ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

護衛SS

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匿名ユーザー

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「みのるくーん」
放課後、颯爽と家に帰ろうとしていたオレを先輩が引き留めた。

「みのるくん今日ひまかな?」
にっこりと先輩が微笑みかける。
その微笑みは宝石の輝きと例えるより、これから嫁ぎに出る村娘のために作られた白い絹のドレスが、朝焼けの光に照らされ、まばゆく輝いているさまだ、とオレは思った。
「もちろん暇ですとも」
この笑顔の前では、断る理由すら存在を許されない。
「じゃぁ、校門裏に来てくれるかな…」
先輩の頬がかすかに赤い。
寒い冬を乗りきった、まっかに熟れた林檎の皮を煮詰めて作った絵の具を、産毛のようにしなやかな細い筆に少し含ませて、先輩の微かに甘い香りのする柔らかな肌にうっすらと伸ばしたのではないかとも思わせる先輩の照れた顔。

どこからか林檎の爽やかな香りがした気がした。

「やっぱり忙しかった…?」
先輩の顔にみとれてて、つい返事をし損ねてしまっていた。
「いやいや、そんなことないですよ」
その言葉を聞いて安堵した表情を見せると、
「…それじゃぁ、待ってるから…」
そう言って先輩は駆け足で去ってしまった。

しかし、いくら鈍感と呼ばれる自分にもあからさまに分かる態度。
そして、校舎裏という王道的な場所への呼び出し。
…そして、あの表情。
これは、どうみてもオレにも春が来たということじゃないか…!
そう思うと、なんだか急に心拍数が上がった気がした。

季節は冬。

オレの体は火照っていた。


そんなことなど考えていると、あと一つ角を曲がるところで校舎裏というところまできた。

まず深呼吸。

あんまり真っ赤な顔で行くのも恥ずかしい。いたって冷静、冷静を保つんだ。

Coolになれ、前原圭一。

そして、オレは角を曲がった。愛しい人の元へと…。


「え?みのりん?…ねぇ、蓬山先輩、こいつ使えるの?」
オレのことを「みのりん」なんて呼ぶ奴は一人しかいない…。
「おい、伊万里」
「へ?…あ、いだだだ」
伊万里の頬を軽くつねる。
「オレのことを「こいつ」なんていってくれたお返しだ」
「いったー!ちょっとみのりん何のつもり!?」
「それはこっちの台詞だ。なんで『おまえら』がここにいるんだよ!」
そこには、姉さん、先輩、みずき、伊万里、委員長、勢ぞろい。
「大丈夫、みのるは男だし、伊万里よりかは戦力になるでしょ」
みずき、ナイスフォローだ。
「そうだね、いざとなれば稔くんだけおいて逃げちゃえばいいしね!」
おいおい、実の姉がなんてこといいやがる。 
「いい加減にしてくれよ。第一オレは先輩に…」
「先輩に…?」
そういって急に姉さんが接近してきた。その小動物のような小さなくりくりとした目から繰り出される上目遣いは、
考える力という物を停止させる。
「あっ!わかった!どーせ先輩に告られっふごふぁっ」
急いで伊万里の口をふさぐ。
「みずき、一生のお願いだ、こいつの口をふさぎ続けてくれ」
「了解っ!」
みずき、ナイスブロックだ。


とりあえず、今の状況をいったん整理しなければならない。
「先輩、いったいなんでオレを呼び出したんですか?」
オレに見せた、あの水水しく燃えるような火照った顔は、嘘だというのか。
「いや、ちょっと頼みごとを受けたんだけど、一人じゃどうにもならなかったから…ごめんね」
どうやら嘘ですた。
「まぁまぁ、そう落ち込まずに。ボクが慰めてあげるからさ」
「みずき」
「おーけぃ」
「ちょっとみずき!裏切るの?ちょっ…g」
みずき、ナイスガードだ。
「ったく。てかなんで委員長までここにいるんだ?委員長まで来なくてもいいのに」
「いや、蓬山先輩には前助けていただいたことがあったので、今回どうしてもお手伝いさせていただきたくて…」
なるほど。ということは白水は委員長のオプション、ってとこか。
「しっかし、よくこんなに集めましたね、先輩。こんなに人数がいる頼まれごとって一体なんですか?」
「ふふ…それはね」

