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「おはよー」」(2009/06/24 (水) 23:52:13) の最新版変更点

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< 【[[back>名前を呼んで]]】 // 【[[next>]]】 >  むかし、俺とみずきが同じクラスになった時。  あの頃のみずきは内気だけど勝ち気、という最悪な性格のおかげで。  あまり友達が作れず、クラスでも浮いていた。 「おはよー」 「おはよー」 「おはよう、如月」 「…」  朝は誰とも挨拶しない。  食事の時はずっと黙って食べて。  昼休みには1人でずっと本を読んでて。  帰りもまた1人で帰る。  そんな寂しい奴だった。  でも、俺が隣になったのが運の尽きだったのかな。  ズボラな俺はかなりみずきに迷惑をかけた。 「き、教科書見せてくんないかな?」 「なんであたしが…」 「絵の具忘れたあー!」 「…もう」 「やべ、水着わすれ…」 「無理だからねっ」 「あれ?教室誰もいねーし」 「次、移動教室…」  言葉は悪いし嫌々な素振りを見せる。  でも、最後は優しかったみずきにいつも頼った。  こんな感じを続けてある程度は仲良くなった気もするが。  お互いに友達とまでは行かない一歩引いた関係だった。  しかし、ある決定的な出来事によって関係が激変する。 「なんで世話してんの?」  みずきはクラスの熱帯魚の世話をよくしていた。  もともと世話係を決めてないクラスで、誰かが世話をしなければならないのだ。  でも、誰もやりたがらず。 「なんでお前が?」 「…」 「あ、生き物が好きなんだ?」 「ちがっ……臭くなると嫌なのよ…」  そう言って、放課後に水槽を洗っていたみずきだった。  そしてある時、事件が起きた。  朝、教室に来ると水槽の周りに人垣が出来ている。  なんだろうと覗くと、熱帯魚が全滅しているのだ。 「…っ」  水槽を見た時の、みずきの悲しそうな顔を今でも覚えている。 「誰がやったんだこれ…」 「…」 「許せねえな」 「…いいよ。これで世話しなくなって済んだから…」  こんな時まで強がるなよ。  と、言いたくなった。  ともかく、この問題はそこで終わらない。  なぜ死んでるかだ。 『冬だし寒くて死んだのかな』 『でもサーモヒーター付いてるじゃん』 『ねえ、水槽から洗剤の臭いがしない?』  確かに洗剤の臭いがする。 『そういえば如月がいつも世話をしていたっけ』  誰が言ったか知らないが、この一言が端を発して。  一気にみずきに責任が降りかかった。  洗剤=水槽を洗う=みずきと結びついたのだろう。  みずきに非難が集中した。 『如月っていつも水槽洗ってたよな』 『そのときに間違って入れたんじゃ?』 『洗い残したんじゃない?』 『ともかく犯人は如月か…』 「…あたし、洗剤なんかで洗ってないよ…」 「如月…」 「…あたしがやったんじゃない…」  みずきの声は届かなかった。  いや、誰も聞き入れなかった。  理不尽だった。  みずきを良く思ってないからってみずきのせいにする奴らが。  普段は世話すらしないくせに、こういうときだけ大声を上げる奴らが。  誰かのせいにして楽になりたい奴らが。 『信じられねえよ』 『何考えてんだアイツ』  こうなると手に負えない。  やったやってないかで片付く問題じゃなくなって。  幾ら違うと言ってもますますみずきの立場が悪くなるだけ。  だから…。 「…なあ如月、お前がそんなことするわけねーよな?」 「…」 「俺はお前が優しいの分かってるから」 「藤宮…」  だから俺は…。 「すまん皆聞いてくれ!!」 「ああ?」 「なんだ?」 「悪かった! 俺がやったんだ!」  こうしてこの問題は幕を下ろした。  みんなからの風当たりは少し厳しくなったが。 「なんでこんなことをしたんだ藤宮!」 「せ、洗剤で浸け置きってあるじゃないすか? だから少しでも綺麗になるかなーって…」 「バカモン!」  ゴン!! 「いてえっ!!」 「後で職員室に来い!」 「え、えー!?」 「当たり前だバカもの!」 「あはは、藤宮だっせー」 「とうぜんの罰だな!」 