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< 【[[back>電波先生ss]]】  //【[[next>]]】 > **電波先生オフ会への誘いss  俺が日向先生の頼み事を断れないのは何故だろう、と自問する。  彼女の妄想による依頼はその本意を別として、結果的に公共の利益へと還元される類のものだ。 それは皆も知る所だったが、わざわざ身を砕いてまで協力しようとも考えないのだろう。 その私的な要求に付き合ってくれる――例えば委員長のような生徒というのは、極めて少数派になる。 加えて、ただ一度の断りも無く請け負ってしまう人間ともなれば、校内広しと言えど俺ぐらいのものだろう。 だからここ最近は俺にばかりお鉢が回ってくる。 でも。 そうして、俺までが先生の頼みを断るようになったとしたら? そんな考えが脳裏へ浮かぶ間に、俺は知らず了承の言葉を返している。 「それで、組織の仕掛けた罠を撤去する機材はこれで全部ですか?」 「ええ、助かるわ稔君。  しかしキミ、見かけによらず力があるのね。  体付きだってどちらかというと華奢な方なのに。  私も少しは手を貸そうと思ったんだけれど」 そう言いながら俺の腕をじっと見つめる。 と、そのまま指を伸ばし、つうっと腕の筋をなぞってきた。 「ひゃっ。ちょっと、くすぐったいですってば……まぁ、これでも年頃の男子ですから。  人並みに筋肉はついてますよ。  それはそうと、さっさと始めちゃいましょう」 「む。そうね……うん、頼もしくて宜しい」  そんなこんなで組織の罠?を撤去し、機材を片づけ終えると、いつの間にか日が沈み欠けている。 理科室の窓から覗く校庭に人影はまばらだ。 のっぺりと引き延ばされた、薄い影。 「もうこんな時間……稔君には本当に感謝しなくちゃね。  今までで最高の助手よ、掛け値なしにね」 「はぁ、ありがとうございます」 というか、助手と呼べる程に働いてくれる生徒なんて、そもそも俺以外には居ないんじゃないだろうか。 何て事はけして口にしない。 「お礼にどう? コーヒーでも御馳走するわよ」 「はは。ビーカー入りのやつですね、お願いします」 苦笑しつつもその好意は有り難く受け取っておく。 そもそもこれは協力者への対価でもあるのだから。  カフェインの覚醒作用で疲れも少し抜けて来た頃、先生がこちらを窺うような表情で見つめているのに気が付いた。 なんだろう? 彼女にしては珍しい。 というよりも、こんな表情を見るのは始めてだ。 「稔君……キミ、インターネットはする方かしら?」 「あ、ええ。まぁ、人並みには」 「ふぅん。じゃぁ、オフ会というのは知ってる?」 「あれですよね。掲示板なんかの仲間同士でリアルに会ってどうこう、っていう」 「そう、それ。  私ね、そのオフ会というのに初めて参加してみようと思うの」 「へえ……」 社交性がないとまでは言わないが、相当な変わり者である先生。 そんな彼女がオフ会に参加するというのは、何だか意外な気もした。 「それでね、もし良ければ稔君にも参加して貰えないかしら、って考えているんだけれど」 「へえ……へっ?  ……あの、済みません。全く話が見えないんですけれど」 「あぁ、ごめんなさいね」  彼女は一つ間を置き、深く息を吸う。 豊かな双丘がそれに合わせ揺れ動いた。 「何を隠そう、そのオフ会こそは人類を、組織・ひいては宇宙人の手から守ろうという、確固たる意志を持つ者達の集まりなのよ!  恐るべき陰謀に気が付いた当初、私は一介の無力な人間に過ぎなかった。  けれどそんな私にもネットを通じて数人の理解者が現れたの。  いずれも人類を宇宙人の野望から守らんとする、偉大なる勇者達……彼らには随分と励まされたわ。  今の私があるのは彼らのお陰と言っても過言じゃない。  そんな彼らに、とうとう顔合わせをする機会が巡ってきたの!  表向きは酒でも飲んで楽しみましょうという事になっているけれど、これは勿論カモフラージュに過ぎないわ。  