ハダリ






フルネーム ハダリ(製造時:M1A3-E/F 識別番号5000583)
種族 キャスト
性別 女性
身長 172cm
所属 無所属
誕生日 A.P.0230/04/01
所属Ship Ship3
クラス レンジャー/ハンター
プレイヤーID アシモフ
Last Update 2013-04-08 22:51:28 (Mon)


来歴


とある辺境惑星で長く続いている資源戦争の最中、最も一般的な歩兵の一体として生産される。
生産当初は軍用として最小限の感情と反応プログラムしか持っていなかった。

軍属として戦闘に参加して5年目、彼女の上官(女性)が彼女と通じる目的で制御系にウイルスを注入。
彼女は大多数のキャストが持っている程度の感情を取り戻すが、
同時に「無類の女好き」になり、一人でいると作戦行動に支障をきたすレベルの「寂しさ」を覚えるようになる。
単独での作戦行動が不可能になったこと、ウイルスを除去するにはほぼまるごとの入れ替えが必要なこと、
彼女にウイルスを注入した上官がその後軍に対してクーデターを起こしたことなどを理由に、
軍を除籍され、廃棄される。

その後、フリーのアークスによって廃棄場からサルベージされ、
3年間彼の相棒として放浪を続けるが、その相棒は3年目にして失踪。

ツテもなく行くアテもなかった彼女は、自らの寂しさを埋める場所を得るため、
そして何も言わずに自分を置いていった相棒を探しだしてとっちめるため、アークスシップに乗り込む。


現在


ハダリが3年間の放浪生活で学んだことは、
居場所がなければ自分で作ることができるということだった。
彼女は自らリーダーとして「PSO2文藝部」を立ち上げる。

もろもろの事情によりチームが解体し、彼女はリーダーを辞すが、
なぁにかえって気楽になったってもんさ、友だちは増えたしね!
などと嘯きながら、以降は外宇宙に人探しの手を伸ばし、多忙にしているようだ。


戦闘スタイル


敵からも味方からも目立つ、派手な戦い方を好む。
軍用キャストの馬力に物を言わせて、ソードとキャノンを同時に振り回す、
大艦巨砲主義な戦闘が現在のスタイル。
また、武器は赤色の印象を与えるものを好んで持つ。


ロールプレイのフック

+ ...
  • 彼女は自分の感情が不完全なものであることに、重大なコンプレックスを持っている。
  • 彼女に備わっているのは、「美少女」「動物」といった記号に対して、「可愛い」という反応を返すプログラムであり、
 心から可愛いと感じることはできない。
  • 「優しさ」も「愛情」も、自分の行うものはすべて真似事に過ぎないと考えている。
  • そのため、「寂しさを紛らわすため」以上の距離に踏み込んでくる相手には狼狽してしまう。
  • すべてが偽物でできた人格が「リーダー」を演じるのは、果たして正しいことなのか? なんとなく結論は出たようだが、彼女にはそれを言葉にするのはまだ難しいようだ。


バックストーリー


彼女は、一年中砂嵐と吹雪の吹き荒れる辺境の惑星で作られた。
豊富な埋蔵資源を期待され、開拓団の送られたその惑星はしかし、人が住む環境としては過酷すぎた。
日に日に生産される資源は減少し、植民団は飢え、やがて限られた資源をめぐって2つの勢力が戦争を始めた。

戦争は百年、二百年と続いた。
人同士が殺しあう戦争はもはや限界を迎え、2つの勢力は、人格を抑制したキャストを大量生産し、争いを続けた。
彼女、M1A3-E/F 識別番号5000583は、そうして作られた。

彼女が作られた同じ頃、長い戦争に飽き、すべてを破壊せんと目論む反社会集団が、軍の地下に潜伏していた。
麗しき女性士官、ヴィリエ・アンダーソン大佐率いる「星を仰ぐ鷲旅団」がそれだ。
彼女らは、今や軍の大半を占めるキャスト兵にウイルスを注入、意図的に蜂起させ、両軍を戦闘不能にせしめ、
それに乗じて長き戦争に疲弊した軍隊を統一せんとするクーデターを目論んでいた。

その計画の先には、残された資源を結集し、なんとか外宇宙航行可能な宇宙船を建造、
星を捨てて新たな入植地をみつけるという彼女なりの理想があった。

ヴィリエは、ランダムに選定された指揮戦闘キャスト、識別番号5000583号を、ウィルスの最初の被験体に選んだ。


――*――*――


彼女が目覚めた時、自分の思考パターンがいつもと大幅に変更されていることに気づいた。
気づく、感じる、思う、そういうことができるようになっていた。

ヴィリエが注入したウィルスは、キャストに擬似的な感情を与えるウィルスであった。
ヴィリエは彼女を、ハダリと名付けた。

ハダリにとってヴィリエは上官でありながら、姉であり、母であり、
そしてまた、なにか得体のしれない熱い感情を呼び起こさせる存在であった。
ヴィリエはハダリに妖しく囁く。
それは恋だ、と。

