キョン「長門、また図書館の返却期日のこと忘れてただろ」
長門「失念していた」
キョン「期日の過ぎた本が部室にあったから、一旦返却してもう一度借りてきたんだ。これ」
長門「ありがとう」
キョン「次は忘れないようにな」

また彼に迷惑をかけてしまった。
どうも彼のことを考えているとうっかりしてしまう。
何故だろうか。原因は調査中。

迷惑をかけてばかりの彼のためにお礼をしようと思う。
でも彼がどうすれば喜んでくれるのか、よくわからない。
出来る限りの能力を駆使してデータベースを回っていた私に、涼宮ハルヒが声をかけてきた。

ハルヒ「あれ、どうしたの有希。
     あんたが本も読まずにぼーっとするなんて珍しいわね」

いい機会なので彼女に訊いてみることにする。
「男の人が喜ぶ行為について教えて欲しい」

私の問いに涼宮ハルヒは目を丸くしていた。
何かおかしいことを訊いてしまったのだろうか。
だが、やがて彼女は子供を見るような目で私を見つめながら答えてくれた。

ハルヒ「例えば女が男のためにお弁当を作ってきたりするじゃない。
     それでお弁当を渡すとき、見えた女の手に絆創膏が何枚か張ってある。
     そんなシチュエーションに男はぐっときたりするわけよ!これも1つの萌えよね!」

萌え?どういう概念なのか上手く理解できない。
「萌えると男は喜ぶ?」

ハルヒ「もちろん!
     今や恋愛と萌えは切っても切れない関係にあると言っても過言じゃないわ!
     あとはやっぱり気持ちを込めることね。相手に気持ちが伝わらないと意味ないわ」

よくわからないが、彼は萌えれば喜んでくれるらしい。
それなら私も情報統合思念体の力に頼らないでお弁当を作ろう。
「わかった」

ハルヒ「でもね、有希。
     男なんてみんな獣なんだから、変なことされそうになったらあたしを呼びなさい。
     団長として団員に危害を加えるような輩はあたしがボコボコにしてやるわ!」

彼がそんな狂気に捕らわれるとは思えない。
でも、涼宮ハルヒは私の心配をしてくれているのだろう。

「ありがとう」

そう言うと、彼女は満足そうに笑った。

商店街で材料をそろえて自室に着く。時刻は午後7時。
普通、お弁当を作るのはその日の早朝なのだろう。でも私は今までにまともに料理を作ったことがない。
少し早い気がするが、今からお弁当を作ることにしよう。力を使わずに何かをするなんてこと、初めてだから。

材料を切るために包丁を握る。
この鋭利な刃物を見ていると、私が消してしまったバックアップのことを思い出す。
朝倉涼子、彼女は料理も上手だった。

帰りに寄った図書館で借りたお料理入門書を片手に手順を確認する。
この本にコロッケはお弁当に最適な料理だと記述があった。
早速、ジャガイモを切ることにしよう。

サクッ
「・・・ッ」
いきなり指を切ってしまった。痛い。
うっかり傷を修復しようとしていたが、涼宮ハルヒの言葉が脳裏を過ぎった。
(それでお弁当を渡すとき、見えた女の手に絆創膏が何枚か張ってある。
そんなシチュエーションに男はぐっときたりするわけよ!これも1つの萌えよね!)

サクッ
サクッ
ザクッ 「・・・」

サクッ
ザクッ 「・・・痛い」

ようやく完成した頃には朝日も昇り切って登校時間も近付いていた。
両手が絆創膏だらけになってしまったが、彼は喜んでくれるだろうか。

登校したあと、彼が教室に入る前に声をかけるため、校門で待つことにした。
万が一にも涼宮ハルヒに見つかることがないようにしなければならない。
彼女は既に教室にいるから、ここなら大丈夫だろう。

午前7時50分。そろそろ遅刻常習犯と呼ばれる人間達の顔がまばらに見え始める頃、彼を見つけた。
普段は何故かクラスメイトの谷口と呼ばれる少年が傍にいることが多いが、今日はいない。
大丈夫、情報操作は得意。彼は転校したことにした。
私の視線に気付いたのか、彼が声をかけてきた。

キョン「おう、どうしたんだ長門」
長門「これ」
キョン「これは・・・弁当か?」
長門「そう」
キョン「えーと、俺に?」
長門「そう」
キョン「・・・長門、この手はどうしたんだ」

彼は差し出したお弁当に驚いていたが、私の手の絆創膏に気付いたようだ。
これで彼は喜んでくれるはず。

キョン「長門の力なら傷なんてすぐに治せるだろ?
     それ以前に長門なら怪我なんてせずにお弁当くらい作れると思っていたんだが」
長門「力は使わなかった。その方があなたが喜ぶと聞いた」
キョン「・・・大体予想は付くが、誰に訊いたんだ」

私が涼宮ハルヒから聞いた一部始終を伝えると、彼は、
キョン「やれやれ・・・長門、俺はお前が傷付いているのを見ても喜んだりしないぞ」
長門「そう」
キョン「でも嬉しいぜ。ありがとう、長門」

そう言って彼は笑いながら私の頭を撫でてくれた。
これは彼が喜んでくれたということなのだろうか。よくわからない。
でも、頭を撫でる彼の手が心地良かったから、今はこれでいいとしよう。


 終


151 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/08/06(月) 22:21:57.15 ID:h2jAh+Fr0
わっふるわっふる

152 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/08/06(月) 22:23:18.04 ID:KW4Ur0or0
こいつはたまらんぜよ

153 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/08/06(月) 22:24:04.12 ID:yZhF7i58O
というかよくよく見たら谷口が転校してる件

155 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/08/06(月) 22:25:34.64 ID:KW4Ur0or0
>>153
ほんとだwww谷口カワイソスwwwwwwwwwwww

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最終更新:2007年08月07日 00:03