第九次ダンゲロス

第九次ダンゲロス武勇伝-清水おしる子編-


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誰も私の苦悩を理解してくれない……。
 ちょろインであることの苦しみを、誰も分かってくれない……。


 ***

 ある人は言った、私のことを、恋多き女だと。
 別の人は言った、惚れやすい性質の女だと。
 ちょろインの十字架を背負う私の苦しみを打ち明けても、皆、嗤うばかりだ。
 いつも彼氏がいていいじゃない、なんて。

 ……そうじゃない! そうじゃないの!!
 ちょろインであることの苦しみが、みんなには全然分かってない!!!

 単に彼氏ができやすいとか、そんなことじゃない。
 それはただのヒロイン。
 ちょろインはちょろくなければいけない。
 何よりも攻略容易であること。それが、ちょろインの背負う十字架……。

 だから、私はちょろい。誰よりもちょろい。世界中のどんな女の子よりちょろい。
 私を攻略しようとする男の子が何をしたって、どんな行動を取ったって、どんな発言をしたって、すべて胸にキュンと来て、何もかもが愛おしくてたまらなくなる。訳が分からない。どう考えたっておかしい。男の子がラーメンを頼む。突然、頭からそれをかぶる。どうしてそんなことをするのか分からない。でも、私はその瞬間に恋に落ちてしまう……。彼のことが気になってたまらなくなって、彼が他の女の子とお話をしているだけで夜も眠れなくなってしまう。訳が分からない。でも、私はちょろインだから……。

 ちょろインとして生きることに疲れた私は、ちょろインに逆らって生きようとした。
 だから私は自分も、男の子も、何もかも否定して生きようとした。
「た、ただの売れ残りなんだから! べ、別にあなたのためにお弁当作ってきたわけじゃないんだからね!」
「あ、あんたのことなんて、全然好きじゃないんだから!」
 でも、ダメだった。どんなに頑張ってもただのツンデレとして処理されて、結局、ちょろく攻略されてしまう……。
 どうやっても私はすぐに恋に落ちて、私と男の子の恋は実ってしまうのだ……。

 ちょろインの辛さはそれだけじゃない。
 ちょろインである私は何よりも「攻略容易」である点に何よりも重きを置かれる……。
 だから……。

 私との恋が実った男の子は、多くの場合、私を捨ててしまう。
 まるで、手始めに一番容易なヒロインを落としたから、次は本腰を入れて本命を狙おう、とばかりに私は簡単に捨てられてしまう。いや、捨てられる、という表現は生ぬるい。彼は、私を忘れるのだ。私との関係はまるで何もなかったかの如く、イチからこの世界をリスタートするが如くに、私との関係性は何もかもが失われるのだ。
 いや、忘れられるだけならまだマシな方だ。男の子はしばしば事故死、自殺、急死などの不審死に見まわれ、突然、私の前から消え去ってしまう……。そして、悲しむヒマもなく、新たな男の子が目の前に現れ、いつの間にか私はちょろく攻略されている……。

 私は抗おうとした。ちょろインとしての運命に抗おうとした。
 だが、私が抗おうとすればするほど、ちょろインの十字架は私に重くのしかかってくる。
 異常な怪奇現象が次々と私を襲い、私をちょろく攻略可能にしようとしてくるのだ。
 廊下で男の子とぶつかれば、かならず男の顔は私の股間にめりこんでいる。男の子と私を繋ぐ「幼い頃の約束の品」なんて部屋の中にあふれる程ある。もちろんすべて見覚えがない。男の子と暗がりの閉鎖空間に二人で入れば100%閉じ込められる。温泉に行くと、必ず男の子が男湯と間違えて入ってる。
 もっと酷いこともいろいろあった。ある時、私は男の子の右手になった。またある時は男の子の持つ鏡の中に閉じ込められた。さらにある時はその男の子にしか見えないパジャマ姿の幽霊になっていた。世界中のすべての見えない力が、私をちょろく攻略可能な女にしようと、なりふり構わず動いているのだ。……そして今、
 私の股間には男の子の顔面が張り付いている。

「あッ、ひゃ、ひゃらしくん……ら、らめえええ……」

 ただしくんは、口をもごもごと動かしてこう言っている。
「おしる子ちゃん、そんな悲しい顔をしないで」「僕はおしる子ちゃんと知り合えて本当に嬉しいよ」
 そんなことを言われたら……股間を刺激されながら、そんな愛の言葉を囁かれたら……、ただしくんのことが好きになるに決まってるじゃない…………!!

 でも、ダメ。
 私がただしくんのことを本当に本当に好きになって本当にカップルになってしまったら……。
 きっとただしくんは死んでしまう。股間に顔が張り付いている以上、突然に私のことを忘れるとか、どこか遠くへ旅立っていくとか、そんな順当な別れがあるとは思えない。右手になった時や幽霊になった時と同じ。きっと彼は見えない力によって、強引に、理不尽に、殺されてしまう……。現に私の股間に張り付いてから、彼は刻一刻と衰弱していく。私が本当に彼を好きになって本当のカップルとなった時……。きっと彼は衰弱死してしまうのだろう。

 私が苦悩していた、そんな時……。
 ダンゲロス・ハルマゲドンが始まるという報せが届いた。
 ただしくんは、何故か燃えている。私を護るためなら命も捨てる覚悟を固めている。
 ……おかしいよ。私たちが参戦する理由なんて何一つないのに。
 これは、きっと運命だ。見えない力がただしくんを殺そうとしているんだ。それでも、私を命がけで守ろうとするただしくんに、私の気持ちはどんどんと高まっていく。もうすぐ、私はただしくんのことを、世界中の誰よりも好きになってしまうのだろう。そして、私がちょろく攻略された瞬間、ただしくんは敵と刺し違えてその生命を終え、私は新たな、まだ見ぬ男の子にちょろく攻略されるための、ちょろインとなってしまうのだろう……。

 永遠に続くちょろインの十字架……。
 ダンゲロス・ハルマゲドンは、私をまた哀れなちょろインとするのだろうか。
 それとも、ちょろインの重荷から、


 私を――。

GK評:3点

まず股間にエクソシスト状態の男子の顔面が貼り付いている女子高生というキャラクターのデザインに恐怖。
ちょろインという概念存在であるおしる子ちゃんの苦悩に戦慄。

本当に毎日何を食ってどういう生活をしていたらこんな発想が出てくるのだろうか。
大体ブログに載ってるけど。