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保健室での一幕」(2008/09/27 (土) 18:11:25) の最新版変更点

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**保健室での一幕 昼間の保健室。 身長が割かし低め、150cm位の女性保険医が、一人暇そうに座っていた。 今のような授業中は、そんなものなのだろう。 背もたれのない丸椅子に座り、窓際で紅茶をすすりながら、日向ぼっこしている。 そういえば、こんな先生が居たような記憶もある。 「調子が悪いのね。  紅茶飲む?」 わざとらしい位、しげしげとこちらの顔を覗き込むと、にんまり微笑む。 初対面でも物怖じしない態度に気おされ、勧められるがままティーカップを受け取り、椅子に座る。 「確かに顔色が良くない。  昨日、ちゃんとヌいてきたの?」 何気ない質問のように投げ出されたデッドボール。 「ぶぶ、ごほっ! ごほ、ごはっ……」 紅茶を床にぶちまけまいと必死に飲み込み、むせる。 先生はくすくすと笑っている。笑っている場合か、あんた。 「……先生…  失礼ですけど、アホですよね」 「あら、誰だってあなたのそんな顔を見たら気になると思うわ。  先生でも、生徒でも、楽しいほうが良いでしょ」 ふとした言葉で気がつく。 どうやら人から見たら憂鬱そうな暗い顔でもしてたんだろう。 多分、体調が悪いのではないとではないと、見抜かれた。 うつむいて考えてると、先生の大きな瞳がこちらをじっと見ていた。 「まぁ、そうですね……」 「若い頃に大いに悩むはいいことだ!  さぁ、話してご覧なさい。  紅茶飲んだでしょ、ただじゃないのよこれ」 強い語調から、一転して落ち着いた口調へ。 おちょくってるのか、それともこんな人なのか。 流石に笑うしかないし、もう言ってもいいやと腹を括った。 「……友達に気になってる奴がいるんです。  恋愛とかじゃなくて」 一呼吸おく。 ちょとだけ、しんとした。 「なんかあいつ。  たまに、すごく辛そうなんですよ。  分からないですけどね。  細かくは分からないけど……」 何も言わず、穏やかに微笑み、ただ聞いてくれている。 「なんかすごくいらいらしてくるんですよ。  そういうの見てると」 自分でも何を言ってるんだろうと、思った。 でも今も、胸の中に押しかかる何かが、俺を不快にさせている。 その答えは、直後にやってきた。 「あなたはその娘の為に、何かしてあげていいのよ」 迷いのない一言。 ハンマーで打たれたように、何も答える事ができない。 それでも口から、勝手に言葉がぽつりぽつりと漏れてくる。 「……けど俺、そんなまともな人間ではないんですよ。  あいつに何かするとか、誰かになんかするとか。  無理なんだよ」 「じゃあすっぱり忘れて、胸を張って生きればいいのよ。  そんな顔をされると、先生、気になる」 「……」 沈んだ顔をしている事くらいは自覚できている。 うつむき、押し黙るしかなかった。 衣擦れの音と、足音がしていたのを、散漫な意識の中聞く。 そして、次には抱きしめられていた。 座る俺を、上から包むように。 「……生きるのよ、約束して。  生きるって」 優しい一言に、訳も分からないまま返事をした。 女性に抱きしめられてるのにときめかない。 むしろ、母親のような、不思議な感じすらする。 「……みんな人に言えない悩みの一つや二つ、あるものだわ。  けどずっと昔の事なんか、忘れちゃうものよ。  どんな辛い事も、どんな悲しい事も、どんな悩みも、そんなこともあったなぁって、懐かしく思い出す日がきっと来る。  だから、今は我慢してがんばってみなさい、ね。男の子なんだから」
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