アローレインを考えるにあたって、攻撃が当たるとはどういう事か考えたい。
まず攻撃が当てた結果として表れるものは、ダメージ、仰け反り効果、無敵時間の挿入、凍結解除、の4つに分類できる。
状態異常を与えるスキルの場合、状態異常効果も追加される。
無敵時間と凍結解除はマイナスの効果であり、どのスキルでも同じ効果が表れる。ダメージはスキルによって大きく違い、仰け反りはスキルによって
少しの差があるが、その時点での行動が妨害されるという点では同じである。
そこでまずスキルによっての違いが大きい、ダメージについて考える。
アローレインはダメージの量を稼ぐ力は高い。アローレインを撃ち続けるだけで、15000程度の与ダメージは簡単に出せる。
恐らく前線千人長を取得するのが最も容易なのがアローレインの連射である。
ただダメージの量自体には大した意味が無い。何故なら、前線に居るPCは一定時間毎にHPが回復していくので、
それを下回るダメージは全て相殺されてHPが減少しないからだ。ダメージは敵のHPをある程度削って始めて、キルが取れる、敵が前線から下がる等の
効果を発揮するので、リジェネレートに相殺されるレベルのダメージは全く意味が無い。
勿論、アイテムコストを削る効果はあるが、ハイリジェネレートを21本使えば回復量は12096であり、これは前線で受ける平均ダメージ量を上回る。
(今ではワインも存在するのでアイテムコスト削りの効果はかなり薄い)
このため、実際にはアイテムコストを消耗して、HPが回復できなくなって死ぬ事より、コストが残っているのに回復が間に合わなくて死ぬ方が遥かに多い。
そもそもコストが切れた場合、歩兵をやらずに別の仕事をしていれば良い。
短剣スカウトがソーサラーにヴァイパーバイトを当てると、平均90のダメージと200のDoTダメージを与える。合計は290だ。
一方ウォリアーがソーサラーにいわゆるストスマコンボを当てると、ストスマで平均101、スマッシュで平均178で合計は279である。
ヴァイパーバイトの方がダメージ量が多いが、ストスマコンボよりヴァイパーの方が痛い、という事にはならない。
それと同様に、戦争終了時に表示されるPC与ダメージが高いからと言って、ダメージを多く与えてる事にはならない。
つまり重要なのはダメージ量ではなく、時間当たりのダメージ効率である。
さてアローレインの瞬間ダメージを見てみると、絶望的に低い。
相性の良いソーサラーにすらヘビースマッシュの3割ほどのダメージしか出ない。Pow消費はヘビスマの方が軽く、発生もヘビスマの方が早い。
優遇されている職補正をもってしてもこのダメージである。
確かに射程は全く違うが、遠くの敵にアローレインを皆で撃って、それで敵が死ぬのだろうか。はっきり言ってまず死なない。
というわけで、アローレインが与ダメージを稼げるわりに、ダメージを与えられないスキルであることは分かってもらえたと思う。
アローレインは弾幕スキルであり、相手ソーサラーのHPを消耗させるのが目的だと言う人も居るだろう。それならば、そのスキルはジャッジメントレイで良い。
効果範囲は同じで、ダメージを与える効果はアローレインより遥かに高い。
アローレイン弾幕のダメージの部分はジャッジメントレイで上位互換できる。
これでとりあえずダメージの部分は片付いた。この調子で残りの3要素を分析すれば結論が出るだろう。
無敵時間の挿入と凍結解除、つまりアローレインを当てる際に伴う、デメリットについて考える。
このデメリットは全てのスキルに伴うデメリットだが、アローレインの場合はそれが顕著である。
前回述べたように、スキルはダメージ、仰け反り、無敵、凍結解除の4つの効果を及ぼすが、アローレインの場合、ダメージの部分が小さいので、
他の3要素の割合が相対的に高いからである。
さらに凍結の場合、次の攻撃が確実に当たるため、なるべく当てにくく重い攻撃を入れるべきだ、という当然かつ素朴な要素もある。
アローレインを撃つ際によく言われることは、「割ったり被ったりしないように気をつけて撃て」という事だが、気をつける事はできても割らない事はできない。
FEZデータバンクによれば、左クリックしてからアローレインの発生までに69フレームかかり、最も離れたところまで到達するまでさらに71フレームかかる。
ブリザードカレスの場合、発生に43フレームを要し、最長距離に到達するまでにさらに69フレームかかる。なお、このゲームの1フレームは1/60秒である。
例えば、氷ソーサラーがブリザードカレスを撃つために左クリックしてから、40/60秒後はまだ誰も凍っていないし、
ブリザードカレスのエフェクトすら発生していない。
この時に、アローレインを撃つために左クリックすると、ブリザードカレスが命中してから、最大で68/60秒後にアローレインが命中する。氷は割れる。
逆にアローレインを先に撃ったとしても、カレスが先に命中したり、アローレインの無敵時間中にカレスが当たったりする可能性がある。
