しん、だ?」

「そうや。うちはなつき、あんさんに殺されたんどす」

 茫然自失したなつきの前に、SIZURUがクスクスと笑いながら答える。

「痛かったどすなぁ。けどなつき、うちは怒っておらんよ?」

 ゆっくりとなつきの、埃まみれになった黒髪をSIZURUの手が掬い上げる。
 愛しい人を撫でるような、優しい手つきで。

「だって、うちはなつきを“愛しとるんやから”」

「……?!」

 壊れた笑み。
 おぞましいほど美しい笑顔で、SIZURUと名乗る己の親友の平行存在は告げる。
 愛している、と。

「愛してる、愛してる、愛してるおるよぉ、なつきぃ。大切な親友やもん」

 顔を撫でるコレはなんだ?
 おぞましい感情を剥き出しに、嗤うコレはなんだ?
 狂ってる。
 愛に狂ってる。
 歪んだ愛に狂った鬼女。

「だから、うちと――」

 SIZURUの手に握られた鞭が、次々と連結して一本の薙刀になる。

「死んでくれる?」

 振り下ろされる狂気の刃。
 その刀身は真っ直ぐになつきの首へと振り下ろされて――

 “空を駆ける一筋の閃光が見えた”。

「へ?」

 響き渡ったのは肉を切る音でも、血が噴き出す音でもない。
 鈍く、重々しい金属音。

「悪い、な……」

 振り下ろされた薙刀の刀身を受け止めたのは、銀色の銃身。

「私はここで死ぬわけにはいかない……待っている人がいるのだから!」

 咆哮を上げ、銀色の銃身が薙刀の刀身を弾いた。

「まあまあまあ」

 即座に放たれる連射を、クルクルと旋回させた薙刀の刃が弾く。

「どっちのなつきもやっぱり頑固やねえ……うちの愛を受け取ってくれへんの?」

「断る!」

「ひどいどすなぁ。うちは、あんな男よりもよっぽどなつきを愛しておるよ? 他の女を優先させるような男よりも、よっぽどなぁ」

 SIZURUがクスクスと苦笑しながら、負の感情に歪むなつきの表情を想像して告げた。
 けれども。

「くだらん」

 その予想は覆されていた。
 強い意志。
 強い輝きを帯びた少女の眼光が、その瞳に浮かぶ。

「静留……いや、SIZURU。やはりお前は私の知る静留ではない」

 銀色の銃身を掲げ、二本の足でしっかりと大地に立つなつきの眼光。

「お前は知らない」

 それに迷いはなく。

「私が、どれだけ祐一を想っているのか! その強さを!!!」

 誰にも計ることなど出来ない強い想いが秘められていた。

「私は祐一が好きだ! 例え彼が誰を想っているとしても、決してこの想いだけは変わらない!」

 人に恋焦がれ、思いを寄せ、ただそのために進む、恋する乙女がそこにいた。

「デュラン!!」

『ォオオオオオンッ!!!』

 なつきの声に、傷ついた白銀の銀狼もまた立ち上がる。
 己の父を侮辱するものを許さないと、己の母の想いに応えるために。

 彼女とそのチャイルドは立ち上がる!

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