ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第01話

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休日の過ごし方(アルバイト編)

休日。
学園が転移して出来たこの世界に、休日出勤などと言うサラリーマン的なものは存在しない(一部教師除く)
毎週1度、所により2度は訪れる休日。学園世界において、その過ごし方は様々である。

学園都市や真帆良、蓬莱など“学生の遊び場”が充実している学園に遊びに行くもの。
購買で依頼を受けたり、自主的にダンジョンに向かったりして“冒険”に明け暮れるもの。
“研究者の楽園”ザールブルグアカデミーで学業を忘れてひたすら研究に勤しみ、議論を戦わせるもの。
自らの学園で、次の“学園対抗競技大会”に向けて練習や部活動に勤しむもの。
居住区で、出会った異世界の同好の士たちと様々な“同好会活動”を行うもの。

そして、彼女、“大いなるもの:真壁翠”の選んだ、休日の過ごし方は…

―――学園海

「アイスキャンデー、アイスキャンデー。冷たくてあま~いアイスキャンデーはいかがですか~?」
いつ来ても熱い常夏の海、その晴れ渡った砂浜に、水着姿の翠の声が響く。
(ああ、やっぱり休みの日はこうじゃないとね!)
なんてなことを考えているせいか、実にいい笑顔である。
実のところ、学園世界にいる限り、翠は別に働く必要はない。
食事は寮に帰れば出てくるし、希望すれば材料だけ受け取って自炊するのもOKだ。
その他の日用雑貨も必要な分はちゃんと支給される。高級品やら嗜好品の類は流石に自腹だが、贅沢は敵がモットーの彼女にはあまり縁も無い。
ならば何故、翠はこうして“アルバイト”をしているのか。
(部屋でな~んにもしないでごろごろしてるなんて、もったいなくて死ぬかと思ったよ!)
とどのつまりは、趣味である。

『学園海で、海の家やりま~す。手伝ってくれる人、ぼしゅ~ちゅ~。報酬は応相談。ご連絡は光綾学園のモノアイが素敵な鉄仮面さんまで by謎のお姉さん』

そんな怪しげなチラシを居住区で拾った翠が、速効で申し込んだ、このバイト。
女子は休日を利用して海に泳ぎにきた学生たちに、冷たいものを売る売り子を任される。

ちなみに。
(時雨は…ちょっぴり可哀そうかな。あの食堂、ものすっごくきつそうだし)
翠が、自分が心配だからとついてきた、1人の使徒に思いをはせる。
男子は『焼いた海の幸』や『具がキャベツとモヤシのみの焼きそば』、『ほぼ汁オンリーのカレー』など、海の家ならではのメニューを作る仕事を任されていた。
正直体力的には今一つの時雨にはかなりきつい仕事だが、時雨に売り子ができるとも思えないので仕方が無い。

「すみません。3本ください」
翠が時雨のことをなんとな~く考えていると、声をかけられる。
「は~い。まいど~。1本“100円”なんで、3本で300円になります」
良い笑顔で返答し、相手の反応を見る。

1本100円。そう言った場合の相手の反応は大きく分けて二通りに分かれる。
1つは何の疑問もなしに素直に100円支払う場合。
そしてもう1つの反応。それは…


「100…エン?もしかして、異世界の通貨じゃないとダメなんですか?」
首をかしげ、尋ね返してくる客。
「いえいえ、そんなこと無いですよ」
にっこりと笑顔で答える。こういう客こそが、狙い目なのだ。
「それじゃ、1本あたり“銀貨1枚”なんで3本で銀貨3枚になりま~す」
「ああ、銀貨。分かりました。はい、どうぞ。3ゴールド」
クーラーボックスの中の銭箱に大量に入った銀色のコインを見て納得し、ちゃりんと音を立てて翠に銀貨を渡す。
「ありがとうございました~。またどうぞ~」
アイスキャンデーを手渡し、丁寧にお礼をする。
「…おお。本当に冷たくて甘いや。やっぱり異世界の技術はすごいな~」
受け取った客はちょっと感動して友人たちのところへ戻って行った。

“日本人”には100円。異世界人には銀貨1枚。それがアイスキャンデーの売り子に言い渡されている値段だった。
実のところ“銀貨1枚”は日本円だと1000円くらいにはなっている超ぼったくり価格なのだが、
世の中うまくしたもので銀貨が流通してるような世界では熱い砂浜で食べられるアイスキャンデーは“かなりの贅沢品”となるため値段設定に文句を言われたことも無い。
ちなみにどっちでもない場合は売り子の判断に任せることになっている(翠もドルやポンドで受け取った経験があったりする)