ヴィリエの作ったウィルスには、擬似的な、そして偏った「恋」が仕込んであった。
それはヴィリエの倒錯的な嗜好を満たすための個人的な悪戯であった。
そして残酷なことに、それはハダリにとって初めての恋であった。

ハダリは実に優良な実験結果を示した。
すなわちヴィリエに心酔し、傾倒し、ヴィリエが軍を突き崩すために必要な、
危険な内偵任務を極めて忠実にこなしてみせた。

ある晩、ハダリは自らの上官に乞うた。
抱いてください。
ヴィリエは肯った。

事後、ヴィリエは言った。
ハダリ、私はこう思う。
私はこの蜂起を成功させることで、数千万のいのちを救うことができるだろう。
だが、もし失敗すれば、お前一人を失うことになる。
私はこの賭けが、本当に価値のあるものか疑問だ。

ハダリは言った。
逃げましょう大佐。
何処かに隠れて、密やかに朽ちるまで二人で生きましょう。
枯れ果てたこの大地も、私達二人が死ぬまでに必要な糧くらいは、用意してくれるでしょう。

三日後の朝に落ち合う約束をして、二人は別れた。

そして三日後、約束は果たされず、ハダリの全く聞き知らぬ場所から、星を仰ぐ鷲は蜂起した。
ハダリは涙を知った。
奇しくも待ち合わせ場所は、鷲の本隊を側面から突くことの出来る場所であった。


軍部から指令が飛ぶ。
側面からの急襲により、反乱軍を分断せしめ、そのまま首謀者を捕らえよと。

ハダリは疾走った。
何よりも知りたかった。
なぜ自分は裏切られたのか?
なぜ自分は恋をしたのか?
なぜあなたは私を作ったのか…!

あらぶる銃弾の雨を自慢の装甲で跳ね飛ばし、
人の百倍の膂力を以って包囲を突き破った。

粗末な本陣の扉を蹴倒す頃には、彼女の美しい艤装は剥がれ、
足折れ腕千切れんとする満身創痍であった。

彼女の目の前に、椅子に腰掛ける麗しい姿があった。

「なぜ…!」

残る力を振り絞り、彼女は問うた。
美しい女士官は、彼女を振り仰ぐと、優しく微笑んだ。
そして手にした拳銃で、自らのこめかみを撃ちぬいたのだった。

――*――*――

頭を失った大鷲は、まっとうな抵抗もできず、軍部によってすぐさま鎮圧され、地に落ちた。

愛する人を失ったキャストは、しかし何も理解できなかった。
ただただ立ち尽くし、立ち尽くし、立ち尽くした。
なぜ…!
それは、彼女が元通りのキャストであったなら、決して抱かずにすんだ疑問であった。

動くことも止まることもできなくなった彼女は、蜂起の事後処理に乗じて、
不良機体として宇宙集積場に投棄された。
なぜ…
彼女は朽ちてゆく自らの体の事よりも、そのことばかりを考えた。
答えは出なかった。

――*――*――

エワルド・シュタインは殺し屋だった。
ダラダラとした人生の、ダラダラとしたマネジメントの結果、
いつの間にかそうすることでしか、日々の糧を得られなくなっていた。
気づいた時には、人生をやり直す若さは彼にはなかった。

人を殺すのは得意だった。
目の前の物を例え見たとしても、エワルドはすぐに忘れることが出来た。
心の隅に追いやり、見なかったことにするのだ。

そうしていれば、彼は平穏に、そしてほとんど働かずに生きていけたのだった。
罪悪感がなければ、何を殺すにも大差ない。

ある日彼はゴミ捨て場を鼻歌交じりに歩いていた。
何のことはない、その場所でつい今しがた、人を殺したのだった。
だが彼はもう、自分がその日殺した人間のことを八割がた忘れていた。
それが彼の処世術なのだ。

何者も彼の目を留めることはなかった。
何者も彼の心に記憶されることはなかった。
だが、そのみすぼらしいキャストは彼の気を引いた。

彼女はうつむき、何やらぶつぶつとひとりごとをつぶやいていた。
あちこち壊れ、汚れて、もとの美しい造形は見る影もなく、
またその顔は曇り、たいそう悲劇的であった。

エワルドは、頭の奥をくすぐられているような気持ちに囚われた。
悲劇的なのは良くない。
思い出してはいけないことを思い出すから。

エワルドはそのキャストに手を触れ、顔を検分した。
どうやら、外装は見た目ほど壊れてはいないようだ。

君、名前は?

