ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

「おはよー」

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匿名ユーザー

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 むかし、俺とみずきが同じクラスになった時。
 あの頃のみずきは内気だけど勝ち気、という最悪な性格のおかげで。
 あまり友達が作れず、クラスでも浮いていた。
「おはよー」
「おはよー」
「おはよう、如月」
「…」
 朝は誰とも挨拶しない。
 食事の時はずっと黙って食べて。
 昼休みには1人でずっと本を読んでて。
 帰りもまた1人で帰る。
 そんな寂しい奴だった。
 でも、俺が隣になったのが運の尽きだったのかな。
 ズボラな俺はかなりみずきに迷惑をかけた。
「き、教科書見せてくんないかな?」
「なんであたしが…」
「絵の具忘れたあー!」
「…もう」
「やべ、水着わすれ…」
「無理だからねっ」
「あれ?教室誰もいねーし」
「次、移動教室…」
 言葉は悪いし嫌々な素振りを見せる。
 でも、最後は優しかったみずきにいつも頼った。

 こんな感じを続けてある程度は仲良くなった気もするが。
 お互いに友達とまでは行かない一歩引いた関係だった。
 しかし、ある決定的な出来事によって関係が激変する。

「なんで世話してんの?」
 みずきはクラスの熱帯魚の世話をよくしていた。
 もともと世話係を決めてないクラスで、誰かが世話をしなければならないのだ。
 でも、誰もやりたがらず。
「なんでお前が?」
「…」
「あ、生き物が好きなんだ?」
「ちがっ……臭くなると嫌なのよ…」
 そう言って、放課後に水槽を洗っていたみずきだった。

 そしてある時、事件が起きた。
 朝、教室に来ると水槽の周りに人垣が出来ている。
 なんだろうと覗くと、熱帯魚が全滅しているのだ。
「…っ」
 水槽を見た時の、みずきの悲しそうな顔を今でも覚えている。
「誰がやったんだこれ…」
「…」
「許せねえな」
「…いいよ。これで世話しなくなって済んだから…」
 こんな時まで強がるなよ。
 と、言いたくなった。
 ともかく、この問題はそこで終わらない。
 なぜ死んでるかだ。
『冬だし寒くて死んだのかな』
『でもサーモヒーター付いてるじゃん』
『ねえ、水槽から洗剤の臭いがしない?』
 確かに洗剤の臭いがする。
『そういえば如月がいつも世話をしていたっけ』
 誰が言ったか知らないが、この一言が端を発して。
 一気にみずきに責任が降りかかった。

 洗剤=水槽を洗う=みずきと結びついたのだろう。
 みずきに非難が集中した。
『如月っていつも水槽洗ってたよな』
『そのときに間違って入れたんじゃ?』
『洗い残したんじゃない?』
『ともかく犯人は如月か…』
「…あたし、洗剤なんかで洗ってないよ…」
「如月…」
「…あたしがやったんじゃない…」
 みずきの声は届かなかった。
 いや、誰も聞き入れなかった。
 理不尽だった。
 みずきを良く思ってないからってみずきのせいにする奴らが。
 普段は世話すらしないくせに、こういうときだけ大声を上げる奴らが。
 誰かのせいにして楽になりたい奴らが。
『信じられねえよ』
『何考えてんだアイツ』
 こうなると手に負えない。
 やったやってないかで片付く問題じゃなくなって。
 幾ら違うと言ってもますますみずきの立場が悪くなるだけ。
 だから…。
「…なあ如月、お前がそんなことするわけねーよな?」
「…」
「俺はお前が優しいの分かってるから」
「藤宮…」
 だから俺は…。
「すまん皆聞いてくれ!!」
「ああ?」
「なんだ?」
「悪かった! 俺がやったんだ!」

 こうしてこの問題は幕を下ろした。
 みんなからの風当たりは少し厳しくなったが。
「なんでこんなことをしたんだ藤宮!」
「せ、洗剤で浸け置きってあるじゃないすか? だから少しでも綺麗になるかなーって…」
「バカモン!」
 ゴン!!
「いてえっ!!」
「後で職員室に来い!」
「え、えー!?」
「当たり前だバカもの!」
「あはは、藤宮だっせー」
「とうぜんの罰だな!」
「うぐ…」
「藤宮、分かったな?」
「…はい」
「ったく…。そんなしょぼくれるな」
「だって…」
「…後でケーキ食わせてやる」
「!?」
「よく如月を庇ってくれたな。よく頑張った」
「先生…」
 先生が良い人だと思うようになったのはこれが初めてだ。
 そして…。

 そしてみずきとの関係だ。
「あんた、なんで庇ったのよ」
「なんでって…」
「…」
「今まで迷惑かけっぱなしだったし…」
「…」
「それに、あのままだったら、お前がクラスに居づらくなるだろ?」
「あたしは別によかったのに…」
「なんだよ、クラスに居場所が無くなってもいいのか?」
「元から無かったからいいのよ」
「…」
「こんなことしたら、今度はあなたの居場所が無くなるじゃない」
「…」
「それに、居場所なんてどうだっていい。あたしは1人でも…」
「やだよ俺は」
「な、なんで?」
「お前みたいな優しい奴がみんなに理解されないなんていやだ」
「…」
「口は悪いけどいつも助けてくれるじゃんか。優しいじゃんか」
「藤宮…」
「そんなお前を1人ぼっちになんかさせねえ。絶対にな」
「…っ」
「文句あるかこのやろー」
「…ありがとう、稔」
 まあまあ今思うとよくこんな恥ずかしいこと言えたもんだ。

 ともかく、これからだ。
 みずきが明るくなって、二人の関係が変わってったのは。
「おはよー稔!」
「ああおはよ」
「あ、ほーら、ここ。服にご飯つぶ付いてる」
「すまぬ」
「だらしないなあ」
「面目ない」
「そういえば稔、宿題やってきた?」
「あ、やべ」
「もー…、見てあげるから今やんなさい!」
「え゙、見せてくんないの?」
「終わんなかったら見せたげる」
「かたじけない」
「…もー、あたしがいないとダメなんだから」
 まさかここまで変わるとは思わなかったな。
 あの時は。
「それから放課後空いてる?」
「たぶん。なんで?」
「あ、あの…ママがね、稔のこと家に呼んできなさいって…」
「みずきの母上が? なんで?」
「わ、わかんないけどっ! とにかく来てよ!」
「え、えー…」
「あ、たぶん、美味しいお菓子とか出るんじゃない?」
「ぜひ行かせて頂こう」
「…稔のバカ」


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