ある地域には、人や動物を取り込み・・・養分としてしまう樹が原生していた
その一帯は人を喰らう森と呼ばれており
周辺の村に住む者たちも近づこうとはしなかった
そんなある時、ひとりの女性がその周辺の環境調査に訪れ
何も知らぬままに、その木が原生する森へ迷い込んでしまったのだと・・・
その女性も様々な地域を調査して回っていたため、決して警戒を怠っていた訳では無かった
その時、背後から聞こえた荒い鼻息に反応し・・・咄嗟に横に飛び退く
直後、一瞬前まで彼女の居た場所を巨大な猪の身体が通り抜け鋭い牙が空を裂いた
彼女も慣れた様子で即座に体勢を持ち直し
猪の突進を左右に振りながらも振り切ろうと走り続ける
そして、知らず知らずのうちにのうちに森の奥へと進んでいき・・・
突如、森の中心部にある開けた場所に出てしまったのだ
息を切らしながら辿り着いた彼女の前には、1本の巨大な樹が生えていた・・・
その時、彼女はその巨大な樹に目を奪われて
一瞬、背後に迫る猪に気付くのが遅れてしまった・・・
振り返った直後、正面から猪の突進を受けて、吹き飛ばされてしまう
1回、2回ほど地面に叩き付けられ、樹の根元まで飛ばされて止まる
全身を地面に叩き付けられ、呼吸もままならないなかで何とか逃げようと
フラフラになりながらも立ち上がるが、太い根に足を取られ倒れ込んでしまう
猪は荒い鼻息と共にその牙の先を彼女に向ける・・
そして、十分に力の込められた後ろ足が大地を蹴り飛ばし、彼女めがけて思いきり突進した・・・
彼女は咄嗟に目を閉じて、次に訪れるであろう衝撃に対して備えた
が、いつまで経ってもその衝撃が訪れる事は無かった・・・
恐る恐る目を開けた時、目の前に映ったのは
無数の蔦の様なものに絡め取られ、宙に浮く猪の姿だった
猪は蔦のようなものから逃れようともがくが、複雑に絡みついてる為か振りほどけそうにも無い
そのまま樹の元へと引き寄せられ・・・
次の瞬間、樹に縦に大きな亀裂が出来たかと思うと、そのまま蔦の様なものに雁字搦めにされた猪を飲み込んだ
そして、猪は断末魔と共に真っ暗な樹の中へと飲み込まれ・・・亀裂は音も無く閉じられた
そして、呆気にとられていた彼女はふと・・・噂に聞いた生き物を喰らうと言う樹の話だった・・・
彼女は身の危険を感じてその場から離れようと立ち上がった瞬間・・・・・・
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彼女が森へ消えてから数か月が経った頃・・・
青年が近くの村へと尋ねてきた
青年はどうやら森へと消えてしまった彼女を探して来た様だった・・・
村の者たちは皆「樹に喰われたのだろう」「森へは近づかない方が良い」と、青年を止めようとしたが
遂に青年は遂に森へ向かってしまった・・・
そして、森の中心部で巨大な樹の幹に半身を飲み込まれ
樹と完全に同化してしまった彼女を見つけた・・・
青年は樹へと近づき・・・
幹から生えた彼女の身体を抱きしめる
まるで大切な物を護ろうとするかのように・・・
その後、その森の中心部で・・・二人抱き合ったまま樹と同化している男女が発見された
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