その裏で、今後如何に組織の魔の手に対抗していくかを話し合って行くに違いない……だからこそ、よ。  私にとって最高の助手である稔君、キミにも参加して貰いたいの」 一気に捲し立てた先生の顔は興奮で真っ赤に染まりきっている。 息をするたび肩が上下に揺れている。 「あぁ~……、話は大体分かりました」 というか、先生みたいな……こういっちゃ何だが、妄想狂というか電波ゆんゆんな人達が集まるという会合。 そこへ俺も連れて行かれるのだという。 「いや、ちょっと待って下さい。  優秀な助手というなら、委員長だってそうじゃないんですか?  この間もそんなこと言っていたじゃないですか」 「……私は、委員長ちゃんをまだ完全に信用した訳じゃないのよ」 「えっ」 少し驚きだった。 委員長は俺のように、先生の依頼のその100%を引き受けてきた訳ではない。 けれど彼女の働きぶりには先生も一目置いていたようだし、少なくもそれなりの信頼を得ているようには思われた。 「彼女は確かに優秀よ。  あなたが見よう見まねでまごついてしまう作業だって、迅速にこなしてみせる。  でもね、ちょっと優秀すぎるのよ。  努力のたまものだって言うし、それは否定しないけれど。  私の依頼をそつなく捌けるような類の努力を、たまたま積み重ねてきた……それって少々出来過ぎた話じゃないかしら?」 「……それは、考えすぎじゃないかと思いますけど」  言ってから、しまったと思った。 先生の身体は突如硬直し、目がカッと見開かれる。 まるで、こちらの内面の深くを照射するような眼ざし。 それでいてそこには何の感情も読み取れない、読み取らせない。 目を逸らせない。 「――稔君は。偶然じゃないか、っていうの?  でも変よねぇあの娘ホチキスの早止めぐらいだったら分かるけどねぇ、  ちょっとした機械の分解や組み立てなんてねぇ年頃の女の子がホイホイこなせたりするものなのかしらねぇ  こないだなんて愛用の紫外線照射装置の故障箇所を容易く突き止めて修理なんかしちゃって。  そりゃまぁ私だって助かったけれど。  物理教諭の私だって途方に暮れていたものをそんな。  あっという間に。  それを努力してますからって。  それって努力というよりスパイや工作員的な訓練のたまものっていうかむしろ馬脚をっ」 「わっ、分かりました! 分かりましたからっ!  委員長はまだ、そのオフ会へ連れていくには時期尚早だと。  それは分かりました!  でも、俺なんかが行った所で何になるんですか?  確かに色々協力はしてきましたけど、そんな歴戦の志士の集まりみたいな場所へ行くには場違いじゃないのかな、って……」 正直な所、先生の精神世界にそこまで踏み込むつもりはなかった。 何とか俺の同伴を思い止まらせようとするのだが、 「いいえ、稔君。  技量だの経験だのばかりが大事ではないのよ。  何よりも、身を以てして宇宙人の陰謀に立ち向かおうとする強い心、それが一番重要なの!  ……それとも。  稔君が今まで協力してくれていたのって、ただ単に面白そうだからとか、そんな程度の理由だったのかしら……」 「あぁ、いや……そ、そんな、今度は泣きそうな顔しないで下さいよ……分かりました、行きます。  そのオフ会に俺も出席しますから!」  結局押し切られてしまった。 半ば泣き落としのような気もする。 が、"面白がっていただけなの?"という言葉にムキになってしまった部分も多少はあるようだ。  けれど。 面白そうだから、良い暇つぶしになるから、教師の依頼だから生徒として仕方なく……そういった類の理由でないのだとしたら。 どうして俺はここまでして、ある種はた迷惑ですらある妄想に付き合っているのだろう? ――結局俺は、先生を放ってはおけないのだ。  今はその単純な理由だけで十分だった。 < 【[[back>電波先生ss]]】  //【[[next>]]】 >
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