「うぐ…」 「藤宮、分かったな?」 「…はい」 「ったく…。そんなしょぼくれるな」 「だって…」 「…後でケーキ食わせてやる」 「!?」 「よく如月を庇ってくれたな。よく頑張った」 「先生…」  先生が良い人だと思うようになったのはこれが初めてだ。  そして…。  そしてみずきとの関係だ。 「あんた、なんで庇ったのよ」 「なんでって…」 「…」 「今まで迷惑かけっぱなしだったし…」 「…」 「それに、あのままだったら、お前がクラスに居づらくなるだろ?」 「あたしは別によかったのに…」 「なんだよ、クラスに居場所が無くなってもいいのか?」 「元から無かったからいいのよ」 「…」 「こんなことしたら、今度はあなたの居場所が無くなるじゃない」 「…」 「それに、居場所なんてどうだっていい。あたしは1人でも…」 「やだよ俺は」 「な、なんで?」 「お前みたいな優しい奴がみんなに理解されないなんていやだ」 「…」 「口は悪いけどいつも助けてくれるじゃんか。優しいじゃんか」 「藤宮…」 「そんなお前を1人ぼっちになんかさせねえ。絶対にな」 「…っ」 「文句あるかこのやろー」 「…ありがとう、稔」  まあまあ今思うとよくこんな恥ずかしいこと言えたもんだ。  ともかく、これからだ。  みずきが明るくなって、二人の関係が変わってったのは。 「おはよー稔!」 「ああおはよ」 「あ、ほーら、ここ。服にご飯つぶ付いてる」 「すまぬ」 「だらしないなあ」 「面目ない」 「そういえば稔、宿題やってきた?」 「あ、やべ」 「もー…、見てあげるから今やんなさい!」 「え゙、見せてくんないの?」 「終わんなかったら見せたげる」 「かたじけない」 「…もー、あたしがいないとダメなんだから」  まさかここまで変わるとは思わなかったな。  あの時は。 「それから放課後空いてる?」 「たぶん。なんで?」 「あ、あの…ママがね、稔のこと家に呼んできなさいって…」 「みずきの母上が? なんで?」 「わ、わかんないけどっ! とにかく来てよ!」 「え、えー…」 「あ、たぶん、美味しいお菓子とか出るんじゃない?」 「ぜひ行かせて頂こう」 「…稔のバカ」 < 【[[back>名前を呼んで]]】 // 【[[next>]]】 >
< 【[[back>名前を呼んで]]】 【[[next>みずき21]]】 >  むかし、俺とみずきが同じクラスになった時。  あの頃のみずきは内気だけど勝ち気、という最悪な性格のおかげで。  あまり友達が作れず、クラスでも浮いていた。 「おはよー」 「おはよー」 「おはよう、如月」 「…」  朝は誰とも挨拶しない。  食事の時はずっと黙って食べて。  昼休みには1人でずっと本を読んでて。  帰りもまた1人で帰る。  そんな寂しい奴だった。  でも、俺が隣になったのが運の尽きだったのかな。  ズボラな俺はかなりみずきに迷惑をかけた。 「き、教科書見せてくんないかな?」 「なんであたしが…」 「絵の具忘れたあー!」 「…もう」 「やべ、水着わすれ…」 「無理だからねっ」 「あれ?教室誰もいねーし」 「次、移動教室…」  言葉は悪いし嫌々な素振りを見せる。  でも、最後は優しかったみずきにいつも頼った。  こんな感じを続けてある程度は仲良くなった気もするが。  お互いに友達とまでは行かない一歩引いた関係だった。  しかし、ある決定的な出来事によって関係が激変する。 「なんで世話してんの?」  みずきはクラスの熱帯魚の世話をよくしていた。  もともと世話係を決めてないクラスで、誰かが世話をしなければならないのだ。  でも、誰もやりたがらず。 「なんでお前が?」 「…」 「あ、生き物が好きなんだ?」 「ちがっ……臭くなると嫌なのよ…」  そう言って、放課後に水槽を洗っていたみずきだった。  そしてある時、事件が起きた。  朝、教室に来ると水槽の周りに人垣が出来ている。  なんだろうと覗くと、熱帯魚が全滅しているのだ。 「…っ」  水槽を見た時の、みずきの悲しそうな顔を今でも覚えている。 「誰がやったんだこれ…」 「…」 「許せねえな」 「…いいよ。これで世話しなくなって済んだから…」  こんな時まで強がるなよ。  と、言いたくなった。  ともかく、この問題はそこで終わらない。  なぜ死んでるかだ。 