(正直相手次第で値段が100倍変わるたいやき屋さんみたいでアレなんだけどね~)
その客の背中にちょっぴり罪悪感を感じながら、翠は売り子の仕事に戻る。
(この前の子は凄かったなあ『銀貨2枚って…2ドニエ?かさばるからエキューしか持ってないわ。お釣りはいらないから、これでいいでしょ』って言って金貨で支払うし。
 …その直後に不幸そうな執事っぽい男の子連れた子に『100円?小銭は持ち歩いて無い。釣りはいらないからこれでいいか?』って言われて福沢先生を渡されたときは
 ちょっぴりへこんだけど)

頭では色々考えながらも口上を言いながら練り歩くのは忘れない。翠ほどのアルバイターともなるとこれぐらいは当然なのだ。
(さってもうすぐお昼休みだし、もうひと頑張り…)
考えるのをやめ、売り子に集中しようとしたそのときだった。

「やめてください!」
聞きなれた声が聞こえたのは。

「なんだよ~いいじゃんかよ~。ちょっと付き合うくらい」
「アイスだったら全部俺らが買ってやるって。な?」
正直あんまりタチのよくなさそうな、まあどこにでもいる不良学生に、売り子仲間の女の子が絡まれている。
(あの子は…ああ、ソフィアちゃんかあ~)
遠目に確認し、絡まれているのが戦う力のない“普通の少女”であることを確認し、翠は辺りを見渡す。
(アリカちゃんか…七村さんはっと…この辺にはいないなあ~)
下手をすると翠以上に強い、アルバイト仲間の“武闘派”を探してみるが、見つからない。
(しょうがない。やりますか)
とりあえず魔法を使えば何とかなるだろう。そう思い翠が向かおうとしたとき。
「困りますねえ…お客さん」
(うっわ!?)
その男の容貌に、思わず足を止めてしまう。何故ならば。
「あんだぁ…!?」
「うちのアルバイトに手ぇ出されちゃあ、あっしらも商売あがったりでしてね。勘弁してもらえねえですかい?」
アフロにグラサン、口髭。熱い砂浜にも関わらず、きているのは黒のスーツだ。
渋さ満点の声で吐き出されるその台詞には強烈な威圧感がこもっている。
この光景を見たら誰もが思うだろう。その男は…
(や、や○ざ!?)
固まっていた翠が思わず走り寄る。
「お嬢さん。怪我は、ねえですかい?」
「あ、あの…その…」
不良たちが泡を食って逃げだしたのを確認し、男が少女に話しかける。だが、少女は震えてしまってうまく喋れない。
「ちょっと待った~!」
少女と男の間に割って入る。
「ん?お嬢さんは…ああ、お仲間の売り子さんですかい」
「そ、そうよ!あんた、あの不良たちを追い払ってくれたのはいいけど、ソフィアちゃんに何するつもりよ!?」
見た感じ、間違いなく“戦える”人間である男。
その男は、グラサンをくいっと持ち上げて、言う。
「…こりゃあ、すまねえ。確かに知らぬ人にゃあこええだけですわな。名乗りやしょう。
 あっしは磯野第八中学っつう学校で数学を教えさせてもらってる、マサと言うもんです。
 実はルビィの姐さんに頼まれましてね、これからはあっしらがケツ持ちをすることになったんでさあ」
「…磯野第八中学校?どっかで聞いたような…あ!この前の極通に載ってた!?」
その名前に『極上生徒会通信』で読んだことを思い出し、翠が声を上げる。
学園海で起こった磯野第八中学校の“一部の教師”とこの海の支配者である“乙姫”との抗争事件。
あわや学園海と学園世界の断絶かと言う事態だったが、その前に極上生徒会が動いて何とか手打ちにしたと聞いている。
「ええ。あんときはちょいと永澄さんと燦お嬢が乙姫と揉めましてね。そんときに助けられたのがルビィの姐さんだったんで。
 まあ、そんときの縁もありやして、今はこうしてケツ持ちさせてもらってるんでさあ。
 …ちょいと長話がすぎやした。そいじゃあ、売り子、頑張ってくだせえ」
礼儀正しく頭を下げ男…マサが去っていく。
「はあ~ちょっと怖かった…」
「そ、そうですね…」
その場に残された2人の少女がため息をつきあう。
「にしても…あのお姉さん、何者なんだろう?」
彼女たちの雇い主であるピンクの髪の女。あんな可愛い顔してどう見てもや○ざな人たちと繋がりがあったり、乙姫との揉め事を解決したり。
一体彼女は何者なのか?
その謎は深まるばかりである。

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