ヒロインがヤンデレのギャルゲみんなで作ろうぜ!

交互視点SS

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交互視点SS


  伊万里part

 目を覚ますと同時に彼の事が頭に浮かぶ 愛しくて切なくて苦しくて
 でも、それが恋をしている ボクは生きてると実感させてくれるから決して嫌じゃない
 時刻は午前四時十二分、毎日の習慣のおかげで目覚まし時計を使わなくても起きれるようになった
 いつものように枕元に置いたラジオのスイッチを入れる
  -「合言葉は、本名なんて知らねぇ!! 」
 間に合ったみたい まだ最初、DJ同士の掛け合いの部分
 女子中高生に絶大な人気があるこの番組を聞き逃すと、今日友達との会話についていけなくなっちゃうので少し困る
 暖かな布団に包まれ、朝食の時間までラジオを聴く これが最近のボクの日課
  -「次はペンネーム:お寿司大好きさんからのお便り!」
「ボクのハガキだ!!」
 僅かに残る眠気を吹き飛ばしてラジオに噛り付く
  -「おはようございます! ボクは十六歳の女の子です!!」
  -「うっわ ボクっ娘だよボクっ娘」
  -「変なチャチャいれないの!」
「ううっ 一人称ボクって変なのかな?」
 なんとなく判っていたけど他人に言われると傷つくよ!!
  -「続けるよー ボクは幼馴染の男の子が大好き!なのに彼はボクを女の子として見てくれません!どうしたらいいでしょう?」
  -「それなんて乙女ゲー?」
 ゴキッ ドサッ 重い鈍器で殴ったような音と、何かが倒れる音がラジオから響く
  -「そうだね! 幼馴染ってお互いをよく知りすぎて、恋愛対象になりにくいのかも!」
 DJお姉さんの口調と、声に含まれる感情に共感を覚えるのは何故なんだろ? まるでもう一人のボクのよう
  -「でも、意外と知ってるつもりなだけ!いつもと違う自分を見せてみなよ!!」
 ・・・・・うん その通り、幼馴染とはいえ全てを知り合ってるとは言えないよね
 普段と違うボクを見せたら振り向いてくれるかな? 女の子として見てくれるかな?
「みのりん」
 彼の名を呟く ボクの想いは届かないかもしれないけど、ずっと考えてた計画を今日こそ実行しよう



  稔part

「ふぁ~~~ 眠むぅ」
 欠伸をしつつ、充血気味の眼を擦る 昨日は深夜まで、姉さんの対戦ゲーム相手をさせられていた
「みのり~ん!」
 捥げそうなほどブンブンと勢いよく腕を振りつつ、伊万里が走りよってくる
 俺はタイミングを見定め、カウンターで拳を繰り出す
「へぶっ!! ちょ 女の子殴るなんて酷いよ! みのりん!」
「安心しろ 峰打ちだ」
 我が台詞ながら意味不明 しかし、寝不足で不機嫌な俺にハイテンションで近づく伊万里が悪い
「んで、なにか用か? 伊万里寿司」
「そうそう! お母さんが映画のチケットくれたから一緒に行こうよみのりん!」
 手提げ鞄から長方形の紙を取り出し、手渡してくる
「こ、これは! 今話題の『ほの暗い病みの底から』」
 チケット入手が困難で、DVD化を待つしかないと言われるほどの人気作だ 相当怖いらしく、失神者も出るとか出ないとか
「伊万里 ホラー系苦手じゃなかったっけ?」
「え~と、それは~・・・・・」
 視線を彷徨わす伊万里を見て、俺の推測が確信に変わる 要は怖いけど映画は見たいから知り合いを連れて行こうって事だな 
「俺もコレ見たかったからいいぞ みずきも誘うか?」
「あ、ごめん チケット二枚しかないの」
 軽くうつむき、伊万里は叱られた子供のような仕草で謝る
「そか 人気あるもんな じゃ二人で行こうぜ」
「うん!二人で行こうよ!でもただ行くのもつまらないよね?」
 今度は悪戯を思いついた子供の表情だ
「ボクとみのりんで対決して、負けた方が何でも奢るなんてどう!?」
「面白い、何の勝負にする気だ?」
 如何なる勝負であろうと伊万里に負けるはずが無いし、逃げるなど論外!
「一緒に行動する間、お互いによく知る人物になりきりボロが出たら負け」
「ククク 愚か者め!忘れたか伊万里 幼稚園の時、俺が立ち樹の演技で最優秀助演男優賞を取った事を」
「んっふっふ みのりんこそ忘れたの? ボクが雑草の演技で三部門制覇した栄光の日々を!」
 誰を真似るかで少々もめたが公正を規す為、中学時代の共通した友人達に白羽の矢が立つ
 何人か懐かしい名前が候補に挙がっていたんだが・・・・ゆっちって誰だっけ?



