北沢志保「あなたと黒猫、あるいは私」
執筆開始日時
2017/06/23
概要
「ただいま」
「お帰りなさい、プロデュー……何ですか? それ」
「いやー……ちょっと、拾っちゃって」
拾っちゃって、って……呆れながら、彼の腕にいる黒いモップのようなものを見る。そのモップはにゃあと鳴き、プロデューサーさんのスーツに泥を擦り付ける。
「……もう」
私は棚からタオルを一枚……いや、二枚取り出して、プロデューサーさんに渡す。
「お、ありがとう、志保」
「どういたしまして。あと、その子も」
「ん? こいつか?」
プロデューサーさんは言いながら、タオルで猫の身体をわしわしと拭いている。猫はくすぐったそうに身をよじらせて、その拍子に水があたりに飛び散っていた。
「……その子は私が拭きますから、プロデューサーさんはまず自分の身体を拭いて下さい」
「でも、汚れるぞ? こいつ、結構汚いからな」
「そんな気遣いをする前に、自分の身を気遣って下さい。……シャワーでも、浴びてきたらどうですか?」
外は土砂降りだったはずだ。タオルで拭いたところでどうにかなるものではない。このままだと風邪をひいてしまうかもしれない。
「ん、そうだな。ついでにこいつも――」
タグ
^北沢志保
まとめサイト
最終更新:2018年02月12日 17:07