Prof.サム 目からウロコの基礎マーケティング③

第3回

「マーケティングとは(その2)」


「マーケティング」の目的は一体何でしょうか。

アメリカマーケティング協会は次にように定義しています。
「マーケティングとは、個人や組織の目標を満足させる交換を創造するために、アイデア、商品およびサービスについての着想、価格設定、プロモーションおよび流通を計画し実施する過程である」
(1985年アメリカマーケティング協会)

また、日本マーケティング協会はマーケティングを次のように定義しています。
「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」
(1990年日本マーケティング協会)

私はマーケティングとは「企業価値を高める全ての企業活動である。」と考えています。
つまり、企業の目的は全て価値の創造であると考えています。このような視点からマーケティングを見直してみたらどうでしょうか。

誤解の1
「4Pはもう機能していないのではないか?」

マカーシーが作り出しコトラーが世界に広めた4pも、目的は消費者のニーズやウォンツを満たすアイデアにより競合他社を凌駕するためのものです。競合他社との競争に勝つ4Pにより企業価値が高まることになります。4Pのマーケティングは終わったなどとよく言われますが、私は全くそうは思っていません。他社の商品と十分な差異化のある4Pがつくれなくなっていることに本質的な問題があると考えています。

誤解の2
「要は、新製品を作ればよいのでしょう!」

マーケティングの第一段階はモノを造ればよいという「生産主義」からスタートとしました。ともかく、モノを大量に安く造ればよいという考え方です。次に、ともかく売れればよいという「販売主義」の考え方に移行しました。それから「製品開発主義」に移行しました。新しい製品を開発すればよいのだという考え方です。
現在では、企業―消費者―従業員の三つをバランスよく満たす「マーケティング主義」に変化しています。
でも、多くの日本の企業は依然として「生産主義」、「販売主義」、「製品開発主義」の段階に留まっているのではないでしょうか。皆さんの会社の実情をよく見直してみてください。

二十一世紀の時代、企業―消費者―従業員だけを満たすだけでは十分ではない時代になっています。これからの時代は企業―消費者―社会の三つを満足させるようなマーケティングが必要となります。

トヨタの渡辺社長は未来の車は「走れば走るほど環境を綺麗にする」車であり、それをトヨタは求めていると発言されています。それが、水素自動車なのか電気自動車なのか私には予測できませんが、これからの自動車のあるべき姿を現していると考えます。これをコトラーは社会的マーケティングと呼んでいます。

マーケティングも時代とともに変化させる必要があります。でも、根本は消費者のニーズやウォンツを満たす世の中にないアイデアを4Pにして展開し企業価値を高めることなのです。自然科学の世界と異なり消費者のニーズやウォンツは時代とともに変化します。そこに私はマーケティングの面白さや楽しさがあるのだと思っています。

2008/09/26

杉山 愼策 Sugiyama Shinsaku
特定非営利活動法人スプリングウォーター理事
立命館大学経営管理研究科教授

岡山県出身。岡山大学法文学部卒業後、ロータリー財団奨学生として西ワシントン州立大学大学院経済学研究科に留学。 1973年資生堂に入社、資生堂UK社長、本社国際広報課長を歴任。1994年から日本リーバ(現ユニリバージャパン)でマーケティングを担当(理事)、マテルジャパン代表取締役社長を経て、2001年日本ロレアル取締役副社長。この間、ブランド・マーケティングについて、ハーバード、ノースウェスタン大学等のMBAコースに招かれて講演。2003年国立大学法人東京水産大学(現東京海洋大学)客員教授。2006年立命館大学経営管理研究科教授。

1994年『愛しのイギリス』(日本経済新聞社)を上梓。「英国ロイヤルソサイエティーオブアーツ(RSA)」フェロー。AMA、JMA会員。

スプリングウォーターではTRIGGER開催支援や社会人のためのマーケゼミ講師などスプリングウォーターを共に創り上げている。2006年NPO法人化に伴い理事に就任。



















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最終更新:2008年09月24日 12:04
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