むかし、俺とみずきが同じクラスになった時。
あの頃のみずきは内気だけど勝ち気、という最悪な性格のおかげで。
あまり友達が作れず、クラスでも浮いていた。
「おはよー」
「おはよー」
「おはよう、如月」
「…」
朝は誰とも挨拶しない。
食事の時はずっと黙って食べて。
昼休みには1人でずっと本を読んでて。
帰りもまた1人で帰る。
そんな寂しい奴だった。
でも、俺が隣になったのが運の尽きだったのかな。
ズボラな俺はかなりみずきに迷惑をかけた。
「き、教科書見せてくんないかな?」
「なんであたしが…」
「絵の具忘れたあー!」
「…もう」
「やべ、水着わすれ…」
「無理だからねっ」
「あれ?教室誰もいねーし」
「次、移動教室…」
言葉は悪いし嫌々な素振りを見せる。
でも、最後は優しかったみずきにいつも頼った。
あの頃のみずきは内気だけど勝ち気、という最悪な性格のおかげで。
あまり友達が作れず、クラスでも浮いていた。
「おはよー」
「おはよー」
「おはよう、如月」
「…」
朝は誰とも挨拶しない。
食事の時はずっと黙って食べて。
昼休みには1人でずっと本を読んでて。
帰りもまた1人で帰る。
そんな寂しい奴だった。
でも、俺が隣になったのが運の尽きだったのかな。
ズボラな俺はかなりみずきに迷惑をかけた。
「き、教科書見せてくんないかな?」
「なんであたしが…」
「絵の具忘れたあー!」
「…もう」
「やべ、水着わすれ…」
「無理だからねっ」
「あれ?教室誰もいねーし」
「次、移動教室…」
言葉は悪いし嫌々な素振りを見せる。
でも、最後は優しかったみずきにいつも頼った。
こんな感じを続けてある程度は仲良くなった気もするが。
お互いに友達とまでは行かない一歩引いた関係だった。
しかし、ある決定的な出来事によって関係が激変する。
お互いに友達とまでは行かない一歩引いた関係だった。
しかし、ある決定的な出来事によって関係が激変する。
「なんで世話してんの?」
みずきはクラスの熱帯魚の世話をよくしていた。
もともと世話係を決めてないクラスで、誰かが世話をしなければならないのだ。
でも、誰もやりたがらず。
「なんでお前が?」
「…」
「あ、生き物が好きなんだ?」
「ちがっ……臭くなると嫌なのよ…」
そう言って、放課後に水槽を洗っていたみずきだった。
みずきはクラスの熱帯魚の世話をよくしていた。
もともと世話係を決めてないクラスで、誰かが世話をしなければならないのだ。
でも、誰もやりたがらず。
「なんでお前が?」
「…」
「あ、生き物が好きなんだ?」
「ちがっ……臭くなると嫌なのよ…」
そう言って、放課後に水槽を洗っていたみずきだった。
そしてある時、事件が起きた。
朝、教室に来ると水槽の周りに人垣が出来ている。
なんだろうと覗くと、熱帯魚が全滅しているのだ。
「…っ」
水槽を見た時の、みずきの悲しそうな顔を今でも覚えている。
「誰がやったんだこれ…」
「…」
「許せねえな」
「…いいよ。これで世話しなくなって済んだから…」
こんな時まで強がるなよ。
と、言いたくなった。
ともかく、この問題はそこで終わらない。
なぜ死んでるかだ。
『冬だし寒くて死んだのかな』
『でもサーモヒーター付いてるじゃん』
『ねえ、水槽から洗剤の臭いがしない?』
確かに洗剤の臭いがする。
『そういえば如月がいつも世話をしていたっけ』
誰が言ったか知らないが、この一言が端を発して。
一気にみずきに責任が降りかかった。
朝、教室に来ると水槽の周りに人垣が出来ている。
なんだろうと覗くと、熱帯魚が全滅しているのだ。
「…っ」
水槽を見た時の、みずきの悲しそうな顔を今でも覚えている。
