第九次ダンゲロス

IDP(インフィニットダンゲロスポータブル)3


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『明日はハルマゲドン当日ですよ
どういう事情があるかはわかりませんが、こんなことをして大事な白星くんが怪我でもしたらどうするんです』

びんたを受け膝から崩れ落ちた白星に向け、やはり言葉を発さず身ぶり手ぶりでそれを伝えるよしお。
生徒会陣営5本の指に入る攻撃力をもってしてもかすり傷ひとつ負わないよしおの呆れた防御力ともうひとつの大事なことを再認識し、白星はどこか吹っ切れたような屈託のない笑みを顔に浮かべ、握りしめていた竹刀の柄をそっと床に置いた。
そしてよしおに習ったまだ拙いパントマイム術で

『降参です 会長には敵いません 試すような真似をして申し訳ありませんでした』

と、謝罪した。

『理由を話していただけますね?』

しばらくの沈黙を挟んだあとに投げかけられたよしおの問いかけに、びんたのダメージで今だ足腰が立たない白星は、座ったままコクリと頷いた。
そのままじっとよしおの目を見つめていた白星であったが、ついに意を決した面持ちで、

「あっ わ、わわ、わたし! し、ししし! しんぱっ…しんぱいでっ!」

と、口にした。
普段感情を全く表に出さないよしおもこれには大変驚いたようで、ほんの少しだけ微笑みに驚愕の色が混じった。

よしおは白星と知り合ってから2ヵ月半、一度も彼女の声を聞いたことが無かったのだ。
よしおだけではなく、生徒会役員・クラスメイトはもちろん、教師一同含め、彼女が希望崎学園に入学して以来、誰一人として彼女の声を聞いた者はいなかった。

白星にとっての「沈黙」は魔人能力を発動するための制約であり、一度口を開いてしまえば普段彼女をプロテクトしている能力は童話人魚姫のように泡となり消え、次に使用可能になるまでにしばらく時間を要する。
組織内外の誰に狙われているか分からなかった暗殺者時代、魔人の基本スペック以下の脆弱な肉体を持つ彼女は能力を解除しないことで生き延びてきた。
よしおに心酔し生徒会に入ってからも、襲い来る刺客に、また誰ともわからない「敵」に怯え、彼女が能力を解除することは無かった。

その彼女が今、能力解除というリスクを承知した上でよしおに何かを伝えようとしているのだ!

「かっ! かいちょうが明日のはるっ…ハルマゲドンで! しっ死ぬかもしれないって思うと! い、嫌だって思いました!」

風貌に似合わない高く甘い声で、一言一言一生懸命紡ぎ出す白星。
はじめこそたどたどしかったが、その喋りは少しずつ安定していく。

「それで…! 今日、 も、もし私のこ、攻撃を! ………そのっ…ダメだったら…
皆に言って、会長のっ! 会長をっ! 安全なところにっ! 明日!」

しどろもどろになりながら経緯を説明する。
まるで要領を得ない説明ではあったが恐らく「会長を試し、もしコンディションが万全でないようであれば生徒会役員の皆にそのことを相談し、明日のハルマゲドンで会長が最前線に立つのを防ぎたかった」ということを伝えたかったのだろうと、よしおは推察した。

「……か、かいちょ?」

自らの蛮行を多少なりとも反省し、伏し目がちになっていた白星が異変に気付く。
いつからだろう、よしおの体のもともとピンク色だった部分が赤黒く変色している。
怒り・興奮の赤。