「ある重要人物の護衛よ」


「これが駅周辺の地図です」
委員長の広げた地図は、観光などのようなちゃちな地図とは違い、本来なら地図上に乗らない道であっても、人が通れそうなところは全て書き記されており、
どの道にも大体の太さと、同時に並列で走れる人数の目安が書いてあったりと、すごいことになっている。なんだこれは。
「私なりに工夫して作ってみたんですが…」
「百合ぃぃ!完璧すぎますわ!」
「さっすが百合ちゃん、これで大体の逃げ道は把握できるね」
「じゃぁ、使いそうな道だけいくつか選んどいてチェックするね」
そういうと、みずきは赤ペンのふたを取った。
少し力んでとれないふたに、さらに力もうとしたところで急に抜けて、あっけに取られている顔がまたたまらない。
「ここは長くて細い一本みちだから、相手が長距離で攻撃手段を持っていると引き返せなくて非常に危なくなる可能性がありますわ」
「白水さん、意外とこういうのに詳しのね」
「だってりぃちゃんは弓道部ですもの」
「まぁ、百合ったらそんなこと言わなくてもよくてよ」
「ほら、ここなら使えそうじゃない?敵が来たときにここに入れば、一気に駅までショートカットできるし」
「でもここ一般の道として一応地図にものってるし、待ち伏せされたら危ないわね」
「そういえば蓬山先輩って武術ならってましたっけ?」
「ええ、ちっちゃい頃に…」
会話についていけねぇ…。なんなんだこれ。
とりあえず、もくもくと赤ペンで×やら○やら矢印やら書いているみずきの隣へ座る。
「稔、どーしたの」
「いや、話についていけなくてさ…」
「…あたしに言われても困るんだけどなぁ」
そっか、みずきも同じ状況なんだよな。
「お互い苦労してるよな」
「…うん」
「しっかし、こうしてみると平和だよな、目の前で女子が笑いながら話し合ってるんだ。」


「はい、百合、プレゼント」
「これってまさか…シグ・ザウエルのP228?」
「そうよ、わたくしが生まれたと同時に祖父がわたくしの護身用にと下さったのよ。」
「ありがとう、りぃちゃん!ありがたく使わせてもらうね」
「黒川さん、あんまり殺しちゃだめよ?後片付け面倒だし」
「はい、蓬山先輩。」

「ねぇ、稔…」
「すまん、前言撤回だ」


午後5時15分。学校出発。
「ソレデハ、ミナサンサヨウナラ。」
「こういうときはさようならじゃなくて、お願いします、っていうんだよー」
「オナガシマス?」
「ノーノー、オネガイシマス。」
「オー、オネガイシマスネ。」
蓬山さんと姉さんの二人で日本語教育かよ。
「しっかし、なんでわざわざ歩きなんだ?車とかの方が早いし安全じゃないか」

『それは違う』
「一体なんだと思えば白水か。びっくりさせるなよ」
「教えてさしあげますわ。この学校からだと、駅へ来るまで通る道は限られていますの。駅へ通じる道は、最終的には大きな大通りの道が2本だけになりましてよ。
そうすると何が起こると思います?」
そういって白水は首をかしげて見せた。
「いや、わかんないけど…」
その回答を待ってましたといわんばかりに、白水が口を開く。
「その大通り2本だけにしぼって、射撃ポイントをいくつか配置しますの。あとは目的の車が通るのを待って狙うだけですわ」
人差し指を左右に振り、自慢げに話す白水。なるほど、確かにこいつの言っていることは正しいな。


「それを回避するために、狭い道を縫うように歩いていくわけか」
「そうですわ。こうすれば、さすがに相手の待ちだけでの期待値は自然と小さくなる…あちらから行動を仕掛けてくるはずですわ」
「ボクたちにはもともと地の利がある。相手がたとえ地の利があったとしても、おそらく5分5分。みすみす引っかかるよりかはいいんじゃないかな?」
伊万里、お前そんなに頭よかたっけ…。
「おいおい、5分5分っていっても、相手が男で、かつオレらより人数が多かったらどうするよ?」
「出会うとしても細い小道ですから、大人数も少人数もあまり関係ないと思います。それに少人数の方が統制がとれやすいですよ」
さすが委員長。言うことが違う。
「でもさ、あたし達女の子だよ?」
いつのまにかみずきは目に涙をためていた。
「何いってんの、ボクがついてるから大丈夫だよ!」
伊万里がよしよしとみずきの頭をなでた。
「まぁ日本だし、よほどのことが無い限り物騒なことは起こらんさ」
そうフォローを入れてふと前をみた。