「誰がやったんだこれ…」
「…」
「許せねえな」
「…いいよ。これで世話しなくなって済んだから…」
こんな時まで強がるなよ。
と、言いたくなった。
ともかく、この問題はそこで終わらない。
なぜ死んでるかだ。
『冬だし寒くて死んだのかな』
『でもサーモヒーター付いてるじゃん』
『ねえ、水槽から洗剤の臭いがしない?』
確かに洗剤の臭いがする。
『そういえば如月がいつも世話をしていたっけ』
誰が言ったか知らないが、この一言が端を発して。
一気にみずきに責任が降りかかった。
洗剤=水槽を洗う=みずきと結びついたのだろう。
みずきに非難が集中した。
『如月っていつも水槽洗ってたよな』
『そのときに間違って入れたんじゃ?』
『洗い残したんじゃない?』
『ともかく犯人は如月か…』
「…あたし、洗剤なんかで洗ってないよ…」
「如月…」
「…あたしがやったんじゃない…」
みずきの声は届かなかった。
いや、誰も聞き入れなかった。
理不尽だった。
みずきを良く思ってないからってみずきのせいにする奴らが。
普段は世話すらしないくせに、こういうときだけ大声を上げる奴らが。
誰かのせいにして楽になりたい奴らが。
『信じられねえよ』
『何考えてんだアイツ』
こうなると手に負えない。
やったやってないかで片付く問題じゃなくなって。
幾ら違うと言ってもますますみずきの立場が悪くなるだけ。
だから…。
「…なあ如月、お前がそんなことするわけねーよな?」
「…」
「俺はお前が優しいの分かってるから」
「藤宮…」
だから俺は…。
「すまん皆聞いてくれ!!」
「ああ?」
「なんだ?」
「悪かった! 俺がやったんだ!」
みずきに非難が集中した。
『如月っていつも水槽洗ってたよな』
『そのときに間違って入れたんじゃ?』
『洗い残したんじゃない?』
『ともかく犯人は如月か…』
「…あたし、洗剤なんかで洗ってないよ…」
「如月…」
「…あたしがやったんじゃない…」
みずきの声は届かなかった。
いや、誰も聞き入れなかった。
理不尽だった。
みずきを良く思ってないからってみずきのせいにする奴らが。
普段は世話すらしないくせに、こういうときだけ大声を上げる奴らが。
誰かのせいにして楽になりたい奴らが。
『信じられねえよ』
『何考えてんだアイツ』
こうなると手に負えない。
やったやってないかで片付く問題じゃなくなって。
幾ら違うと言ってもますますみずきの立場が悪くなるだけ。
だから…。
「…なあ如月、お前がそんなことするわけねーよな?」
「…」
「俺はお前が優しいの分かってるから」
「藤宮…」
だから俺は…。
「すまん皆聞いてくれ!!」
「ああ?」
「なんだ?」
「悪かった! 俺がやったんだ!」
こうしてこの問題は幕を下ろした。
みんなからの風当たりは少し厳しくなったが。
「なんでこんなことをしたんだ藤宮!」
「せ、洗剤で浸け置きってあるじゃないすか? だから少しでも綺麗になるかなーって…」
「バカモン!」
ゴン!!
「いてえっ!!」
「後で職員室に来い!」
「え、えー!?」
「当たり前だバカもの!」
「あはは、藤宮だっせー」
「とうぜんの罰だな!」
「うぐ…」
「藤宮、分かったな?」
「…はい」
「ったく…。そんなしょぼくれるな」
「だって…」
「…後でケーキ食わせてやる」
「!?」
「よく如月を庇ってくれたな。よく頑張った」
「先生…」
先生が良い人だと思うようになったのはこれが初めてだ。
そして…。
みんなからの風当たりは少し厳しくなったが。
「なんでこんなことをしたんだ藤宮!」
「せ、洗剤で浸け置きってあるじゃないすか? だから少しでも綺麗になるかなーって…」
「バカモン!」
ゴン!!
