第九次ダンゲロス

人魚と鷹4P


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「渡良瀬さん、あなたがこの狂犬を手引きしたのね!
 この水族館と『先輩』の私への反逆だわ! 解雇では済まなくてよ!」

 対する蘭丹は言いたいことを手早く済ませると、次いで「フン」と鼻を鳴らす。

「ま、こんな不良に私が負けるわけないけど……ね!」

 イリシウムが光り、電撃が飛ぶ!
 楓はこれをまともに受け、立ち止り苦悶する!

「ぐあああああっ!」

「た、鷹絛っ!」

 ようやく回復したノエルが、水槽に手をつけ外の楓に祈るような眼差しを送る。
 それに気付いた蘭丹が、余裕の笑みを浮かべてノエルに振り返る。

「ふふふ、あなたのせいでこの子は苦しんでいるのよ。
 でも安心なさい。この子を片付けたら、あなたもまた同じメに遭わせてあげるから」

 自分を助けに来たせいで鷹絛が――。ノエルの心が後悔で軋む。
 楓はノエルの視線に気付くと、電撃に苛まれながらも気丈な笑みを向ける。

「待ってろよ、ノエル……! 今、オレが助けてやるからな……!」

 その言葉が、ノエルの心の最後の砦を溶かした。
 彼女は見守るのを止め、すうっと上方へと泳いだ。

「助けてやるって、あなたがボロボロじゃない! 口ほどにも無いわね!」

「ほんとよ! 助けに来るなら、しっかり助けなさいっての!」

 水ではなく空気を介した声に、楓と蘭丹は水槽の中ではなく、その上部を見た。
 ノエルが水槽の蓋を開け、天井から上半身を出していた。
 食事を運んできた係員が鍵を閉め忘れていたのを覚えていたのだ。

「あんたがそんな体たらくだから……私も、頑張んないとじゃないっ!」

 水槽の縁を掴んだ両腕にぐっと力を込め、その身体を持ち上げる。
 宙空に露出したノエルの尾びれ――泡尾≪アワビ≫から、一滴、雫が落ちる。

「ダチのピンチを助けるのがダチなんでしょ! だったら――私にも助けさせなさい!」

 そして紡がれたるは、勇猛なる戦歌!
 振るわれる泡尾≪アワビ≫から、巨大な泡が生まれる!

「ノエル……!」

 巨泡が楓を包み込み――すると、蘭丹の放っていた電撃が、泡に弾かれ消える!

「な、なんですって!?」

 ウタ=カタ奥義『ソープ・ア・ラウンド』は、衝撃を打ち消す効果を持つ泡である。
 これに包まれた者は、ある程度の威力の攻撃は全てシャットダウンできるのだ。
 数年前、陸上留学中だったノエルの姉・アリアがこの技能を買われ、希望崎学園の
 生徒会に在籍していたという皮肉じみた事実を、彼女はまだ知らなかったが。

「サンキュー、ノエル!」

 サムズ・アップする楓に、ノエルも同じくサムズ・アップを返す。
 電撃の無力化にうろたえる蘭丹に向き直り、楓は瞳に怒りを燃やす。

「――オレは、オレのダチを傷つけるやつを許さねえ! 喰らいなあああああッ!!」

「ヒッ……アバーッ!!」

 楓の渾身のアッパーカットが顎を撃ち抜き、蘭丹は館の天井に激突した。
 アッパーカット――それは、楓の憧れである大銀河超一郎の決め技でもあった。
 やがて床に落ちてきた蘭丹は気絶しており、イリシウムも光を失っていた。

(……今度は、ダチを守れたぜ……大銀河さん)

 力強く握った拳を解き、楓がノエルを見上げる。
 ノエルは既に下半身を水槽に浸かっており、ウタ=カタ行使の反動か、労わる様に
 咽喉に手を当てていたが、

「っ……遅いわよ、ばか……!」

 弱弱しく、しかし僅かに喜びを滲ませた声音で、そう呟いた。
 それを受け、

「やっと見れたな、お前の笑った顔!」

 楓は、ニカッと破顔した。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 次の日の放課後。
 希望崎学園番長小屋の門を叩く音あり。

「ちょっと、いるんでしょ、鷹絛ー! 開けなさいよー!」

 次いで聞こえる声は、聞き覚えのある透き通った美声。
 鷹絛楓は嬉しそうに扉を開き――

 ――照れくさそうにそっぽを向いた、渡良瀬ノエルを迎えた。



GK評:5点
友情あり、能力バトルあり、ストーリーや他SSとのつながりあり!
そして熱い展開!文句なしですね。お見事だと言いたい。