名前 ハダリ

そうか…ハダリ、君はどうしてそんなに悲しい顔をしているんだい?

わからないの なぜだか、わからないの

そうか…ちょっと見てみな…

エワルドは思いつくままに、手にしたナイフを頭上に投げあげては受け止めた。
そのナイフは丁度今しがた名前も知らない誰かのいのちを奪ったものだが、
彼はもうそのことは忘れていた。

2本、3本、彼は投げ上げるナイフを増やした。
くるくると星の光を反射して、ナイフは飛び回った。

キャストはそれを目で追っていた。
機械的に、ただ動くものを。
そして笑ったりはしなかった。

エワルドは焦った。
人に笑ってもらうにはどうすればいいんだっけ。
そうだ、僕が笑えばいい。
笑え、エワルド。笑え…!

エワルドはうまく笑えたかはわからなかったが、目の前のキャストがかすかに微笑んだ気がした。
それを見た瞬間、なぜかエワルドはすべてを思い出した。
エワルドは膝をついた。
どすりどすりとナイフが地面につき立ち、くずおれたエワルドの目から、涙が地面に落ちた。

人殺しをやめようと思った。

――*――*――

「ノット」と私が呼んでいる少女が、私の背中をゴソゴソといじっている。
何をしているのか私は知らないが、それをしてもらえると、とてもあたたかな気持ちになれる。

はじめにこの場所に運び込まれた時の事を、私はよく覚えていない。
ただ、激しい雨の轟音と、エワルドさんが私を抱える熱い熱い腕の感触と、
そして扉をあけて入ったこの場所の、しめった、どこか温かい土の匂いだけを覚えている。
その匂いだけは今も変わらない。

エワルドさんは私に、「エワルド・クラウン」と名乗った。
今日からそう名乗ることにした、と恥ずかしそうに言っていた。
シュタインの姓を知ったのはずっと後になってからだ。

何もわからない私に、一生懸命、手を取り、顔を寄せ、
生きるのに必要なことを教えてくれた。
人と話し、人を思いやり、人と食卓を囲み、人と遊ぶ。
僕も君と会うまで忘れていたんだ。
そんな風にまた、恥ずかしそうに笑うのだった。

私は私について知り直すことからはじめなければならなかった。
私は女性型のキャストであり、戦闘に適した設定がなされており、
ゴミ捨て場に捨てられており、それ以前の記憶にはプロテクトが掛けられていて思い出せない。

女の子ならおしゃれをしなさい。
エワルドさんにそう言われて、私はちょっと色を変えてみる事にした。

ノットが言っていたピンクという色にして帰って来たら、なぜかノットに怒られた。
ケバすぎるわよ!! 加減を知りなさい!!

いいじゃないか、と言って、ノットのお父さんは私に髪飾りをくれた。
黒くてキラキラした2つのレンズの付いた、素敵な髪飾りだ。
これでおしゃれになっただろう!
お父さん、これ派手すぎるわよ!

エワルドさんはそれを見て満足そうだった。
なかなか可愛くなったじゃないか、なんて。

私はいろんなことを知った。
空の青さ、海の冷たさ、風の優しさ、土の柔らかさ。
アークスの仕事を始めたエワルドさんと二人で、谷間の竜を追い返したり、
鳥の卵を拾い集めたり。

「いいかいハダリ、自分の感覚に嘘をついてはならない」

エワルドさんは言った。

「やれると思ったことはやりなさい。やるべきと思ったこともやりなさい。
 きっと誰かが許してくれる」

僕は君に許されたのかもしれない。
エワルドさんは恥ずかしそうに笑った。
女の子に触ってもいい? と聞いたら、いつもより気まずそうに笑った。
うん、きっといいんだ。何しても。

――*――*――

そしてエワルドさんはいなくなった。
ノットも、ノットのお父さんも、だれも行き先を知らなかった。
ほっときゃ帰ってくるわよ、とノットが言ったので待っていたが、
待てど暮らせど帰って来なかった。

私の心に、知っているような気がする冷たい感覚が満ちてくるのを感じた。
ゴミ捨て場が暗い口を私に向けてポッカリと開けている。

でも、と私は思った。
私には、果たされていない約束があるような気がしていた。
誰かを待って、誰かに問わねばならないことがあるような気がしていた。
エワルドさんを見つければ、答えがわかるような気がした。

私はエワルドさんを、なんとしても探しだすことにした。
何度でも、何度でも聞きに行けばいい。
居場所がなければ作ればいい。
きっと誰かが許してくれる。
諦めさえしなければ。

私はアークスになる。
そして誰も寂しくないようにする。
私が久しぶりに微笑んだあの日、エワルドさんが微笑んでくれたように。

私はこんどこそ、諦めない。
そう決意して、私は宇宙に旅立った。



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最終更新:2013年04月08日 22:51