月が出ていない深夜、辺りは暗闇に包まれている。ここはとあるマンションの屋上…
そこにみずきの姿があった。彼女は暗い色の服を着込みあたりと同化するかのような風貌であった。
そこにみずきの姿があった。彼女は暗い色の服を着込みあたりと同化するかのような風貌であった。
みずきは辺りを見回すと、屋上にある落下防止の柵を乗り越えてしまった。
人工の断崖絶壁のふちに柵の方に向きなおして立つとそのままプールに足から飛び込むように飛び降りた。
突然の飛び降り自殺かと思われるようなその行動… だが、ただ飛び降りただけではなかった。
命綱のロープをつかみ、レスキュー隊員のようにぴょんぴょんと壁を蹴りながら目標の部屋のベランダへ向かっていた
人工の断崖絶壁のふちに柵の方に向きなおして立つとそのままプールに足から飛び込むように飛び降りた。
突然の飛び降り自殺かと思われるようなその行動… だが、ただ飛び降りただけではなかった。
命綱のロープをつかみ、レスキュー隊員のようにぴょんぴょんと壁を蹴りながら目標の部屋のベランダへ向かっていた
百合とその親族の住む部屋である。ある程度の高層階にあるせいかベランダの窓に鍵は掛かっていなかった。
そこからみずきが侵入するが、部屋には明かりがなく真っ暗だった。しかしみずきは慌てる様子もなく、背負っていたリュックから小さなペンライトを取り出した。
スイッチを入れるとほのかに周りが明るくなり、作業がしやすくなったがすぐにスイッチを切った。コンセントの場所を覚えるだけのために一瞬つけただけであった。
続いてドライバーセットと小さな機械を取り出したみずきはそれを部屋中のコンセントに取り付け始めた。
もちろん小さな機械とは盗聴器である
「…………」
みずきは終始無言で機器を取り付ける。部屋の中からは家電の音とみずきのたてるわずかな物音しかしない。
作業はまったく問題なく進む。外見が多少違おうと開けてみれば中身はどれも同じで既に何十回も同じ作業を繰り返しているみずきには手馴れたことだった。
そこからみずきが侵入するが、部屋には明かりがなく真っ暗だった。しかしみずきは慌てる様子もなく、背負っていたリュックから小さなペンライトを取り出した。
スイッチを入れるとほのかに周りが明るくなり、作業がしやすくなったがすぐにスイッチを切った。コンセントの場所を覚えるだけのために一瞬つけただけであった。
続いてドライバーセットと小さな機械を取り出したみずきはそれを部屋中のコンセントに取り付け始めた。
もちろん小さな機械とは盗聴器である
「…………」
みずきは終始無言で機器を取り付ける。部屋の中からは家電の音とみずきのたてるわずかな物音しかしない。
作業はまったく問題なく進む。外見が多少違おうと開けてみれば中身はどれも同じで既に何十回も同じ作業を繰り返しているみずきには手馴れたことだった。
何箇所か盗聴器を仕掛けたみずきは堂々と玄関から外に出た。きょろきょろと辺りを見回し、近くにあった消火栓に近づくとやや大きめの機械を中に設置した。
その装置は盗聴器から出た電波をキャッチし保存する機械であった。これで数日分の記録が取れるのである。
その装置は盗聴器から出た電波をキャッチし保存する機械であった。これで数日分の記録が取れるのである。
一週間ほどたったある日、みずきは同じ時間帯に記録装置を回収しにマンションへと向かった。
既にカメラもダミーであることを確認していたみずきは真正面からマンションへと入り記録装置を回収した。
既にカメラもダミーであることを確認していたみずきは真正面からマンションへと入り記録装置を回収した。
回収してすぐにみずきは中身を確認した。他愛のない家族の日常がそこに収められていたがどこかしら違和感があった。
――そう… 本当にほしい人間の声が一切なかったのだ…――そんな事実に気がついた時、みずきはゾッとしたが、もっとゾッとしたことがあった。
『あの時、世間を騒がせた殺人鬼の娘を何故育てているんだ…』要約するとそんな感じの会話が深夜のリビングで交わされていたのだ。
当然であろう。家族から空気のような扱いをされている上、自分たちも知っている事件の犯人の娘なのだ。