  伊万里part

 ボク達は一旦自宅に帰り、私服に着替えてから待ち合わせをする事にした
「よりによってカナちゃんなんて、みのりんは意地悪だよ!」
 私服に着替えながらつい愚痴ってしまう カナちゃんこと倉居志 加奈は大人しい子でボクとは正反対
「ああいう子が、みのりんのタイプなのかな?」
 そう思うだけで哀しくなる 本当にボクはみのりんが好きなんだ
「でも・・・・これってデートだよね!?」
 大きめのクッションを抱き締め、顔を埋めて囁く
「みのりんとデート・・・・でーと・・・・でーと」
 言葉にする度、気恥ずかしくなり転げ回って悶える とても他人には見せられない姿だと思う
「あ! 今朝のラジオ!」
 不意にDJお姉さんからのアドバイスを思い出し、一度着た私服を脱ぎ捨てた
「一応、下着も大人っぽいのに変えようかな? ・・・・あ」
 鏡に映るボクが耳まで真っ赤になって此方を見てる
「ななななななな!!!! 何言ってるんだろ? そういう意味じゃないよ!!」
 紅潮したまま此方を見続ける鏡の中のボクに対して、言い訳をしようとする自分がちょっと痛い
「お、落ち着いて服装を考えようよ!」
 いつもと違う所を見せるって言っても、どうすればいいんだろ?
 普段、ホットパンツだけど今日はスカートで行ってみようかな
 髪型も少し変えた方がいいよね? マリーゴールドを模した髪留めで纏め上げる
「みのりん かわいいって言ってくれたらいいな」
 互いを知り過ぎてる幼馴染だからこそ、絶対に言わないと先に解ってしまう それが少し悲しい



  稔part

「伊万里の奴め マコトを指名するとは敵ながら天晴れ」
 尾座樹 誠 (女の子には)優しい奴でセクハラ発言は絶対にしない これが長岡なら一撃で伊万里の化けの皮を剥がせるんだが
 そして非常に腹の立つ事にマコトの性格上、伊万里如きをエスコートしなければならないと言う屈辱
 これが委員長か先輩なら手放しで喜ばしい状況なのにな そんな事を考えてるうちに夜見駅東口到着っと、時間はまだある
「お? い・・・小金沢さん 早いね、待たせちゃった?」
「あ、藤宮君 気にしないでください、私(わたくし)も今来たところですから」
 ぬあああああああ!!!!! 伊万里の姿をした伊万里以外の何かが居る!!
 突如、異空間に迷い込んだ感覚に耐える だがこの試練の先には男のロマン、黒毛和牛一キロステーキが待っているんだ
「その髪飾りかわいいね」
 マコトなら真っ先に服装を褒めるだろうと考え、先手を打ってみる
 伊万里は無言で赤くなりうつむく なかなか芸が細かい、カナならそうなるだろうな
 敵は思いのほか手強いようだ 気を引き締めてかからないと・・・・負ける!!
「確か、虚月市の映画館だっけ? 少し早く来れたし一本早い電車で行こうか」
 伊万里モドキと自分の言動に鳥肌を立てながら、改札口へと向かい電車に乗り込む
 今日は少し混み合っていて立ったまま行くしかなさそうだ
「ねえ あれって如月ちゃんの自転車じゃないかしら?」
 くいくいっと袖を引く伊万里モドキに言われ車窓から見える駐輪場へと眼を向けるものの、下りの電車が入ってきて視界を遮られた
「ちょっと見えなかったけど、もしかしたらこの近辺で遊んでるのかもね」
 隣の虚月市までは十数分で到着するんだが・・・・ お嬢言葉の不気味な伊万里と何時間付き合わねばならないのか
 これ自体が罰ゲームに近い、今の状況で寒々しい演技を続ける自信が早くも無くなっていた