「オウ、アナタオカネモチ!スバラシイ!コレアゲルカラゼヒケッコンシテクダサイ!」
「え、ちょっとそれは…」
「いいよ、結婚しちゃいなよw」
なんてフレンドリーなんだ、このジョンとか言う男…。
しかも先輩に指輪なんかはめてやがる…なんだこいつ。
「焼いてるの?」
伊万里、お前という奴は…。
「違うわボケ」
「焼いてるんだぁー…」
「みずき」
「ほぃほぃ」
「ぐあっ、みずきなにをすrg」
みずき、ナイスセーブだ。


「そういえば、先輩のそれってなんですか?」
よく見れば先輩は背中に細長く布で包まれたものを持っている。
まさか先輩が…とは思ったが一応念のために質問したのだ。
「ただの木刀よ。護身用のね。」
「あぁ、そうですか…」
いつのまに世の中ってこんな物騒になったんだろうね。

「はぁ」
ため息をついた瞬間、腰に電撃が走る。
「っ!!」
「もう少し気を引き締めて。敵がだいぶ迫っていましてよ。みずきさんを道の内側にして、守ってあげてなさい」
言葉遣いはいつもと変わらないのに顔がマジだよ。こえーよ。
「…あぁ。みずき、交代だ」
これはさすがに納得せざるを得ない。
「あ…え、うん…」
心なしかみずきの顔が赤い。これは結果オーライか?

そのとき、先輩の声がした。
「みんな良く聞いて。敵が付けてきてるみたいだから、予定通り次の角を左に曲がるわ。
曲がり終わったら、全速力で猛ダッシュ。その後一番最初にある右の道に入って。」

場に緊張が走る。
「何人くらいかしら?」
「4人くらい。角はもうすぐだから、白水さん後ろお願いね」
「かしこまりましたわ」


先頭は、姉さん、ジョン、先輩。
次に、伊万里、オレ、みずき。
最後は、委員長と白水。

次々と角を曲がって、黙々とダッシュする。
最初にある右の道まで、10Mほど。オレは全速力で駆け抜けた。
「はぁはぁ…みんな大丈夫か?」
あたりを見回す。みんな無事なようだ。よかった。
「みのりんは心配性なんだからー」
こんな状況じゃ心配するだろ…。
「おい、いたぞ!」
「まずぅ、ボク達見つかっちゃったみたいだよ!」
「後ろはわたくしが担当しますわ。あなたたちはジョンさんを…」
「わかったわ」
やばいやばいやばい、マジで死ぬぞこれ。なんだこれ、ホントになんなんだよ…。
「とりあえずこの道を突っ切るわよ」
先輩の言葉に皆続いていく。
「おいおい、白水一人で大丈夫かよ!」
「大丈夫よ!白水さん意外と強いの」
そういう問題じゃないだろ、4人だろ4人…と思いながらも俺が助けにいってもしょうがないし、とりあえずこの暗い細道を走る走る。
そうして、俺らは少し広い道にでた。
「今度はあの路地よ、急いで!」
幸い人通りが少ないので、スムーズにいけてる。以外に駅まで簡単にいけるかも…。
「おい、見つけたぞ!逃がすな!先回りだ!」
先回りって…ちょっとやばいって、マジで…。
「確かこの道って途中でT字路になってたよね」
「右か左か、どっちかを選べってことね」
「駅は右だから、みんな左よ!」
「了解」


みんな走りながら喋るなんてどんな体力してやがるんだ。オレは呼吸を保つのに精一杯だというのに。
とりあえず、言われたまま左に曲がる。
「…しまった!」
どうやら左側に先回りされてたみたいだ。
「右よ右!」
そう言われて右を向くと、そこにも人。
「もと来た道もダメみたい」
やばい、出口が無くなった。


