しんわものがたり - ツギハギの箱庭

しんわものがたり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　著：ビーストイヤーの物書き・セールイ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刊行：老鼠出版

じょぶん
みんなは、　この「せかい」が　いつからあるのか　しっていますか？
このせかいが　うまれたのは　とてもとても　むかしのおはなし。
みんなの　ひいおじいちゃんの、　そのまたひいおじいちゃんの、　そのまたそのまた----
ずっと　ずうっと　とおいとおい　むかしのおはなし。
めをとじて　みみをふさいでみてください。
なにもみえず、　なにもきこえず、　なにも　なにも　ない　くうかん。
せかいは　そこから　はじまります。

はじまり
ほしのない　よぞらに、　おおきな　ふたつの　ひかりが　うまれました。
ふたはしらの　さいしょの　かみさまです。
むらさきに　ひかる　かみさまは　なんでもしっている　ラーケウス。
あかく　ひかる　かみさまは　なんでもできる　エリュトルです。
ふたはしらの　かみさまは　ふたごのかみさま、　そうだいしんでした。

ラーケウスと　エリュトルは　いしを　もちません。
じぶんで　かんがえて　うごくことが　できないのです。
だからはじめ　そうだいしんは　そこにいるだけでした。
なんでもしっているけど　なにもかんがえず、
なんでもできるけど　なにもせず、　ただ　そこに　あったのです。

そうだいしんとしじん
そうだいしんが　うまれてから　ながいながい　ねんげつがたちました。
やがて　そうだいしんから　にじみでるように、
よつはしらの　かみさまが　うまれました。
そうだいしんから　うまれた　しじんです。

あおのかみさまは　アズル。
アズルは　だいちをつくり　アズルレウムとなづけ、
みずをつくり、　アズルレウムを　かこいました。

みどりのかみさまは　ウィーロン。
ウィーロンは　じゅつのちからと　よんたいの　れいを　つくりました。

きいろのかみさまは　クラウム。
クラウムは　きや　はなと　ものがうごくしくみや　かわるしくみを　つくりました。

だいだいのかみさまは　ポルティア。
ポルティアは　にんげんたちと　たくさんのどうぶつをつくりました。

しれいからさんれいへ
みどりのかみさま　ウィーロンがつくった　よんたいの　れい。
さいしょのれい　ラーマは　ほのおのれいに　なりました。
つぎのれい　メルロは　みずのれいに　なりました。
さんばんめのれい　アネトーは　かぜのれいに　なりました。
でも　さいごのれい　ニルシアは　なににもなれませんでした。

ニルシアは　じぶんをつくった　ウィーロンを　にくみました。
そしてあるとき　けんをとり　ウィーロンに　たたかいを　いどみました。
ウィーロンと　ニルシアの　たたかいは　ひゃくまんねんもつづきました。

ニルシアが　ウィーロンを　きったとき、
ウィーロンの　マジカのちが　ながれました。
マジカのちは　せかいに　おそろしい　まものたちを　うみました。
それに　わたしたちは　マジカのちからで　じゅつを　つかえるようになりました。
しかし　さいごには　ウィーロンがかちました。
ウィーロンは　ニルシアをころし、
このとき、　しれいは　さんれいになったのです。

しんわのおわり
ウィーロンと　ニルシアが　あらそうあいだ、
ひとも　どうぶつも　みんなしんでしまいました。
しかし　ポルティアは　じぶんがつくったいきものが
みんなしんでしまうのが、　いやでした。
そこで　ポルティアは　ほんのすこしのにんげんと　どうぶつをえらび
たたかいのあいだ　じぶんの　ひざのうえに　すまわせました。

ポルティアのおかげで　ひとと　どうぶつは　いきのこり、
ふたたび　アズルレウムに　もどることができました。
しかし　アズルレウムは　もとにうつくしいすがたではなく
まものがすむ　おそろしいせかいに　かわってしまっていたのです。

しじんは　にんげんたちに　つげました。
おまえたちが　このせかいに　へいわをとりもどし、まもりなさい。
こうして、　みんなは　アズルレウムを　まもるために
きょうまで　いきているのです。