「いてえっ!!」
「後で職員室に来い!」
「え、えー!?」
「当たり前だバカもの!」
「あはは、藤宮だっせー」
「とうぜんの罰だな!」
「うぐ…」
「藤宮、分かったな?」
「…はい」
「ったく…。そんなしょぼくれるな」
「だって…」
「…後でケーキ食わせてやる」
「!?」
「よく如月を庇ってくれたな。よく頑張った」
「先生…」
先生が良い人だと思うようになったのはこれが初めてだ。
そして…。
そしてみずきとの関係だ。
「あんた、なんで庇ったのよ」
「なんでって…」
「…」
「今まで迷惑かけっぱなしだったし…」
「…」
「それに、あのままだったら、お前がクラスに居づらくなるだろ?」
「あたしは別によかったのに…」
「なんだよ、クラスに居場所が無くなってもいいのか?」
「元から無かったからいいのよ」
「…」
「こんなことしたら、今度はあなたの居場所が無くなるじゃない」
「…」
「それに、居場所なんてどうだっていい。あたしは1人でも…」
「やだよ俺は」
「な、なんで?」
「お前みたいな優しい奴がみんなに理解されないなんていやだ」
「…」
「口は悪いけどいつも助けてくれるじゃんか。優しいじゃんか」
「藤宮…」
「そんなお前を1人ぼっちになんかさせねえ。絶対にな」
「…っ」
「文句あるかこのやろー」
「…ありがとう、稔」
まあまあ今思うとよくこんな恥ずかしいこと言えたもんだ。
「あんた、なんで庇ったのよ」
「なんでって…」
「…」
「今まで迷惑かけっぱなしだったし…」
「…」
「それに、あのままだったら、お前がクラスに居づらくなるだろ?」
「あたしは別によかったのに…」
「なんだよ、クラスに居場所が無くなってもいいのか?」
「元から無かったからいいのよ」
「…」
「こんなことしたら、今度はあなたの居場所が無くなるじゃない」
「…」
「それに、居場所なんてどうだっていい。あたしは1人でも…」
「やだよ俺は」
「な、なんで?」
「お前みたいな優しい奴がみんなに理解されないなんていやだ」
「…」
「口は悪いけどいつも助けてくれるじゃんか。優しいじゃんか」
「藤宮…」
「そんなお前を1人ぼっちになんかさせねえ。絶対にな」
「…っ」
「文句あるかこのやろー」
「…ありがとう、稔」
まあまあ今思うとよくこんな恥ずかしいこと言えたもんだ。
ともかく、これからだ。
みずきが明るくなって、二人の関係が変わってったのは。
「おはよー稔!」
「ああおはよ」
「あ、ほーら、ここ。服にご飯つぶ付いてる」
「すまぬ」
「だらしないなあ」
「面目ない」
「そういえば稔、宿題やってきた?」
「あ、やべ」
「もー…、見てあげるから今やんなさい!」
「え゙、見せてくんないの?」
「終わんなかったら見せたげる」
「かたじけない」
「…もー、あたしがいないとダメなんだから」
まさかここまで変わるとは思わなかったな。
あの時は。
「それから放課後空いてる?」
「たぶん。なんで?」
「あ、あの…ママがね、稔のこと家に呼んできなさいって…」
「みずきの母上が? なんで?」
「わ、わかんないけどっ! とにかく来てよ!」
「え、えー…」
「あ、たぶん、美味しいお菓子とか出るんじゃない?」
「ぜひ行かせて頂こう」
「…稔のバカ」
みずきが明るくなって、二人の関係が変わってったのは。
「おはよー稔!」
「ああおはよ」
「あ、ほーら、ここ。服にご飯つぶ付いてる」
「すまぬ」
「だらしないなあ」
「面目ない」
「そういえば稔、宿題やってきた?」
「あ、やべ」
「もー…、見てあげるから今やんなさい!」
「え゙、見せてくんないの?」
「終わんなかったら見せたげる」
「かたじけない」
「…もー、あたしがいないとダメなんだから」
まさかここまで変わるとは思わなかったな。
あの時は。
「それから放課後空いてる?」
「たぶん。なんで?」
「あ、あの…ママがね、稔のこと家に呼んできなさいって…」
「みずきの母上が? なんで?」
「わ、わかんないけどっ! とにかく来てよ!」
「え、えー…」
「あ、たぶん、美味しいお菓子とか出るんじゃない?」
「ぜひ行かせて頂こう」
「…稔のバカ」