&bold(){後輩の思いやり} カット1 室内 「先輩お待たせしました、ビール買ってきましたよ」 「おうサンキュ…って、おい、噴き出したじゃんかよ」 「大丈夫ですか」 「大丈夫じゃねえよ、お前これ振っただろ」 「振ってませんよ」 「振ってなくて噴き出すわけないだろう、振ってるんだよ無意識によ、もっと丁寧に持って来いよ」 「丁寧に持ってきましたけどね」 「お前これ、缶凹んでるじゃないか」 「あ、さっき玄関開けるときに落としました」 「それだよ、それ。どうしてお前っていつもそうなんだよ。お前には気遣いとか思いやりとか、そういうのがないよな」 「はあ…」 「豊臣秀吉はな、冬の寒い時、織田信長の下駄を懐で温めて、それで認めてもらったんだぞ」 「そんな話されても」 「なんだお前、その態度は」 「すみません」 「お前もさ、もうちょっとそういう、気を使ってくれよな」 「はい」 「まあいいや、寿司買ってきたか、寿司」 「はい」 「じゃあ飯にしようか、その前にちょっと、トイレ行ってくる」 「はい」 カット2 後輩の顔のアップ 不服そうな表情 カット3 コンビニの袋のアップ 後輩の手元、袋から寿司を取り出す カット4 電子レンジのアップ 寿司を入れる カット5 電子レンジの液晶アップ 電子レンジの操作 カット6 後輩の顔のアップ 何食わぬ表情 カット7 電子レンジのアップ チン、の音 カット8 先輩の顔のアップ 「さて、食べるか…え?」 カット9 テーブルの上に置かれた湯気の立つ寿司 カット10 室内 「温めておきました」 「……」 「温めておきました」 「……」