【ミリマス】ライアー・ルージュ
執筆開始日時
2017/06/16
概要
――あの人の視線を、思い出せない。
学校がお休みの土曜日、私は決まって早めに事務所に行く。朝早いせいか、町も眠ったようにしんとしている。我ながら早く出過ぎたかな、と思わないでもなかったけれど……それでも、早めに行くことをやめようとは思わなかった。
「途中で引き返すのも面倒だし」
そんな風に自分に言い訳しつつ、先を急ぐ。言い訳するような事を自覚すると、心なしか足が速くなった気がした。
しばらく町を行くと、ようやくお目当ての場所に着く。765プロ事務所。劇場と併設されたとはいえ、まだまだ小さいと思うのだが……これは、私たちの頑張りが足りないせいだろうか。少しばかり申し訳ない気持ちを感じつつ、その中に入った。
いつもの喧騒が嘘のような静けさ。まだ明かりも全部ついているわけじゃない通路を進む。カツンと音を立てる靴が、何故かシンデレラが履いているガラスの靴のように思えた――この年にもなって、絵本の中のお姫様に憧れてるのって、おかしいのかな。
呆れるような自分の思考にため息を漏らしつつ、目当ての部屋の前までやってきた。
――胸が苦しい。何故だろう。
鼓動を抑えつけるために、一度大きく深呼吸して、ノックする。
「失礼します」
返事を待たないままに、私は静かにドアを開けた。
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最終更新:2020年05月26日 20:47