「どうやら囲まれたみたいね」
「早紀、どうする?」
「どうするも何も、どうみてもこれは死亡フラグだろ、常識的に考えて」
「うるさいな、稔はちょっとおだまり!」
ポカンと姉に殴られた。痛いよねーさん。
「よし、決めた!元から来た道、おねーちゃんがやっちゃうぞー」
「おい、待てって姉さん!もと来た道が一番敵が多いじゃん!」
「いいから、稔君はちょっと見てなさい!」
姉さん死ににいくつもりなのか。辞めてくれよ、ここで実の姉が死ぬところなんてみたくねーんだよ…。
「だめだ、オレがゆるさん」
そうやって姉さんの肩にかけようとした手は簡単に弾かれた。
「いっちゃん、稔君を…よろしく」
伊万里はうなずいた。何も言わない。
「おい、放せよ伊万里…」
「やだよ」
「オレに姉さんが死ぬところを黙って見てろよって言うのかよ…」
「いいから見てなって」
「くっ…ぐぁ」
無理やりほどこうとしたが、今度は先輩に制された。先輩の指が、オレの肩にぐっと食い込む。ダメだ、力がでない。
「ちくしょぉ…ちくしょぉぉ…」


「さぁ、これからひめの楽しい楽しいショータイムの始まりよ」
そういうと姉さんは空に手をかざした。
「召還!いでよ、キューティクルソードっ!!!」
突如、姉さんの手からあふれんばかりの光があふれ出す。
そして、光が収まるころには、姉さんは黒と白で統一された、小悪魔という名前が似合いそうなゴスロリ衣装になっており、かざした手にはいつの間にかチェーンソーが握られていた。
「あ、それあたしのチェーンソー!!」
おまえのかよ!
「ごめん、ちょっぴしひめに貸してね!」
そういうと、姉さんはなにやらぶつぶつと唱え始めた。さっきの様子からして今度は魔法だろうか…。
「聖なる光よ、舞い落ちてこの悪党どもらを蹴散らせ!ファイナルホーリーバーストォォォ!!」
そう叫ぶと、姉さんは単騎で敵に突っ込んでいった。

こうかはばつぐんだ。

「ひぃぃ!!」
「あはは、あははは!」
ダメだ、姉さんは壊れてる…。
「ひめっちの開いた活路を無駄にしちゃだめよ!」
とりあえずもと来た道を戻るが、姉さんと男どもの戦闘でまだ抜けられない。
そして、左右の道がつめて来た。なんだかさっきより状況悪くなってね?
「くっ、皆後ろに」
そういったのは委員長だった。
「委員長!委員長もあんな風になんか変身できるのか!?」
「藤宮君、それは誤解です!」
そう言うと、委員長はゆっくりと銃を向いた。男達の短い悲鳴が聞こえる。
「どきなさい。さもないと、打ちますよ」
しかし、男達はどかない。委員長はトリガーへと手をかける。
「私は…本気です!!」
そういって、引き金を引いた。俺はとっさに耳をふさいだ。


ガキィィン…
「あ、ジャムった」
「いまだ、突っ込めぇぇ!!」
やばい、男達が突進してくる。先輩が背中のブツに手をかけてるが、先輩だけでホントに大丈夫なわけがない。
ここはオレが、男のオレがなんとかしなきゃいけない。そう思って、ふんばって立った時だった。

風のめくれるような音。それが連なって聞こえたと思ったら、前の男達が倒れていた。
「ふふふ、ざまぁみろですわ」
頭上から声がする!見上げてみるとそこには、人影が10人ほど。
「我が部の特に優秀な部員を調達してきましたわ。敵なんて近づく前に全滅でしてよ!」
「りぃちゃん!これ一回も整備してないやつでしょ!なんでこんなの渡すんですかっ!もう少しで死ぬところだったんですよ!!」
委員長がそう叫ぶと、
「そんなの、策があってのことでしてよ。百合がジャムれば、全員の注目は百合に行く。さらに、一瞬場が硬直する。屋上から射撃させてもらうには一番いいシチュエーションだと思わないかしら?」
そういって白水は頭上で高らかに笑った。
「く、いったん引くぞ!」
そういうと、今倒された男達の後ろに控えてた奴らが逃げ出した。
「追えー、逃がしてはいけませんわ!」
そういうと、白水はどっかに去っていった。
「終わったよー」
ふと後ろを振り返ると、男達が全員うちのめされていた。
幸い、殺人までいたらなかったようで、弟として一安心だ。


「みずきちゃん、はいこれ。ありがとっ」
「いえいえー」
なんかこの取引はいただけんな。
「ふぅ。ほらみずき、ボクのおかげでなんとかなったでしょ!」
「どうみてもお前のおかげじゃないだろ!」
「あはは、でもとりあえず助かってよかったぁ」
「でもみのりんずっとビビッてて腰抜けてたじゃない!」
「う、うるせーな!」
とりあえず、危機一髪、九死に一生というところか。なんとか生きながらえれた。
俺達は、助かったんだ…!!


