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遠くからキュポッ!キュポッ!という慣れ親しんだ足音が聞こえた瞬間、全身の血液が逆流したかのような感覚に囚われる。
鼓動が警鐘のように大きく鳴り、一瞬にして体が熱を帯びる。
遠くからキュポッ!キュポッ!という慣れ親しんだ足音が聞こえた瞬間、全身の血液が逆流したかのような感覚に囚われる。
鼓動が警鐘のように大きく鳴り、一瞬にして体が熱を帯びる。
ハルマゲドン前日の人払いが完了した放課後の校舎に、その軽快な足音のみが反響する。
キュポッ!キュポッ! …キュッ!
やがてその足音が止まった時、白星はごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
息を細く吐き出し、気を整える。
息を細く吐き出し、気を整える。
すでに開いている引き戸の前でシャッターを上げるようなパントマイムを行った後、奇抜なフォルムと配色の生徒会長、パントマイムよしおが柔らかな微笑を浮かべながら教室へと入ってきた。
その教室の中にはよしおの入ってきた引き戸から夕陽差し込む窓際まで教壇も学習机もきれいさっぱり取り払われており、がらんとした空間が作られていた。
そしてその真ん中に、白い薄手の着物を橙に染めながら白星つぐみが立っていた。
そしてその真ん中に、白い薄手の着物を橙に染めながら白星つぐみが立っていた。
『お待たせ、白星くん いったいどうしたんですか?』
一切言葉を発さず身振り手振りでコミュニケーションをとるよしお。
それに対してうつむいて答えない白星。
その右手には愛刀ではなく竹刀が握られており、左手は鞘のように鍔元をふわりと包み腰に添えられている。
その体は僅かに沈み、右半身が前のめりとなり、両の脚に力が溜められている。
剣術知識の無い者でも正面に立てば恐れを感じる攻撃的姿勢、居合の構えだ。
それに対してうつむいて答えない白星。
その右手には愛刀ではなく竹刀が握られており、左手は鞘のように鍔元をふわりと包み腰に添えられている。
その体は僅かに沈み、右半身が前のめりとなり、両の脚に力が溜められている。
剣術知識の無い者でも正面に立てば恐れを感じる攻撃的姿勢、居合の構えだ。
『…白星くん?』
ただならぬ様子の白星を気遣い、傍に寄ろうとしたよしおに向け、一閃が放たれる!
魔人特有の怪力を速さに集約したその一太刀は、竹刀によって放たれたとはいえ、並の人間相手ならば豆腐のように両断する威力を持つ。
その頭部めがけて放たれた不意の斬撃を、暖簾をくぐるようなパントマイムで光の壁を作り出し受け止めるよしお。
圧縮された体感時間の中でしか見ることのできないその恐ろしく流麗なパントマイムの推定速度はマッハ20!
魔人特有の怪力を速さに集約したその一太刀は、竹刀によって放たれたとはいえ、並の人間相手ならば豆腐のように両断する威力を持つ。
その頭部めがけて放たれた不意の斬撃を、暖簾をくぐるようなパントマイムで光の壁を作り出し受け止めるよしお。
圧縮された体感時間の中でしか見ることのできないその恐ろしく流麗なパントマイムの推定速度はマッハ20!
魔人同士の激突に、ドパンという擬音と共に竹刀の刀身が無数の繊維の束となって宙を舞った。
飛散する笹くれの中、鬼気迫る視線と穏やかなる視線が交差する。
飛散する笹くれの中、鬼気迫る視線と穏やかなる視線が交差する。
「(初太刀が効くとは思っていませんッ!!)」
笹くれを目くらましに、如何なる原理か虚空から無数の竹刀が出現し、よしお目がけて飛来する。
もはや剣技と呼ぶのもおこがましいこれこそが白星の最大奥義である。
もはや剣技と呼ぶのもおこがましいこれこそが白星の最大奥義である。
□□□□□□
□ボックス□
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□ボックス□
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その奥義すらもパントマイムひとつであっさりと防ぐよしお。
突如自身のまわりに壁ができ、それに追いつめられていくという古典的なパントマイム(通称ボックス)を推定マッハ20でこなし、それにより出現した光の壁が振りかかる全方位からの飛突を防いだのだ。
突如自身のまわりに壁ができ、それに追いつめられていくという古典的なパントマイム(通称ボックス)を推定マッハ20でこなし、それにより出現した光の壁が振りかかる全方位からの飛突を防いだのだ。
その直後、白星の両の頬がリズミカルに張られた。
おうふくびんたである。
おうふくびんたである。