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「かみあわない話」

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2/3日(土)「かみあわない話」先輩が話を勘違いする話 恋と鯉SS



「お、稔! ちょうど良かった聞いてくれよ!」

 街で毒男と鉢合わせした。

「こないださあ。気になってたコに告白してOKもらってやっと彼女が出来たんだよ。ところが……」

 俺が挨拶する間も無く勝手に話し始める。

「さっそくそのコを呼んで俺の部屋に上げたら、なぜか手の平返したように俺のこと変態呼ばわりして逃げてったんだよぉ! 頑張って引きとめようとしたんだけど結局パーで叩かれてそれっきり。なあ稔、どうしてか分かるか……?」
「告白されてすぐ男の部屋に来いって言われたら引くんじゃないか? 普通……」
「いや、上がるとこまでは向こうもOKしてくれたんだ。家にカーチャンもいたし。なのにだぜ? 女ってホント意味不明だよな」
「変態って言われたんだからセクハラしたとか? それかいきなりキスとか関係を迫ったとか」
「稔、お前なぁ。いくら俺でもそんなことするわけねえだろ。とにかく一度台所に行ってお茶いれて戻ってきたら一発ビンタかまされて出てったんだ」
「う~ん……」

 それだけだと何がダメなのか判断出来ない。

「やっぱわかんねーか」
「すまん」
「いやわかんねーならいいんだ」

「わからないことと言えばだけど、毒男。何で制服なんだ?」

 実際毒男の悩みより休日に制服姿でいることの方が気になってしまう。

「お前が休みの日に学校に用事があるとか今まで聞いたことないんだけど」
「稔、お前は今まで食べたパンの枚数じゃなくて……今まで俺の私服を見た回数を覚えているのか?」

 もちろん覚えてない。

「いや覚えてない」
「じゃあ制服以外でいるところを一度でも見たことは?」
「それもないけど……あ!」
「そういうことだ。やっと気付いたか」

 こいつは常日頃からどんなときでも制服だ。
 長い付き合いなのになぜか今になってようやく気付いた。

「でもなんでだ?」
「そりゃもちろんこれしか持ってねえからに決まってんだろ。制服一張羅は男の基本にして最高のファッションだぜ」
「いやそれはおかしいだろ」
「全然おかしくねえよ。ジョルジュも制服しか持ってないぜ? 遠い親戚のアキラおにいさんも。お前みたいに学生で着替え分けてる男のほうが特殊なんだ」
「言われて見れば、子供の頃から学校の男子の私服だけはほとんど見たことがないような気が……」

 それを否定しようと記憶を引っ張り出しているうちに、こことは常識が違う良く似た異世界に迷い込んでしまったような感じがして嫌な気持ちになる。
 頭を振って考えないようにした。
 きっと毒男の冗談だろう。

「それより稔、こないだ返してもらった本だけど。あんまり気に入らなかったか?」
「ん? あ……アレか。いや、そうじゃないけど。やっぱり俺にはいいや」
「そういうなよ。まだまだ俺の秘蔵のエロ本はたっぷりあるぞ! ちょうどカバンの中に新しいのが何冊かあるからぜひ持っていってくれ!」
「おいやめろ毒男! こんなところで見せびらかすな!」

 エロ本を押し付けてくる毒男ともみ合いになる。
 男として興味はあるけど人目を気にせずがっつくほどじゃない。

「まあまあそう遠慮するな。代わりなら家に帰れば部屋にいくらでもあるんだから。って、あそこに居るのは昨日逃げられた俺の彼女! おーい!」

 毒男は少し遠くで歩いている後姿の女の子に駆け寄る。
 振り返った途端、女の子は毒男に平手打ちを食らわした。
 尻餅を着いて倒れた毒男の周りにエロ本が散らばる。

「しょうこりもなくまたこんな物見せびらかすなんて……! 変態! 変態! 変態! 変態! 変態!」

 女の子は毒男を見下ろしながらひとしきり罵倒すると走り去った。

「いたたたた……なあ稔、俺ってそんなに変態か?」
「道を歩いてて突然そんな物見せられたらそう思われるよ」
「今のは確かにエロ本持ったままなの忘れてた俺の不注意だけど。でも昨日はそんなことしてないんだけどなぁ」
「毒男、もしかして本の隠し場所はベッドの下と引き出しか?」
「あ、ああ。他にも色々なとこに隠してあるけど」
「じゃあ多分それが見つかったのかな。それか直し忘れて目に付く場所に置いてあったか。“またこんな物見せびらかすなんて”って言ってたし」
「そうかぁ……」

 と毒男はぶつぶつ言いながらカバンの中に拾い集めた本をしまう。

「こんにちは。お二人とも」

 振り返ると先輩がいた。

「あ、先輩」

 こんにちは。と挨拶を返す。

「うう……」
「どうしたの? 毒男くん?」
「あ、先輩。なんか逃げるものって追いかけたくなりますよね……」
「どうかな? ところで毒男くんは何に逃げられたの?」
「恋……」
「鯉ねぇ……。釣り上げるのに失敗したのね」
「釣り上げるというより囲い込んで(部屋に上げて)おくのに失敗しました……」
「……いけすにいたのがはねて逃げたの?」
「むしろ強行突破されました……」
「(鯉を飼うのも)大変ねぇ」
「(部屋に上げるのも)大変ですよぉ……」

 会話が噛み合っていないが、それに気付いているのは俺だけだった。

「それじゃ稔、先輩。失礼します……」
「うん、またね」
「またな。そんなに落ち込んでないで元気出せよ」

 よろよろと毒男は歩いていった。

「さてと、稔くんはこれからどうするの?」
「あ、俺ですか? とりあえずスーパーで買い物です」
「んー、じゃあせっかくだしあたしと一緒に行こっか。同じところで買い物みたいだし」
「いいですよ。それじゃ行きましょうか」

 そして買い物を終えて別れるまで、先輩とたわいもない世間話をして過ごした。


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