「とりあえず、これどうしよっか。」
この薄暗い道に倒れている、10人程度の大男達。
「ほっとけばいいんじゃない?どっちもどっちみたいなもんだしさぁ」
「そうだね、私のほうで回収しようかと思ったけど、その必要もないかな」
そういうと先輩は出していたケータイをしまった。一体バックにどんな組織がついているんだ…。
そういえば白水はまだ逃走中の男達をいまだ追ってるらしいが大丈夫だろうか。
「こんなところに長くいないで、さっさと退きましょ、応援が来てもいけないし」
「そうだね。早紀、なんかお腹空いたからどっかに食べにいこうよー」
「うーんいいけどその血だらけの制服なんとかしなきゃ」
「あぁ、えへっ」
そういいながら歩き出したときだった。
「おい、全員動くな」
うずくまっていたはずの男が、寝たままの状態から銃を先輩に向けていた。
「そうだ、いい子だ…」
オレはなんだか嫌な予感がした。
「そこの緑の女以外、みんな壁に伏せて手を上げろ」
皆しぶしぶと従っていく。でもオレは気が乗らなかった。
「稔くん、早く伏せて」
「でも、先輩が…」
「私は、大丈夫よ、いいから早く」
そういわれてしぶしぶオレも伏せる。


「おい、お前…誰に頼まれた」
「あら、私だってことがよく分かったわね」
「余計なことは言わずにさっさと吐け…友達の命が惜しくなけりゃな」
「本人に直接頼まれただけよ。他に何かある?」
「あいつはどこに行った…?」
そういえば、ジョンはいつの間にかいない…。
「あれ、ホントに居ないわね…」
「ふざけんな!…あいつの行き先を教えろ」
「知らないわ」
「ふん、役立たずめ…質問はこれで終わりだ」
そのとき、なにか電撃が走った。なにかしなくちゃいけない、そんなような気がする…。
気づいたら、オレは先輩を庇って先輩を押した。
その刹那、建物の壁に銃弾がめりこむ。さっき先輩の頭があった場所と同じそこに、銃弾の後が残っていた。
男の銃は、オレに向けられた。しまった、避けれない―
急に回りがゆっくりになった。
そしてオレは悟った。
あぁ、そうか、オレは死ぬのか。昔どこかで聞いたけど、死ぬ間際に世界がゆっくりと進むって本当だったんだな。

すべてがスローモーション。その世界の中で、男の引き金がゆっくりと引かれるのが嫌というほどわかる。
弾丸は、まるでカタツムリのように、とてつもなくゆっくりとしたスピードで発射された。
カタツムリの通ったあとのように、空気が少し歪んでいるのが確認できる。
弾丸は少しずつ、それでも確実に迫ってくる。
目を閉じない。最後まであけている。この世界を、少しでも長く見ていたくて。

そのときだった。


そのスローモーションの中で、光が動いた。
突如、弾丸が真っ二つに割れて、まるでオレの顔を避けるかのように通っていった。
二つの弾丸が顔の横を通り過ぎ、着弾する音がした。世界が普通の速さに戻る。
「な…」
驚きを隠せないままでいる男に思いっきり近づく影と光。それは、真剣を持った先輩だった。
「くっ…!」
もう一度撃とうとするがもう遅い。先輩の真剣の矛先が、男の握る銃を真っ二つにした。
そして、先輩は男の横に思いっきり真剣を突きつけた。
「参りました、は?」
「参りました…っ」
そういうと、男はしなれたほうれんそうのようにその場に座り込んだ。


