ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

早紀SS05

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先輩の居場所


伊万里「なんか廊下が騒がしいね」
稔「だな」
ビュッ
伊万里「わっ、なんか走ってった」
稔「ネコ?」
伊万里「そうみたい」
ドクオ「回収しないとまずくないか? せめて校舎外にださないと」
伊万里「ここ3階だから自力で戻れないかもしれないもんねー」
稔「うん、えー、つまり、その眼は俺に行って来いと」
ドクオ「れつごー」
伊万里「あ、ボクも行くよ?」
稔「あー、いい、いい。行ってくるよ」

そんなわけで俺は猫がダッシュしていった方向にやってきたのだが。
稔「あれ、ここ行き止まりなはずなんだけどな」
目の前にある特別教室の扉。さすがにここには鍵がかかっているのでネコが入り込むことはないと思う。
稔「そーすると……?」
その隣にある空き教室から気配がした。どうやらここに逃げ込んだらしい。
稔「おーいー、ネコー。いるかー?」
ちょっと間抜けな声のかけ方をしつつ引き戸を開ける。
ガララ……

一部が壊れて取り換えられた机やいすが置かれた空き教室に、ネコと人の気配があった。
稔「……先輩?」
なんだかよくわからないダンボール箱と一緒に壁によそりかかって座っていた先輩がいた。
早紀「あれ、どうしたの?」
稔「いや、どうしたのは俺のセリフですよ。こんな空き教室で何してるんですか?」
早紀「んんー? ちょっと頼まれてた荷物をここに運んでたら、この子が入ってきちゃって」
先輩に抱きかかえられたネコがゴロゴロとのどを鳴らしていた。
早紀「かわいいなぁーって、ここで遊んでたの。外連れて行くと逃げられちゃうしね」
いたずらっ子のような表情をして猫の額をくすぐっていた。
相当リラックスしているらしく、のんきそうに目を細めてされるがままにしている。
稔「はぁ」
なんだかこのまったりとした空気に俺もとりつかれたようだ。
稔「隣、いいですかね」
早紀「どうぞどうぞー」
ダンボール箱を脇に寄せて腰をおろした。
視界が下がって、机と箱にまぎれた気分。
稔「なんか、秘密基地みたいですね」
ダンボールのにおいと、使われてない場所と、この場所に二人だけ。
早紀「そだねー。壁を作って自分だけの部屋作って」
稔「公園の隅っこで伊万里や姉さんと遊んだっけ」
早紀「あれ? ひめっち、外でてたの?」
稔「今は超インドアですけどね。昔はそれなりに外で遊んでましたよ。ゲームもなかったし」
早紀「へぇー、ちょっと以外」
稔「今は外でないで真っ白ですからね」
早紀「うん、ひめっちもそうだけど、稔くんも」
稔「え?」
早紀「今の稔くんから腕白ボウズって感じはしないなぁ、って思って」
稔「う、そうですかね」
早紀「うんうん。なんていうか、メガネをキラーンってさせて、『伊万里、ダンボールを調達してくるんだ!』みたいな」
稔「ええー、それ、どんなイメージなんですか。しかも俺メガネじゃないし」
口をとがらせて見せるが先輩はニコニコと笑顔のままだった。
稔「先輩は? 子供の頃どんな風に遊んでたんですか?」
早紀「んー……。そうだね、ウチ、両親が共働きだったからあんまり外では遊べれなかったかな。家の中で本読んだり、お絵かきしたりしてたよ」
稔「え、一人でですか?」
早紀「うん。ちょっと小学校から家まで遠かったし、暗くなる前に家に帰らなくちゃいけなかったから、学校終わってから友達とはあんまり遊ばなかったかなぁ」
稔「ふぅん……」
俺の家も共働きだが、放任主義に近かったからそういうことはあんまりなかったと思う。伊万里の家で面倒を見てもらっていたからだろうか。
稔「でも、それだとつまらなくなかったですか? 放課後」
早紀「うーん、そうなんだけどね、慣れちゃったかな。別に家から出ちゃいけないわけじゃなかったし、ウチに友達が遊びに来てくれることもあったから」
早紀「それに、夜になったらお母さんも帰ってきてたから平気だったよ?」
早紀「うん……。まぁでも、さびしかったのかな」
自分自身にさえ聞こえるか聞こえないかわからないような声で、ぽそりと呟いた。
稔「先輩?」
早紀「今ね、すっごく楽しいの。ひめっちがいて、稔くんがいて、みんながいて」
早紀「んー、長岡くんはちょっとエッチだけど、しょうがないよね」
早紀「みんなのお手伝いして、ありがとーって言ってもらえると、すっごく嬉しいの」
ダンボールをそっと撫でながら、先輩は話を続けた。
早紀「もうすぐ、この学校ともお別れかなって思うと、ちょっとさびしいけどね。言い後輩もできたのになぁって思っちゃう」
稔「みずきとか生徒会の人?」
早紀「それもそうだけど、稔くんも」
う、そんな笑顔でまっすぐ見つめられるとちょっと照れます。
稔「…………」
思わず黙ってしまったが、気まずい感じはしない。むしろまったりとした空気がこの秘密基地に満ちていた。

キーンコーン……

廊下のスピーカーから昼休みの終りを告げるチャイムが鳴った。
このゆったりとした時間が終わってしまうのがもったいなかった。

早紀「さて、それじゃあこの子を離してきますかね」
すっかりおとなしくなって寝こけているネコを抱きかかえながら先輩が立ちあがった。
稔「あ……、先輩」
早紀「なんでしょ」
ネコを落とさないように気をつけながら戸に手をかけて振り返った。
稔「卒業しても、遊びに来てくれていいですからね」
先輩の居場所はたくさんあるから。
早紀「そーさせてもらいますねっ」
手をひらひらさせて先輩は教室を出て行った。




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