型式:TR820A3
年式:2010年
台数:5台

導入の経緯


さいたまトロリーも開業から20年を迎え、ベンツ製の初期車の代替が必要となってきました。
また20年の間に、さいたま新都心の街開きや沿線のマンション増加等から、
朝ラッシュの一部ダイヤでは積み残しが問題となっていました。
そうしたことからより大きな輸送力を持つ車両が必要とされていました。

連接バスでも座席数を減らせば輸送力を増やすことができますが、
40分近くもバスに立ち続けることは大きなストレスとなります。
また、快適性が損なわれる事は、競合するJR線や乗用車に対しての
競争力が失われる事を意味します。

そこで目をつけたのが、3連節バスでした。
全長25メートル弱とバスとしては最大級で、200名の乗客を運ぶことができ、
座席も70近く確保できます。
しかし、3連節でなおかつトロリーバスとなれば、スイスの1社くらいしか
思い当るところがありません。
製造の打診をしましたが、右ハンドルでなおかつ日本の法規に合わせると言うことが
ネックとなって実現しませんでした。
そこで、国内で連節バス実績のあるメーカーに声が掛かることになったのです。

車両の特徴


全長は24.8メートルあり、4軸のうち前から1軸目と4軸目が操向します。
2軸目と3軸目の手前の床上に80kwのモーターをそれぞれ2基ずつ搭載しました。
モーターの小型化が進んだ結果、床面からモーター上への段差は30センチ程度
となり、座席スペースとして活用されています。

このバスはトロリーバスでありながら非常用のエンジンを搭載していません。
普通トロリーバスは緊急用のエンジンが搭載されており、万一の離線や
停電時に発電を行って電力を供給する役割を果たします。
その代わりに床面下のシャーシの隙間に薄型のバッテリーを敷き詰め、
トロリー区間走行中に蓄電しておくことでエンジンの代わりを務めます。
バッテリーはそれだけではなく、ブレーキで回生した電気の貯蔵先となったり、
トロリー区間以外を走行する時の動力源となり、フルで活用されます。
なお、バッテリーが完全に充電された状態では、100キロ程度走行できる設計です。
バッテリーをたくさんに積むことは重量の増加に繋がるわけですが、
それ以上にエンジンや燃料、補器を積まないことによる重量の軽減や室内スペースの拡大の
メリットが大きいのです。
それに、さいたまトロリーはトロリポールを下して走る区間が長く、環境に配慮する観点からは
エンジンを回さずに走れる「オール電化」バスにすることによる効果は大きいのです。

もちろんバッテリーも重量物ですので、なんらかの軽量化が必要でした。
コスト面からボディーは現行のスタートラインの設計をそのまま流用しましたので、
今回特注となったシャーシを全てアルミ化して軽量化を図っています。
(アルミの加工技術には熟練が必要な為、今回分のシャーシの製造は全て外注しています)

ドアは前ドアはグライドインとした他はアウトスライドドアとしています。
全てグライドインドアとすることも考えましたが、ドアを開ける際に車内の監視が
大変なことから、外側に開く扉を増やしました。(前扉は目視が可能な為グライドイン)

さいたまトロリーは基本的に中のり前降り後払いですが、ラッシュ時は2・3両目から前ドアで
降りることが難しくなります。
その為、混雑する西高島平方面行では終点の西高島平駅において一斉に全てのドアを開放して車外で
運賃収受を行います。
途中で降りる乗客は1両目の中ドアからのみの乗車として、前扉で運賃を支払って降車とします。

5ドアを備えることで乗降の時間を短縮し、4基のモーターによる高加速と合わせて所要時間の短縮を図ります。


1両目です。前述の通り1両目は途中降車の乗客用のスペースとなる為、一部座席を削って
収容力を高めています。中扉と2軸目の間の公式側・非公式側両方にモーターを搭載しています。


2両目です。2両目以降は座席数重視の車内となっています。
流動性は低いですが、ドア数が多く、また途中での乗客の車内の移動を見込んでいないので
これで良いのです。
ドアと3軸目との間の公式側・非公式側にモーターを搭載しています。


3両目です。最後までフルフラットの構造となっています。
エンジンや補器を積まなかったことによってこのように広い室内構造を実現しています。
4軸目が操向し、旋回半径の抑制に一役買っています。

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最終更新:2011年04月09日 20:51