カルディア・ブラック・ソーン

名:カルディア・ブラック・ソーン  (NPC)

~ カルディア式 交渉錬金術 ~

 彼は赤鉄大戦開始時には一介の漁船乗りに過ぎなかった。しかし、イクスカリア軍の上陸作戦で船を焼かれ、続く帝国の奪還作戦で両親を、更に王国の再上陸作戦で恋人を失った。そんな彼は、大国のどちら側も信用しない道を選んだ。同じ様な環境に陥った若い船乗り達を集め、帝国と王国の区別なく、巧みな海戦を挑み続けた。武器と食料は全て略奪品で補い、知り尽くした海流を利用し、停泊地を毎日のように変更する事で、両大国からの追撃を逃れ続けた。そして戦利品は戦争難民達に分配したのだ。こうしてブラックオニキス海賊団の名は否が応でも高まっていった。両大国では悪名として、民衆からは英雄の名前として…。

 しかし、彼は海賊の頭で終わる男では無かった。彼は狡猾な政治家であり、巧みな外交官としての能力があった為に、何度も続く占領と再占領という連鎖地獄の中で、一筋の光明を見出したのだ。
 彼は先ず、素性を隠してカラド諸島の代表になった。そして占有者が王国となった時期を見計らって、イクスカリア国王に独立国家としての承認を願い出た。その際、王国に提示した条件は、永続的な造船技術の提携と、船舶の取引契約であった。また、軍事的なメリットに独立国家と承認されれば、そこに軍を派遣する必要が無くなり、海峡側に戦力を集中させて王国の苦手とする海戦を減らせる事を指摘した。さらには、海戦で発生した数多くの漂流者を救出する約束を交わした。この三つ目の条件は、兵の命を尊ぶ国王の感銘を得た。

 そうやって独立国家としての承認を得た彼は、続いて帝国皇帝に独立許可を求めに謁見の場に向かった。この時の記録によれば、既に彼の立ち居と振る舞いは船長というよりは国家元首のそれであり、皇帝を前にして礼を守りつつも一歩も譲らぬ姿勢を最後まで貫いたとある。
 その彼が帝国に申し立てたのは、先ず第一に、帝国が辺境の地を守りきれず占領を許してしまった事実。そして、多くの民が死んだ事。さらに、これらが今後も繰り返されるのであれば、民心が帝国から離れ、それが飛び火しかねない事を列挙した。実際に、長引く戦争に対して、民衆の間では厭戦ムードが漂っており、反乱を企てる者も出始めており、何人かの逮捕者が出ていた。ゆえに帝国の本音としても、停戦の機会を伺っている部分があったのだ。帝国の痛い所を突いた後に、彼はさらに続けた。この独立が認められたなら、王国としても独立を認めた手前、カラド諸島を占領する進撃ルートは選択できず、帝国としては戦力の分散を避ける事ができ、海峡側に大勢力を集め、決戦に持ち込む事が可能だと説いた。
 彼は畳み掛けるように戦後の情勢にまで目を向け、もう一つの約束を提示した。それはサイキックが発達し、魔法文明に乏しい帝国に対して、ミストルから王国を経由し、さらにカラド諸島を通して、それらの魔法的物品や有能な魔術師とその知識を輸入するという話である。皇帝は、その大戦を通じて魔法を侮れない相手と認識しており、敵を倒す為に先ずは敵を知るべきだという事を痛感しており、今の戦争で勝てずとも、百年後に勝てる算段を今より行うべきだと考えていた。この国家百年の計を見越した先見の明という部分で、二人は合致していた。

 …結果、晴れてカラドは両国の承認を得て、独立を果たしたのである。しかし、その後、彼が隠していた海賊の頭だったという素性がばれて政治的危機に陥るが、国内では逆に人気が跳ね上がって絶大な支持を得る。だが、両国の手前があるので退陣を決意。しかし次期首相は彼が推薦した人物に決定し、その人物も船長であった為に、カラドは大陸中から海賊王国の通り名で呼ばれるようになる。また、それ以降、カラドの首相はブラックの名と、ブラックオニキス号を受け継いで行く事が慣例となった。
最終更新:2012年07月06日 23:05
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