第九次ダンゲロス

チャーミーガーリー、ロンリーダンディ


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 【Charmmy-girly side】

 ハルマゲドンの起こる、ある日の早朝のこと。一羽のカワイイうさぎ、宇佐美うさぎがもふもふと道を急いでいました。
 「がーりーぱみゅぱみゅ☆ がーりーぱみゅぱみゅ☆ ぉっくれちゃぅ→」
 どうやら何かに遅刻寸前のようですが、その割には暢気に鼻歌なんかも飛び出す程度にはごきげんです。
 一生懸命に跳ね回る姿は愛らしさいっぱい。
 と、そこへ。
 「おっと、待ちなぁ!」
 道を塞ぐようにしてうさぎの眼前に現れたのは、人相の良くない──────いえ、犬相の良くない三匹の野良犬です。いずれも血統書とは無縁そうな雑種ではありますが、それでもそれぞれにドーベルマン・コリー・ブルドッグの特徴が表れているため、便宜上そう呼ぶ事にしてみましょう。
 「へっへっへっ…………こんな朝っぱらから一人で何処に行くのかな、お嬢ちゃん?」
 軽薄そうな物言いで言葉を発したのは、コリー。人間で言えばチャラ男系のチンピラといったところでしょうか。髪型はモヒカンです。
 「こんな早朝じゃ通りがかるやつもいねぇし、夜中以上に危ねぇな」
 ドスの利いた低い唸り声で続けたのは、ブルドッグ。人間で言えば強面の三下ヤクザといったところでしょうか。髪型はモヒカンです。
 「ひょっとすると、食われちまうかもしれないな…………腹を空かせた悪い奴らになぁ」
 威圧的に口元を歪めてあざ笑ったのは、ドーベルマン。人間で言えば兄貴分のヤクザといったところでしょうか。髪型はモヒカンです。
 「ぁゎゎゎ……☆ マ・ジ・ヤ・バ→?」
 三匹のシンプルながらも強圧的な迫力に、うさぎは驚いてしまって大弱り。何とか切り抜けたいものの、因幡の白兎のような知略はそうそう生まれるものでもありません。
 「マジぁりぇなぃ↑↑」
 些か緊迫感に欠ける悲鳴でしたが、その声が朝靄の中に虚しく響いて。
 彼女を待つのは薄い本めいた展開でしょうか、はたまたゴアめいた末路でしょうか。
 絶体絶命の危機と思われた、そのときでした。




 【Lonely-dandy side】

 「そのくらいにしておいちゃどうだ?」
 黒インクを溶かしたような、黒墨の闇。
 老いた死者の欠伸のような、灰色の声。
 「誰だ!?」
 奴ら自身の愚昧さを雄弁に主張する逆立った髪が、頭の動きに合わせて哀れな枯れ草のように揺れた。
 「…………こっちだ」
 哀れみと呆れの響きが程良くブレンドされたカクテルを、奴らに披露する。名乗っても別段問題はないのだが、奴らの記憶力を考えるに無意味だろう。
 「兄貴! あんなところに!」
 品の無い茶色と黒の長毛が混ざり合ったまだら模様の三下が、阿呆面を持ち上げて俺を示した。
 客の注目を集めたショウダンサーのように俺はブロック塀から音も無く着地すると、対面していた両者の間に立つ。
 「どっちもこの辺じゃ見ない顔だな」
 今にも襲われそうになっていたレディ──────になるにはあと、バーボンウィスキーが程良く熟成するに足る年月を必要としそうな小娘。
 粗暴さと下品さと低能さを三位一体にした、出来のよろしくない俗悪なケルベロスども。
 そのどちらも新入り──────或いは流れ者だろう。
 「おうよ! 俺たちゃ地獄から来た狂犬三兄弟! 今日からこの辺は俺たちの縄張りだ! 逆らう奴は容赦しねぇ!」
 失敗した粘土細工のようにくしゃくしゃな顔の男が、馬鹿の一つ覚えよろしく脅し文句を口にする。
 「そうかい。この辺は俺にとっちゃ悪くない住み心地なんでな。できれば隣町…………おっと、地獄だったか? に帰ってもらえると有難いんだが。あぁ、おいたをせずに大人しくしてる、って言うなら歓迎してもいい」
 俺は肩を竦めると、極めて友好的に接する。
 「何なら旨い食事をご馳走したっていい。この近くには中々上等な飯を出す洋食屋もある事だし」
 奴らには贅沢過ぎる程だが。
 「知るか! 俺たちはやりたいように自由にやるし、誰の指図も受けねぇ。そうだな、兄弟?」
 古ぼけて色褪せた黒革靴のような毛並みの男が、他の二匹に呼び掛ける。リーダー格を自認する、精一杯の虚勢の臭いだ。
 「自由か、良い言葉だな。俺も決して嫌いじゃあない」
 ほんの少しだけ、本音を滲ませる。紅茶に垂らすブランデー程度に。
 「そうだろう? 分かったらさっさとそこをどけ! 噛み殺されたいか!?」
 どうやら話し合いでは解決したくないようだ。俺は平和主義者だと言うのに。
 木枯らしのような嘆息。
 じりじりと近付いて来る三匹。
 参ったな、仕方がない──────。
 と、しかしその時。
 獣臭。
 そして、轟き。

