双方向通信

語義は送信・受信の双方向に通信すること。DCCでは一般にデコーダの動作に着目し、通常は信号を受信して動作するだけのデコーダから、コマンドステーション(及びキャブ)側に信号を送信する機能があるときに、双方向通信である、とされる。
バスを使ったシステム装置間の通信(LocoNetXpressNet等)は当然ながら通常双方向通信であるが、線路を介するデコーダとコマンドステーションをはじめとするシステム装置との通信は、従来コマンドステーションが生成したDCC信号をデコーダに一方的に送信するだけだった。本来コマンドコントロールの開発目的が車両の遠隔操作であったことから、当初は一方通行でなんら問題がなかったデコーダとの通信に対しても、DCCが普及し発展していくにともなって車両検知等のためにデコーダ側からの情報を得たいとのニーズが高まってくることとなり、いくつかのメーカーから双方向通信が開発されることとなった。

Digitrax社のトランスポンディング機能は従来のDCCシステムに付加する形でかなり早期に開発され、普及も進んでいる。比較的安価な装置を追加するだけで、特定の線路区間に在線する車両の車載デコーダが発する情報(特定のCV値、通常はデコーダアドレス)を受信することができ、パソコン制御において重要となる車両検知機能を実現している。デコーダが発する信号はDCC信号とは独立した別の信号であるため、信号が相互に干渉することなく線路を伝播でき、すでにあるDCCシステムに影響を(ほとんど)及ぼすことなく導入することができることも普及の一助となった。
その後さらにLenzからはRailComと呼ばれる通信規格が提案された。こちらは従来のDCCシステムを改定する形で開発されており、DCC信号そのものの変更をともなうものである。デコーダからの信号とそれを受信するための装置を総合して規格化していることから、場合によってはDCCシステム全体の買い替えを要することも考えられ、現時点では普及はあまり進んでいない。

しかしトランスポンディングにおいてはデコーダが一方的に信号を発する形態をとっているところ、RailComではDCC信号による応答の形態をとっているため、単にデコーダ情報をコマンドステーションに伝えるだけに留まらないメリットが生まれる。すなわち、コマンドステーションが送信した信号に対するデコーダからの(受信成功の)応答が得られることで、従来動作の確実性を担保するため同じパケットを連続して送信していたことが不要になる。例えばD101等では過去に送信したパケットをいつまでも再送信し続けるため、しばらく運用していると大量のパケットが洪水のように送信されてしまうが、このような現象はDCC信号の帯域幅を無駄に消費しているに他ならず、近い将来DCCシステムの欠陥として浮上するのは間違いないと思われる。
この第2のメリットから、将来的にはDCC信号の双方向化は必須であることは間違いなく、NMRAではRailComをベースとした双方向通信の規格化を推進、NMRA Bi-Direction(BiDi)として纏め上げつつある。また規格化にともない欧州ではいくつかのメーカーが搭載を表明、今後は標準双方向通信規格として利用が進むものと思われる。


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最終更新:2007年08月28日 18:31