――その事件がきっかけで稔たちの学年は集団登下校を行うようになっただ――
一応食事などは与えられているようだが、それ以外は空気というより腫れ物に触るような雰囲気であった。
翌日、みずきは百合の顔をまともに見ることが出来なかった。だがほんの一瞬顔を見たとき、いつも異常にどこか冷めた笑顔をしていたような気がした。
――そう… 本当にほしい人間の声が一切なかったのだ…――そんな事実に気がついた時、みずきはゾッとしたが、もっとゾッとしたことがあった。
『あの時、世間を騒がせた殺人鬼の娘を何故育てているんだ…』要約するとそんな感じの会話が深夜のリビングで交わされていたのだ。
当然であろう。家族から空気のような扱いをされている上、自分たちも知っている事件の犯人の娘なのだ。
――その事件がきっかけで稔たちの学年は集団登下校を行うようになっただ――
一応食事などは与えられているようだが、それ以外は空気というより腫れ物に触るような雰囲気であった。
翌日、みずきは百合の顔をまともに見ることが出来なかった。だがほんの一瞬顔を見たとき、いつも異常にどこか冷めた笑顔をしていたような気がした。
暗くなった帰り道、家路を急いで愛用の自転車を飛ばしているみずきの姿があった。
あまりに急いでいるため周りの景色はろくに見えなかったが、ふと目をやると街灯の下に帰り道が逆のはずの百合の姿があった。
『ばれたのかっ!?』そう思いつつも自転車は最高速のまま百合の横を駆け抜けた。何事もなく走る自転車。
みずきはそこにいた百合を不思議に思いつつ自転車のペダルを踏んだ。
しかし、とたんに息苦しくなり、目の前の景色がぐるんと回転したかと思うと、みずきは転倒してしまった。
あまりに急いでいるため周りの景色はろくに見えなかったが、ふと目をやると街灯の下に帰り道が逆のはずの百合の姿があった。
『ばれたのかっ!?』そう思いつつも自転車は最高速のまま百合の横を駆け抜けた。何事もなく走る自転車。
みずきはそこにいた百合を不思議に思いつつ自転車のペダルを踏んだ。
しかし、とたんに息苦しくなり、目の前の景色がぐるんと回転したかと思うと、みずきは転倒してしまった。
勢いがあったせいでみずきはゴロゴロ転がり、やがて全身がすり傷だらけになって停止した。
痛みと息苦しさで意識がもうろうとしつつも自分に何があったかを確認する。違和感を感じ右胸を触ると大きな裂傷があった。
痛みと息苦しさで意識がもうろうとしつつも自分に何があったかを確認する。違和感を感じ右胸を触ると大きな裂傷があった。
切れ味の良い刃物で服ごと切られ、その傷が肺にまで達していたようで呼吸困難となっていた。
「ごめんなさい、如月さん…」
一応申し訳無さそうな表情を浮かべて謝る百合。手に持っていた小刀を無骨なナイフに持ち替えるとその刃をみずきの延髄に突き立てた。
「ごめんなさい、如月さん…」
一応申し訳無さそうな表情を浮かべて謝る百合。手に持っていた小刀を無骨なナイフに持ち替えるとその刃をみずきの延髄に突き立てた。
『ねぇねぇ…、如月さんの家族、借金で夜逃げしたんだって!』
『え? あたしはこわ~い人が脅してたから逃げたって聞いたけど…』
そんなうわさがみずきが姿を消してから一週間で出来ていた。
「真実は一体何なんだ…」
肩を落とし落ち込む稔。失踪する前日まで何も変わらないはずの日常だったのに、今は全然違う不自然な日常になっているのだ。
「委員長はどう思う…? って言ってもどうにもならないのにな…」
自虐的に、そして諦めの混じった苦笑いを浮かべる稔。
『え? あたしはこわ~い人が脅してたから逃げたって聞いたけど…』
そんなうわさがみずきが姿を消してから一週間で出来ていた。
「真実は一体何なんだ…」
肩を落とし落ち込む稔。失踪する前日まで何も変わらないはずの日常だったのに、今は全然違う不自然な日常になっているのだ。
「委員長はどう思う…? って言ってもどうにもならないのにな…」
自虐的に、そして諦めの混じった苦笑いを浮かべる稔。
真実はすぐ近くにあるのに伸ばした手を稔は引っ込めてしまった…
本当は怖かった委員長
~Fin~