風呂っていいよね。外の体で冷め切った体を温めて、疲れさえも包み込んでくれる。
「稔ーどうだった?今日のおねえちゃん」
ドアの向こうから、姉さんの声がした。
「どうもこうも、あれは反則だろ」
「ピンチだったんだからしょうがないでしょー。でも稔が庇ってくれたときはうれしかったよ」
その語尾に含み笑いが確かに入っていた。こいつ、明日学校で言いふらす気だろ…。
「うるさい」
そういって、オレは浴槽の水に口をつけ、泡を作り始めた。
ぷくぷくと気持ちいい音を立てながら、次々と泡ができてくる。
「ねー稔」
「うーん?」
「早紀がね、とっても嬉しそうだったよ」
「ふーん、先輩がねぇ…」
「自分を犠牲にして庇ってくれて、ありがとうだって」
「やめろよ…」
照れくさくて、顔を深くお湯につける。
「今度学食奢ってくれるってさっ。」
なんだろう、この気持ち。頬が熱い。
「姉さん、もう出るから」
「あ、はいはいー」


風呂からでて、自分のベッドに仰向けになる。
のぼせたのか、頬の火照りがまだ取れない。外は真っ暗で、もうだいぶ冷えているというのに。
そのとき、ノック音とともに
「いい?」
と姉さんの声。
ガチャリとドアが開く。
「あのさ、早紀が明日の放課後屋上に来て欲しいって。そんだけ。じゃぁおやすみー」
今度は屋上…。これまた王道的な場所だな…。そういえば、風呂場で先輩が嬉がってたって姉さんが行ってたっけ…。

「これはもしや…」
思いっきり布団にもぐりこんだ。今度こそ、もしかすると、もしかするかもしれない…。
明日への夢いっぱいの思いを胸に、オレは眠りに入った…。

放課後、屋上への階段を上る中、オレは考えていた。
「いいですよ、前からオレ先輩のこと好きでしたし…」
いや、だめだな。
「そんな、言わなくても前から分かってましたよ、先輩の気持ち」
これはキモチワルイ。
先輩の思いを一体どの言葉で受け止めたらいいのだろう。
「やっぱり無難に『オレもです』にしとくか…」
これが一番いいだろう。そう思っているうちに、屋上への扉の前に来た。
この扉を開ければ、恥ずかしそうにもじもじしている先輩が立っているに違いない。

深呼吸。

そして、ドアを開ける。


「え?みのりん?…ねぇ、蓬山先輩、前こいつ使えなかったジャン」
オレのことを「みのりん」なんて呼ぶ奴は一人しかいない…。
「おい、伊万里」
「へ?…あ、いだだだ」
伊万里の頬を軽くつねる。
「オレのことを「こいつ」なんていってくれたお返しだ」
「いったー!ちょっとみのりん何のつもり!?」
「それはこっちの台詞だ。なんで『おまえら』がここにいるんだよ!」
そこには、姉さん、先輩、みずき、伊万里、委員長、勢ぞろい。
「大丈夫、みのるは男だし、伊万里よりかは戦力になるでしょ」
みずき、ナイスフォローだ。てか伊万里、お前は前何もしてなかっただろ。
「そうだね、いざとなれば稔くんだけおいて逃げちゃえばいいしね!」
おいおい、実の姉がなんてこといいやがる。てかこれなんてデジャヴュ?
「いい加減にしてくれよ。第一オレは先輩に…」
「先輩に…?」
そういって急に姉さんが接近してきた。その小動物のような小さなくりくりとした目から繰り出される上目遣いは、
考える力という物を停止させる。
「あっ!わかった!どーせ先輩に告られっふごふぁっ」
急いで伊万里の口をふさぐ。
「みずき、一生のお願いだ、こいつの口をふさぎ続けてくれ」
「了解っ!」
みずき、ナイスブロックだ。


とりあえず、今の状況をいったん整理しなければならない。
「先輩、いったいなんでオレを呼び出したんですか?」
オレに見せた、あの水水しく燃えるような火照った顔は、嘘だというのか。
「いや、ちょっと頼みごとを受けたんだけど、一人じゃどうにもならなかったから…ごめんね」
二度目の期待はむなしく裏切られた。
「まぁまぁ、そう落ち込まずに。ボクが慰めてあげるからさ」
「みずき」
「おーけぃ」
「ちょっとみずき!裏切るの?ちょっ…g」
みずき、ナイスガードだ。
「先輩、こんなに人数がいる頼まれごとって一体なんですか?」
「ふふ…それはね」

「じゃーん、マイケル・スミスさん。今日はこの人の護衛よっ!」



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