『冬だし寒くて死んだのかな』 『でもサーモヒーター付いてるじゃん』 『ねえ、水槽から洗剤の臭いがしない?』  確かに洗剤の臭いがする。 『そういえば如月がいつも世話をしていたっけ』  誰が言ったか知らないが、この一言が端を発して。  一気にみずきに責任が降りかかった。  洗剤=水槽を洗う=みずきと結びついたのだろう。  みずきに非難が集中した。 『如月っていつも水槽洗ってたよな』 『そのときに間違って入れたんじゃ?』 『洗い残したんじゃない?』 『ともかく犯人は如月か…』 「…あたし、洗剤なんかで洗ってないよ…」 「如月…」 「…あたしがやったんじゃない…」  みずきの声は届かなかった。  いや、誰も聞き入れなかった。  理不尽だった。  みずきを良く思ってないからってみずきのせいにする奴らが。  普段は世話すらしないくせに、こういうときだけ大声を上げる奴らが。  誰かのせいにして楽になりたい奴らが。 『信じられねえよ』 『何考えてんだアイツ』  こうなると手に負えない。  やったやってないかで片付く問題じゃなくなって。  幾ら違うと言ってもますますみずきの立場が悪くなるだけ。  だから…。 「…なあ如月、お前がそんなことするわけねーよな?」 「…」 「俺はお前が優しいの分かってるから」 「藤宮…」  だから俺は…。 「すまん皆聞いてくれ!!」 「ああ?」 「なんだ?」 「悪かった! 俺がやったんだ!」  こうしてこの問題は幕を下ろした。  みんなからの風当たりは少し厳しくなったが。 「なんでこんなことをしたんだ藤宮!」 「せ、洗剤で浸け置きってあるじゃないすか? だから少しでも綺麗になるかなーって…」 「バカモン!」  ゴン!! 「いてえっ!!」 「後で職員室に来い!」 「え、えー!?」 「当たり前だバカもの!」 「あはは、藤宮だっせー」 「とうぜんの罰だな!」 「うぐ…」 「藤宮、分かったな?」 「…はい」 「ったく…。そんなしょぼくれるな」 「だって…」 「…後でケーキ食わせてやる」 「!?」 「よく如月を庇ってくれたな。よく頑張った」 「先生…」  先生が良い人だと思うようになったのはこれが初めてだ。  そして…。  そしてみずきとの関係だ。 「あんた、なんで庇ったのよ」 「なんでって…」 「…」 「今まで迷惑かけっぱなしだったし…」 「…」 「それに、あのままだったら、お前がクラスに居づらくなるだろ?」 「あたしは別によかったのに…」 「なんだよ、クラスに居場所が無くなってもいいのか?」 「元から無かったからいいのよ」 「…」 「こんなことしたら、今度はあなたの居場所が無くなるじゃない」 「…」 「それに、居場所なんてどうだっていい。あたしは1人でも…」 「やだよ俺は」 「な、なんで?」 「お前みたいな優しい奴がみんなに理解されないなんていやだ」 「…」 「口は悪いけどいつも助けてくれるじゃんか。優しいじゃんか」 「藤宮…」 「そんなお前を1人ぼっちになんかさせねえ。絶対にな」 「…っ」 「文句あるかこのやろー」 「…ありがとう、稔」  まあまあ今思うとよくこんな恥ずかしいこと言えたもんだ。  ともかく、これからだ。  みずきが明るくなって、二人の関係が変わってったのは。 「おはよー稔!」 「ああおはよ」 「あ、ほーら、ここ。服にご飯つぶ付いてる」 「すまぬ」 「だらしないなあ」 「面目ない」 「そういえば稔、宿題やってきた?」 「あ、やべ」 「もー…、見てあげるから今やんなさい!」 「え゙、見せてくんないの?」 「終わんなかったら見せたげる」 「かたじけない」 「…もー、あたしがいないとダメなんだから」  まさかここまで変わるとは思わなかったな。  あの時は。 「それから放課後空いてる?」 「たぶん。なんで?」 「あ、あの…ママがね、稔のこと家に呼んできなさいって…」 「みずきの母上が? なんで?」 「わ、わかんないけどっ! とにかく来てよ!」 「え、えー…」 「あ、たぶん、美味しいお菓子とか出るんじゃない?」 「ぜひ行かせて頂こう」 「…稔のバカ」 < 【[[back>名前を呼んで]]】 【[[next>みずき21]]】 >

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