死のドライブ

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走る一台の車、男が運転している。 ラジオ「昨日から行方不明になっている男性は未だ発見されておらず、警察では何らかの犯罪に巻き込まれたものとみています」 男、何かを見つけて車を止める。 女性が自分の車にもたれるようにして立っている、困っているような顔をしている。 男「なにかあったんですか?」 女「・・・・・・」 男「お嬢さん」 女「車が、動かなくなってしまって・・・」 男「ちょっと見てみましょうか」 男「バッテリーが上がってますね」 女「そうですか・・・」 男「レッカーを呼ばないとだめですね、でもこの先に電話が借りられそうな場所は・・・」 女「・・・・・・」 男「確かレストランがあったはず、けど10キロくらい走るかな」 女「そうですか・・・」 男「乗っけていきますよ」 女「すみません」 男「いいんですよ、貴重品だけもって、ドアロックしてください」 女「これだけ・・・」 大きな旅行鞄。 男「じゃあトランクに」 男、トランクを開ける。 女、旅行鞄を重そうに持ち上げる。 男「持ちますよ」 女、男が旅行鞄に手を伸ばしたため、鞄を隠すようにひっこめる。 男「どうしました?」 女「すみません、お願いします」 女、旅行鞄を男に渡す。 男「重たいですね、何が入ってるんですか?」 女「生活用品です、旅行してたので」 男、旅行鞄をトランクに入れる。 車内。 男「どこに行こうとしてたんですか?」 女「ちょっと・・・」 男「大きな荷物があったけど、旅行ですか?」 女「・・・・・・」 道路の青色看板に「青木ヶ原樹海」の文字。 何やら思いつめた女の顔。 男、女の異変に気付く。 -男の空想- 女、旅行鞄からロープを出す。 ロープを首にくくり、自殺する。 男「あの、つかぬ事を伺いますが・・・」 女、男を見る。 男「その・・・」 女、男を見る。 男「いや・・・そうだ、旅行は、お一人ですか?」 女「はい」 男「寂しくないですか?一人旅って。誰かと一緒の方が楽しくないですか?」 女「一人の方が気が楽です」 男「そうですか」 女「私なんか、誰も相手にしてくれませんし・・・」 男「・・・・・・」 車がレストランに着く。 女「ありがとうございました」 男「いいえ・・・」 女「レッカーをここに呼んで、その車でさっきの場所に戻るので、ここで」 男「はあ・・・」 女「トランク開けてもらえますか?」 男「はい」 男、トランクを開ける。 男「何が入ってるんですか?」 女「ですから、生活用品です」 男「だめだ」 女「え?」 男「単純な僕にだってわかりますよ」 女「・・・・・・」 男「命を粗末にしちゃいけない。たった一つの命じゃないですか」 女「・・・・・・」 男「馬鹿なことはやめてください、もっと自分を大切にしてください」 女「・・・わかりました」 男「本当ですか?」 女「ありがとうございます」 男「・・・よかった、わかってもらえたみたいで」 女「優しいんですね」 男「いや・・・」 女「あの人も、あなたみたいに優しかったら、私、あんなことしなくて済んだのに」 男「え?」 男、トランクから旅行鞄を落とす。 旅行鞄が地面の上で開く。 中身を見て、男は吐き気をもよおす。 ラジオ「行方不明になっている男性についてですが、樹海近くにある男性の別荘から大量の血痕が発見されました。しかし、未だ男性の姿は発見されておらず・・・」

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