入門用コマンドステーション

すでに20年を超える歴史を持つ欧米のDCC。製品の発展も順調に進んで、入門用とされる商品も充実してきた。本格的に大規模レイアウト用として使う際にはキャブコマンドステーションブースター、電源をそれぞれ別個に準備する必要があって、どうしても高コストとなるところを、入門用製品では機能や拡張性の一部を割り切って複数の装置を一体化させる等の方法でコストダウンも図っており、アナログからデジタルへの乗換えを推進している。
残念ながら日本では言葉の壁もあってこれらの製品のほとんどが輸入されていないので、せめてここでいくつかを紹介してみることとしたい。なお欧州製品についてはデジタル鉄道模型入門用の列車セット用コントローラとして入手する方法もある。

アメリカ製品

マニュアルが英語なので(ドイツ製品よりは)とっつきやすく、電源も日本となんとか共用できる。日本市場を意識したと思われるDCS50を除き、所属するクラブレイアウトでのキャブとしての運用も考慮された商品になっているのが特徴。

Digitrax社「Zephyr(DCS50)
KATOではD101として販売されている、一体型コマンドステーション。2.5Aの出力と、個人レイアウトに必要十分な機能を誇る。いろいろと試してみたい入門者には最適の製品であろう。定価は$199、日本での定価(D101)は税込19,980円。

MRC社「PRODIGY EXPRESS
発展性に優れたPRODIGYシリーズの入門セット。入門用とは思えない本格派で、16ファンクションキーを装備したハンディキャブは最近のサウンド搭載モデルにも十分対応できる。1.6Aは中規模以上のレイアウトには少々不足気味だが、上位機種へのステップアップも容易である。定価$189.98。

NCE社「Power CAB
日本にもファンの多いNCE社のスタートセット。ホイールとボタン両方のスロットルを持つ使いやすいハンディキャブ型で、こちらも将来的に上位機種へのステップアップが考慮されている。出力は2Aだがブースターも販売されており、簡単に電源強化を図ることができる。定価$179.95。

イギリス製品

BACHMANN社をイギリスとするのは疑問があるが、香港ケーダー社の子会社であり、製品の性格からもイギリス系としておく。
簡単な操作を旨とする入門製品に特徴があり、鉄道模型を「良質なおもちゃ」ととらえるイギリス家庭の傾向がうかがえる。

BACHMANN社「E-Z Command
入門用と割り切った単純な操作と機能のコマンドステーション。X-Busを搭載しているが、他社製品の接続は保証されていない。出力1Aでお座敷レイアウト向きと言えるが、拡張機器も予定はされている。なによりも魅力は実売$80以下という低価格。とにかく初期投資を抑えたい入門者には向いているかもしれない。

BACHMANN社「DYNAMIS
まもなく発売予定の新型コマンドステーション。従来のE-Z Commandとは打って変わって、高機能かつ発展性に優れた製品に仕上がっている模様。赤外線ワイヤレスコントローラと受信装置兼電源装置の簡易版スタートセットはわずか£100で、発売後はDCC導入セットの第一候補となりうる意欲的な商品である。拡張装置を付ければ「PRO」仕様になり、ECoSやPCとの接続コネクタをも装備した、機能的にも最高レベルのコマンドステーションになる。

HORNBY社「Sellect
簡単操作の入門用機。最後発製品だけあって細部までよく検討されており、使いやすい。いまどき2桁8セグメントLEDであるが、機能も多くないのでそれほど困らない。ただ£70の価格は上位機種「Elite」の半額で、機能を考えればEliteの方がお買い得感が強い。XpressNetを搭載し、拡張性もある。

ドイツ製品

工業製品としての完成度を追求する国民性が如実にあわられ、システマチックな製品が多い。また多機能を追及していないところも特徴的。ユーロ高の影響もあってやや高価ではあるが、鉄道模型以外のドイツ製品同様、高い信頼性とともに所有する喜びを味あわせてくれる。なおROCO社は厳密にはオーストリアのメーカー。

LENZ社「Compact
北米ではATLAS社の「Commander(リンク先はTony's紹介記事)」としてOEMもされている。アメリカでは$80くらいから入手できるようであるが、機能も価格相応で4桁アドレス未対応等同社の上位機種との格差が目立つ。2.5Aの電源容量を誇るが、むしろ入門として自宅の小型レイアウトで試してみるユーザー向きと言えよう。そろそろ新型の開発が期待されている。

メルクリン・TRIX社「Mobile Station
大きな液晶画面を持ち、運転する列車をその名称(「EF65-512」等10桁までの英数字)で選択できたり、ファンクションボタンには液晶にアイコンが表示されたり等、実に扱いやすいメルクリンらしい製品。しかし、機能はやや制限され本機だけではアクセサリの制御もできず、また車載デコーダ付とは言えセットで€200を超える高価格も厳しい。大型液晶付多機能コマンドステーション「Central Station」と組み合わせて使うと本領を発揮する製品である。ちなみにTRIXブランドの方はSelectrixとDCCの両用タイプ、もちろんメルクリンブランドの方はmfx,MM専用である。

ROCO社「MultiMAUS(MULTIMOUSE)
ROCO社のデジタル入門セット用コントローラ。幼児ですら簡単に操作できるところが、親子で鉄道模型を楽しむ欧州スタイルを感じさせる。極めてシンプルな機能美を誇ったLOKMAUSの後継機であり、若干大型化したもののアクセサリ制御機能等が備わり、液晶も2段で十分な情報量を持つようになった。なお、LOKMAUS2以降の製品はXpressNetに対応しており、拡張性も十分。MultiMAUS単体は定価€99だが、電源等が必要になるので一般的には列車セットとともに購入することになる。

Fleischmann社「LOK-BOSS
同社のDCC入門用セットに同梱されているコントローラ。操作の単純さは他のどんな製品にも負けない。制御できるアドレスは1から4まで、機関車のアドレスはレールに乗せてボタンを押すだけで設定完了。ファンクションはライトとF1/F2兼用(ホーン等)のみ。ポイント等アクセサリコントロールはすっぱり排除。LEDマトリクス画面すら持たずアドレスを示す4個のLEDがあるだけ。従来のパワーパックを使える人ならまず使いこなすことができる、直感的かつ単純な機能は、ある意味、真にドイツ的合理主義の鑑。逆に日本ではここまで割り切った製品は作れないかも。部品としての別売もあるようだが、その場合は€80~90程度。ただ、ステップアップ時に不要になるため、オークションで安く買えたりする。

Uhlenbrock社「DAISY
同社のハンディキャブDAISYに電源装置(Power 2等)を接続すれば、最小構成のDCCコマンドステーションが出来上がり。これでもLocoNetコネクタを有し、拡張性は十分。アメリカ製の同様セットに比べるとキャブの機能は単純だが、扱いやすさに重点が置かれていて入門者にもわかりやすい。

PIKO社「Digi-Fern
旧東ドイツの大メーカーPIKO社の入門セット用コントローラはUhlenbrock社IRISのOEM。赤外線コントローラで配線量を減らすことができるのは入門向きだが、一切の表示機能を廃したコントローラはやや割り切りすぎか。機能は豊富で上級ユーザーも満足できるものだが、なぜかカタログスペックはIRISよりやや劣っている。


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最終更新:2007年09月10日 17:24