第九次ダンゲロス

長い注意


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◆◆◆

 それは突然の襲来であった。

 生徒会陣営三年、米々かぶり。腰まで届くウェーブの掛かった白髪。
 透き通るような白い肌。華奢な手足と、くびれた腰。
 のほほんとした柔らかな表情は、彼女が魔人ということすら疑わせる。
 その胸は豊満であった。
「……えっと、どなたでしょぅ?」
 その彼女が、校庭のとある一角で、困ったように首を傾げていた。
 彼女の眼前には、待ち構えていたかのように仁王立ちする影。
「――番長陣営、三年。平将華」
 目の前の少女は、凛とした声でそう名乗った。
 切れ長の瞳。艶のある黒髪を首元で一つにまとめている。
 その立ち姿には隙がなく、見る者が見たならばそれだけで彼女が何かしらの武術の達人であることが分かっただろう。事実、腰には長大な刀を携えている。
 その胸は平坦であった。
「えっと……もしかして、今日でした? はるまげどん。わたし間違えてます?」
 とぼけたように笑う。これが普段通りである。
番長陣営、その言葉が含む意味を理解しないかぶりではないが――なにぶん、危機感が欠けていた。
「残念ながら違うわ。――けれど、私が狙うのは、最初から貴女だけみたいだから。軽い、ご挨拶にねっ!」
「え? ――きゃうっ!」
 刀が抜かれたことに気付くには、若干のタイムラグが必要であった。かぶりが鈍いこともあったろうが、それほどに少女――将華の抜き打ちは滑らかすぎた。
 咄嗟に下がろうとして、足をもつれて背後に転ぶ。
 実を言うとこの斬撃、かぶりの前髪一センチを切るか切らないか程度の威嚇だったのだが、そんな機微を察することが出来るかぶりではない。彼女は直接戦闘能力に関しては、ほぼ皆無なのである。
 目測が狂い、勢いで跳ねた豊満な胸元、その中心部分の制服を僅かに切り裂かれる。切り開かれた制服の隙間から、底が見えないほど深い渓谷が扇情的に覗く。
 谷間が無ければ即死であった。
「あっ……」
「こん……っあなたねええええええええええ!!」
「!?」
 突如、将華が絶叫する。いや、むしろそれは慟哭に近い。
 ここまで氷のような鋭さを保っていた彼女が空気が、弾け飛ぶ。もはやそれは一陣の烈火。感情の爆轟であった。
 ぎちりと大気にヒビを入れるような眼光は、まるでこの世全ての悪でも見ているかの如く。日本刀を高々と振り上げる! 
「あう」
 かぶりは仰向けに倒れる。服を切られて支えを失くした胸元が、衝撃と重力に負け、跳ねて左右に広がる。
 それを見て更に将華がシャーッ、と猫の威嚇のような声を上げた。
「その下品な身体、抉ってあげる! 『マサカッター』!」
 どくりと、刀が鳴動する。その刀身を禍々しいオーラを纏ったかと思えば、
 それは一転、首を落とす処刑人のまさかりに変貌した。
「――ッ!」
 ぞくり。かぶりはまるで動けない――しかし、あと一歩にまで近づいていた将華の腹部に手のひらを向ける。
 ――将華の表情が僅かに乱れ、目測がズレる!

 グラウンド・ゼロ
「『地均し』!!」

 振り下ろされた刃は、かろうじて、かぶりを外していた。
 ほとんど偶然に近い回避。地を這う衝撃波が高速で校庭を走り、何一つ傷つけぬままに消えていく。
「…………ッ」
 ――否、そうではない!
 衝撃波の先には、なんたることか、通りすがりのホルスタインが! 
 このとき偶然ダンゲロス酪農部から脱走し偶然校庭を横切っており偶然子牛に乳をやっている最中だった乳牛は、謎の衝撃波を受け――ヒィーン、と悲鳴を上げた!
「あれは……!」
 悲哀を感じさせる、まるで馬の如き鳴き声。
 しかしそれも当然だ。ホルスタインの、今の今まで子に吸わせていたその身体後部の乳房が、見る影もなくしぼんでいるのである!
 魔人能力。それに気付くと同時に、かぶりはこの少女の力を理解した。
 まさかりを再び担ぎ、にやりと笑う将華。
 その胸は――平坦である!
「そう」
 未だかぶりは倒れたままだ。彼女をまたぎながら、将華は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「私の剣は、他人のバストを切り落とす……!」
「なんて、恐ろしい能力……! そこまでして、おっぱいに一体、何の恨みが!?」
「うるさい! 黙れおっぱい! あんたみたいなおっぱいがこの世界にいるから私たち貧乳が苦労するんだこのおっぱい! 何をどうすればそんなにおっぱい育つんだこの化け物おっぱい! あ、いや別におっぱい大きくしたいわけじゃないけどね! あくまで敵状視察としてだけどね! 参考としてだけど!」
「……わ、私のおっぱいは白米を食べただけですよ? 白米は万能食材、おっぱいが欲しいというのならおっぱいよりもまずはお米を食べれば何とかなります!」