  伊万里part

 虚月駅から映画館へと向かう大通りをボクたちは歩いてる
 折角のデートなのに、設定が大人しいカナちゃんだから・・・・みのりんとあまりお喋り出来ない
 たくさんたくさんお話したいよ! いっぱいいっぱいお話を聞いてよ みのりん!
 そう言いたいけど言えない 言ったら今日が終わってしまう気がして
 でも、二人きりで歩いてる今はとっても幸せ それだけで泣きそうになるくらい嬉しいんだよ
「今すれ違った女の子 如月さんじゃなかった?」
 突然立ち止まり振り返るみのりんに合わせ、雑踏の中から見慣れたツインテールを探す
 小型原子炉内蔵高機動型兎娘の彼女なら、どんな人ごみでもすぐ見つかるはずなんだけど
「見間違いじゃないですか 如月ちゃんなら私たちに声をかけてくるでしょう?」
 なんだろ? みずきちの名を出された時から、急に嫌な気持ちが芽生える
 ボクは知ってる 今まで何度も経験した嫉妬という感情 そしてそれを持つ自分への嫌悪感
「いや、髪形は違ったんだけど・・・・見間違いだったのかなぁ」
 首を傾げたまま、映画館を通り過ぎようとするみのりんに声をかける
「藤宮君 映画館はここですよ?」
「む・・・・」
 照れ隠しに頭を掻く仕草がかわいいらしく、ボクはつい笑ってしまった
「笑ってないで行くよ 小金沢さん」
 少し機嫌を損ねさせたかな? ごめんね みのりん
「え~と『ほの暗い病みの底から』は六階ですね」
 虚月シネマパ○ダイス 一つのビルが丸ごと映画館で、上映品目毎に各階を移動しなければならない
 階段で上がると疲れそうなので、ボク達はエレベーターに乗り込むことにした
 ・・・・甘かった 他のお客さんもどんどん乗り込んできて、狭い密室は寿司詰め状態になり角へと追いやられる
 ううっ こういうの苦手なのにな 押し潰される覚悟を決め、ボクは目を瞑る
「あれ?」
 一向にその気配がないので目を開けると、みのりんが壁に手を付き盾になっていてくれた
 幼馴染だから見分けられる、演技じゃない自然な優しさ
 反則だよみのりん!! ボク、萌え氏にしちゃうじゃないのさ!!!!!



  稔part

 流石に話題作だけあって、観客は満員 立ち見も出てる中、俺達はそこそこ良い席を確保した
 時間的にも丁度よく、すぐにライトが落ちて予告と番宣が始まる
 暗くなった客席で何気なく隣の伊万里モドキを見ると、なにやらキョロキョロと辺りを見回し不審な行動をしている
「どうしたの?」
 普通ならデコピンで諌める所だが、あくまでもマコトとして優しく訊ねる
「あ、いえ 香水の香りが」
「香水?」
「ええ、あまり出回ってない珍しい物なんですよ」
 言われてみれば、ほんの微かに心地よい香りが漂っている気がする
 同時に身近な人物を思い出しそうになるが、香りと共に一瞬で脳内から消えてしまった
「あ、あの 藤宮君、手を繋いでもいいでしょうか?」
 モドキが妙な事を言ってくる カナってこういうキャラだっけ? 有り得なくはないが
「いいよ」
 マコトなら間違いなく了承する事なので、伊万里モドキの手を握る 正直、俺も映画怖いし
 そしていよいよ! 超話題作の本編が始まる!!! 

 目が覚めると明るくなった客席に座っていた 昨日の寝不足がたたり、開始早々寝てしまったらしい
「小金沢さん そろそろ帰るよ」
 隣でうなされながら寝ている伊万里を起こす なにやら青い顔をしてグッタリしたままモドキも帰り支度を始め、
「みみみみみ!!みのりん!!!」
 おし 俺の勝ちだ! 勝利の余韻を味わう間も無く愕然とする
 伊万里が手にし、俺に差し出してきた彼女のバックは・・・・・・鋭い刃物によってズタズタに切り裂かれていた。


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