 「ガルルルル……!」白熊がやってきた。
 「バニラーーーッ!」灰色熊がやってきた。
 「ウオオオオーッ!」遼介(熊)がやってきた。
 「ぱんだ~」ポイズンジャイアントパンダがやってきた。
 「トラ・トラ・トラ!」虎(山乃端一人)がやってきた。
 わっしわっし。オウワシが飛んできた。
 うねうねうねうね。触手がやってきた。
 にょろりにょろり。衿串中の下僕たる蛇がやってきた。
 「Eeeeeeeeenglish!」ボルネオがやってきた。
 「急に歌うよ~♪」のもじTHEアキカンクイーンヘッドねんどろいどがやってきた。
 「…………またくだらない揉め事に首を突っ込んでいるのか」
 最後に、怪鳥ホールインワンがやってきた。苦虫を噛み潰したような表情だが、これはいつもの事だ。目端が利くだけに、争い事を嗅ぎ取って他の面子も連れてきたか。
 「やれやれ、皆さんお揃いで。今日は誰かのお誕生日会だったかな」
 集まった面子をぐるり、と見回す。
 雁首揃えた面々は、希望崎学園界隈に棲む錚々たる魔人化動物達。彼らの醸し出す迫力は言わずと知れている。
 「で、なんだったかな……?」
 駄犬どもに向き直ると、のんびりと再度訊いてやった。
 力に頼る者は、より大きな力の前では無力になる。
 「お、覚えてやがれーっ!」
 三秒後には忘れてしまいそうなオリジナリティの欠片も無い捨て台詞を残すと、三匹は文字通り尻尾を巻いて逃げ出した。

 「やぁ、助かったぜ。こちとら荒事は好きじゃないんだ」
 「好きじゃない、と得意じゃない、は同義じゃないだろう」
 何を言っているんだ、とばかりに呆れた口調の怪鳥。韜晦するには腐れ縁過ぎる相手だ。
 俺は黙って肩を竦めると、答える代わりに話を変える。
 「随分と早起きだな。健康生活に目覚めたか?」
 俺の軽口に、不機嫌そうに怪鳥ホールインワンが目を細める。
 「ぬかせ。あれだけ馬鹿どもがぎゃんぎゃん喚いていれば死人でも起き出す」
 「違いない」
 くくく、と思わず喉を鳴らすと、怪鳥も渋面のまま苦笑する。
 人の世は、人ならぬ身には住み難い。ましてや異形の力を持つ者達にとっては。
 群れを作るつもりはない俺だが、そうした奴らとは自然と顔馴染みにもなる。
 不必要な束縛は好まないが、しがらみのない世捨ての生き方にはまだ少しだけ早い。

 「さてと、これだけ居れば充分だな。後は任せたぜ」
 これ以上の厄介事は御免被る、とばかりに俺は彼らに小娘を押し付ける。
 子守りは一人で充分だ。
 「ぁの、ぁりがとぅござぃましたぁ→☆ 良ければぉ名前教えてくださ→い」
 背を向けた俺におずおずと、しかし独特の調子でお嬢さんが問うてくる。
 「名前? 俺には名前がいっぱいあってな…………好きに呼べば良い。ルドルフでも何でも、な」
 名前など、大した意味は無い。或いは忘れられ、或いは間違われ、そして或いは消えてゆく。
 大切なのは。
 決して目に見えない、大事なものは。
 一欠片の魂と、たった一つの思い出。
 男には、それだけあれば上々だ。
 俺は尻尾を立てると、別れを告げた。


GK評:3点
改めて並べて見ると壮観だなあ。特別ゲスト歴代ダンゲロスどうぶつメンバー。
はたしてガーリーうさぎは、そして黒猫ナンシーはダンゲロスの歴史にその名を刻めるのか!