ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

ひめSS11

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匿名ユーザー

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 家にダンボールの小包が届いた。俺宛?
 不信に思いながら持ち上げてみる。重い……。どっしりとした重量感。
「こいつはもしや!」
 そこでふと懸賞に応募した、松坂牛ハンバーグ4人前セットを思い出す。それぐらいしか思い浮かばない。
「姉さん、当たった! 当たったよ!」
 今まで懸賞など当たったことなどなく、俺は思わず舞い上がってしまい喜び勇んで姉さんの前にそれを持っていく。
「な、なによー。急に大声出してびっくりするじゃない。それにお姉ちゃんと呼びなさいと何度いったら……」
「それどころじゃないよ。ほら、これみて! この間、松坂牛ハンバーグの懸賞に応募したのが当たったんだよ!」
 ハンバーグという言葉を聞いてピクリと反応する姉さん。ヒュン!
「あれ?」
 俺の手元から小包の重さが消える。いつのまにか姉さんの腕に、それが瞬間移動している。
「ハンバ~グ~♪ ハンバ~グ~♪」
 ビーッとガムテープを剥がしにかかる。
 こんなに嬉しそうな姉さんはひさしぶりだ。見ていて俺もなんだか嬉しくなる。
「今日は松坂牛のハンバ……グ?」
 ピタリと軽快だったその手が止まる。それと同時に溢れ出す腐ったような鼻をつく異臭。
「ね、ねえ……稔くん。な、生で送ってきてるのかな?」
 ミテハイケナイ。体が、頭が、本能が警告する。全身に鳥肌が立つ。しかし、俺の目はそれに釘付けで。
 アケテハイケナイ。
 震える姉さんの手は、絶対にそれを拒絶しているのに、まるで意思に逆らうかのようにそれを開く。
「イヤァァァァッァァァッ―――――――!!!」
 それは手だった。血はどす黒く固まり、指は切り刻まれ何本か失っていた。
 しかし、そのか細い手はどうみても女の子のもので。
 その残された指に握られていたのは……俺があいつにプレゼントしたリボンだった。
「ウ、ウァァァァァッァァァッァァア―――――――!!!」

 頭が真っ白になった俺は、気付いた時にはそれを抱きしめていた。
 変わり果てたあいつの姿。俺に優しく微笑みかけるあいつの笑顔が、消えてしまう……。
「うわぁぁぁぁっっ!!」
 俺は泣き叫んでいた。ぼろぼろと床に涙を垂らしながらみっともなく泣いた。戻らないあいつの手をさすりながら。
「稔くん……」
 俺の背中がぬくもりで包まれる。姉さんがそうしてくれなかったら、俺は発狂してしまったかもしれない。
「ううっ……くそっ、くそっ! 俺が側にいたら」
「稔くんのせいじゃないよ」
 自分でも四六時中側にいれないことぐらいわかる。でも、それでも、今は自分が恨めしい。
 自分で自分自身を絞め殺してやりたいぐらいに。そんな俺を、昔してくれたみたいに姉さんが頭を撫でる。
「よしよし。稔くんはいい子だよ」
 いつもなら子供みたいに扱うなと突っぱねるところだが、今はそれが俺の心の支えになっていた。
 それで少し落ち着きを取り戻した俺の目の端に何かが映る。
 俺はあいつの変わり果てた手をそっと膝に置き、それを箱から取り上げる。
 まっ白な紙に、血でうねったようなものが描かれている。これは絵?
 それがあいつの癖のある文字の書き方だと気付きハッとする。
『みにくい わたしのことは わすれてください』
 犯人がかかせたであろうそれは、俺に怒りを覚えさせる。しかし次に書かれた文字は俺に救いを与えた。
『わすれなければ あなたのこえをきく この うすぎたないみみ をおくります』
 あいつが生きている! 犯人が警告のために与えてきたであろうその文も、今の俺に取っては救いだった。
「どうしたの稔くん?」
「あいつは生きている。生きてるんだ……」
 失われたと思ったあいつが帰ってきた。今はそれだけで、それだけでいい。
「その子のこと大事なんだね。私……も」
 俺に笑顔が戻ったのを見て姉さんがなにかをぽつりとつぶやいたが、最期の方は俺の耳には聞こえなかった。
 ――次の日、あいつの耳が送られてきた―――

 お終い

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