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< 【[[back>百合 22]]】  //【[[next>]]】 > 「なあ……委員長……」  もう一年近く同じクラスメイトをやっているが、相変わらず声をかけ辛い。  周囲に拒絶の空気をはりめぐらせた彼女は、まるでいつも一人でいることを自ら望んでいるようだった。  頬杖をつき、何も書いていない真っ黒な黒板をじっと見つめている。 「……なに?」  やや間があって返事だけ返ってくる。その顔は俺の方を向くことはない。 「いや、なにじゃなくて……。二人組みを作ってお互い写生しろってさ」  また先生の話など何も聞いていなかったのだろう。それなのに成績は学年で1、2位を争うほどだ。  やっぱり頭がいいやつはどこか違うもんなんだろうかと考えながら、俺は委員長と机をくっつける。 「……」  だが、委員長は相変わらず前を向いたまま。言っても無駄なのだろう。どうやら俺は委員長の横顔を描くしかなさそうだ。  やはり綺麗だな。シミ一つない白い肌、そして整ったその顔は面食いな俺でも美人といわざるをえない。  画用紙が配られ、写生を始めるクラスメイト達。うめーだの、何よこれーだのそれぞれ楽しくやっているようだ。 「下手すぎだろう……常識的に考えて」  俺の画用紙には、幼稚園児の絵のような何が書いてあるのか意味不明のものが出来上がりつつあった。  一先ず手を休めて、あたりの様子を伺うことにする。やっぱりダントツに俺が下手だ……。 「委員長は……描いているわけ……ないない……よな……?」  何も描いているはずがないと思っていた委員長の画用紙には、しっかりと描かれていた。  しかし始め何が描いてあるか俺にはわからなかった。下手だったから? いや、むしろ上手い。芸術といってもいいほどだ。  ではなぜ? 顔もあるし、眼もある。鼻もある。手もある。足もある。人間に必要なものは全てそろっている。  揃っている。しかしパーツが揃っていれば人間なのか? この取れた手は! 転がった眼は! 潰れた内臓は! 「な……なに描いてるんだよ」  委員長は俺の意思など無視して、画用紙を埋め尽くしていく。 「眼に焼きついている……これは白いシート……黒く埋め尽くされていく……」  俺の問いなど聞こえないかのように筆を進めていく。画用紙にもはや白い箇所などなくなっていた。 「見なくても感じる……聞こえる……そして……私も黒になる」  一体彼女は何を言ってるのだろう。俺はその様子を呆然と見守るしかなかった。  チャイムが鳴る。それは授業の終わりじゃない。日常の終わり。 < 【[[back>百合 22]]】 // 【[[next>]]】 >
< 【[[back>百合 22]]】 【[[next>百合 24]]】 > 「なあ……委員長……」  もう一年近く同じクラスメイトをやっているが、相変わらず声をかけ辛い。  周囲に拒絶の空気をはりめぐらせた彼女は、まるでいつも一人でいることを自ら望んでいるようだった。  頬杖をつき、何も書いていない真っ黒な黒板をじっと見つめている。 「……なに?」  やや間があって返事だけ返ってくる。その顔は俺の方を向くことはない。 「いや、なにじゃなくて……。二人組みを作ってお互い写生しろってさ」  また先生の話など何も聞いていなかったのだろう。それなのに成績は学年で1、2位を争うほどだ。  やっぱり頭がいいやつはどこか違うもんなんだろうかと考えながら、俺は委員長と机をくっつける。 「……」  だが、委員長は相変わらず前を向いたまま。言っても無駄なのだろう。どうやら俺は委員長の横顔を描くしかなさそうだ。  やはり綺麗だな。シミ一つない白い肌、そして整ったその顔は面食いな俺でも美人といわざるをえない。  画用紙が配られ、写生を始めるクラスメイト達。うめーだの、何よこれーだのそれぞれ楽しくやっているようだ。 「下手すぎだろう……常識的に考えて」  俺の画用紙には、幼稚園児の絵のような何が書いてあるのか意味不明のものが出来上がりつつあった。  一先ず手を休めて、あたりの様子を伺うことにする。やっぱりダントツに俺が下手だ……。 「委員長は……描いているわけ……ないない……よな……?」  何も描いているはずがないと思っていた委員長の画用紙には、しっかりと描かれていた。  しかし始め何が描いてあるか俺にはわからなかった。下手だったから? いや、むしろ上手い。芸術といってもいいほどだ。  ではなぜ? 顔もあるし、眼もある。鼻もある。手もある。足もある。人間に必要なものは全てそろっている。  揃っている。しかしパーツが揃っていれば人間なのか? この取れた手は! 転がった眼は! 潰れた内臓は! 「な……なに描いてるんだよ」  委員長は俺の意思など無視して、画用紙を埋め尽くしていく。 「眼に焼きついている……これは白いシート……黒く埋め尽くされていく……」  俺の問いなど聞こえないかのように筆を進めていく。画用紙にもはや白い箇所などなくなっていた。 「見なくても感じる……聞こえる……そして……私も黒になる」  一体彼女は何を言ってるのだろう。俺はその様子を呆然と見守るしかなかった。  チャイムが鳴る。それは授業の終わりじゃない。日常の終わり。 < 【[[back>百合 22]]】 【[[next>百合 24]]】 >

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