周防桃子「Brand New Start Line!」
執筆開始日時
2017/07/25
概要
地の文ssです。
歌詞考察的な要素を含んでいるため、桃子のソロ楽曲を聴いておくとよりお楽しみいただけるかと。
歓声と熱量に包まれて、桃子は呆然と立ち尽くしていた。
アイドルとしての初めてのステージ。色とりどりのステージライトに飾られて、観客席もペンライトできらきらしていて、桃子が知っている舞台とは全くの別物だった。
桃子の知る観客は静かに椅子にもたれて、見定めるような遠慮のない視線を常に投げかけてくる存在だ。スタンディングオベーションだってもはや空想の産物にすぎなかったというのに、出てきただけで観客総立ちなんて、信じられない。
頭が真っ白になる。ダンスも歌も桃子のぜんぶに染み込むまで練習した。だからちょっとくらい頭が回らなくたって完璧にこなしてやろうって意志は消えてない。だけど、だけど。
ああ、この期に及んでようやく実感したんだ。
アイドルとしての振る舞いを、目の前にいる人たちに好かれてその熱量を引き出すやり方を、桃子は何一つ知らない。女優としての桃子の経験は、ここじゃ通用しないんだ、って。
その深刻さをちゃんと理解できるだけの余裕は残ってなくて、わずかなプライドがどうにか桃子を鼓舞している。幸いなことだったと思う。
そう、後戻りなんてもうできないんだから、今はただ全力で――
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最終更新:2020年04月26日 18:27