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『バッドエンド?』

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『バッドエンド?』


 放課後になった。
「稔ぅ、てめぇメシでも食いに行こうぜ」
「なんだその誘い方は」
 ドクオが俺の胸倉をつかんで夕食に誘う。
 俺はそのかつてない誘い方に興奮し、ドクオの顔を殴っていた。
「あのよ、悪いけど手持ちが少ないんだ」
「しょうがねえ、貸してやるよ」
「だったら行っていいぜ」
「へへ、貸してやるんだから利子付けて返せよ?」
「わかった。借りた分を80パーセントにして返してやるよ」
「え!? マジでいいのか!?」
 俺がマジでいいのかと聞きたい。
「よし、そうと分かれば…」
「お金ないならあたしが奢ってあげる!」
「は?」
 ドクオと教室を出ようとすると、どこからともなくみずきが湧いてきた。
 おごるって…いつから俺たちの会話をきいていたのだろうか。
「稔、魚と野菜の美味しいレストラン見つけたんだ! 行こうよ!」
「あ…え?」
 みずきは俺の腕をがっちり取って離さない。
「き、急にどうしたんだよみずき?」
「この前ママと行ったレストランが良かったの。行かない?」
「れ、レストランって…お、おい稔! おごる気はさらさらねえけどこっちは可愛い子のいる定食屋だぞ!? 」
「え? あ、うーん…」
「サバの味噌煮が食いたいだろ!? サクサクのコロッケもあるんだぞ!?」
「稔、悩むことなんてないじゃん。あたしと行こ?」
 みずきの言うように確かに悩んでいる。
 だが、どちらにしようか悩んでいるのではなく、おれは初めから決まっている答えをどう伝えようか悩んでいるのだ。
「うーん…」
「ねえ稔、早く行こうよーっ」
「…可愛い子はともかく、どちらかと言えば今日は定食の気分…」
「えっ?」
「ま、まじか?」
 みずきはともかく、ドクオまでもが驚いている。
「か、勝った!? 無料のレストランに勝ったのか!?」
「稔? なんで?」
「奇跡だ…いや友情の勝利だ…」
「いや気分の問題だから。今日はサバの味噌煮とかが食いたいから定食屋だな」
 ドクオはおれの話を聞かずに天を仰ぎ勝利をたたえている。
「ハッハッハ! おいチビッコ! 稔は俺と行きたがってるんだ。さっさと帰るんだな!」
「このっ…!」
「悔しいか悔しいだろう? ケッケッケ!!」
「おいあんまし刺激すんなよ」
 ドクオにそっと耳打ちする。
 みずきは沸点が低いんだ。あんまり下手なこと言うもんじゃない。
「つーことでみずき、悪いんだけど今日はドクオに付き合うわ」
「稔っ…」
 潤んだ目で俺の胸元にしがみつき俺を見つめる。
 そんな…袋に入れてもらえないカンガルーの子供みたいな顔すんなよ…。
「ドクオの誘いの方が早かったし、今日はそっちにする。また今度な」
「…じゃああたしもその定食屋に行く!!」
 みずきはなおも俺の胸元をつかんで離さない。
「って言ってるけどドクオ?」
「だめだ! 稔が許しても俺が許さん!!」
「なんであんたの許可が必要なのよ! 関係ないじゃん!」
 ドクオはいつにない覇気で吼える。
 背中からオーラ的な何かが見えるようだった。
「…あのなお前ら」
「今日は男の会合なんだ! 可愛い店員を視姦するんだ! 女人は去れ!」
「意味分かんない! あんたこそ消えればいいのに!」
「…」
「さーて稔! こんなチビッコ放っておいて行こうぜ!」
「そうだ、定食屋に行きたいんならあたしと二人で行けばいいんじゃない! ね、稔?」
「…」
「そうだな…分かった」
「え?」
「ん?」
「俺、家で食うわ。じゃあな」
「…」
「…」
 唖然とする二人を残して帰った。
 初めからこうすればよかった。


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