勿論、味方の様子を確認して、安全そうな時にのみアローレインを撃つという努力は可能だし、行うべきだが、
それをしても完全に氷割りや攻撃被りを防ぐ事はできない。
特にアローレインは効果範囲が広く、発生までに時間がかかるので、そのような事故は起きやすい。
アローレインはそうした事故が起きるリスクを、常に支払いながら撃たれているのである。支払う代償はPowだけでは無いのだ。
つまり問題は、得られるリターンが、このようなリスクを上回っているかどうかである。リターンのうちの一部であるダメージに関しては前回考察した。
ダメージは非常に低くそこまで価値は無いと書いたが、これが正しいと仮定すると、アローレインの価値は(仰け反り効果の価値-リスク±α)である。
さて肝心の仰け反り効果について考える。
まずウォリアーは仰け反らないので、仰け反り効果の価値も0である。
従って、ウォリアーへの攻撃はデメリットしかない。Powの無駄とかそういう問題ではなく、マイナスである。
ウォリアーに対してのみ攻撃する弓が居たら、49人で戦った方がマシだ。
ウォリアーに矢を撃つなとよく言われるが、人によってはダメージ当たってるからいいじゃん、と思う人も居るだろう。
ただ肝心のダメージは前回考察しようにゴミで、攻撃を1回当てるたびに、それに付属したリスクが発生するので、デメリットしかない。
実際に、片手ウォリアーにトゥルーなりレインなりを10回当てても、特に意味は無いが、
そのうち1回でもアイスジャベリンやシールドバッシュを妨害すれば、被害は甚大である。
ソーサラーやスカウト、主にソーサラーに対する仰け反り効果だが、当然、撃つ対象地点によって効果の大きさも異なる。
仰け反り効果による抑止力は、実際にスキルの発動や移動を妨害したり、妨害されそうだと思わせる事によってプレッシャーを与え、
スキルの使用や最前線への移動を躊躇させるのが目的である。
そのため、消費Powが大きく、効果が高く、モーションの長いスキルを使っている、または使おうとしている敵に対して妨害するのが良い。
具体的にはヘルファイアやブリザードカレス等だ。
情況を簡単にするために、戦場が一本の直線だとすると、このようなスキルを使おうとするソーサラーは、味方から近い位置に居るので、
味方に近く敵が密集してる地点に撃つのが妨害効果が最も高い。
例としては、味方のスタンに群がる敵にジャッジメントレイを撃つ等である。
しかし、味方に近ければ近い敵ほど、味方がブリザードカレスや、アイスジャベリンや、シールドバッシュを狙っているので、氷割りと被りのリスクが上がる。
そのリスクが全く無いのは、自分が最前線に居る時に最大射程でアローレインを撃った場合で、この距離で届く歩兵スキルはイーグルショットとアローレインしかないので、思う存分アローレインを撃てる。
しかし、敵のスキルもイーグルショットとアローレインしか当たらないので、妨害効果はあまり高くない。
実際には戦場は完全な直線ではなく、片方が片方を包囲したりする場面もあるが、そのようなサイドアタックとなるとブリザードカレスもどこからでも入るので、やはりリスクは高い。
つまり高い妨害効果をアローレインで実現するためには、かなりのリスクをとらなければならない。
いわゆるアローレイン弾幕を実現するためには、凍結バッシュというオーソドックスな攻め方を一部放棄する必要がある。
弾幕が薄いと言われる事は多いが、アローレイン弾幕という戦術がその時の情況に適したものであるかは、しっかりと考えるべきである。
さらに、ここまでは妨害効果の高さについて味方との距離だけで考えたが、本来は大まかな位地だけでなく、敵1人それぞれに妨害効果の価値が異なる。
1人1人の動きを観察すれば、明らかに上級魔法を撃ちそうな敵を発見できるので、その敵に対する妨害効果は高い。
しかしアローレインは、消費Powの高さ、発動時間の長さにより、そのような細かな動きには不向きなので、妨害効果の高そうな敵を重点的に狙う等の細かい配分はできない。
そのため妨害効果を狙うという点に関しても、エアレイド、トゥルーショット、イーグルショット等の単体を攻撃するスキルの方が優秀である。
これらのスキルなら、特定の敵にのみ効果とリスクを集中させる事ができるので、その割合が良い敵のみを狙うことができる。
このような単体攻撃スキルのパフォーマンスを、アローレインが上回るという情況は、相当特殊である。
カペラ南東での35vs35等の超過密マップ以外では、存在しないのではないかというのが個人的な考えだ。
非常に長くなったが言いたい事としては、アローレインのダメージは過大評価されているし、アローレインのリスクは過小評価されているので、
アローレイン弾幕という戦術が過大に評価されていると思う。
弾幕が薄いと文句を言う人は多いが、弾幕が本当に必要なのか、そしてその弾幕がアローレインである必要があるのかについて、
一度考え直す必要があるのではないか。
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